クランクとの決闘に勝利した夜。
クランクの身柄はCGS改め鉄華団が預かることになり、与えられた一室にてレオンは今回の襲撃に関して話を伺っていた。
「それであの襲撃はギャラルホルン全体の意志ではないと?」
「ああ。確かにクーデリア・藍那・バーンスタインの影響力は危険視されていたが、あの襲撃は火星支部司令官のコーラル・コンラッドの思惑が大きいだろう」
「確かに、一民間組織相手にMWだけでなくMSを三機まで使うほどだしな」
そもそもギャラルホルンのような巨大組織が一人の少女にあそこまで過敏になるのか。
「………コーラルとクーデリアには接点はないんだよな?」
「それはない。そもそも彼女が火星支部を訪れたことは一度もない」
「となると………コーラルは誰かからクーデリアを始末するように言われた可能性が高いか」
「それが高いだろうな」
「そうか、色々とありがとう。それで……今後のことについてだ」
襲撃のことについて大体聞けたため、レオンは話を切り替える。
「鉄華団はクーデリアから護衛の依頼を受けて地球に向かう。その間、あんたにはこの火星で残る奴らの面倒を見てもらいたい」
「何?先ほどまで敵だった俺が?」
「ああ。あんたはここにいた大人とは違う。子供を大切にするあんただからこそ、ここに残る奴らを守ってほしいんです」
「……………わかった。この命を賭して、子供たちを守ろう」
クランクの顔からは確固たる意志が見え、レオンは胸をなでおろす。
「あ、ついでに勉強とかの面倒もお願いします。銃を持たなくてもいいように」
「わかった。しっかりと俺が知る限りのことを教えよう」
「それじゃあもうしばらくはこの部屋で大人しくしててくれ」
「安心しろ。もう君達と戦うことなどしない」
部屋を出て一応配置された見張りの子供に後を頼み、整備工場へと向かうことにした。
「おやっさん!調子はどうだ?」
「まあ、ぼちぼちと言ったところだ」
整備工場でバルバトスとクランクが乗っていたグレイズをメインに整備がを進めていた。
「宇宙でも動けそうか?」
「正直動けるか保証できねえぞ。そもそも俺はMW専門なんだぞ?MSに関してはお前のほうがわかるだろ?」
「俺も手伝いたいのは山々なんだけど、色々としないといけないことがあるからさ」
子供たちの訓練にデクスターと事務処理といったこともしないといけないので、中々手伝うことができないのだ。
「けど、いいのか?お前の機体は整備しとかなくて?」
「大丈夫。決闘の後に一人でしたから」
お陰で徹夜のため若干眠そうにしていた。
「あんま無理すんなよ。これからって時なんだろ?」
「そう……だな、少し仮眠をとることにするよ。オルガが来たら倉庫で寝てるって伝えといて」
欠伸を抑えながらレオンは自室でもあった倉庫に向かう。
そして、倉庫内で仮眠が取れるスペースを作り、壁を背もたれ代わりにして眠り始める。
「教官……起きてください教官」
「んあ?びす、けっと……か?」
大きな欠伸をしながら体を伸ばし、倉庫に来たビスケットを見る。
「ふぁ~会議は終わったのか?」
「ええ。大まかなところは、ただ………」
「不安要素があるということか?」
「はい……。オルガもこっちに来ます」
「そうか。ならどこまで決まったのか教えてくれ」
会議ではまず低軌道ステーションに上がり、案内役の船を待つ。
その後、静止軌道上にある宇宙船に乗り換えて地球へ向かう。
とはいえ通常のルートはギャラルホルンがおさえているため、裏ルートを持つ案内役に地球まで案内してもらう。
ここで問題なのはその案内役だ。
オルクス商会というところに案内してもらうのだが、このオルクス商会をトドが紹介したというのが不安の一つ。
わざわざ鉄華団に残った大人だが、何やらよからぬことを企んでいるのは普段の行いでわかる。
とはいえ、いまの鉄華団には地球までの案内役の伝手はないため、仕方なくトドに仲介してオルクス商会に案内を依頼することになった。
「ビスケット、教官起きてるか?」
「あ、オルガ」
「起きてるよ」
そこへオルガも倉庫にやってきた。
「ビスケットから大体は聞いたよ」
「そうか。それで教官はどう思う?」
どう思うというのはトドに対してか、トドが紹介したオルクス商会か。
「とりあえずトドとオルクス商会は信用しないほうがいいな」
「やっぱり教官もそう思うか」
壱番組の頃から信用がないトド。
そのトドと付き合いのあるオルクス商会。
正直信用しろと言われても難しい。
「トドの奴は俺達を売るつもりだろうが、トドの奴も切り捨てられるかもしれないな」
「それはどういうことだよ?」
「簡単な話だ。オルクス商会がわざわざトドと組むより、もっといい奴がいるだろ?」
レオンの言葉の意味を理解できたのか、二人は顔を会わせる。
「ギャラルホルンか」
おそらくトドはオルクス商会と共謀してクーデリアをギャラルホルンに売りつけるつもりのはずだ。
だが、オルクス商会はトドを出し抜いてクーデリアをギャラルホルンに売りつけて、自分達だけでいい思いをするつもりのはずだ。
「確かにその可能性は高いね」
「とはいってもこれは憶測にすぎないけど、何らかの備えはしたほうがいいな」
「だな。もし向こうがこっちを売るつもりなら、痛い目を見てもらうだけだ」
悪い笑みを浮かべるオルガにつられて、レオンも悪い笑みを浮かべる。
「それとレオンさん、あのギャラルホルンの士官だけど」
「クランクのことか。そのことで相談がある」
レオンは自分達が地球に言っている間、火星に残る団員達をクランクに任せたいことを伝える。
「そのおっさんは本当に信用できるのか?」
「信用できるよ。まあ、方法はともかく子供のことは考えてくれる人だ。壱番組の奴等とは全然違うから」
「どうする、オルガ?」
どうすべきか目を閉じてオルガは思案する。
「…………わかった。教官の言葉を信じてあのおっさんに残る奴らのことを任せることにする。けど、もし残る奴らに何かあれば」
「その時は俺がけじめをつける」
まっすぐにオルガを見据えて告げる。
「なら俺からはこれ以上は何も言わねえよ。だけど、ユージンとかの説得は教官がしてくれよ」
「あ~それは………」
確かにユージンならこの提案を否定しそうで、レオンはどう説得すべきか頭を悩ます。
「そのあたりは後にしよう。今はこれからのことを考えないと」
「そうだな」
「ああ、あまり時間はないしな」
三人は倉庫内でブリーフィングをひそかに行うのであった。