ある日あなたはウマトレなる概念を受信した   作:シマキ

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 今回はカフェの出番少なめなので、初投稿です。


ある日あなたはお揃いのマグカップを買った

 

 X月XX日

 

 真っ黒な空間に私はいた。

 

 そこには、私以外だれもいなくて、大きな声で誰かの名前を呼んでも、暗闇に飲み込まれていった。

 

 しばらく座っていたが、何も変化は起きなかった。

 このままじゃ何も変わらないと思ったので、暗闇の方へ気の向くまま歩きだした。

 

 歩いても歩いても、何も見えない。このまま1人きりだろうかと寂しさを感じていると、真っ黒な誰かの後ろ姿をとらえた。

 

 その後ろ姿は、この1年間ずっと見てきた彼女のものだと思った私は、大きな声で彼女の名前を呼んだが振り向いてくれない。

 距離が遠かったのかなと思い、彼女へ近寄ろうとしたけど、彼女はそのまま私と一定の距離を保つように歩いた。走ったら、その分同じ速度で走られて追いつけない。

 

 このままずっとおいかけっこが続くのだろうかと思っていたら、周りが明るい場所に出た。

 そこはまるでオーロラのように青く光輝いていて、空中にはよくわからない幾何学的な紋様がいくつも浮かんでいる。

 

 なんか神秘的だなぁって思っていると、目の前の彼女は足を止めた。

 やっと追いついた、そう思って彼女の名前を呼びながら近づくが、何も反応を見せない。

 何かあったのかなと思った私は、彼女の肩を掴もうとした時、背後から誰かに肩を掴まれた。

 それはとても力強いもので、私なんか骨ごと握りつぶされるんじゃないかな、と感じるくらいのものだった。

 

 いったい誰が掴んでいるのか、確かめるために私は首を曲げ後ろを向いた。

 

 そこには、目の前にいたはずの少女が私の肩を掴んでいた。

 

 私は前を向く。目の前にも自分がよく知る彼女の後ろ姿がある。

 どうやら前と後ろに2人いるみたいだと理解したら、肩を掴んでいた彼女に引っ張られ、暗い地面へと引きずり込まれそうになった。

 

 『ジャマヲシナイデ』

 

 引っ張る少女は、私にそう言ったように聞こえた。必死に肩を掴んでいる手をほどこうとする。よくわからないけどこのままじゃ、マズイと本能的に察知した。

 

 でも、所詮私はただの平凡なウマ娘でしかないからほどくことなんてできない。

 必死の抵抗も虚しくて、ドンドン真っ暗な闇へと落ちていく。

 このまま引きずり込まれてしまうのかな、最後に極上のウマトレを見たかったなぁ。

 

 そう願ったら、いつものアレが脳内に流れ込んできた。頭のなかに、数々のウマトレが映し出される。

 そうだよ、これだよこれ。私はこれを生で間近で見るために頑張っているんだ。

 この感覚はとても甘美で刺激的で、脳ミソに電流が流れるような感覚だ。

 あぁ、めちゃくちゃ気持ちいい。自分が書き換えられていく感じがすごい好きだ。

  

 快感に酔いしれていたら、背後から軽いうめき声が聞こえた。

 いつの間に肩を掴んでいた手が離されていたことに気づいた。私は空へ手を伸ばす。

 その手を前方にいた彼女が掴んでくれた。私は掴んでくれたの彼女の顔を見る。

 それは私がよく知っているマンハッタンカフェじゃなかった。彼女は──。

 

 

 

 そんな初夢を見ながら、私は新年を迎えました。

 わりと印象的な初夢だったなぁ。初夢って色々意味があるらしいけどこの場合どうなんだろ。

 あまりにも印象的な夢だったので、起きてすぐ日記帳を取り出して見た夢を書き込んだ。

 

 謹賀新年、トレーナーさんにさりげなくお年玉貰えないかアピールしたけど貰えなかったり、カフェさんに今年のクラシック級はどんな目標を立てたりしているのか聞いたり、最後は3人で街をブラブラ歩いて色んなものを見た。

 

 カフェさんは人混みが得意ではないタイプなので、最初は少し乗り気じゃなかったり、はぐれかけたりしたのでトレーナーさんと手をつないでもらったらどうかと提案したのだが、顔を少し赤らめて拒否されてしまった。

 ふーむ、こういう照れてるのも、これはこれでアリだなってその時は思いました。

 

 仕方ないので、代わりに私が右手でカフェさんの手をつないで、左手でトレーナーさんの手をつなぐことを提案したけど、2人から断られました。

 ふーむ、難しいなぁ。

 

