ある日あなたはウマトレなる概念を受信した   作:シマキ

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 キィは結構気持ち悪い感じで書いてるので初投稿です


ある日あなたはマンハッタンカフェに出会った

 

 ×月○日

 

 前回の日記を書いて1ヶ月が経った。

 あれから私は、ウマトレを間近に見るために色々画策していたが、全然うまくいってない。

 最初は、友人達の誰かが担当トレーナーにスカウトされるのひたすらじっと待ち続けてればそのうちウマトレを間近に見る機会を拝めるだろうと、たかをくくっていたのだが、なんとこの1ヶ月で私の友人は離れていき、ボッチになってしまった。理由はわからない。

 

 ひどくない?え、マジでひどくない?

 

 病院から退院した翌日辺りから、まるで最初から私達友達じゃなかったみたいな感じくらいの距離感を感じた。

 私が喋りかけようとしたら、話を切り上げられてせっせと私から離れていかれる。

 マジで理由が思い当たらないんだけど。日記書いてれば何か思い当たることが出てくるかもと思っていたのにマジでないんだけど。

 別に嫌われるようなことはした記憶はないし、

 まぁ強いて思い当たることがあるとすれば、鼻血かなぁ。

 1週間に何度も何度も鼻血を吹き出している子なんて、汚くて近寄りたくないのかも。

 

 鼻血の対処は慣れてきたけど、これじゃあウマトレを間近で拝むどころじゃないかも。

 早急に何か対策を考えないといけないかもしれない。

 

 

 ×月×日

 

 レース場でマスクを着けて走ってる子を見て、自分も顔を隠せばいいんじゃないかと思い立ち、とりあえず黒いマスクを買った。これを着けてれば少なくとも多少見映えはマシになるかも。

 マスクを着けて、教室にいた子に話しかけてみたら話に応じてくれたが、やはりどことなく距離感を覚えるぎこちなさがある。

 相も変わらず原因は謎で、もしかして鼻血が原因じゃなかったとしたらいよいよお手上げ状態だ。

 しかし、こんな序盤で私のウマトレを見る青春を挫折するわけにはいかない。

 

 このまま原因を探ってく方向は拉致があかないし、ちょっとアプローチを変えてみるのがいいかも。

 

 

 ×月△日

 

 今日は、久しぶりに気分がいい。

 たまたま中等部に通りかかったときのことなんだけど、そこでなかなかに上質なウマトレを見たのだ。

 詳しい内容は彼女達にしかわからないが、中等部の子が担当トレーナーに『私があんたにとっての1番だっておしえてあげるわ』って壁ドンしていたのが見えた。

 ぐへへぇ、鼻血を流しながら続きが気になったが、運悪くたづなさんが止めに入ったので続きは見れなかったのがちょっと残念。

 でも、生のウマトレを供給できて私も元気出てきた。

 よし、今日もがんばろー!

 

 

 

 

 ×月□日

 

 今日はとくに何も起こらない素晴らしい1日かと思いきや、少し不思議な出会いをした。

 最近、ちょっと寝付けない日が増えてきて寮の規則を破ることになるけど、実はちょくちょく夜のトレセン学園を散歩していたのだ。  

 夜の学園は昼間とは違う顔を見せてくれて、とても面白く私は夜の静寂に包まれた学園も好きだ。

 あちこち散歩してたら、レース場から声がしたので行ってみると1人のウマ娘が他に誰もいない空間で誰かと喋っていたのを見つけた。

 

 端から見てると心霊現象みたいだけど、喋っているウマ娘はそれはとても楽しそうで、邪魔しちゃ悪いかなぁって思って遠くからぼーっと見ていたのだが、誰もいないはずなのに誰かから背中を蹴られ私は転んでしまった。

 そのときに助け起こしてくれたのが、先ほどまで虚空に喋りかけていた、マンハッタンカフェというウマ娘だった。

 

 彼女は私と同じ高等部の子らしく、お互い顔だけは知っていた。

 私はカフェさんに誰と話していたのかと聞くと、どうやらお友だちという目に見えない存在と喋っていたらしい。

 ちょっと怖いなって思いながら、よくよく考えたら私もお友だちではないが、他の人とは違う普通じゃないのような経験をしているし、世の中私が知らないだけで案外そういうのでありふれているかもしれないね。

 

 まぁ見えないからそのお友だちとやらについては結局よくわかんなかったけど。

 

 私は、何個かそのお友だちについて質問をしたら、カフェさんはちゃんと1つずつ答えてくれた。

 カフェさんはあまり表情が変わらない子だが、お友だちの話をしているときは、少し声の高さが上がっているのがよくわかった。

 彼女にとってお友だちは、私にとってのウマトレなのかもしれないなぁ。

 

