断頭台のアウラは嘘をつく   作:未知華

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第7話

 

 アウラがハントと結婚してから一週間後

 

 いつも通りの朝を迎え、いつも通り朝食を食べている。

 違うところといえば今日はハントが家にいることだろう。狩りは今日は休みだし、街に買いに行くようなものもないので今日一日は家にいるらしい。

 だがそれ以外に変化はない。今日の予定といえばいつも通り魔法の研究をし、いつも通り食事をとり、いつも通り寝るだけだ。

 

「……いつも通り、ね」

 

「アウラさん?」

 

 ハントが前と変わらずいつも通りの呼び方で私を呼ぶ。

 

 そう、いつも通り、何もかもがいつも通りなのだ。

 結婚をしてから一週間経ったにも関わらず何も変わっていない。

 口調に関しては納得しているし別にそのままでいいが、距離感すらそのままなのはどうかと思うのだ。

 

 私がこの家に来たときからハントはずっとこうだ。

 常にこちらに気を遣い、自分を下に置いている。

 この家の家主は彼で、私は居候させてもらっているという立場なのだから、もっと私に対して強気に出てもいいと思うのだがそういうそぶりをしてきたことはない。

 

 結婚してからもそれは変わってない。

 もちろん来たばかりのころと比べると距離は近くなっているが、やはりどこか壁のある、一歩引いているような距離感のままなのだ。

 

「いえ、なんでもないわ……ただ、結婚したからといって何か変わる訳でもないのねって思っただけよ。結婚ってもっとこう……互いが互いを信頼しあっている証とか、互いの関係が対等なものだと証明するものとか、そういうものだと思っていたから」

 

「まあ結婚といってもとくに何か大したことをした訳ではありませんでしたしね」

 

「……あなたの告白は、十分大したことだったと思うけど」

 

「そう、ですかね? 告白といっても自分から言ったわけではないですから」

 

 少し恥ずかしがりながらハントが言う。

 どうやら彼の中では自分からではなく、私に促されたから告白をしたということになっているようだ。

 たとえそうだとしても自分の気持ちを出力することはそんな簡単なことではないと思うのだが。

 

「アウラさん? どうかしましたか?」

 

「……ねえ、私に頼みたいこととかないかしら? 結婚したから今は少し違うかもしれないけど、私って居候させてもらっている身でしょう? だから改めてなにかしてあげようかと思って」

 

「頼みたいことだなんてそんな、今でも十分助かってますからそんなに気を遣わなくてもいいですよ」

 

「…………そう」

 

 予想通りの答えが返ってくる。

 今までも何回かこうして質問をしたことがあるが、そのときも同じような答えを返された。

 ハントはよく私に対し気を遣い、欲しいものやして欲しいことを聞いてくる。だが自分の欲は表に出さない。こちらから何かないかと聞いても大丈夫と返すだけだ。

 

「……アウラさん、もしかして怒ってますか?」

 

「あら? どうしてそう思ったのかしら?」

 

「いえ、ただなんとなくいつもと雰囲気が違うような気がしたので」

 

「いつもと、ね…………あなた、私には気を遣うなって言うくせに自分では私に対して随分と気を遣ってるわよね」

 

「そう、ですかね……これでも最初の頃よりは楽に話せているつもりなんですが……」

 

「最初の頃と比べたらそうでしょうね。でも少なくない時間暮らしてきているっていう距離感ではないんじゃないかしら。私から何かないかって聞いてるのに全部を断るのはどうかと思うのだけど」

 

 どうしてそこまで私に気を遣う? どうして私に何も頼もうとしない? 私はそんなに頼りないのか? 私では力不足だとでも言うのか?

 

「それはそうなんですけど……一緒に暮らしてもらっているだけでも満足だったのに、結婚までしてもらってこれ以上を求めるのは申し訳ないというか」

 

 は?

 何を言っているんだこいつは?

 ()()()()()()()()

 私が仕方なくで結婚を受け入れたと思っていると?

 ふざけているのか……?

 

「……ねえそれ、私がしょうがなくあなたと結婚したって言ってるように聞こえるんだけど?」

 

「そんなことありません!!」

 

 ハントが強く否定する。

 もちろん私も彼が心からそう思っているなんて考えてはいない。

 だがほんの少しだけそう思っているんじゃないか、心の片隅にそういう気持ちがあるんじゃないか、そう思ったら言葉は止まらなくなっていた。

 

「確かに私は知識としてしか結婚だったり夫婦のことは知らないけど、それがどれだけあなた達人間にとって大切なものなのかは理解しているつもりよ。決して一朝一夕で成り立つような関係ではないし、無くすことも簡単には出来ない、とても深くて複雑で、それでいてあなた達人間にとって尊ぶべきものだということはわかってる。それを仕方なくだとか、そういう軽い気持ちで決めたと思っているんじゃないの?」

 

「違います!!」

 

「だったらなんなの!? 私がちゃんと自分で選んで結婚したって思ってるなら遠慮なんてする必要ないでしょう!? 互いを信頼しあって互いを対等に扱って、結婚するって、夫婦になるってそういうものじゃないの!?」

 

「それは……………………」

 

「……もういいわ、私部屋戻るから」

 

 ハントの返事も聞かずに部屋へ向かう。

 こうなることはわかっていた。魔族と人間、相容れないもの同士が同じ空間にいて何も起こらないはずがない。

 この程度のことは想定済みだから何も問題はない。

 なにも問題ないのだ。

 

 




うーん難産!!
なんもないとこから生やすのは大変ですね!
一応言っておくと仲直りしますので安心してください。
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