結局サトノクラウン手に入れられず、後2、3話で完結するので、初投稿です。
X月XX日
今日から楽しい楽しい夏合宿が始まる。
あくまでも心身を鍛えるためのトレーニングをするために行われる合宿だけど、それでもどこか旅行のように感じる部分があった
まぁ1日中ずっとトレーニングってわけでもないしね、バーベキューやらもあるし近くで夏祭りもやってたりするし。
やっぱ旅行じゃないか。
夏合宿では、トレーニングの時以外は班で行動することが多いので班決めは結構大事なもので、仲が良い子と組めたらいいなぁって思っていたが、そういえば私はカフェさん以外別に特に仲良い子いなかったことに気づいた、てへへ。
まぁそれはそれで今まで仲良くなった子と仲良くなれる機会でもあるよね。
この合宿で寝食を共にしたり、共に汗を流したり、共にトランプしたりと仲良くなれたらいいなぁと、太陽が燦々としていて大きな入道雲が見えるバスの旅路のなか私はそう思いました。
※
「……なんだよそれ、日記か?こんな時につけてるのかよ」
「うん、癖みたいなものかな。日記を付けるのは」
私は隣の席に座る茶髪のガラの悪いウマ娘──ジャングルポケットさんにそう言って日記の表紙だけ見せるように持つ。中身は意地でも見せないが。
彼女は今回の夏合宿で同じ班でもある。
「ポケットさんも付けてみたら?ふとしたときに見返すのは結構楽しいよ」
「いいよ俺は。めんどくせぇ」
「あ、そう?」
「……」
「……え、えーとお菓子、食べる?」
「もらう」
「あ、はい。どうぞ……」
私は持ってきたチョコを渡すと、それをポリポリ食べてウマイっと呟くのが聞こえた。
か、会話が続かない……。
この手のタイプの子とは周りにいたことがなさすぎて、何話せばいいのかわかんない。
ポケットさんは時折こちらをジロジロと眺めてくるのが余計気まずく感じる。今だけじゃない、班を組んだ時から彼女がジーッと見つめられている時があった。
何かしたっけ、マジで記憶にないや……。
「あ、あの、何かなポケットさん?そんな見つめられたら、恥ずかしくて照れちゃうよ」
「あ?……いや、なんというか普通だなって思っただけだよ」
「はぁ、そうなの……」
「お前のことは前から噂で聞いてたからな、タキオンやカフェのダチでもあるしどんなやつかと思って期待してたんだけどな」
そんなこと私に期待されても困るのだけど、てか噂ってなんだよ。
私はチラリと後方の席に座るカフェさんを見る。彼女は隣に座るタキオンさんをいつものように軽くあしらっていた。
「えーと、ご期待に添えなかったのはごめんね?……ちなみに、噂ってどんなのが流れてたの?」
「校内でジーッとこっちを見てると思ったら、血を流しながら不敵な笑みを浮かべる危険人物って聞いた」
「あはは、そうなんだ。そんな噂なんて宛にならないよ」
やっベー、知らないうちにそんな噂流れてたのか。わりと心当たりあったよ。
ちょっと気をつけないといけないかな、これは。
「とにかく、せっかく一緒の班になったんだから、これから仲良くしてもらえたら嬉しいな私は」
「……まぁ、そうだな。ダチのダチは俺のダチだ、仲良くやってこーぜ」
そう言うとポケットさんはまたひょいっと私のチョコをつまんで食べた。私の分が無くなりそうなんだけど。
とりあえず、少しは距離を埋められたかな。
これからもっと仲良くなれたらいいけど、上手い方法ないかな。
何か共通の趣味でもあればいいんだけど。
そう考えながら強欲にもまたチョコを取ろうとした彼女の腕を躱しながら、私はチョコを頬張った。
※
「マンハッタンカフェさん、ここはどうすればいいんですか?」
「……ここは、こちらの公式を当て嵌めるといいですよ……」
「わあ!ありがとうございます、おかげで課題が終わりました」
「いいえ……お役に立てたのなら、何よりです……」
夏合宿中でも、私達は学生なので勉強はしなくてはならない。
後輩の子達にわからないところがあるから教えて欲しいと頼まれた私は、合宿所の勉強スペースを借りて指導した。
あまり他の子に勉強を教えるという経験がなかったので、キィさんにも手伝いを頼もうと思いましたが、彼女は先約があると言って断られてしまった。
少し緊張したけど、無事終えられてほっとする。人に教えるのは意外と楽しかった。
勉強スペースから退出すると、運悪くタキオンさんと遭遇してしまった。
