アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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閑話 オレの時が動き出した時 ③

 

〔Side.レオン〕

 

 あのあと、孤児院に戻ったオレは当然と言えば当然だけど院長たちに「心配してたんだから」と怒られた。

 

 不思議だった。

 昨日までは何も感じなかったどころか不快に感じていたはずのその言葉が、本気でオレを心配して言っていることだと分かったから。

 

 その日の夜。

 オレは院長に大事な話があるからと時間を作ってもらい、夕方にあったステラ様との一件を包み隠さず全部話した。

 

 聞き終わった院長はしばらく頭を抱えていたけど、まっすぐオレの目を見てどうしたいと思っているのかと聞いてきたんだ。

 正直ビンタされるぐらいの覚悟で話していたから、逆に拍子抜けした。

 そのことを院長に言ったら、

 

「今回の件でまったく反省していないようなら、ビンタどころで済ませません。しかし、今のアナタにする必要があるとは思いません。少なくとも現在ステラ様は命に別状はなく、何よりも……本気で後悔して自分のことを責めているのは見れば分かります。ならば、これ以上私が何を言おうと意味などありません。そもそも、間接的な原因がレオンにあるだけで事故ですからね。アナタが謝り足りないと言うのであれば私も共に謝ってあげます」

 

 そう言って院長はオレの頭を撫でた。

 父ちゃんと母ちゃんと同じ、ステラ様と同じ温かさだった。

 何でオレはこんな近くにある温かさに気付けなかったんんだろ?

 

 いつの間にか院長に抱きついて泣いていた。

 たくさん「ごめん」って言った。

 その夜の話し合いは、院長が教会に出向いてオレがもう1度しっかり謝りたいと考えていることを伝えるという約束をして終わった。

 

 

「……明日からはもっとみんなと向き合おう」

 

 

 布団の中で決意する。

 きっと大丈夫。今なら向き合えるはず。

 「おはよう」って言って、お互いのこと話し合えばいいだけなんだ。

 

 黒い感情はもう無い。

 ステラ様と院長の優しさと、あのユキナって少女の温かな光で綺麗さっぱり消えちゃったのかも。

 そんなバカなこと考えて、意識は沈んでいった。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 翌日の夕方。

 今まで禄に挨拶もしてなかった孤児院のみんなと話合うことができたことを噛みしめていると、教会から帰って来た院長から願ったはずの――でも予想外の一言が。

 

「へ? ……今、なんて?」

 

「だからね、レオン。面会の許可が下りたのよ。ステラ様と、そのステラ様をお救いになられた白い少女との」

 

 奇跡を起こした白の少女。

 その噂は朝から聖都中に広まっていた。

 

 外出していた子が噂話を聞いてきたらしいけど、案の定どれが本当でどれがウソなのか分からないぐらい情報がゴチャゴチャだった。

 オレが知る限りで確実なのは、ステラ様と白い少女――ユキナという人が友達だろうってことぐらいだ。

 

 謝罪と感謝。この2つをあの2人に伝えたいとは確かに院長に言ったが、まさか昨日の今日で面会許可が下りるなんて……

 

「それで、いつ面会できるって?」

 

「明日よ」

 

 ………………は?

 

「……明日?」

 

「そうよ。早い方がいいからって、明日の昼に時間を空けてくださったの。例の白い少女もこれから忙しくなるみたいだから、明日を逃すといつになるか予想がつかないんですって」

 

「えー、マジかよ……」

 

 心の準備できてないんだけど?

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 大教会はでかかった。

 

「村の教会の何倍あるんだよ……」

 

 面会当日。院長に連れられて大教会までやって来たけど、その大きさに圧倒される。余計に緊張してきた。吐かないかなオレ?

