アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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閑話 オレの時が動き出した時 ②

 

〔Side.レオン〕

 

「いつつ……」

 

 体が痛えぇ――って、あれ? オレ、生きてる?

 服は汚れているし、膝もすりむいているけど、五体満足だ。

 

 確かに馬の蹄が迫ってきて、横から衝撃が……横から?

 え? どういうこと?

 

「――は早く馬車をどけるんだ!」

 

「あぁ……なんてこと」

 

「誰か! 高位の回復薬は持ってないのか!?」

 

 近くが騒がしい。

 ものすごく嫌な予感がして、でも、オレは振り向いた。声がする方に振り向いちまった。

 

 横倒しに馬車が倒れている。

 それだけなら、ただの事故かってなる。問題なのは、

 

 

 

 その下にいっぱい頭から血が出ている、さっきまで一緒にいた見習い聖女の少女――ステラ様が倒れていることだ。

 

 

 

「あ、ああ…………」

 

 まるで、心臓を鷲掴みされたかと錯覚するほどだった。

 誰だって分かる。もう、分かった。

 

 

 オレのせいでステラ様が死にかけていると。

 

 

「ステラ様、ステラ様ステラ様ステラさまぁ……」

 

 四つん這いのまま近づく。

 大人の男たちが何とか馬車をどかそうとしてる。周りの人たちが駆けまわってる。顔を青くさせている女の人や老人がいる。

 

 全部、オレのせいだ。

 

 オレが孤児院に戻らなかったから。

 オレがステラ様の言う通りにしなかったから。

 オレが何も考えずに飛び出したから。

 

「……ごめんなさい」

 

 涙がこぼれて地面に染み込んでいく。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ご、ごめ、ごめんなざい。ごめん。ごめん。ごめん」

 

 ただ謝ることしかできない。

 他にオレができることなんて何もないから。

 

(なあ神様。オレみたいな奴が生きて、どうして父ちゃんや母ちゃん……ステラ様がこんな目にあうんだよ?)

 

 神様なんて何もしてくれなかった。

 父ちゃんと母ちゃんは全然悪いことなんてしていないのに死んじまった。あの2人が何をしたっていうんだ。

 だから、神様なんて大嫌いだ。

 

(でも……)

 

 もしも本当にいるなら、願いを聞き入れてくれるんなら――

 

「助けて」

 

 オレのせいなんだ。

 オレに出せるものなら何でも出すから。だから、

 

「神様ぁ、助けてください……」

 

 泣きながら懇願する。

 分かってる。こんなことしても奇跡なんて起こらないって。

 でも、それでも……!

 

 

――ビュオウッッッ!!

 

 

「わっ!?」

 

 突然だった。強風が吹いて、思わず目を閉じた。

 訳も分からないまま目を開けるともっと訳が分からないことになっていた。

 

 だって、馬車がぶっ飛んでいたんだから。

 

 その馬車の下敷きになっていたステラ様を見れば、見たことない白い――本当に白い女の人がいつの間にかいて、ステラ様に手をかざしていた。

 

 

 その光景は一生忘れることはできないだろう。

 

 

 白い女の人の手から出た光がステラ様を包み込んだと思ったら、まるで最初から無かったかのようにあったキズが塞がったんだ。心なしか顔色も良くなった気がする。

 

 そして……ステラ様が、目を開けた。

 

 生きている……

 周りの人たちもすぐ側で起こった奇跡に沸き立つ。

 

「あ、あの……」

 

 何とか声を絞り出す。

 

 ステラ様に謝らなくちゃ。「ごめんなさい」って。

 奇跡を起こした白い女の人(改めて近づいて見るとステラ様とそう変わらないぐらいの少女だった)にお礼を言わないと。

 

 でも、

 

 

「ユ、ユキナ様っ!?」

 

 

 ステラ様が悲痛な声をあげる。

 それもそのはずだ。だって、白い少女が突然鼻から血を流したかと思えば、前触れなく倒れたんだから。

 

 そっからはまた大騒ぎだ。

 教会の人たちも駆けつけて、ユキナって呼ばれてた少女が慎重に運ばれていく――って、ステラ様が行っちゃう!

 

「ステラ様!」

 

「え? ………………あ、レオンくん無事だったんですね!」

 

 あれ? 今の間は何?

 もしかしなくても、オレのことちょっと忘れてた?

 いやよそう。仕方ないことだ。だって間違いなくさっきまでオレはステラ様からしたら空気だったし。目覚めたら恩人が倒れるし。

 うん。深く考えるのはやめとこ。

 

「その、ごめんなさい。オレが……オレのせいで……本当に、ごめんなさい。バカで、ごめんなさい」

 

「……無事だったら、それでいいんですよ」

 

 ステラ様はオレの頭を優しく撫でる。

 それは父ちゃんや母ちゃんみたいな温かさで――

 

「まずは孤児院に戻りましょ? みんな心配しているはずです」

 

「……うん」

 

 さっきとは違う涙が溢れてきた。

 

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