1.連邦生徒会防衛室長
「連邦生徒会辞めたい」
「いきなり何言ってるんですか?」
連邦生徒会の一室。防衛室のとある部屋での一言である。
会話主は連邦生徒会の防衛室長である不知火カヤ。ここキヴォトスの治安維持を司る者である。
そんな彼女は遠くを見るような目で天井を見ている。
「だって次長。これだけ書類を片しているのに次から次へと書類が回ってくるんですよ?見てくださいよこれ、書類のタワーだけで座っているとはいえ私の身長追い越してるんですよ?この大量の書類に目を通す私の身も考えてくださいよ」
自らの前に並べられた書類を叩きながら対面に控えている少女に話しかける。
対する少女は半目で机に寝そべるカヤを見下ろす。
「室長、そちらの書類は大方私の方で確認いたしました。後は室長のサインと印鑑のみです」
「そうなのですか?それにしても書類が多すぎません?ここ2時間コーヒー我慢してサインとハンコ押し続けてるんですが全然終わらなさそうなんですけど」
カヤの抗議の声に対し、次長の目つきがさらに細くなる。寒気を覚えたのは気のせいだろうか。
「…それはどこかの誰かさんが各学区に囚人引き渡しで訪問した際に変な約束事取り付けてきたからではないでしょうか? その誰かさんは私にメモ紙で『ゲヘナ風紀委員と合同演習予定したから書類関係の用意を早急にお願いします』と書き置きしておいたような…。よりによって定時前に渡してきて、せっかく書類作業が珍しく定時前に終わったと思ったのに私はそこから3時間残業して書類作成したんですよ!」
「……ああ、そういえば次長、この間いいコーヒー豆を手に入れたのです。書類作業でお疲れですし一息つきませんか?」
そそくさと席を立ち部屋の隅にあるコーヒーメーカーに移動しようとするも、素早く次長が立ち塞がる。周囲の気温はますます冷え込んでいる気がするのにカヤには何故か背中の汗が止まらなくなっていた。
「話を逸らさないでください。というかあなた最初に『書類に目を通す私の身を考えてください』と言いましたよね?なんで目を通してる筈なのに把握してないんですか」
「あっといけない、そろそろミレニアムサイエンススクールの新型兵装発表会に行かなければ」
「ちょっと待ってくださいそれ初耳なんですけどというかこの書類どうするんですかいやまだ話は終わってません!待って止まれ!」
「フンッッッ」
「ぐわぁあああぁあああ!!」
不知火カヤは強引に話を打ち切り慌ててドアの前に立ち塞がった防衛室次長を体当たりで跳ね飛ばす。ぶつかった次長は勢いよく廊下に吹き飛ばされぐるんと2回転して頭を床に、背中を壁にぶつけた状態で停止する。
そのまま早足で待たせてあるヘリポートに向かうカヤの背後からは『せめてこれ以上変な約束事取り付けないでくださぁい』と悲鳴にも近い声が聞こえたような気がするが、木霊だろうか?木霊です。
ルンルン顔でミレニアムへ向かおうとする不知火カヤの携帯に着信音が鳴る。連絡相手は『FOX1』。
『防衛室長』
「どうしましたFOX1」
『例の件に進展あり。ゲヘナ学区の〇〇地点の廃墟にて武器の受け渡しを確認した。人員も続々と集結しつつある。現時点で100はくだらないかと。現時点であればこちらで対処可能ですが、如何なさいます?』
ふと思い出す。そういえばとある伝でなにやら不穏な情報が流れてると聞いたのだった。肝心の情報源は温泉開発部が派手な発破をしていることにかかりきりなのにさらには別件で風紀委員が捜査していた対象が便利屋に襲撃されてその巻き添えを食らったとかで風紀委員会自体がキャパシティを超えてて対処できないと嘆いていた。
それを踏まえた合同演習という名の大捕物の予定だったが、ことは切迫しているようだ。
「であれば早めに潰すとしましょう。FOX1はそのまま監視の継続を。ブリーフィングと装備点検を兼ねて、4時間後の21:00に突入開始を。後は、例の子ウサギたちにも参加要請をお願いしますね」
頭の中で地図と突入をシュミレーションしていると、FOX1から躊躇いのある返事が返ってくる。
『お言葉ながらまだRABBITは結成して間もない部隊です。実戦投入は早いかと』
「いえ、問題ありません。何事にも初めては存在するのです。それに、初実戦が憧れの部隊との共同作戦なんて考え得る限り最高のシチュエーションではありませんか」
『……』
無言の返答にカヤは安心するように優しく声をかける。
「それに、万が一の場合は『私』がいます」
『!! 分かりました。命令通り待機します。FOX1 over』
通話が終わった後にカヤはため息を吐く。
「とりあえず連絡は入れとかなきゃな」
ひとりごとを呟きながらも装備の確認をする。愛用のオートマティック拳銃と予備マガジン3本、それと携帯カバーに入った写真。
その写真をしばらく眺めた後、拳銃を懐に入れ直してスマホを操作する。
電話の宛先には『リンちゃん♡』と書かれている。
しばらくすると電話がつながり、静かな声が聞こえる
『どうしました防衛室長』
「お忙しいところすみません首席行政官。突然ですが、21:00にゲヘナに集まってる武装組織を取り締まりに行くのでその報告の連絡です」
電話越しに深いため息と眼鏡をかけ直す音が聞こえる。
『いつものことながら前もって報告はできなかったのですか?』
「申し訳ございません、何分急を要する案件でしたので」
『わかりました。ではいつも通り報告書を回してください。』
「ええ勿論お任せください」
カヤは一瞬自身の机の上の惨状を思い起こし現実逃避に校舎の外の景色を見る。
そこには連邦生徒会施設内を慌ただしく動き回る連邦生徒会生徒と、連邦生徒会に抗議する一般生徒の姿。
そういえば、ヴァルキューレの装備更新の発議書の判子まだしてなかったな…
というか、カイザーから来た治安維持協定の提案書に関してはまだ見てすらいなかった気が…
(とりあえず次長に報告書作成とお詫びのブルーマウンテンでも購入しますか)
本人の知らないところで残業が確定した次長に脳内で謝りつつリンにその後ある程度の現状報告をしてカヤが電話を切ろうとすると
『いつもありがとう。それから、気をつけてくださいねカヤ』
と恥ずかしそうにリンが呟く。
それに対しカヤは微笑みながら返事をする。
「お任せください。私は連邦生徒会防衛室長なんですから」
電話を切り、向かうは屋上のヘリポート。
そこにはすでに稼働しているヘリコプターと、内部にはしっかりと武装を着込んだ生徒がいる。
それぞれ共通のタクティカルスーツに同じ覆面をして顔を隠しているが覆面からツノが生えたり獣耳が生えたりはたまた尻尾が生えていたりとイマイチ統率感がない。ただ一つ、上着の肩の部分のに刺繍されている山羊のマークとSRTの文字が全員に刻み込まれている。
「では参りましょうか」
カヤの号令で全員が座りながら背筋を伸ばす。
その光景を見ながらニヤリとカヤは笑う。
その笑顔は普段の微笑みとは違う。薄く開いた目に映る羊のような瞳孔に背筋を冷やす何かを感じる笑みを携えながら、カヤはつぶやいた。
「狩りの時間です」
気が向けば続く
今後のお好みのストーリー展開は?(あくまで参考)
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原作ルート路線(メインストリート追従)
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オリジナル路線(イベストみたいな感じ)