アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~   作:影薄燕

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SS 雪菜から来た手紙

 

 それは雪菜がレーヴァテイン王国を旅立って数ヶ月後、そろそろ寒い季節も過ぎ去ろうとしている頃のことだった。

 

「お届け物でーす! 誰かいませんかー?」

 

「は~~~い! 今いっきまーす!」

 

 外から聞えてきた声にいち早く反応したのは、母親の手伝いをしていたリリィ。

 トタトタと玄関まで小走りで向かい、背伸びしながらドアを開ける。そこには少し寒そうな様子の青年が中身が詰まっていることが分かるカバンを肩に引っかけていた。当然、リリィのエンジェルスマイルにやられてニッコリだ。

 

「こんにちはー。お届け物って誰にですか?」

 

「えーっと、リリィさんって人宛ですね」

 

「え! 私!?」

 

 自分宛の届け物だと知ってリリィは驚く。

 

 リリィはまだ10歳であり、わざわざ郵便機関を通して届け物をする人は限られている。最近ではクラリスのような王族とも知り合ったことで手紙が届けられる場合もあるが、そういう時は大抵が信用のできる使いの人が直接手渡してくるのだ。

 

 なら、その届け物の送り主は……

 

「は、早く! 早くください!」

 

「はいはい。じゃあここにサインしてくれるかい?」

 

「分かった!」

 

 無事に届け物が届けられたことを証明するための紙に渡されたペンで“リリィ”と書く。そうして渡されたのは1通の手紙。

 それを大事そうに持って笑顔で家の中に戻っていく幼い女の子の後ろ姿にホッコリしながら、次の配達先に向かう青年であった。

 

 

 

 家の中へと戻ったリリィは早速手紙を確認し、その裏に書かれている名前を見て満面の笑顔で小躍りした。

 

「あらリリィ、どうしたのそんな嬉しそうに?」

 

「お母さん! ユキナお姉さんからの手紙だよ!」

 

「まあ!」

 

 リリィの母親――リサは料理の手を止めて娘と一緒にテーブルについた。そして手紙を開き、読み始める。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 拝啓、リリィ。

 

 リリィは元気にしている? カイルさんやリサさんの言うこと、ちゃんと聞いている? 風邪ひかないように身体には気を付けている?

 

 私? 私は……から元気さ!

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ユキナお姉さん元気だって! 良かった~」

 

「え、えぇ……そうね。元気では(・・)あるみたいね」

 

 リリィは手紙が嬉しく気付いていなかったが、リサは今もリリィのことを大事に思ってくれている白い少女に感謝すると同時に、文章の“から元気さ!”の部分からヤケクソ気味が少々出ているようで口元が引きつっていた。

 

(やっぱり新聞に載っていた聖国の新しい聖女様ってユキナちゃんのことの気がしてきたわ……。トラブルに巻き込まれて、がむしゃらに走り回ったら聖女になっていたとかありえそうだもの)

 

 リリィはまだ子供なので多くの人たちに読まれる“世界新聞”にもまだ興味を示していない。そのため、今回発行されたばかりの新聞にあった聖国の記事の内容も知らないのだ。リサは「もしかして」と思い夫であるカイルと話したが、リリィから聞かれない限りは黙っていようという結論になっている。

 

「続き読むねー」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 さて、私がトリストエリア聖国に来てからそこそこ経ちました。

 

 こっちは1年を通して暖かいので寒さとは無縁です。

 

 一応季節で言えば冬に突入したので、暖かいのと寒いのが衝突して丁度いい気温で過ごせていま――訂正。今だけは夏かと思うぐらい暑いっす。

 

 人々の熱気のむさ苦しさ舐めてたわ。

 思い出しただけで暑くなってきた。

 

 リリィも人の熱気には気をつけてね。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「へ~。こっちはまだ寒いのにユキナお姉さんの方はずっと暖かいんだって。不思議だねお母さん」

 

「そうね。不思議ね。どうして途中で訂正しだしたのかしら?」

 

 “人々の熱気のむさ苦しさ”というのが関係していそうではあったが、詳しく書かれていないので考えるのをやめたリサであった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 話を戻すね

 

 こっちでは暖かい気候の影響で南国風の美味しい果物の栽培が盛んで、私もお店を巡っては新たな味との出会いを求めています。

 

 【アイテムボックス】にかなりの数を買い込んでは仕舞ったので、王国に帰ったらリリィやみんなにも食べさせることができるよ

 次会った時は楽しみにしてね。

 

 ちなみに、私の一押しは甘い果物をワイルドに潰して飲み物にしたモノ! 100%フルーツジュースはキンキンに冷やすともう最高!

