アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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第65話 急展開

 

 大教会への帰り道。買い物袋を持った私たちは道で出会う人たちに挨拶をしながらステラ以外の見習い聖女の件で気がかりなことを話し合っていた。

 

「んで、ヴィヴィアンちゃんだっけ? ……いつ帰れるの?」

 

「私にも……。あの子ってここぞという時に不運に見舞われるのですよ」

 

 

 

 ステラ以外の見習い聖女はほぼ全員が他国から帰って来ていた。

 みんないい子だったな。最初こそ私とどう喋っていいのか分からず、沈黙も多かったけど、ステラと共同で作った料理の数々を振舞ってあげたら話が弾んだ。

 見習い聖女の胃袋、ゲットだぜ! みたいな?

 

 ――1人を除いて。

 

 

 

「そもそもさ? 魔法使いたちの国エンディミオンで中々布教が広まらないからって意固地になって、ちょうど開催していたお祭りのイベント全部参加の全部3位以内に入るって偉業達成して、有名になって布教活動がしやすくなったのはいいけど、活動資金が旅費も含めて底ついたってだけでも悲惨なのに……」

 

「旅費を稼ぐために冒険者になって、偶然お偉いさんの窮地を助けて気に入られたのはいいですが、お家騒動に巻き込まれたと……」

 

「何とか騒動を鎮圧(物理)させて、さあ帰るわよ!って時に逆恨みしたバカ連中が襲ってきて、稼いだお金を紛失して……」

 

「泣き落としで馬車に乗せてもらえることになった商人さんとエンディミオンを出るまでは良かったのですが……」

 

「今度はその商人さんの故郷で悪事を働く、法が適用されにくい連中との戦いに巻き込まれたと。結果、今だ1人だけ帰りが遅れてるって話か。………………何なのこの子? 難易度が低いだけで私以上のトラブルほいほいじゃん。不運にも限度があるよ」

 

 日本だったら確実に関係者がこぞって「オマエ、神社にお祓いしてもらえ。いや、マジで」って言うこと間違いなしだ。

 

「あの子はユキナ様に似ているところが多いんですよ。年も背も小さいから、みんなからは微笑ましく思われてるんですが」

 

 何だろ? 小さい女の子が涙目になりながらヤケクソ気味にトラブルに向かっていく姿を想像してしまう。

 ……帰ってきたら、お菓子いっぱいあげよ。

 

 

 何のお菓子がいいかなー? メメリスたっぷりのケーキとかいいかも? そんな風に考えてたら――会いたくもない奴らに会った。

 

 

「おや? 聖女様にステラ様ではないですか。こんな所でお会いすることになるとは。今日は随分と暇なご様子で」

 

「民は常日頃から聖女様を求めておいでなのに、やれやれ」

 

((うっわ~~~))

 

 例のタカ派の奴らだ。それも2人。

 せっかくの休日にこんなのに会わせるなんて……【幸運】ぇ、頼むから仕事してよぉ。私に恨みでもあるのかよぉ。

 

「……そういうアンタたちも、こんな時間にフラフラと外で何をしているんすかねえ? こっちはきちんと休暇として過ごしているんですが?」

 

「なに、枢機卿殿のおつかいですよ。我らが枢機卿はどこぞの冒険者上がりの聖女様と違って、1日たりとも休む暇なく仕事をされているのでね。もうお年である枢機卿が粉骨砕身で頑張っておいでだというのに……いやはや|嘆(なげ)かわしい」

 

「全くです。少しは見習ってほしいで――」

 

「……あ゛ぁ゛ん゛?」

 

 

――ブチッ!

 

 

『〈ヘルプよりお知らせ〉……熟練度が一定に達しました。【スキル:威圧(小)】を習得しました』

 

 

「「ひぃっ!?」」

 

 急に怯えだすバカ2人。顔から血の気が引いてる。

 

「ユ、ユキナ様?」

 

「ステラちょっと待って。コイツらに引導渡す」

 

 もう我慢ならん。泣いて許しを乞うても絶対許さん。

 

「な、何だというんだ! 暴力を振るうのか!?」

 

「……そんな甘くはないよ、今の私ったら激おこだし」

 

 精神的に追い詰めるのに画期的なスキルがありますからねぇ。

 

(【ヘルプ】! コイツらのバレたら本気で困ることを暴け!!)

 

 こんなに嫌な奴らなんだ。叩いたら出てくる埃なんて1つ2つで済まされないはず。普段だったらプライバシーとかあるし、人の隠し事を強制的に暴くマネはしないんだけど……テメーらは私を怒らせた。この優しさの塊である雪菜ちゃんを怒らせてしまったんだよ! 

 さあ恐れるがいい! あとで教皇さんにチクってやるから!

 

 

『〈本気でバレたら困る秘密〉……今日の夜にクーデターを起こす予定。マッケンシー枢機卿の部屋の下にある隠し地下室で集合後、違法管理した魔物を使って教皇と聖女を亡き者にしようとしている』

 

 

 

 

 

 ………………は?

 

 

 

「えっと、クーデター……?」

 

「「な!?」」

 

 あまりにも予想外過ぎる事実にポカンとしてしまった私をしり目に、混乱した様子ながらも脱兎のごとく逃げ出そうとするタカ派の2人。

 

 ――って、待てやゴラァ!

