皆様はいかがお過ごしでしょうか。
アビドスはできる限りサラッと進行する予定です。
「なんとか到着しましたか」
安谷から先生が遭難中との報告を受けて数時間後、ようやく先生がアビドス高等学校に到着したとの連絡があった。
7回目の定時報告(遭難中)を受けた時はもう偵察とか言ってられるか救出せよと喉元まで出かかったがなんとか抑えられてよかった。
先生はその後アビドス高等学校の生徒と思しき少女に連れられながらなんとか到着したらしい。
しかしながら、砂漠越えするには随分と軽装で出発したとは思ったがこうなるとは…先生って思った以上に、アレなのかしら?
「いずれにせよ、ようやく始まりますね。0はそのまま例の部隊と合流してください」
先生がアビドスに到着するということで、アビドス砂漠周辺の廃墟に待機させていた司法取引で仮釈放中のヘルメット団に指示を飛ばす。
現在アビドス高等学校はヘルメット団と抗争中であり、囚役されていたヘルメット団員を解放して威力偵察を行う予定である。
シャーレ着任日には見れなかった先生の実力と現状のアビドスの戦力、それに敵対するヘルメット団がどれほどの支援を受けているのか。数名のヘルメット団を釈放する対価にはまあまあ良いものであろう。
再度安谷より連絡があり、合流したと同時に出動するとの報告が上がる。
あらかじめ潜入させていた公安局員に脱獄(と言うていで仮釈中)してヴァルキューレから重武装を盗んで参陣すると情報を流していたおかげで不審がられずに合流できた。今はかつての仲間と想いもよらぬ追加支援で士気が上がっているのであろう、意気揚々と出撃したらしい。
なんでも、「これでこの暑苦しい砂漠とはおさらばだ」とか「アイツらに一泡吹かせられるぞ」や「報酬で何買おうかな…」などと言った話があちこちで流れているようだ。
「まあたった4人に
砂漠の中をかっ飛ばす軽トラックとなんとなく不良生徒が持ってそうな武装をチョイスしたが、今思えばたった5名しかいない相手に対して過剰としか言いようがない気がしてきたが…先生なら大丈夫でしょう。
ほら、シャーレ奪還戦の時も
「では吉報をお待ちしてますよ」
安谷に指示を出して一息つく。そして、改めて目の前の人物に視線を合わせる。
目の前の少女はこちらをジトッと半目の鋭い瞳をこちらに浴びせ続けていた。その前髪から覗く瞳は先ほどから視線で人を刺せるんじゃないか、もしくは特殊な何かを目から放出してるんじゃないかと思われるぐらい私の神経を刺激している。
「カンナ、そう睨まないでください」
「思い当たる節があるならわざわざ言わせないでください」
目の前には先程より、ヴァルキューレ警察学校公安局長の尾刃カンナが立っている。不機嫌さを隠さずにこうも目線で訴えてくるのはさすが公安のトップに立つだけはある。ほんの少しちびりそうだ。
「申し訳なくは思っているのですよ、期待のホープを使い回していることは」
「彼女にはまだまだ仕込むことが山程あるのですから早急に公安局に戻してもらいたいのですが。それに公安局も人手不足なので彼女の管轄であるD.U.アカサカ区が持ち回りでなんとか対応していますが火種は大きくなる前に消しておきたいのですけど」
「ふふふ、まあそれは大丈夫でしょう。そこはこの間の温泉開発部の制圧のついでに掃除したところですから」
「だといいんですがね」
ため息を吐くカンナを尻目にコーヒーメーカーを起動する。気分的にキリマンジャロをセットして、と。
「カンナも飲んでいきますか?」
「いいえ結構。仕事が溜まってますので」
「つれないですねぇ」
しばらくカンナと世間話をしながら書類作業を並行して行う。昔はこんなことできなかったが次長時代に書類に埋もれながら前防衛室長の指示を受けて各所に電話していた時の経験か、今では他愛ない話ならば片手間に処理できるぐらいようになった。
そしてコーヒーが出来上がる頃には机にあるのは再提出と決裁の書類のみとなり、久しぶりに未決裁の書類がなくなっていた。ここまで机が綺麗になるのはいつ頃だろう。連邦生徒会長が行方不明になった日より前であることは確実だが。
背伸びをすると身体中からバキボキと嫌な音がなる。何だか最近目元がピクピク痙攣するし、肩も重い気がする。肩が凝るのは巨乳のはずだが…なぜだ?
