アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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ストレスを軽減するため今日は3話投稿予定。
次話は短めですので数分後。
3話目は18時頃の投稿となります。


第56話 限界の突破

 

「……今日はこの辺にしておくか」

 

 ステラと別れた後も屋台をそれなりに巡って、時間はもう夕方を過ぎる辺り。

 日は沈む直前で、もう街灯が点き始めている。

 

 周りを見渡せば、店を閉める準備をし始める人たちがチラホラ。

 

 この世界では日本の都市に比べると、やっぱりと言うべきかお店の閉まる時間が早い。街灯などの明かりはあるけど、それも最低限。緊急時の対応が求められる冒険者ギルドや医療施設を除くと、そもそも人が来ないから店を開く意味が薄いんだよね。

 

 もちろん酒場なんか一部の店は開いていたりするけど。

 

 お酒を飲む場所はまず大人しか来ないしね。

 仕事終わりの人とかを相手にしている。というか、私も最初は行ってみた。

 

 ただ、1人で飲む酒は美味しくないと言いますか、おつまみも味を感じないと言いますか。うん。誤魔化すの今日やめたからぶっちゃければ、1人でお酒は寂しいっす。たまにぶしつけな目もあるからとっととお金払って出ちゃうし。

 

 それともう1つ、高確率で開いている店がある。

 女の私には縁が無い場所――娼館だ。正確には一生関わるつもりがない場所、だけども。

 街の規模になれば最低1つは娼館がある。

 王都みたいに首都とかになれば、いくつも。

 

 

 前に普通のバーだと思って入ろうとしたのをギランさんに全力で止められて、後になって私が入ろうとしていた店がそういう所(・・・・・)だと教えてもらった時は、顔から火がでそうになった。

 

 スキルで耳が良くなっている私が、例え間違いでもそんな所に入ってみろ? 防音効果が高くなきゃ、男女のアレコレが丸聞こえになっちまう。そんなんなったら一気に酔いも覚めて、全力で王都中を走り回ることになりそう。というか、冷静になるまでたぶん走るに違いない。

 

 そして、またもやユフィさんとかに迷惑かけると。

 あの人にはギルドで暴れた時に迷惑かけたから、そっち方面の苦労はさせたくないんだよね。マジ申し訳ないと。

 

 

 で、話は戻るけど、神様を信仰している聖国でも娼館が無いわけじゃない。

 

 女の私には分からんが、男の性欲って無理矢理抑え込めるもんでもないらしいしな。適度に発散させるのが1番いいと聞いた。

 そして娼館は発散させるのに1番向いている。

 

 信仰心の高い聖国といえど、国として目を瞑るべきところは必要な物として瞑っている。娼館もその1つだ。

 ただ、さすがに表立っての営業は許可できないので、他の国と違って地下なんかに造られる隠れ娼館という扱いで認めている。行くには自力で見つけるか、すでに行っている人から秘密裏に教えてもらうか。

 

 そして地下に隠れるようにしてあるもんだから、暗黙の了解として客やお相手の女性が聖職者の類でも決して深く聞かず、口外も禁じる。

 破れば聖国中のその辺を黙認している聖職者たちから天罰(物理)が下される。

 

 ……聞いた話じゃ、本当に記憶飛ぶまで聖拳突き(誤字にあらず)されたアホもいたとか。異世界の聖職者って物騒だな~。

 

「ん~~~、今日の晩飯どうしよ?」

 

 そんなこんなで宿への帰り道を歩く。

 一定の金額で厨房を借りることができる宿屋を選んだから、泊ってからは夕食を自分で作っている。

 宿屋のご主人に、お礼にとチャーシューあげたら偉く気に入ってくれていた。味付けが好みだったらしい。

 

「けど、たまには宿屋のメシ食うか」

 

 気分の問題だけど、今日はもう作る気がおきない。

 さっさと夕食作ってもらって寝るとしよう。

 

 どうせ明日からは本格的に聖国の冒険者ギルドの依頼を受けるんだ。ステラとの約束優先だから短時間で済むもの限定でだけど。

 ま、私の足の速さなら多少目的地が遠くても問題ない。拘束時間が必然的に長くなるのは護衛系だからな。それだけ受けないようにする。

 

「何にしようかな~? 蒸し鶏のサラダにコロッケでもいいし、聖国特有の料理にそろそろチャレンジするのも――――?」

 

 

 その時、周りがざわついていることに気付いた。

 

 

「おい、その話本当か?」

 

「こんな冗談言うわけないだろ! とにかく回復魔法が使える奴なら誰でもいい! 聖職者でも冒険者でも誰だって! 急を要するんだよ!」

 

「誰か! 中級以上の回復薬をお持ちの方いませんか!?」

 

「おい! 力のある奴は手を貸してくれ!!」

 

 ザワザワと、次第に人の声が大きくなっている。

 

 ……もしかして急患か?

