アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第63話 除霊大戦③

 

 戦闘開始直後に動いたのは、ステラを含む後方支援部隊。

 最初に邪魔でしかないザコ魔物を一掃するらしい。

 

「「「「「主よ、救われぬ者に救いの導きを! 『浄化』!!」」」」」

 

 ステラと、砦の所々から神聖な光が一気に大地を照らす。

 

「ア、アアアアアアアアアアアアアァァァ……」

 

 おおぉ!? そこら中を飛び回っていた人魂や一部の死霊系魔物が、煙みたいに消えたりボロボロと崩れ去っていく!

 これが光系魔法を得意とする信者・聖職者たちなら誰しも使える対死霊系魔物専用魔法『浄化』か。

 私も一通り死霊系魔物に対抗するための魔法は覚えさせられたけど、やっぱ実際に大勢が使うのを見ると違うなー。

 

 え~と、確か指揮官さんに確認した時に聞いた大まかな流れとしては、最初にザコ処理したら今度は2番目に多いスケルトン系の魔物――つまり理科室にあるような骸骨を倒すって話だったな。死霊系魔物の中でも防御力は紙だけど、意外と速いから先に数を減らすって。

 

 ……でもさ?

 

「ねえ、ステラ? あの犬(狼系の魔物)たち……何?」

 

 実を言うとずっと気になってたんだよ。訓練された犬みたいに立派なお座りで待機しているんだけどさ、よだれダラッダラなんだわ。

 しかも、視線が完全にスケルトンをロックオンしてるよね?

 

「魔物使いの使役している魔物なので安全ですよ?」

 

「いや、私が聞きたいのはそういうのじゃなくて……」

 

 どう聞くべきか迷っていたら、ついに動きがあった。

 

「さあ行けオマエら! 今日はご馳走だぞ!! ゴーゴー!」

 

「「「「「ワゥウウウウウウウウウウウウウウウウンッ」」」」」

 

 魔物使いの命令を聞いた犬っころが駆けだす。その先にいるのは当然のごとくスケルトンなわけで……

 

「ガブガブガブガブ!!」

 

「カタカタカタカタ!?」

 

 うん。食ってますね。おもっくそ(かじ)り付いてますね。一心不乱ですわ。バリボリいってますね。スケルトンが必死に助けを求めるかのように手を味方に伸ばしているけど、その手も食われたよ。

 

「これはスプラッターホラーなのか? それともアニマルギャグと見るべきか? どっちにしても疑問なのはその骨不味いんじゃ? ってことだけど……」

 

 

『〈スケルトン系の骨〉……骨の体を動かすために全身に魔力が流れ、活性化している。さらに砕かれると、スナック菓子のような適度な硬さになる。そのため狼系の魔物にとってはご馳走であり、文字通り目の色を変えて襲い掛かる。カルシウムの塊なので、食べれば骨が丈夫に』

 

 

 【ヘルプ】が疑問に答えてくれた。

 

 スケルトン、何て哀れな魔物なんだ。

 少し硬めのスナック菓子感覚で食われてしまうとか。若干人間っぽい動きをしてるせいで猟奇的な絵面に見えなくもないし。よし、戦うことになったら真っ先に葬ろう。バリボリ食われるよりマシだろ。

 ……あれ? おかしいな? 何で私、スケルトンに同情してんだ?

 

 そんなことを考えて入れば、ついに本格的な戦闘が開始される。

 

「フンぬらばぁっ!!」

 

 まずはメリケンサック装備の熟女シスター。

 

 デュラハンの盾なんぞ知らんとばかりに粉砕して、本体の鎧をも粉々にしている。首が無いはずなのに盾を一撃で粉砕された時の「え? マジで?」みたいなデュラハンの動きが印象的だったな。

 

 というか、やっぱこの世界のシスターって物理系なのか?

 よくよく観察すると、他のシスターと思しき女性たちも前線でモーニングスターや十字架を振るって魔物を倒しているし。

 

 ――って、おいおい。

 十字架が開いて銃口が顔見せておりますが?

 

「さあ! これが神のお力です!」

 

 直後、銃口が飛び出た十字架の直線状にいた魔物が数十体消し飛んだ。

 なんかズバアアアアアアアアアアアッ!ってレーザー光線みたいのが発射されたぞ? どう見ても魔道具だ。間違っても神の力ちゃうよね?

 

 ――っと、魔物の方も攻撃してきたな。

 後方にいる魔法使いのローブを着たアンデットが【闇系魔法】を放ってきた。前線で戦っている人たちを飛び越えてこっちまで。

 

「な!? こちらを攻撃してきた!?」

 

 何人かが慌てている。別におかしくなくない? さっきから見ていると、こっちも遠距離から【光系魔法】で攻撃している人いたし。

 あぁもう。仕方ないなー。

 

「『バリアー』」

 

 すぐにユニークスキルでもある半透明の障壁を広範囲に展開する

 幸いにも【闇系魔法】の威力はそれ程でもなかったんで、障壁に当たって打ち消される。やっぱり便利だなこれ。取得してよかったわ。

 

「今のはユキナ様が?」

 

「そうだよー。てか、何慌ててんのさ? こっちだって攻撃してんだから、向こうの魔物だって攻撃してきてもおかしくないじゃん」

 

 そのための砦じゃないのか?

 

「それは前線が崩れてきた時だけです。基本的に魔法が使える魔物は前線の者たちをまず攻撃対象にします。まだ戦闘が始まったばかりだというのに、こちらまで攻撃してくるなど聞いたことがございません」

 

 指揮官さんの言葉にステラも「確かに資料を拝見した時も、そのようなことは今まであったという記述はございません」と神妙な表情になる。

 ふむ。つまりイレギュラーな個体が初っ端から出てきたってことか。

 ……少し予定より早いけど前線に行きますか!