「んんーっやっと終わりました!では一息つきましょうか」
コーヒーメーカーからカップを取り出して椅子に座り、窓から外を眺めながらコーヒーを啜る。
先日のシャーレ襲撃と矯正局での温泉掘削(結局温泉はなかった)以来、D.U.では大きな暴動はなく平和な日々を過ごしていた。むしろ、先生のおかげでサンクトゥムタワーが再稼働し行政機能が回復したため今までの遅れを取り戻すかのごとく復旧と建設作業が行なわれていた。
その様子を眺めていると、自然と笑みが浮かび上がる。やはり破壊活動を鎮圧するよりも、こうして復興する街並みを眺めている方が私は好きだ。
暖かな太陽、建設資材が大量のトラックの群によって工事現場に運ばれていく姿、カンカンと金属資材を繋ぎ合わせる音に紛れるスズメの鳴き声と「連邦生徒会は責任を取れ」という赤冬の喚き声。いずれもここ数日では考えられないぐらい平和な景色だ。
「いやー、平和ですねぇ」
「いやぁ、アレはいいんですか?」
「ははは、小鳥の鳴き声に良し悪しなどありませんよ」
「あー、そうですねぇ、はい」
じゃあ私は戻りますとカンナは敬礼をして防衛室長室を退出する。手を振って見送ろうとするが、カンナがドアノブを捻ろうとした瞬間にドアが独りでに開く。
「防衛室長、こちらの決裁をお願いします」
部屋に入ってきたのは次長と秘書官で、それぞれ胸の高さほどの書類を抱えていた。
カンナはこちらに振り返りながら無言で憐れみの視線を向けてくる。その視線から逃げるようにクルッと椅子を窓に向ける。
「あー、平和だなぁ」
ドスンと背後で書類を置く音がする。正直気が乗らないがこのぐらいの書類なら今から頑張れば日を跨ぐ前に終わるだろう。久しぶりに家に帰れるだろう。よし、さっさと書類終わらせて帰ってゆっくり寝てラジオ体操して牛乳飲んで明日に備えよう。
「それはそれとしてまずはコーヒーを、と」
まだ半分も飲んでいないが仕方ない。もう少し味わいたかったが早めの休憩終わりということでコーヒーカップを一気に傾ける。
ああ、外の景色はこんなに綺麗なのになぁ
ごくごく
ああ、目の前の道路結構ボコボコだったのに大分復旧進んできたなあ
ごくごく
ああ、トラックがまたたくさん来るなぁ、あっちは確かアカサカ区の方?
ごくごく
アカサカ区といえば、そういえば安谷がとある会社をマークしてるって報告書に載っていた気がする。確か最近武器の売買が多発してるとか、後は弾薬なんかを大量に仕入れたとかなんとか…
ごくごく
まぁいいか。それより復旧中の街並みはいいなぁ。この人工物がどんどん組み上がっていくのが、こう…成長してるって感じがして良い!工務部の子たちもこうして一生懸命働いていれば素直で可愛げがあるのに。いずれにせよ、絶景を見ながらのコーヒーは最高ですね!
ごくご(ドゴォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!!
