プロローグ~星皇騎士は聖女と偽悪役令嬢を救う
とある世界にて
「この私、リーヴェス王国第一王子であるガドルド・リーヴェスの名の下に聖女を騙る魔女、クーセリア・アーレスとの婚約を無効とし更に国外追放処分とする!よって星姫・V・アリアとの正式な婚約を結ぶ事を此処に宣言する!」
「そんなお待ち下さいガドルド様!?私は決して魔女などでは…アリア!一体どうして!?…」
「…」
第一王子によって突然想像もしていなかった言葉を告げられた水色ロングヘアーの美しい少女、クーセリアは当然困惑し、王子の近くに居た親友であるアリアに問いかけるも何も答えは返ってこない。
「何か可笑しいとは思っていたんだ!平民如きが魔力持ちだなんてよお!」
「最下級の下民にはお似合いですな!」
ガドルド王子の取巻貴族の男達がクーセリアを口々に罵倒する。
突然否応にも突き付けられた事実にクーセリアは絶望するしかない。
「五月蠅いぞ魔女め!既に決定した事なのだ!衛兵共、魔女を早急に追い出せ!」
「「はっ!」」
「い、嫌!?離して下さい!…」
王子の命令を聞いた衛兵達によってクーセリアは抵抗する間も無く捕まってしまい王城の外へと追い出されそうになっていた。
其処に…
「何だあ?漸く見つけられたと思っていたらこの状況は…」
「な、何者だ!?番兵は一体何をしている!?」
突然一人のフードを纏った謎の男が現れ周囲は混乱する。
「門番兵の人達ならこっちの話をちっとも聞いてくれなかったものだから無力化した…それよりも君…」
突如として現れた男は衛兵達に追い出されそうになっていたクーセリアへと近付こうとする。
「え、衛兵!その男を早くひっ捕らえろ!」
「「は、はっ!」」
だがそれは王子の命令を聞いた他の衛兵達に阻まれる。
「ったく出来る限り穏便に済ませてやろうとしていたのにしょうがねえ奴等だな!…」
「「ぎゃああああ!?…」」
「「!?」」
男は取り囲んできた衛兵達をいとも容易く全員吹き飛ばした。
そして難無くクーセリアを抱き寄せる。
「あ、あの…貴方は一体?…」
「今は詳しい事は後にしてくれ、それよりちょっと失礼するよ」
「ひゃっ!?///~…」
男は抱き寄せたクーセリアの胸にそっと手を翳した。
すると…
「これは!?…」
クーセリアは着用していたガドルド王子が選んだ趣味の悪いドレスから水色の巫女衣装の様なドレス姿へと変化していた。
男の手には何時の間にかクーセリアの纏った衣装と同じ色の御札の様な物が握られていた。
『目覚めるのです!…』
「んあ?何処だ此処!?…」
俺の名は星真宮 皇聖、何処にでも居る至って健全なオタク男子高三年だ。
所で俺ってどうなったんだっけ?
『私は神の一人…貴方は不運な事に交通事故に遭い命を落としました…』
「そうだった!?」
聞こえてきた謎の神様の声で俺は思い出した。
確か暴走車に轢かれてしまいそうになっていた幼女を助けようとして…呆気無く死んだという訳か。
『ですが…貴方の魂の運命はまだ終わってはいません』
「どういう事ですか?」
『貴方はいずれ世界を襲うであろう様々な危機に対抗出来うる星霊皇騎士の力を宿す者であるからです』
「うっ!?…」
そう神に告げられたかと思うと俺の頭の中に膨大な量の情報が流れ込んできて襲ってきた痛みに頭を抱えるも割とすぐに収まった。
「思い出した!…」
『前世の貴方が力を分け与えた巫女少女らはそれぞれ別々の異世界に生まれ変わっています。
彼女達を探し出し共に世界の危機を退けるのです』
「分かった!…俺にそんな力が有るなら!…」
『ついでに言うと巫女の力を宿した者は貴方の世界には存在しておりませんでした…』
「知りたくなかった衝撃の事実!?」
俺に恋人が全く出来なかった理由ってそのせいだったのかよ!?