 

 屋台によって取り扱っている果物や味が変わったりするから、フルーツジュースを片手に聖国を見て回るのが日課になっているんだ。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「フルーツジュースかー。いいなー。ユキナお姉さん、旅行、楽しんでいるみたいで良かった。それに……私も楽しみだなぁ」

 

「お土産が?」

 

「違うよー。そっちも楽しみだけど、やっぱりユキナお姉さんと一緒にいたいから。帰ってきたらね? また膝の上に乗せてもらって、どんなことしてきたのか話してもらうんだ」

 

「……そう。きっとしてくれるわ」

 

 雪菜は冒険者だ。

 王国にいた際は冒険者のランクを上げるため、様々な依頼を受けてきた。その度に家に戻ってはリリィを膝に乗せてどんな依頼を達成したかを聞かせた。

 長い話だとそのまま眠ってしまうこともあったが、雪菜は無理に起こさず頭を優しく撫でながら、自然に目を覚ますのを待ってあげていた。

 

 その光景が母親として、本当に嬉しく思えた。

 いっそ本当に姉妹に――家族になれれば、どれだけ自分の娘が幸せに成長するのだろうと考えたことも1度や2度じゃない。

 

「え~っと続きは……んん?」

 

「どうかしたリリィ?」

 

「あのね。お母さん、これ……」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 あ、ゴメン。2度目の訂正。

 日課になっていた(・・・・・)、だ。

 

 ここ最近まともに外にも出歩けていないんだよ。

 出歩いた日には目も当てられない状況に陥るから。

 

 ねえ、リリィ? 手紙だけどさ、ちょっと聞いてい~い?

 

 私が何したっていうのさ? こっちに来てから普通に観光していたはずなのに、あれよあれよという間に気付けばこんな状況。

 どうしてこうなった?と、何度も自問自答。

 

 いや、原因は分かっているんだよ。

 私が選んだ選択の結果だし、後悔もしていないんだ。過去に戻れたとしても同じようにする自信があるし。

 ただね~やっぱ誰かに愚痴を言いたいというか、慰めてほしいんだよ。例え手紙だとしても。リリィのエンジェルスマイル&励ましなら、時空を超えて私に届く気がするんだ。

 

 というわけで、私を励ましてリリィ!!

 さあカモン!

 

              ――2枚目に続く。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「……何というか、ユキナさんらしい手紙ね。」

 

 普通の手紙では絶対に書かないようなことが書かれている辺り、数ヶ月経ってもあの少女は変わらないのだと謎の安心感を覚えたリサ。

 

 一方のリリィはというと、

 

「ユキナお姉さん! 離れていても私はユキナお姉さんのことが大好きだよ! めげないで! がんばって!!」

 

 素直に手紙の通り、満面の笑み(ユキナ曰くエンジェルスマイル)でここにはいない雪菜にエールを送るリリィ。

 

 娘の素直さに思わず頭を撫でてしまう。リリィも一瞬キョトンとしたあと、リサに笑いかけ、2枚目の手紙を読み始めた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

――1枚目からの続き。

 

 ありがとうリリィ。

 エンジェルスマイルと励ましのコンボで元気100倍だよ!

 私もリリィが大好きさ!

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「えへへ。ユキナお姉さん元気出たって」

 

「いえ、それよりも他に気にするところがあるでしょう! 何で手紙が返事するの! ユキナさんどれだけ規格外なの!?」

 

 リサ、当然のツッコミである。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 話は違うけど、もしもリリィ以外の人が一緒にこの手紙を読んでいる可能性も考えて書いておきます。

 

 「何で手紙が返事するの!」とツッコんだそこのアナタ、

 残念ながらアナタにはツッコミの才能が無いでしょう。

 

 じゃあねリリィ。

 また落ち着いた頃に手紙出すよ。

 クラリスの方にも似たような内容で手紙を出しているから、お互いに話の種にするのもありだ。

 

 

 追伸、

 新しい友達ができました。1つ年下の見習い聖女の子です。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 「ユキナお姉さん、お友達増えたんだ。せっかくだし、今度お城に行ったら王女様ともまたお話しよ。楽しみだな~」

 

 リリィは早くその日が来てほしいと、雪菜の新しい友達にも会ってみたいと、心を躍らせていた。そして、その気持ちを表すかのようにテーブルの下にある足はリズミカルに揺れている。

 

 そんな中、リサは手紙の中で“ツッコミの才能が無い”と言われ(書かれ?)、何ともいえないブルーな気持ちになっていた。

 

 雪菜からすればちょっとしたイタズラなので、深く考えず強く生きてほしい。考えるだけ時間の無駄である。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

――同日。

 

「はあぁ……」

 

「あらエリザ、どうしたのため息なんかついて?」

 

「ニコラか。いや、ちょっとな」

 

「辛気くさいわね。何かあったのなら相談に乗るわよ? 1人で悩んでいても仕方ないんだし、話して楽になりなさいって」

 

「すまないな。……実は、先程クラリス様宛にユキナ殿から手紙が来てな」

 

「あら、王女様も嬉しかったでしょ。でもそれが何?」

 

「……ツッコミの才能が無い、と言われてしまったのだ」

 

「意味が分からないわ」

 

 




~あとがき劇場~

剣二(;゜д゜)「いやいやいや。手紙が返事するとか、軽くホラーだろ。人によってはドン引きだぞ?」

雪菜(´・ω・)「失礼な。ユーモア溢れると言いたまえ」

剣二(;゜д゜)「てか、何で相手の反応が分かるんだよ?」

雪菜(´∀`)「友ぅ情ぅ~~~ぷぅわぁ~~~!の力だよ♪」

剣二(#゜Д゜)「便利な言葉だなぁおいっ!?」

ステラ(;><)「私もユキナ様との友情パワーがほしいですぅ!」

剣二(;゜Д゜)!「何でこのコーナーに割り込んでるのこの子!?」

雪菜(´∀`*)「友情パワーの力さ!」
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