ある日あなたはウマトレなる概念を受信した   作:シマキ

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 あけましておめでとうございます、初投稿です


外伝
あなたは周りからどう思われているか


 

 

 

 マンハッタンカフェ。

その名前を知らないウマ娘はまずこのトレセン学園には存在しないだろう。

 

 弥生賞で頭角を表し、そのまま順調に菊花賞、有マ記念も勝利、そして天皇賞春の勝利後の唐突な海外への遠征の発表、多くのファンの期待を背負って凱旋門賞での勝利を掴み、日本初の凱旋門賞ウマ娘となった少女。

 多くの日本人を沸かせ、すぐさま彼女のグッズが多く売り出されたり、実家の喫茶店に訪れる人が続出した。

 カフェは日本へ帰国後ほどなく、少しの間ゆっくりしたいと休養期間に入ってしまい、取材なども最低限しか受けなかったのも拍車にかかってしまったのだろう。

 

 カフェが休養期間に入ることを発表すると同時に、カフェの担当トレーナーは、担当を持っていた別のウマ娘を今後しばらく重点的に育成していくと発表した。

 

 そのウマ娘の名前は───────、通称キィ。

 帰国子女で、本名ではなくあだ名の方がとおっているちょっとした変わり者。

 常日頃からカフェと共に行動している姿は、学園のあちこちで見られている。

 

 彼女のことを語るうえで外せないのが二点ある。

 

 1つは、彼女の奇行だ。

 時折視線を感じると思って振り替えったら、鼻血を滴しながら下品な笑みを浮かべブツブツ呟いて、日記帳を取り出し一心不乱に書き込む姿が、学園のあちこちで見られている。

 また、急に立ち止まったと思ったら、フラフラして倒れこんだりする姿も見られたり。

 

 そんな彼女への反応は様々で、接してみたら変なところは確かにあるけど、思ったよりまともかも?というウマ娘や、ただただドン引きして彼女を見かけたらスタスタと逃げる子もいるし、なんでアレがカフェさんと仲がいいのか疑問視する子もいれば、もしかして自分と同類なのではと思った子もいる。

 

 そしてもう1つが、カフェとの仲の良さだ。

 

 ただ仲が良いだけならそこまで語ることはないのだが、なんというか彼女達の仲は近すぎるのではと噂になっている。

 学園でほとんど一緒に行動するのはもちろん、2人でおでかけしてる姿も、よく見られていた。

 またカフェのウマッターでもその仲の良さは見受けられている。

 彼女は基本的に、コーヒーのことやレースの予定などの事務的なことや猫の写真をウマッターで乗せていることが多いが、時折多人数での写真を乗せることがあるが、そのどれにもキィがいることを察するファンもいた。

 

 カフェのファンの子達はこれを匂わせと取ったり、素直に仲良いんだなぁと受け取ったり、2人の組み合わせ尊いと悶え死にかけたりする子がいたりいなかったり。

 

 

 そんな良くも悪くもカフェのついでに学園の噂になっていたキィが、久しぶりにレース場に現れたという話は、すぐに広まった。

 

 

 

 ※

 

 

  「……なんか、広いなぁ」

 

 私は軽く走り終えた後、レース場を見渡した。

 久しぶりにトレセン学園のレース場で走ったけど、トレセン学園のレース場の芝はこんな感覚だったっけ、こんな広かったけと思ったりする。

 広く感じるのは、隣にずっと併走してきた彼女が今いないからもあるけど。

 

 「キィ、体調の方は大丈夫?」

 

 「めちゃくちゃ大丈夫ですよ。私めちゃくちゃタフですし」

 

 「そう、調子が悪くなったらすぐに教えてね。久しぶりの日本のレース場だし勝手は違うはずだから」

 

 そういって心配そうにこちらを見つめるトレーナーさんに、私は大丈夫とグッとサムズアップをして見せる。

 日本と海外のレース環境は違うから、知らず知らずにストレスや疲労を溜め込んでしまい、怪我をしてしまう子が多いんだって。

 私はそもそも併走以外でほとんど走ってないから、ストレスとか溜まってないはずだし、すぐに調子を取り戻して走れると思うけど。

 まぁ、何かあったらダメだもんね。それで泣くのは私以外の誰かだし。

 

 爪先でトントンと地面を叩いて芝の感触を味わっていると、仲良さげなウマ娘のグループがレース場にやってきたのが見えた。

 トレーナーもついてるし、多分チームメイトだったりするのかな?

 ストレッチしながらなんとなくぼんやり眺めていたら、私の存在に気づいたのか1人こちらへやってきた。

 背丈的になんとなく中等部の子かな?その顔は、どこかで見たことある気がしないでもない。

 

 「あの、もしかしてキィさんですか?」

 

 「そうだけど。えっと、どこかで会ったっけ?」

 

 「一応……まぁ覚えてなくても仕方ないですけど。あの、それよりマンハッタンカフェさんは今日は見えないんですか?」

 

 あー、もしかしてカフェのファンの子かな。彼女は面倒見がいいから、後輩からわりと人気あるんだよね。

  

 「カフェは今日は病院だよ。戻ってくるとしても夕方になるんじゃないかな」

 

 「そうですか……」

 

 耳をしゅんとさせて露骨にガッカリとした感じになってしまった後輩ちゃん。

 気を悪くしちゃったなって思ってると、いきなり耳を立てて、興奮気味に私に質問してきた。

 

 「あ、あの!ちょっとキィさんに聞きたいことがあるんですけど、いいですか!?」

 

 「なにかな?私に答えられる範囲なら答えるけど」

 

 「キィさんって、マンハッタンカフェさんと付き合ってるって噂はほんとですか!?」

 

 「ん?」

 

 私は質問の内容に面喰らう。付き合ってるって、そんな噂流れてるのかぁ。

 

 「そんな噂あるの?私とカフェはそんな付き合ってるとかの関係じゃないよ。お友達だよ、お友達」  

 

 「ほ、ほんとですか?お友達というには、手を繋いだりなんかして距離感が近すぎると思いますけど」

 

 「人それぞれじゃないそんなの。私と彼女の距離感は、それくらいが心地良いってだけで。付き合ってるとかそんなんじゃないよ」

 

 納得いかないのか訝しげな視線を送る後輩ちゃんだが、私は笑って誤魔化す。

 付き合ってるわけじゃないけど、カフェは大切な人ではあるけどねと、心のなかでこっそり呟きながら私は自分の練習へと戻った。 

 

 

 

 

 





 感想、評価、お気に入りありがとうございます。


 かなり更新まで遅くなってしまいました。
 キィがカフェに劣等感を抱いて距離を置いてしまったビターエンドルートや、カフェのそこそこ曇らせ要素が多いバッドエンドとかデジたんとか色々考えてましたが、ちょっと書くべきか迷ってしまい遅れてしまいました。

【参考】曇らせは

  • あり
  • なし
  • 程度による
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