「カーフェー。さっき、合宿を活用した良い実験を思いついてね、手伝ってくれよぉ」
「……いや、嫌ですけど……ろくな目に合わなさそうですし……」
「なに、別に発光するわけじゃないよ、今回は」
「その一言でもう、不安です……」
私は、いつものようにタキオンさんの絡みを受け流す。
この人とは、本当に奇妙な縁があるらしく、今回の夏合宿でも同じ班になってしまった。
「それに、私はもうすぐ練習なので……あなたもそっちの方に集中した方がいいのでは……」
「なんとも、真っ当なことを言うね君は。一理あるが」
思ったより教えて欲しいという子達が多くて、遅くなってしまった。
そろそろキィさんを連れて一緒にトレーナーさんの元へ向かった方がいい時間帯だし、大部屋で待っている彼女を迎えにいこう。
私たちは並ぶ形で歩いていると、私達の大部屋が何やら騒がしいことに気がついた。
襖の前で、おそらくポッケさんの知り合いであろうガラの悪いウマ娘が集まっている。
はてしなく、嫌な予感がしたがこのままでは部屋に入れないので仕方なく訪ねることにした
「……あの、何かあったのですか?そこに集まられると……部屋に入れないので、困るんですが……」
「お、ポッケさんのダチじゃねぇっスか。悪いけどポッケさんはなぁ今、金髪ヤローと"決闘中"なんだ、ちょっと待っててくれっス」
「……はい?」
「……おやおや、物騒だねぇ」
決闘?ポッケさんが?金髪ヤローと?ここで?
集まっているウマ娘達が視界を遮って中が見えないが、部屋の中はドタバタとうるさく大きな騒ぎ声も聞こえた。
そしてその中に、キィさんの大きな声も。
「ちょっと……どいてください……」
「失礼するよ」
襖の前を占拠するウマ娘達を掻き分けて、私は部屋の中に入る。
「『ウマ娘カード:ナリタブライアン』オープンだ!!!」
「こっちもオープン『ウマ娘カード:ミスターシービー』だよ」
そこには、大部屋の中心をどこからか持ってきた台を並べて占拠して、カードゲームを行っているポッケさんとキィさんがいた。
「……あの、キィさんなにを」
「──神妙に!今は
「えぇ……と?」
「……物騒だねぇ」
キィさんに声をかけようとしたら、観戦していた子に止められてしまった。
謎の迫力に、私もタキオンさんも萎縮してしまう。
「最後の
「2人の
恐らく中等部の子であるお淑やかなウマ娘と先ほどまで襖の前で見ていたポッケさんの知り合いであろうウマ娘が訳知り顔で解説している。
状況がいまいち飲み込めない私は、彼女達に質問した。
「……あの、これは一体なにをやっているんですか……」
「ご存知ないのですか?人気の実在するウマ娘達をモチーフとした今1番話題の
「部屋の掃除の最中にポッケさんのカードを拾った金髪ヤローが勝負を挑んだっス。カードを見たら
そういう流行りに疎い私は、TCGといわれてもなんのことだかわからなかったが、トランプのようなものだろうか。
熱中している2人の様子を見るに、楽しいものだというのは伝わってきた。
でも、大騒ぎしすぎでは……。
「いや、この勝負もらったよ!『
「ああーっ!?くっそー、マジかよ!」
キィさんが、台に置いてたカードをひっくり返すと、ポッケさんが狼狽えだした。
「『
そうお淑やかなウマ娘が宣言する。どうやら、終わったらしい。
私はキィさんの元へ向かう。
「あ、カフェさん。戻ってきたんだおかえりー」
「はい、戻りました……いや、なにをしていたんですかキィさん……」
キィさんは、台に置いてあるカードを丁寧に回収しながら暢気な笑みを浮かべてこちらを向く。
「いやぁ、ポケットさんが出走者と知ったらいてもたってもいられずに勝負を挑んじゃった。私、ウマデュエルレーサー好きだし」
「……だからと言って、騒ぎすぎですよ……部屋の外まで聞こえてましたから……」
「え、本当に?気づかなかったよ」
どうやら、無自覚であれだけ大きな声を出していたらしい。
頭をかきながら、たははと恥ずかしげな表情をする。
そんな彼女の背中をポンとポッケさんは叩いた。
「やるじゃねーか、キィ坊!最後あそこから逆転されるとは思わなかったわ」
「ふふーん、でしょー?もっと褒めてもくれていいよ、この"今引きのキィ"の引きの良さを」
「調子にのんな!おい、もう一回やろーぜ。もう一回。今度は負けねぇぞ」
「あはは、いいね、やろうやろう」