 街をブラブラしていると、興味を牽かれたあるアンティークショップに入った。

 そこで、せっかくだし何か買おうということで、トレーナーさんはシンプルな柄の、カフェさんは猫のイラストが書かれたもの、私は娘出没注意とかかれた同じタイプのマグカップを買った。

 お揃いだぜ、イエーイ。

 

 早速買ったマグカップを使って、ホットミルクを飲んだ。

 

 今年も、ウマトレがたくさん見られて、カフェさんとトレーナーさんの仲が進展してくれますように、と私は三女神様に祈った。

 お供え物はにんじんでいいのかな、この場合。

 

 

 X月XX日

 

 今日も明日も練習練習。今日は勝負服をきた状態での併走だった。

 カフェさんの勝負服は真っ黒いブレザーのようなコートに黄色のネクタイのシックなデザインで正直めちゃくちゃかっこいい。

 いいなぁ、私もああいうデザインがよかったな。

 

 X月XX日

 

 今日は今度カフェさんが走る弥生賞のレースに出るウマ娘の調査にやった。

 まぁ、ただ遠くからどんな感じなのか軽く見ただけで調査なんて大袈裟なものじゃなかったけど。

 

 走る姿を見ながら、そのウマ娘のスピード・スタミナ・パワー・根性・賢さのステータスをG~Sのアルファベットでカフェさんのステータスを比較しながら記載してほしいとトレーナーに頼まれたので、一人一人走る姿を見ながら記載していった。

 

 こんなのが役に立つのか……と書きながら思ったけど、トレーナーさんに渡したら喜んでくれたのできっと役にたったのだろう。

 私が書いたノートを見たトレーナーさんが、できれば今後も頼みたいと言われた。

 これくらいしか役にたてさそうだし、私は快く承諾した。

 

 

 X月XX日

 

 最近カフェさんが少し寂しそうにしていたので、声をかけた。なんでも、新年辺りからお友だちが少し静かになったとのこと。

 最近もトレーナー室で謎のポルターガイストが起こったから、普段通り元気だと思っていたのだけどそうでもないらしい。

 

 残念だけど、お友だち関連は何も見えない私が力になれそうにない。ただ、このまま放っておくのも友達として見過ごせないので、カフェさんに私がコーヒーを淹れてあげた。 

 最近お弁当を作るついでに淹れかたを調べておいたのが役に立ったぜ。

 

 カフェさんは私のコーヒーを飲んだ後、微笑みながら美味しかったけど、もっと美味しくできる淹れかたがあると、教えてくれた。

 わりとダメ出しもくらったけど、教えてくれる最中に少しだけカフェさんも元気を取り戻した様子だし、結果オーライかな?

 

 X月XX日

 

 今日は何か騒がしいなぁって思っていると、『デート』に誘っているクラスメート達の姿を見て、そろそろリーニュ・ドロワッド──通称ドロワの季節だと思い出した。

 

 ドロワは桜の季節に行われるトレセン学園伝統のダンスパーティーで新年度のお祝いや年度の区切りとして行われている。

 ドロワはウマ娘同士がデートと呼ばれるペアを作って着飾ってダンスする行事で、見てて華やかさがある。

 

 私も1度は踊る側で参加したいと思ったことはあるけど、相手もいないし、一応担当トレーナーもできて忙しくなったし、参加する機会はなさそうだなぁ。

 

 

 あー、ウマ娘同士だけじゃなくて、ウマ娘とトレーナーでもデートができればいいのに。もったいない。

 

 X月XX日

 

 今日は学園で帽子を被った小さな子が理事長と喋っていたのを見かけた。なんか凱旋門賞がどうこう言ってたけど、フランスからの旅行帰りかな?

 いいなぁ、私も生で見てみたいな凱旋門賞。

 

 X月XX日

 

 今日は、弥生賞の日。

 カフェさんの体調は整っていたが、惜しくも2着という結果になった。

 2着でもすごいことなんだけど、あとほんのハナ差だったから本当に惜しかった。

 カフェさんも、悔しがっていた。

 

 

 X月XX日

 

 借りていた本を返すためにカフェさんを探していたら、三女神の像でぼーっとしていたところをみつけた。 

 おーいと声をかけても、何の反応がなくて肩をペチペチ叩いたが効果はない。

 この症状……どこかで、と考えたら、私がウマトレを受信している間の無防備な状態によく似ていることに気づいた。

 

 最初は、私と同じようにウマトレを受信したかと思って興奮したが、そうでもなかったようだ。悲しい。

 

 三女神様の像の声を聞こえて、像を見ていたら身体に日だまりのような温かさが覚え、力が沸いてきたらしい。

 

 何それ、と思った私は三女神様の像をじーーっと、見つめたが声も聞こえなかったし、身体に力も沸いてこなかった。

 

 ふーんだ、いいもーん。私にはウマトレが受信されるんだからね!

 

 

 





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