 

 案内の人に連れられて大教会の廊下を歩く。

 もっとゴテゴテ装飾品やら絵画なんかがあるイメージだったけど、思ってたより質素だ。他の教会に見劣りしないぐらいには広いし装飾品の類もあるけど、それだけ。窓から差し込む光がステンドグラス場所がいくつかあって、むしろ探検したい気分になった。

 

「少々お待ちを」

 

 案内の人がある部屋の前で止まる。部屋には応接間と書かれていた。

 

(ここに、あの2人が)

 

 

――コンコン

 

 

「ステラ様。ユキナ様。お客様をお連れしました」

 

「入っていいですよ」

 

「失礼します。……さ、中へ」

 

 院長と部屋に入る。

 そこには大きなテーブルとソファーがあって、そのソファーに――会いたかった2人の少女が座っていた。

 

「お久しぶりですレオンくん。体調は如何ですか?」

 

 ステラ様が優しく微笑む。そして――

 

「ふ~ん、オマエがレオンくんか……」

 

 隣にいるのが……噂で持ちきりの白い少女、ユキナ様か。

 第一印象としては、やっぱり白い人だ。こんなに白い人は見たこともない。普通の人よりも肌は白いけど、病人のような青白さでもない。慎重に触れないと壊れてしまいそうな、そんな儚げな白さだった。

 でも、その目は力強く感じた。

 肌も髪もまつ毛だって白いのに、目だけは赤い。そんな赤い目でオレのことを興味深めに見ている。

 

 ステラ様からオレのこと、どう聞いたんだろ?

 

 そこからは想像していた通りの進み方だ。

 オレと院長はソファーに座って自己紹介。院長の名前が“クレア”だって何気に初めて知った。

 その時ユキナ様が小声で「クレアおばさん……シチューとか得意そうだな」って言ってたけど、最後まで意味は分からなかった。

 

 自己紹介が終われば本来の目的である謝罪と感謝になる。

 オレと一緒に院長も頭を下げてくれた。

 

 ステラ様は「もういいんですよ」と逆に困った感じになって、ユキナ様は「気にすんな」と本当に気にしていなさそうだった。

 

 あとは事故後の話になった。

 すっかり忘れていたけど、オレのせいで横転したりユキナ様にぶっ飛ばされた(【風系魔法】を付与した脚で蹴り上げたらしい)馬車は無事に公園の木の上から降ろされたみたい。

 院長が賠償金などどうなっているのか聞いた時、オレよりもユキナ様が気にしているみたいだった。汗がすごく出ている。

 

 結局のところ、馬車の修理代と持ち主への補償代は大教会の支払いになったみたいだ。

 大教会での話し合いでステラ様が庇った孤児――つまりオレの扱いも話し合われたそうだけど、ステラ様とユキナ様の2人が揃って「子供に責任取らせるつもりなのか!?」と怒ってくれたことでお咎めなしの方向になったそうだ。

 いろいろ覚悟もしていたのに……本当、この2人には頭が上がらない。一生2人に脚を向けて寝られないな。

 

 そうして話すことも終わって帰ろうとしたら、

 

「ちょっとレオンくんと2人きりで話させてくんない?」

 

 そう、ユキナ様が提案してきた。

 

 訳が分からなかったけど、断ったらダメなように思えて院長にお願いした。

 ステラ様もオレがいいならって、院長と一緒に部屋から出ていく。廊下で待っているから終わったら呼んでくれって言っていた。

 

「「………………」」

 

 どっちも無言のままだ。

 ユキナ様はオレのことジ~と穴があきそうなほど見ている。

 

 き、気まずい……!

 ユキナ様、オレに何の用なんだよ?

 

「……なあ、レオンくんはさ?」

 

「は、はい! なんですか……?」

 

「これから、どうしたいって考えてる?」

 

「え?」

 

 これから?

 

「レオンくんのことは大まかに聞いてるけどさ、ご両親が亡くなられてからキミの時間は止まっちゃって、でもステラとの一件があって動き出そうとしているみたいに思えたから。せっかくだし、関係者がいない中で他人同士話し合おうかなーって。で、実際のとこどうなの?」

 

「それ、は」

 

 この人、もしかして想像してたよりすごい人なのか? あくまで予想として話しているみたいだけど、思いっきり当たっている。

 

「ユキナ様は……」

 

「ん?」

 

「ユキナ様は、神様のことを信じますか? 祈れば願いを聞き届けてくれるって、普段もオレらのことを見守っていると思いますか?」

 

 神様は父ちゃんと母ちゃんを助けてくれなかった。

 でもあの日、オレは神様に願った。ステラ様を助けてくださいって。そして、ユキナ様が現れて奇跡を起こしてくれた。

 

 だから、そんなユキナ様に――

 

 

「アホんだら。んなわけねーだろ」

 

 

 ――聞きた……え?