そういって私の目の前でじゃれあう2人。キィさんはとても楽しそうだ。
「……楽しそうなところ、申し訳ないんですが、そろそろトレーニングの時間ですよ……」
「え?嘘、もうそんな時間!?カフェさん、すぐ準備してから向かうから先行ってて!ポケットさんごめんね、またあとで戦ろうよ」
「おーう、また後でな」
こんなに楽しそうにはしゃいでいる彼女見たのは、もしかして初めてかもしれない。
そう考えながら、私はトレーナーさんの元へ向かった。
※
ある夜、もう皆寝静まったであろう時間帯に私は1人砂浜に座りながら夜の海をぼんやりと眺めていた。
あの一件で意気投合したのか、ポッケさんとキィさんはとても仲良くなった。
同じ班でもある2人がよく一緒に行動するのを見かけることが増えた。
それ自体は良いことなんですが……良いこと、なのに、寂しさがある。
最近は私も他の子と過ごす時間が増えてきたのもあって、彼女と行動する時間が減ってきたのも、寂しさを感じた原因なのかもしれない。
去年はほとんど一緒にいたから。
たった1年間で、これだけ距離感が変わるのなら来年、再来年はどうなんだろう。
私達は別々の道を行くのだろうか。
それは、きっと当たり前のことなんでしょう。彼女も彼女のやりたいことがあるし、私も、私がやりたいことがある。
けど──。
「あ、いたいた、カフェさん。こんなところでどうしたの?」
そう考えていると、以前買った奇怪なセンスのTシャツを着こなしながら日記帳片手にキィさんが歩いてきた。
「……ちょっと、考え事をしていて……海を眺めていました。あなたこそ、どうしたんですか。こんな夜更けに」
「私?私は喉が渇いて起きたら、カフェさんがいないから探しにきたんだ」
「……そうですか、ご迷惑おかけしましたね」
「別に迷惑じゃないよ。私が勝手に、探した、だけ……だし……」
そう言うと、少しふらつくキィさん。私は側に行き、彼女を支えた。
「……また、例の発作ですか?」
「う、うん。そうみたい。ありがとう、助かったよ」
彼女はもう大丈夫といって、ガッツポーズを決める。
「カフェさんも見つけたし、そろそろ私は戻るよ」
「……本当に大丈夫、ですか?……少し休んでから行った方が……」
「大丈夫大丈夫。いつもの発作だし、馴れてるから」
そう言って、彼女は立ち去ろうとした。
私は彼女の背中を見て、不安になった。
このまま行かせたら、もう2度と会えなくなるようなそんなことを思ってしまうくらいに。
私は、彼女の腕を掴んだ。
以前彼女に腕を掴まれたときは、温かい温もりがあったのに、今の彼女はひんやりと冷たい。
でも、彼女の頬は少し赤らめていた。
「あれ?ど、どうしたのカフェさん」
「……少し、休んでいきましょう」
「え、でも本当に大丈夫……」
「休んで、いきましょう」
「は、はい……」
少し強引だけど、無理矢理砂浜に座らせる。
そして、その隣に私は座った。
会話することなく、2人でぼんやりと海を眺める。
時折、海の波の音がすると私の鼓動の音以外、なにも聞こえなかった。
こうやって過ごすのは、合宿では初めてかもしれない。
気まずくなったのかキィさんは、えーとえーとと言いながら喋りだした。
「えーと……こ、こういう状況、ま、前にもあった……よね!?」
「……はい、ありましたね。あの時は、あなたが私の腕を掴んで……無理矢理、お姫様抱っこしましたけど……」
「そうだったっけ?……あれ、もしかして迷惑だったかな、今更だけど」
「……本当に今更ですね。……まぁ、恥ずかしくはありました」
「そ、そっか……」
会話が続かず、またお互いにぼんやりと海を眺める。
少し間を置いて、今度は私から言葉を投げ掛けた。
「キィさんは……何か目標は、あるんですか?」
「目標?……そうだね、今の私の目標は、カフェさんとトレーナーさんの絡み……いや、お手伝いをすることかな。デビューもまだ先だし」
「……それは、目標ではないのでは?」
「そうかな?私にとっては立派な目標だと思ったけど。……急にこんなこときいてどうしたの?」
「……ふと、考えてたんです。この先、もしかしたら、互いに距離を取ってしまって、こうやってお話することがなくなるんじゃないかって…」
先ほど考えていたことを口に出してしまい、少しやってしまったと後悔する。
こんな話するつもりなかったのに。
けど、彼女はあっけらかんとした態度だった。
