どうにかギャラルホルンの待ち伏せを乗り切った鉄華団。
追撃がないか注意深く警戒しながら、あてもなく移動していた。
そんな中、艦橋では今後事についての会議が行われていた。
「これからどうするかだけど」
「オルクスが駄目だったんだから、別の案内役を探さねえとな」
「やはり、どうしても案内役は必要なのですか?」
「そりゃあ当然だぜ。無事に地球にたどり着きたかったらな」
クーデリアの質問にユージンは答えるも、鉄華団には別の案内役の伝手がない。
「ここまでギャラルホルンとこじれてしまった以上、ただの案内役じゃだめだ」
「そうだな。ギャラルホルンでも迂闊に手を出せないところじゃないと。それで、当てがあるのか、オルガ?」
「ああ。………テイワズだ」
“テイワズ”
木星圏を拠点とする複合企業。
その実態はマフィアだと噂されている。
「確かに。テイワズの影響力ならギャラルホルンも迂闊に手を出せないし、後ろ盾としても問題ないけど」
「けど、どうやってテイワズと話しつけるんだ?」
「そうだぜ。あのテイワズが、俺らみたいなガキの後ろ盾にすっかりなってくれるか?」
シノとユージンの不安はもっともだ。
テイワズのような大きな組織が、鉄華団のような子供ばかりの小さな組織の後ろ盾になってくれるか。
「どっちにしろこのままじゃ地球には行けねえし、火星にも戻ることは出来ねえ。だったら木星に向かう以外ねえんだ」
「そうだな。いざとなったら俺の機体を交渉のカードに使えばいい」
「はぁ?何で教官の機体を交渉のカードになるんだよ?」
「俺の機体の動力源だが、実は融合炉で核で動いてるんだ」
「「「はぁぁぁぁぁ!?」」」
ビスケット、シノ、ユージンの驚愕の声が艦橋に響き、レオンは思わず耳を抑えていた。
「あの、どういうこと何でしょうか?」
「MSやこの船の動力は基本的にエイハブ・リアクターによって動いているんです。けど、エイハブ・リアクターの製造技術はギャラルホルンが独占しているんです」
「だからこそ俺の機体は交渉に使える。あの機体を解析すれば」
「テイワズはエイハブ・リアクターに頼らない独自のMSを量産できるかもしれない」
といってもそんな簡単に上手くいくかはわからないし、色々と問題はある。
「そういうことだ。流石ビスケット」
「けどいいんですか?あの機体って大切な物じゃないんですか?」
「確かに思い入れのある機体だ。けど、今が大切な時にそんなことでケチるわけにはいかないんだ」
「だけど、あの機体渡したらどう戦うんだよ?」
ユージンの疑問は最もだ。
「そん時は前の戦いで鹵獲したグレイズのカスタム機を使うよ」
機体の状態を確認したが、頭部は何度も殴ったが目立った損傷はなかった。
あとは引きはがしたコックピット部を修理すれば使うことは出来る。
「兎にも角にも今は出来ることをやるしかない。だろ、オルガ?」
「そうだな。どうやって渡りをつけるにしても、今は出来ることをやるしかねえ」
「ぜってえ無理だろ」
楽観的なオルガとレオンに対し、ユージンは悲観的に呟いてビスケットもシノも悲観的な顔をしていた。
「すげえ!どうやったんだ?」
オペレーターを務めるチャドの声に、皆は声をあげたチャドに注目する。
「どうした?」
「火星にいる連中とどうにか連絡をとろうとしてたら、この人が簡単に繋げてくれたんだ」
「フミタン?」
「ギャラルホルンが管理しているアリアドネを利用したんです」
クーデリアのメイドある“フミタン・アドモス”が皆に説明する。
「アリアドネを?」
「それってどういうことだ?」
「アリアドネはレーダーが機能しないエイハブウェーブの影響下でも、船に正しい航路を示す道標です。それを構成するコクーンを中継ポイントとして利用する事で、長距離の通信が可能になります」