 

「ステラ。ちゃんと防御用の【光系魔法】張るの忘れんなよ。ちゃちゃっと片付けてくるから」

 

「へ? は、はい! ご武運を!」

 

 言うが早いか、すぐに前線に向けて飛び出す。

 周りの戦っている人たちを無視して、さっきの魔法を打ち込んできた魔物たちの元へ一直線。

 

 私に気付いた個体が魔法をピンポイントで打ち込んでくるけど、全部『バリアー』に防がれて霧散する。ちょっとコツはいるけど、この『バリアー』ってある程度の大きさまでなら空中に出したまま移動できるんだ。

 慣れればシールドアタックならぬバリアーアタックができるってユフィさんも言っていたけど、私はそこまで使いこなせていない。1度試してみたら、魔物に当たった直後に押し返されて『バリアー』が顔面を直撃した。

 あの時の私の状態を分かりやすく言えば、ショッピングモールとかにある大きなガラスに全身へばり付かせてブサイクになったガキ。

 

 おっと。思い出してたら魔物がもう目の前に。

 

「『ヘブンズ・ゲート』!」

 

「「「「「アァ!? アアアアアアアアァァァァ……」」」」」

 

 私の後ろに円形状の光が後光のようにして現れる。

 それは魔法名通りさながら天国への扉のよう。前方にいた魔法使いのローブを着たアンデッドだけじゃなく、周囲の魔物まで一瞬で消滅させる。

 

 うっわ。『浄化』よりも高位の対死霊系魔物専用『光系魔法』って話だったけど、効果エグ。魔力はそこそこ喰うけど今回の戦いでは使い勝手がいい。

 

 手に持っている『神鳥ヴァルクスの長杖』の効果もあるかも。確かこういう魔物に対しての特攻能力があったはずだし。

 案外、直接殴ったらエグイ威力発揮しそうだな……

 

「おお! 聖女様が前線に出られたぞ!」

 

「さっきのは『ヘブンズ・ゲート』!?」

 

「あの年で、ああも簡単に高位の【光系魔法】を使われるとは!」

 

 おっふ。注目の的になっちょる。早よ移動しよ――って、また魔法が飛んできた! さっきから私のこと狙いすぎじゃね!? 私には『闇系魔法無効』があるけど、周りに被害が出るかもしれないし不必要に心配させないために『バリアー』を張ってるんだぞ。これって魔法を使う時に邪魔だから1度は消さなきゃいけないのに!

 

 ちょっとヘルプ! 何でこんなに狙われるのさ!?

 

 

『〈魔物に狙われる理由〉……中央にいる上級アンデッドによる指示。聖女の力が非常に強い存在を狙うよう配下に指示を出している』

 

 

「また聖女関連かいぃいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 『ヘブンズ・ゲート』最大出力! 邪魔な奴らは一掃だ!

 

「「「「「!? アアアアアアアアアアアアアッ!?」」」」」

 

 開いた道を走る。目標は1つ。何でか戦場にいる上級のアンデット!

 中央に向けて足を進めればすぐに見つかった。無駄に豪華なマントや王冠を身に付けている。周りには膝をついてる味方の姿も。

 

「はあ、はあ、何で……エルダーリッチなんて化け物が!?」

 

「クソ、もう魔力が……!」

 

『フハハハ! 温い。温いわ! その程度で我を倒そうなど片腹痛い! 数百年に渡り溜め続けた我の力に敵うと思うてか!?』

 

 足に力を、杖を握る手に力を、これでもかと籠める。

 

『ぬ!? おお、ついに見つけたぞ真なる聖女ぉおおおおおおおおっ!! 数百年前にキサマに敗れ、カスのようになりながらも力を溜め続け、恥辱にまみれながらも復讐の機会を待っていた甲斐があると言うものだ! ここ最近で一気に力を取り戻し、見事復活したところでの再会。まっこと運命だと思わんかね? 今度こそ我が勝たせてもらうぞ! 昔の我と思うなよ? キサマも数百年の間に随分いろいろと変わったようだが、今の我の敵ではない!! さあ、喰らえ! これぞ【闇系魔法LV.6】クラスの大魔法! キサマを葬るための――『絶望の晩餐会』ぃいいいいいいいいいいいい!!』

 

 エルダーリッチ(?)から大量の怨霊が凝縮したような闇の塊が私に向かって放たれる――が、

 

「人違いで迷惑かけてんじゃねえええええええええええ!!」

 

 無視して突き進む。もちろんノーダメージだ。

 

『な、バカな!?』

 

 バッター4番永瀬雪菜! 杖をフルスイング!

 

「土に帰れ! 『ナムアミダブツ』!!」

 

『ハ? ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 杖で勘違い野郎の顔面を思いっきり叩き、消滅させる。

 急に頭の中に浮かんだ言葉唱えながらフルスイングしたら、予想を超えて効果が出たな。エルダーリッチだかなんだか知らんけど、体の方も完全に消滅した。んでもって、これで私も物理系聖女になったわけだ。

 

 “悪い魔物は神聖な杖でフルスイーーーーーング!”

 キャッチコピーはこれでどうだ? ダメっすか? ダメっすよね。子供の教育に悪そうだもんね。はあぁ。

 

 ところで、何故に魔法名が南無阿弥陀仏?

 【光系魔法LV.7】相当っぽいけど。この世界って仏教あるのか?

 

 




 大物ぶって登場したキャラに限ってあっけなく退場する。それが『アルビノ少女』!
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