「そこまで心配する必要はないんじゃないかな。まぁお互いに距離感は変わっていくかもしれないけど、疎遠になんてならないと思うよ。少なくとも私はキミのことが好きだし、いつまでも仲良くしていきたいなぁ」
彼女の言葉が胸を貫く。
……もう、我慢できない。
「…………なら、もし、もし…ですけど、私が一生側にいてほしいって……お願いしたら、……あなたは側にいてくれますか?」
「………………え?えーと、うん、いいよ?……と、友達としての話、だよね?うん、そういう話だよね」
キィさんは、あわてふためきながら叫ぶようにそう言った。
それが面白くて、とても可愛くて、クスっと笑みがこぼれる。
私は尻尾を彼女の尻尾に重ねるように、顔を近づけ、耳元でつぶやいた。
「……えぇ。もちろん、『お友だち』としての意味ですよ?」
※
X月XX日
昨晩のカフェさんとの会話の全然眠れなかった。
ようやく眠れたと思ったら、次は変な夢も見て、余計彼女のことを意識してしまって頭が回らない。
なんでこうなったんだろう、だれかおしえて
お気に入り、感想、評価、ありがとうございます
以下、本編と関係があるといえばある蛇足です。
人を選ぶ描写があるので、ぶっちゃけ読み飛ばしてもいいです。
妙な違和感があった。
頭はズキズキするし、何故か上手く立てない、それに尻尾も妙に軽く感じる。
私は鏡を見た。そこには、何故か耳と尻尾が猫のものになっている私が映っていた。
「……朝起きたら、そうなっていたと……?」
「うん……カフェさん、助けてぇええええ」
私はカフェさんに泣きつく。こんなこと相談できるのは彼女しかいなかった。
でも流石のカフェさんも、困惑してどうすればいいのかわからない様子だ。
「……少し触っても?……もしかしたら何かわかるかもしれませんから」
「うん、わかった」
恥ずかしいけど、解決するためだ。私は彼女に耳と尻尾を触らせる。
カフェさんは、恐る恐る猫耳となってしまった私の耳をさわる。
「……んっ」
普段の耳とは違う感覚で戸惑う。なんだかくすぐったくて、少し気持ちいい。
もっとさわって欲しい。
でも、ほんの数秒だけ撫でると手を離してしまい、次は尻尾を軽く撫でた。
「ひゃ……あ……」
尻尾を──特に付け根の部分を撫でられると、頭に電流が流れてくる。それは、普段ウマトレの電波を受信するときと同じような感覚だった。
「あ……すいません……」
「う、ううん。だ、大丈夫だから。少しびっくりしただけだから……」
私はなんとか取り繕う。
カフェさんは、その後も数秒間尻尾を優しく触りつづけ、手を離すと困った顔をした。
「……本当に、猫の耳と尻尾をそのままつけたような……。これは、私でもどうにかできないかもしれません……」
「そ、そんな……」
私の目の前が真っ暗になる。
「これじゃ、ウマ娘じゃなくてネコ娘だよ……。ウマ娘じゃないなら、トレセン学園にもいられないよ……」
「キィさん……」
涙も出てきた。こんな、こんなわけのわからないことのせいで、学園生活を失うなんて。
いや、それどころか普通に生きていけるのか私は。
タキオンさんみたいな研究者にモルモットにされて、まともな生き方もできないんじゃ。
未来に絶望する。
だけど、カフェさんは救いの手を指し伸ばしてくれた。
「大丈夫です……。私が、あなたを守ってみせます」
「か……カフェさん……」
私は彼女に泣きながら抱きついた。
彼女は本当に頼りなる。持つべきものは友達だ。
カフェさんは優しく女神のような微笑を浮かべ、私の背中を優しくさする。
「キィさん……とりあえず、これを」
彼女は女神のような微笑で、猫用の首輪を私にはめた。
「これで、安心ですね」
「うん、……そうだね」
何が安心なのかいまいちわからないけど、彼女が安心といえば安心なのだろう。
私はカフェさんの胸に頭を擦り付け、カフェさんはそんな私の耳や尻尾を優しくさわる。
とても心地いい。このまま何も考えないでこうしていたい。
わたしは、ここちよさに、まかせて、そのまま、おなかを……。
※
そこで、私は目を覚ました。飛び起きて急いで自分の姿を確認する。
よ、よかった。いつもの耳と尻尾がちゃんとある!
安心してほっ、と息をついたが、すぐに私は頭を抱えた。
こんな夢を見るなんて、昨晩のカフェさんとの会話を意識しているのか、自分は。
私は、ウマトレが見たいだけなのに。
見たい、だけ、だよね?