「ぶぅうううううううううっっっ!!!」
視界の端っこで派手に吹き飛ぶ建物と室長室に飛び散るコーヒー。ゴホゴホと激しく咳き込んだ後に慌てて窓を開けて場所を確認する。
サンクトゥムタワーより北東方向のとある区画から黒い煙が空に立ち上っている。
というか、あの場所は…
「アカサカ区、ですね」
いつのまにか隣に移動してきたカンナが窓から顔を出しながら告げてきた場所を再度眺める。また一つ、ドカンと音がして何かの破片のようなものが飛び散っていることが確認できた。
「…アカサカ区の担当は今は」
「砂漠でヘルメット被りながら汗だくで機関銃振り回してるんじゃないですかね」
ドカッと椅子に座り込みながら眉間の皺を揉みほぐす。
起きてしまったことは仕方ない。まずはできることをしよう。
「カンナさん、今すぐ最寄りに配置されてるヴァルキューレの警備局生徒に現場急行要請を、生活安全局は避難指示をお願いします」
「承知しました」
敬礼をして素早く退出するカンナを尻目に次長に視線を向ける。
「次長は他のヴァルキューレ生から今すぐ現段階で分かっている情報を集めてください。あと、D.U.地区の地図の用意も合わせてお願いします」
バタバタと次長と秘書官が部屋を退出し、あっという間に1人になる。再度椅子を外に向け直すと先ほどよりも炎の範囲が広がっているような気がしたが、気にしてはいけないだろう。
「ああ、平和だぁ…ったんですけどねぇ」
乾いた笑い声しか出ない現状に意識が遠のきかけるがなんとか持ち直す。ひとまずヴァルキューレに任せて今は情報を集めるのが良い筈である。
ぼーっと外を眺めていると、机の上に置いていた携帯電話が着信を知らせる。相手は、『0』
出動してからまだ1時間も経っていないが、何が起こったのだろうか
「もしもし、どうなさいましたか?」
現在、安谷は仮釈放したヘルメット団と共に武装トラックに乗っていたはずだが周囲からはエンジン音らしき音が聞こえない。トラックから降りているのだろうか。
しばらく安谷は無言で、ただ移動しているのか砂を踏む音だけが聞こえていた。30秒ほど経過して一度深呼吸を圧迫挟みようやく口を開いた。
『室長、やられました』
「はい?」
やられた?何を?
抽象的すぎていまいち状況が掴めない。続きを促すと安谷はさらにもう一度深呼吸をしてゆっくりと語りだす。
『アビドス高等学校、彼女たちにやられました。先行隊のヘルメット団はほぼ全滅です』
チラッと時計を眺める。安谷の出撃報告は10:45であり、現在は11:33である。
アビドス高等学校はカタカタヘルメット団の前哨基地から30kmほど離れた場所にあるからアバウトに30分移動に費やすとして、戦闘開始から15分も経っていないではないか。
『あっという間でした。しばらくはタクティカルで火力と機動力に任せた挑発行動を行い陽動対応に徹していたのですが、気付かぬうちに逆にこちらが足止めされている形となっていて。そうしていつのまにか本隊が全滅し…最後にはミニガンとドローンによる波状攻撃で車両を破壊されました』
「そ、そうですか…」
『特にあの小さい子、アレはマズイです。こちらの機関銃を盾で弾きながら的確にタイヤを狙って射撃してくるんですよ。陽動じゃありませんでした』
その後もしばらく安谷と通話を続けてアビドス高等学校襲撃の内容を把握する。
まずは本隊がアビドス高等学校を襲撃、その後一定のラインまで退却すると同時にタクティカルの側面攻撃でアビドス陣営の混乱を誘発する。その後、体勢が乱れたところに虎の子のRPGを複数本叩き込み後は一気に兵力差で押し込むという流れだったようだ。
だが、結果を見れば。誘引しながら退却は上手くいっていたしその後の側面突撃も当初は隊列を乱す効果はあったが1人の生徒に阻まれ、陽動どころか防戦一方に陥る。予想外の事態に混乱した本隊と待機していたRPG隊に対して即座にピンポイントでドローンがRPG隊に襲いかかり慌てたRPG隊が誤射をしたことにより本隊が瓦解、後は先ほど報告にあった通りだという。
「なるほど。伊達に多勢に無勢の状況下で戦い抜いているだけはありますね」
『それもありますけど、個人的にはあのRPG隊をドローンで襲撃した手際が脅威ですね。ほんの小さな隙とヘルメット団の士気の緩みをアレで一気に突かれました。あれさえなければ立て直しは可能だったんですけどね』
「…戦術眼は確か、ということですね」
『間違いなく』
受話器から『ふう、やっと見えてきた』との声が聞こえたのでふと時計を見ると時刻はすでに12:30を過ぎていた。安谷の方もヘルメット団の前哨基地が視界に入るぐらいには戻ってきたのだろう。後は折を見て痕跡を残さないように処理してから撤収するように伝えて電話を切る。