 結構遅くまで会話してて、気づいたら深夜どころか少し朝日が昇る時間帯になっていた。

 そういえば、久しぶりに他のウマ娘とこんなに楽しく会話できた気がする。

 

 ×月×日 

 

 カフェさんと出会ってから数日が経っていた。ウマトレ計画がなかなか上手くいかないなか、なんだかんだあの時の時間は楽しかったので、今日も夜中寮を抜け出して彼女のもとへ向かった。相も変わらず誰かに背中を押されたりするが、ここ数日の間に慣れてきた。

 今日も遠くから彼女を見ていたが向こうもこちらが来るのをわかっていたらしく、こちらの姿を見ると走るのを一旦止め、そんなところで立ってないでこちらへきて座ったらどうかと誘って来てくれたので、ありがたく座る。

 相変わらずお友だちとやらは見えないが、少しずつカフェさんのことがわかってきたことがある。

 彼女の第一印象は、失礼かもしれないけどちょっと怖い感じがあったが話してみるとそうでもない。至って普通の子だ。

 むしろ、かなり懐が広い子なんじゃないかな。

 私には見えない子達の相談を何時間も受けている彼女を見てそう思った。

 

 △月○日

 

 今日は珍しく日中に、カフェさんと出会った。

 別に気にしなくてもいいのに、この間の幽霊との相談で疲れはててた彼女を寮まで連れていったお礼がしたいと言って、昔理科準備室だった部屋についていった。

 そこは半分はカフェさんの私用のグッズ置き場になっており、半分はよくわからない実験器具がたくさん置いてあった。

 どうやらそれはカフェさんのものではないらしく、この部屋の共有者のものらしい。

 カフェさんは手慣れた様子で私が苦いのは苦手かどうか質問しながらコーヒーを淹れてきた。

 私はコーヒーはめちゃくちゃ好きってほどでもなかったが、彼女が淹れてくれたコーヒーはめちゃくちゃ美味しかった。この味を書き記すほどの語彙力が私には無いことが悔やまれる。

 

 

 △月△日  

 

 今日はついに、私のウマトレ計画に進展がありそうだ。

 昨夜、いつものようにカフェさんのもとに向かっていたら彼女がトレーナーさんと喋っているところを見つけた。

 どうやら担当トレーナーってわけでもないが、トレーナーの方の反応を見るに、あの人はきっとカフェさんの走りに興味を示しているだろう。

 わざわざ深夜遅くまで、カフェさんの走りを見ていたのだ。間違いない。

 ならあのトレーナーさんの背中を押してあげてよう。

 トレーナーさんは彼女の走りを見てられるカフェさんは担当トレーナーが見つかる。私は間近でその様子を眺めてられる。

 素晴らしいWin-Winじゃないか。ぐへへぇ。鼻血が止まらないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 ※

 

 

 

 キィと呼ばれるウマ娘は、普通の少女だった。

 

 レースの実力はそこまでなかったが、人当たりもよく冗談好きな一面もあり、それなりに友達が多い少女だった。

 

 だからキィが生徒会室前で倒れたという話を聞いた時は、皆心配して、お見舞いにきてくれる子はそれなりに多かった。

 彼女の喜ぶ顔を見たくて、みんな集まってきてくれていた。

 

 

 「…………ウマ……トレ……を見る……レース……」

 

 

 そして、病室でブツブツと一心不乱に日記帳に何かを書いている姿を見た彼女達は大変心を痛めたのだった。  

 そこにいたキィは少し肌色も悪く、綺麗だった金色の髪の毛もボサボサとしており、どこか不気味さを感じさせる。

 

 「…………あ、みんなお見舞いにきたの?うれしいなぁ、ありがとー」

 

 キィはお見舞いに来てくれた友人達に気がつくと、いつものように朗らかな笑みを浮かべいたが、目は死んだ魚のように濁りきっていた。

 その後、ほんの少しだけ喋ると、また何かに取り憑かれたように日記帳に何かを書き出す。

 よく見ると、その日記帳は所々赤黒い血で汚れていた。

 

 病室から出たときに、誰かが言った。

 

 まるで死人のようだったと。

 

 退院した彼女は、あの病室での光景がまるで夢のようにいつもの様子だった。髪も整えられてるし、目も濁りきっているどころか気持ち悪いくらいキラキラしている。

 そのギャップが余計怖かった。

 

 さらに退院後の彼女は、どこかおかしかった。

 こちらをじっっと見つめてくることが多くなった。時折気味の悪い笑みを浮かべることさえあった。

 レース中も、気味の悪いことにブツブツ呟いていて走り続けていた。

 

 まるで変な薬でもやっているかのような様子だった。

 

 そして、1人、また1人と彼女との距離を取るようになる子が増えていった。

 

 そうして彼女は、今までの友達を失ったとさ。

 

 

 





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