「そんなことすりゃギャラルホルンにバレるじゃねえの?」
「通信は暗号化されているので、まず問題はないかと」
まさかの技術を持つフミタンに皆は驚いていた。
「差し支えなければ、これからもお手伝いしましょうか?お嬢様と皆様がよろしければ?」
「え?ええ、もちろんですが……」
クーデリアは問題ないがオルガ達はどうなのか、視線をオルガへ向ける。
「こっちも問題はない。通信オペレーターとして、ぜひ頼むぜ」
「承知しました」
こうしてフミタンが通信オペレーターを勤まることが決まった中、レオンは何も言わずにフミタンを見るのであった。
「はい、撃墜っと」
「っづあ!また負けた……」
「けど、昭弘はいい線言ってると思うぞ」
艦橋での会議の後、レオンは昭弘にシミュレータでMSの訓練に付き合っていた。
「そうっすか。結構教官にやられてるんですけど」
「それでも少しずつ成長している。大体、すぐに強くなるわけはないよ」
昭弘はCGS時代でも三日月に劣らずの実力を持っている。
それにイサリビにはオルガが手土産として用意していたグレイズがある。
レオンとしてはそのグレイズに昭弘を乗せ、イサリビの直掩についてもらいたい。
そのために昭弘にシミュレータで訓練を行っていた。
といっても昭弘自身も訓練に付き合ってもらいたかったらしい。
「………俺だってさ、今みたいに強かったわけじゃないさ」
「教官が?」
「何だ?俺が昔から強かった思ってるのか?」
「いや、その……思ってました」
「俺だって昭弘みたいに何度も訓練したよ」
一年戦争当時、連邦軍にMSが開発されてからは否が応でも強くならなければならなかった。
そのために何度も訓練を繰り返した。
そのお陰であの戦争をどうにかこうにか生き延びた。
そのかわり周りでは戦友が呆気なく墜とされ、何度辛い思いをしたか。
「まあ、テイワズと上手く話がつけたら阿頼耶識に対応した機体を探したほうがいいかもな」
「上手くいくんですか?」
「わからん」
「わからんって……」
「わからないものはわからないとしか言えないよ。というか……」
「なんすか?」
「いや、昭弘がそういう考えているのがね」
「それってどういう意味っすか?」
何分昭弘は普段からのトレーニングで鍛えられたいい体をしている。
そのため周りからもガチムチと評されている。
だから、今みたいに考えたりする印象がなかったのだ。
「まあ、話は置いといて訓練を再開するぞ」
「うっす」
話を切り上げ、レオンは昭弘の訓練を再開するのであった。
「あれ、確か……フミタンさんでしたっけ?」
「そうです。貴方はレオン・フォークス様でしたか?」
「ああ、あってるよ」
昭弘との訓練を終えたレオンは休憩のために食堂に向かっていた。
その道中にフミタンを見つけて声をかけたのである。
「フミタンさん、一つ聞きたいことがあるけどいいかな?」
「構いません」
「なら、艦橋での通信技術って何処で習ったの?」
問いかけられたフミタンは鋭い眼を細くしてこちらを見る。
「あ~答えにくいなら答えなくていいよ」
空気がピリピリする感じがして即座に話を切り上げる。
「そっちにも何か事情があるかもしれないのに、ずかずかと聞いて悪かった」
「気にしないでください。……貴方も事情があるのですか?」
「まあ、人は誰でも言えない事情を抱えてますからね」
レオンに関しては与太話ととらえられそうな事情だが。
なにせ「実は別世界の人間です」って言っても信じてもらえるとは思えない。
まあ、量産型νガンダムの存在を強く出せば信じてもらえるかもしれないが。
「とにかく、これからは色々とお世話になるかもしれないけど、よろしくな」
「ええ。こちらこそよろしくお願いします」
そうしてフミタンと別れて食堂に向かうのであった。