するとノックと共に次長が部屋に入ってきた。手元には1枚の紙がある。
「爆発の原因が分かりました」
目の前に1枚の資料と写真が置かれる。資料は爆発現場と思わしき工場の説明、そして写真には、そこから慌てて脱出する4人の姿。
最後で派手に工事が吹き飛んでるせいもあり若干見にくいが、それでも分かる。笑顔で爆風を浴びる小さな子、つまづきそうになっている陰気な雰囲気の子、その子が転ばないように支えて走る顔が少し怖い子、そして白目を剥きながら爆風の煽りを受けるロングコートに背中を押される子。
これは…
「便利屋68です」
「言わなくても分かりますよ!そうではなくて、なんでゲヘナの問題児(マシな方)がD.U.地区にいるのですか!彼女たちの根城はゲヘナかブラックマーケットじゃないですか!なんでよりによってヴァルキューレ警察学校があるD.U.地区でドンパチやらかしてるんですか!」と怒鳴りたい気分を無理やり沈めて無言で続きを促す。
「どうやら以前からなんらかの契約をしていたようで、度々この工場に出入りしていた様子が付近の監視カメラに記録されてます」
「ああ、なるほど。便利屋68は他に比べて脅威が低いですし滅多にD.U.に来ないので報告が遅れたのでしょうね。全く、どんな理由があって工場爆破なんてやらかしたのやら」
「どうやら依頼金未納による見せしめだと、近隣住民からのタレコミがありました」
「見せしめで武器工場爆破!?何考えてるんですか!!」
今度は流石に声に出てしまった。
普段はブラックマーケット相手に騒動を起こしているから特にマークはしていなかったが、キヴォトスの行政機関が集中するこのD.U.地区でここまで大胆に爆破テロを行うとは…。便利屋68、思ったよりもアウトローな組織なのかもしれない。
白目をむいて吹き飛ばされている便利屋68の面々の写真を睨みつけていると、不意に携帯電話が着信を受信する。相手は…『0』? 先ほど電話していたはずだが。
不審に思うもののとりあえず出ることにする。
「『0』どうしまし『ちくしょう!もうきやがった!』…はい?」
こちらに被せるように安谷の怒声が響き渡る。
来やがった?何が?
「落ち着きなさい。ゆっくり状況を教えなさい」
冷静になるよう促すが、電話先はそうはいかないのだろう。安谷の怒声以外にも激しい銃声が先ほどから私の鼓膜に響き渡っている。どうやら現在銃撃戦中のようだ。
…ん?銃撃戦?
安谷は先ほど『やっと見えてきた』と言っていたから前哨基地に戻ったのであろう。そうなると、前哨基地で銃撃戦が行われているのか?
今現在アビドスにいる武装組織はカタカタヘルメット団with潜入公安局員、それと…いや、そんな…
攻め込まれてそんな時間は経っていない筈なのに、まさか…
『アビドスです!! やつら反撃してきやがった!! もう半数はやられました。もうここに組織的能力はありません。撤収しま…うわっこっちきた! やめ、やめろー!』
先ほどよりも激しい銃声とともに通話が終了する。
しばらく携帯電話を持ったまま動くことができなかったが、なんとか携帯を置くことができた。
「……平和ってなんなんでしょうね」
カヤの独白に、次長はただ首を傾げるだけであった。
カヤちゃんいいですよね
原作で先生と初対面時の慇懃(無礼ではない)な態度で接したかと思えば「まあ、原作など知ったことではありませんね!」とはっちゃけるお茶目さ。正直そこに惚れた。(ガチ)
その後の暗躍、カイザーにしてやられてもあえて手を結ぶ強かさ、そして鮮やかにクーデターを成功させ連邦生徒会長代行になり…そこからの凋落劇はもはや芸術の域では収まらないナニかを感じさせる
個人的に一才反省してなさそうなところがなおポイント高い。むしろ反省するな一生その態度を貫き続けろ(豹変)
それはさておき、カヤちゃんが好きで衝動的に小説を書いているわけなのだが…
うーん、この小物感
著者が小物の極みなのでそれがカヤちゃんに伝播してしまうのが本当に申し訳ない
カヤちゃんはもっと賢いはずなんだ…!なぜ、なぜそれを出力できない!
正直お見苦しいものをお見せしている自覚はあるし、日々削除しようか悩んでますが、よろしければお付き合いください
拙い小説ですが読み続けてくれる読者さんがいることに本当感謝感謝です
これからもよろしくお願いします
P.S.
上院議員カヤちゃん、これはこれで…いや、滅茶苦茶大好きなヤツだこれ
今後のお好みのストーリー展開は?(あくまで参考)
-
原作ルート路線(メインストリート追従)
-
オリジナル路線(イベストみたいな感じ)