 

「『バインド・チェーン』!」

 

 光る鎖が逃げた2人にグルグルと巻き付いて動きを封じる。

 突然の事態に周りが騒ぎ出し始めたけどそれどころじゃない。

 

「ユキナ様!? 一体どうされたので――」

 

「説明はあとだよステラ」

 

 まったく。休日なんだから最後まで平穏でいたかったな。

 

「今すぐ教皇の所に行くよ」

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「なんと!? それは、本当に?」

 

「こんなウソわざわざ言うかってんだ」

 

 急いで大教会に帰って、今は教皇さんの部屋。

 私の足元にはグルグル巻きのタカ派2人(うるさいので気絶させた)が転がっている。例の隠密行動に使えるスキルで可能な限りここに来るまで人目に付かないようにしたけど……さてはて、向こうはもう気付いているかな? こういう時は気付いていると考えた方がいいよな。

 

「ユキナ様のユニークスキルだそうです。教皇様、本当のことだと仮定してすぐに行動しましょう。もしかしたら、すでに動き出しているのやもしれません」

 

「しかし……」

 

「ぐだぐだ言ってもいいけど、私もう枢機卿の所に向かうね。先手必勝で証拠掴んでくるから」

 

 王国の時とは違うんだ。

 【ヘルプ】の力が働くなら、相手に時間を与える必要はない。

 

「ステラ、念のために教皇さんと一緒に穏健派の人たちの避難をお願い。【光系魔法】の障壁も常時展開しとけよ? じゃ、行ってくる」

 

「いやユキナ様お待ちを――」

 

「はい! お任せを!!」

 

 ステラのハッキリした返しに満足しながら部屋を出る。そして【アイテムボックス】からインナーやローブを出したら、

 

「【装着】」

 

 私の着ていたワンピースと手元に呼び寄せた装備が入れ替わる。

 ハルバードも手に持てば、すぐに戦闘準備万端だ。

 

 【スキル:装着】はつい先日1SPで取得したばかりの、簡単に言えば早着替えのスキル。ようやく所持SPが50を超えたんで取ってみたのだ。

 

「急ごう」

 

 大教会の長い廊下を駆ける。

 事前にあのメタボ卿の部屋は割り出している。さらに念には念を入れて道中のことも常に【ヘルプ】による疑似未来視で対処。

 

「――っ! 来たぞ!」

 

「報告通りか。全員あのエセ聖女を止めろ!」

 

 予想通りというか何というか……とりあえずエセ聖女と言った奴は許さん。

 つーわけで、【アイテムボックス】から湯気が出ているものをスタンバイ!

 

 

「この先はキサマのような小娘が通っていい場所では――」

 

「超激辛麻婆豆腐アタック!」

 

「なぃ――アッチャアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

 出来立て熱々の特製麻婆豆腐を男の口の中に押し込む。するとどうでしょう。涙を流すほど嬉しがってるではありませんか!

 

 いやー、作った甲斐があるな!(笑)

 ちょっとした時間に厨房借りて、非常食用にといろいろ作ってみたんだよね。【アイテムボックス(大)】なら時間経過もないし。

 ちなみにそれ、4種類作ったうちで1番辛いやつっす。

 

「おのれ! 【水系魔法】『アクア――」

 

「ヘイ! 担々麺お持ちぃ!」

 

「ボパァアアアアアアアアアアアア!?」

 

 水分が欲しそうだったんで、オークの骨から数時間かけて取った出汁も使い、炒めた挽肉を乗せた特製担々麺をプレゼント♪

 白目剥くほど美味しかったみたい。

 

 調子乗ってきたんで他の邪魔する連中にも私が愛情込めて作った料理(全部熱々の辛い系)を強制的に食べさせてあげた。

 オラオラ、もっと食いねえ!

 

「くっ! 口さえ閉じてれば……!」

 

「石焼ビビンバご注文入りましたーーー!」

 

 

――ガシャーーーーーーーン!!

 

 

 ん? あれ? 今なんか、陶器が割れるような音がしたけど、悲鳴すらあがっていなかったような………………ま、いっか。

 

 そんなこんなで、一切武器を使わずに私の手作り料理を食べさせて大人しくさせるという、何ともまあ聖女らしい慈愛に満ちた倒し方で敵を無力化。

 ついにメタボ卿の部屋に辿り着いた。

 

「お邪魔しまーーーす!」

 

 ノック代わりにドアを蹴破る。すんごい勢いでドアが吹き飛んだ。律儀に普通のノックするわけないからね。強制的に開門じゃ!

 

 

 ――と、その瞬間、

 

 

「あらよっと」

 

 軽い口調でイナバ〇アー。もといブリッジ。

 そんな私の上半身があった場所を通り過ぎていく数本の鋭利な杭。

 

 殺意高いトラップだなー。かなりの速度で通り過ぎたぞ? まあ、事前にトラップの有無を確認した私には意味なかったけども。

 

「う~~~んと、【ヘルプ】の話じゃここだったな」

 

 隠された地下室に続く階段があるとされていた場所――いかにも重そうな本棚がある場所を軽く調べて……

 

 

――ドガアアアアアアアアアアアンッ!

 

 

 ハルバードで本棚ごと粉砕した。

 そして下から現れる地下への階段。

 

 いやさ? 本当なら何か本棚にギミックがあったかもしれないけど、時間押しているし、わざわざ【ヘルプ】に聞くよりも早そうだったし。

 ぶっちゃけ反省もしなければ後悔もしていない。

 




 見習い聖女ヴィヴィアンちゃんの話はSSで投稿予定です。
 実はもうデフォルメイメージはできていたり。
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