 

「神ってのは現実にいるだろうさ。けどな、ただそれだけだよ基本。誰でも彼でも見守ったり願いなんか聞き届けるなんて、体がいくつかあっても足りないっての。世界中にどれだけ人がいると思ってんだ。もしも本当にそうで、神の世界にも労働基準法があったら間違いなくブラックだな。過労死すんぞ? 神なのに」

 

 え? あの、ユキナ様……?

 

「私が信じるのは私自身と私が信じると決めた人だけ。祈ってる暇があったらその間に自分ができる最良の行動をする。普段から見守ってるか? 冗談じゃない。人の私生活まで見ていたら変態だぞ。プライバシーの侵害だ。神だろうと訴えてやる」

 

「その、いいの? そんなこと言って? ここ大教会なんだけど……?」

 

 本当に部屋に誰もいないのか確認しちゃう。

 だって今の発言はちょっとどころじゃなくヤバイ気が……

 

「まあ実際の話、ムカつく神が1柱いるんで暇さえあれば『タンスの角に小指ぶつけろ』って祈りの言葉を届けているけども」

 

「それ祈りじゃなくて呪いの言葉!!」

 

 罰当たりだよ!

 

「ここまで聞いてどう思った?」

 

「ユキナ様は聖国では猫被った方がいいかもしれない」

 

 信徒や教会関係者が聞いたらどうなるか想像するだけで怖い。

 

「だろうな。だから2人っきりにしてもらったんだ」

 

「あ。それは……」

 

「レオン」

 

 ズイっと、ユキナ様が顔を近づける。

 

「オマエ自身を信じろ。オマエの足で未来を進め」

 

「――っ!?」

 

「口が裂けてもご両親を失った悲しみが分かるなんて言わないけど、そんなに好きだったならご両親が安心できるように生きろ。下を向かずに前を向け。オマエの人生だ。オマエ自身が決めていいんだ。神に対して疑問持つくらいなら一旦神なんざ忘れろ」

 

 ユキナ様はオレの頭に手を置いてワシャワシャと撫でまわす。ちょっと乱暴なそれは、父ちゃんの撫で方に似ていて、すごく温かかった。

 

「難しいことは考えずに“今”を一生懸命生きてみろ。そしたら難しく考えてた自分がバカみたいに思える日も来るから……私みたいにね」

 

「はい!」

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 あれから院長たちがしている孤児院の仕事をたくさん手伝うことにした。

 力仕事もあって大変だけど難しいこと考える暇なんてなくて、その間に孤児院の子たちとも仲良くなった。

 

 ちゃんと向き合っていれば分かることもあったんだ。

 最初の頃オレに話しかけてきた年下の子が親子の姿を見ると寂しそうにしていたことも、同い年の子が孤児院に来たばかりの頃は「何で私のこと置いていったの?」と毎日のように泣いていたことも、今になって知った。

 

 ユキナ様は聖女になったり、除霊大戦で活躍したり、果ては空飛ぶオークと激闘を繰り広げて聖都を救ったりと大忙しだった。

 

 うん。難しいこと考える暇なんてないや。

 

 今でもハッキリ覚えてる。ユキナ様が言った「神様じゃなくて自分を信じろ」って言葉。アレって神様任せにするなって意味以外にも、もっと自分に自信を持てって意味もあったんだよね。

 

(父ちゃん。母ちゃん。まだ寂しいし、完全に吹っ切れた訳じゃないけどさ、心配かけないです済むよう必死で“今”を生きてみるよ)

 

 次の手伝いの為に急ぎ足で目的地に向かう。

 その足はすごく軽かった。

 




~その頃の雪菜~

雪菜(;゜д゜)「そういやレオンくん元気にしてるかな? 柄にもなく人生相談の真似事しちゃって、思ったことそのまま言ったり、それっぽいことを良い話風に聞かせたけど、元気だよね? 大丈夫だよね? 何であとで気になることを未来に丸投げしたんだ過去の私!?」


 レオンくんの話が思ったよりも長くなってしまいましたが、ひとまず納得できる終わり方になって良かったです。
 物語にあんまり関わっていないからこそ、深く書きたい時ってありますよね?

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