断頭台のアウラは嘘をつく   作:未知華

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第2話 

 

 アウラがハントの家に来てから数日後

 

 この人間はどうやら山菜や狩りで獲った肉を近くの街で売って生計を立てているらしく、街の人間から戦争の状況など様々な情報が入手できること、山の中で人目につかなく隠れやすいことを考えてここにとどまることにした。

 もともとヒンメルが死ぬまでは隠れているつもりだったので問題はない。

 

 なぜ夜の森の中にいたのか、自分は何処から来たのかなどは話せないがここにとどまらせてほしいと言ったらあっさりと了承した。

 もしダメだったら服従させる魔法(アゼリューゼ)を使うつもりだったがその必要はなかったようだ。

 

 ………私がいうのもなんだけど警戒心がなさすぎじゃないかしら?

 

 人間は昼間は狩りに出ているか街までおりているかで家の中にいないためその時間で魔法の研究をしている。

 この前火をおこすことに苦労していたところに魔法で火をつけたらひどく喜ばれた。

 

 この程度のことであそこまで大はしゃぎするなんてやはり人間の魔法技術は大したことなさそうね。

 

 魔法に関しては趣味のようなもので何もしていないときは家の中で魔法の研究をしていても良いか、と聞いたところあっさりと許可された。

 外に出なくて良いから居場所がバレる心配も減るし、魔法の研究も出来て一石二鳥だ。

 服従させる魔法(アゼリューゼ)を使っていないため常に変身の魔法を使っていないといけないが、これも鍛錬の一環と考えれば悪いことだけではない。

 

 この家はそこそこ広いようで部屋が余っており、空いていた一部屋を自室兼魔法の研究室として使っている。

 

「アイラさん、夜ご飯ができましたよ」

 

 人間はどうやら私に対して気を遣っているらしくあまりこちらには干渉してこない。

 こうして食事のときなどに呼びにくるくらいだ。

 

「分かりました、今行きます」

 

 人間は料理が趣味のようで毎回様々なメニューの料理が食卓に並ぶ。

 正直味の違いなどはあまり分からないのだが、美味しいというと喜ぶのでそう言うようにしている。

 

「そういえば、なぜハントさんは森の中に住んでいるのですか?」

 

 こうした会話も人間からの好感度を稼ぐためのものだ。

 何せ食事のときぐらいしかまともに話さないのだから、こうしておかないと見限られて追い出されるかもしれない。

 

 もしそうなったとしても服従させる魔法(アゼリューゼ)を使えば良いのだが、街の人間とのやり取りで不具合が生じるようになり、そこから私の居場所がバレる可能性があるためそれは避けたい。

 

「確かに最近ではわざわざ一人で山に住んでいるのは珍しいですね。気になりますか?」

 

「はい、山菜採りや狩りをするなら街に住んでいてもできるのではないですか?」

 

「……この家は、昔父が住んでいたものなんです。母は俺を産んだときに死んでしまって、父も魔族との戦争に巻き込まれて死にました。もし自分に何かあったらここに来いと父には言われていて、一度連れてきてもらったことがあったのでその記憶を頼りにここに来てそのまま暮らしているんです」

 

(なるほど、ところどころで壁や床の状態が違うのはそのためね。大方放置されていてボロボロになっていたところを直したのでしょう)

 

(でもなんでそこまでしてここに住もうとするの? 確かに狩りをするなら森に住んでいたほうが都合がいいかもしれないけれど、獣だけでなく魔物に襲われる危険性だってある。それに人間は群れる生き物のはず。どうしてわざわざ一人で森の中で暮らしているの?)

 

「ですがもうお父上はいないのでしょう? なぜまだここで暮らしているのですか?」

 

「……………………そう、ですね」

 

(!? 何かまずいことをしたのか!? 今の質問がいけなかったのか!? いったい何がダメだった!?)

 

「もちろん、ここに住んでいるほうが狩りなどに都合がいいというのも理由の一つです。ですが、そうですね」

 

(良かった……怒らせたわけではないみたいね。でもそれならますます分からないわね。怒るほどのものでもない理由でこんな山の中に住んでいるというの?)

 

「一番の理由は忘れたくないから、ですかね」

 

「忘れたくないから、ですか?」

 

「はい、街に住むと言う選択肢もあったんですがそうすると父のことを忘れていってしまいそうで。もちろん完全に忘れるということはないのでしょうが、それでもなんというか……つながりというんでしょうか、そういうようなものが無くなっていってしまいそうでそれが嫌だったんです」

 

「つながり……」

 

「あまりうまく説明できなくてすみません」

 

「いえ、ありがとうございます」

 

(なるほど、人間は死んだ相手ですらつながりを大切にするのね)

 

「ハントさんは、お父上を殺した魔族を恨んでいますか?」

 

「魔族を恨んでいるか、ですか? …………そうですね、あまり恨んではいないですね。勿論全く恨んでいないと言ったら嘘になりますが、魔族はなんというか天災のようなもの思っているというか」

 

「天災、ですか?」

 

「はい、嵐や吹雪のような来ると分かっていてもどうしようもないものだと思っているんです。もちろん騎士団や戦士、それこそ勇者一行の方々だと違うんでしょうけど」

 

(なるほど……人間は全員魔族を恨んでいると思っていたけれどそういう考え方もあるのね)

 

「教えて下さりありがとうございます」

 

「いえいえ、この程度のことでよければいくらでもお答えしますよ」

 

 この後も他愛も無い会話を続けて食事をとり、この日は終わった。

 

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