 

 こんな時間だからほとんどの人は自分の家か泊っている場所に戻っているだろうし、医療施設はここからだと地味に遠い。

 力のある人にも頼むって、何かの下敷きにでもなってる?

 

(……しゃーない。助けるか)

 

 回復魔法はともかく、私の【アイテムボックス】の中には中級の回復薬があるし、万一のための上級回復薬だって少量ながらある。

 急ぎなら私が向かった方が早い。

 

 金持ってる人ならツケで回復薬の代金を割安で払ってもらえればいいし、お金持っていない人ならそれはそれでいい。自己満足に近いけどお礼の言葉もらえればそれで満足っすわ。……恩を簡単に踏み倒そうとする奴だったら金は払ってもらううがな!

 

(【ヘルプ】。この付近にいる今すぐ治療が必要な人はどこにいる誰?)

 

 

『〈急患の情報〉……中央公園入口付近の――

 

 

 

 

「――――――え?

 

 

 

 

 

 ヘルプの説明を最後まで聞かない内に頭が一瞬、真っ白になった。

 考える時間が欲しい。周りを置き去りにするほど早く。

 気付けば考えるより早くSPを消費してスキルを取得していた。

 

 

『〈ヘルプよりお知らせ〉……ユニークスキル:限定・超高速思考を取得しました』

 

 

 世界が止まる。

 正確には、視界に映るものが異常に遅く思える。

 でも、私の頭の中だけは動いている。

 

 よく知った人物(・・・・・・・)がどれだけ危険な状態かが、【ヘルプ】からもたらされる説明によって、事細かに頭に刻まれる。

 

 

 ――クソが!!

 

 

 その時には、もう目的(・・)以外頭になくて、

 限界を超えた思考速度で自分のすべきことをしていた。

 

 

『〈ヘルプよりお知らせ〉……スキル:行動速度上昇(小)を取得しました』

 

 

 足に力を籠める。

 逆方向を向いて、目的地まで一気に駆出す。

 

 

――ドンッッッ!!

 

 

 地面が爆ぜる音がした気がした。

 誰かの悲鳴が上がった。

 

 ――遅い。もっと早く。1秒でも早く行動したい。

 でもダメだ。このあと(・・・・)のことを考えれば、残りのSPは全て温存しなければいけない。

 

 最速で駆けて、最低限だけ人や物を避けて、最大限の時間短縮をする。

 

 見えた。

 人が集まっている。馬車が倒れている。男の子が泣いている。

 そして、馬車の下敷きになっているのは、血に濡れた……

 

(【風系魔法】付与。『暴風脚』)

 

 一瞬で馬車のすぐ側まで近づき、全力で蹴り上げる。

 風の操作をして、下にいる少女を巻き込まないように。

 

 

――ビュオウッッッ!!

 

 

 馬車が天高く舞った。木片ごとどこかへ飛んでいく。

 木々の見える場所に向かって蹴り上げたから、ケガ人は出ないはず。

 

 血濡れの少女に近づく。

 キレイな服は土と血で汚れている。

 額が、ザクロ(・・・)のように割れている。

 血色の良かった顔は青に変わり、死が近づいていることを嫌でも感じさせた。あと1分もしない内に命の灯火が消えてしまう……

 

 

――SPを54消費。【光系魔法】をLV.2から一気にLV.7へ。

 

 

 手をかざす。

 もう、イメージしなくても分かる。この子を救うための魔法が。その効果が。自然と、魔法名が口から出る。

 

「――『ビヨンド・ヒール』」

 

 全てを癒す緑色の光が手のひらから溢れた。光は少女を包み込む。

 

 ……どれだけの時間が経ったんだろう? 実際には数秒のはずなのに、私には何時間にも感じた。

 

 そして――少女が目を開ける。

 

 瞬間、私の感じた時間の違和感も無くなる。

 

 

「………………ユキナ、様……?」

 

「……心配させんなステラ。この大バカ」

 

 

 気が付けば安堵からか、目から熱いものがポタリと落ちた。

 

 

 

『〈ヘルプよりお知らせ〉……称号:限界を超えし者、絆の救世主を取得しました。称号:限界を超えし者の効果によりユニークスキル:限界突破を取得しました。称号:聖女が称号:真・聖女に変化しました。称号:真・聖女の効果により、新たに称号:神々に気に入られた者、爆走聖女を取得しました』

 

 




 次回はステラ視点です。

・【光系魔法LV.3~LV.7】取得  消費SP54
・【ユニークスキル:限定・超高速思考】取得  消費SP5
・【スキル:行動速度上昇(小)】取得  消費SP1

現在〈所持SP:12〉
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