「水星霊皇の巫女、【ティンクルアクアリウマー】だったか!…よし!星霊装!」
「「!?」」
そうして俺は転生し異世界に辿り着くと神様の言葉通りに居る筈の前世の俺の力を与えられたであろう星の巫女の少女達を探しに駆け巡った。
漸くいきなり二人の反応を見つけ出した俺は反応の有ったお城に急ぎそこで執り行われていた騒ぎに聞き耳を立てていたが酷いものだと確信し得たので介入する事を決めた。
俺は水星霊皇の巫女の力を宿していた少女の力を解放し握っていた御札を掲げ何処からともなく出現した水色の籠手を手にする。
「ティンクルアクアガントレット!いくぜ!」
「こ、虚仮脅しだ!お前達!奴を撃退しろ!」
「「うおおおおー!」」
俺の気迫におもわずたじろいだ馬鹿王子だったがすぐに取巻達に命令を下し奴等が俺に向けて魔法を繰り出してくる。
だがそうはいかない。
「馬鹿な奴等だ…<ティンクルアクアトルネードストライク>!!」
「「ぎゃあああああー!?…」」
ガントレットから水流の嵐を繰り出して取巻達を纏めて吹き飛ばした。
「ななな!?…」
「まだやるか?」
俺は狼狽する馬鹿王子を冷ややかな目で見ながら告げる。
「くっ…まだだ!者共!」
「「う、うおおおおー!…」」
「諦めが悪い奴だ…ん?」
馬鹿王子は諦め悪く残っている雑兵達に突撃命令を下す。
対応していっていると何か彼等の動きが少々可笑しい様な事に気が付く。
「…」
「!…」
馬鹿王子にアリアと呼ばれていた紫ツインテールの少女が虚ろな目で此方を見ていた。
真逆!?…
「ちょっとすまん!」
「!?」
「き、貴様!俺の女に何を!?…」
嫌な予感を感じた俺は急いで彼女に接近し断りを入れてから彼女のドレスに手をかけて強引に破り裂いた。
「やはり!…」
「あ、アリアその傷は!?…」
下着姿が露わになった彼女の美しい筈の体のあちこちには酷い傷がいくつもつけられていた。
これにはクーセリアも驚きを隠せない。
「…」
「テメエの仕業だな?」
アリアは何も答えてくれない。
代わりに俺が傷を付けたであろう人物を睨みつける。
「バレてしまっては仕方無い…その女は【魅了】の力を持っていたがたまたま私を含む数名の者は彼女の力が効く事はなかった。
だから飼い殺しにする事にしたのだよ!」
「そんな!?…アリアが…」
彼女に傷を付けた主犯である馬鹿王子は開き直ってそう言い放った。
クーセリアは真実を聞き泣きそうになっていた。
「成程ね…この屑野郎が!…」
「なんだと?…」
「アンタに尽くそうとしてきた彼女達を傷付けあまつさえ醜い欲望の為に利用してきた…テメエには生まれてきた事を後悔するくらいキツーイお仕置きを与えてやる!」
「下民如きが王と成り得るこの私に盾突こうというか!」
「下民はテメエの方だ!暴力で支配する事しかしてこなかったテメエなんかに王になる資格などない!
彼女達を縛る呪縛は俺が断ち切る!」
「きゃ!?…」
俺は馬鹿王子への怒りを爆発させ、アリアを抱き寄せる。
「い、言わせておけば!…者共!」
「「…」」
「どうした?何故動かん!?…」
「哀れだな…まだ気が付かないのか?彼等がどうしてテメエなんかの命令に従っていたのかをよお…」
「し、しまった!?…」
馬鹿王子の命令を受けた残存兵達だったが一向に動こうとはしなかった。
そこで俺が言い放つと馬鹿王子は漸く気が付く。
彼等は魅了されたアリアの言葉に只従っていただけに過ぎない…決して馬鹿王子の命令だけで行動していた訳ではなかった。
「せ、セリア…」
「アリア…今治癒するから!」
「あ、ありがとう!…」
「もう大丈夫だから!…」
ガドルド王子の暴力による支配に只怯えるしかなく親友であるセリアをも傷付けてしまう事になった私は突然現れた謎の男性によって真実を看破された。
男性が襲いかかってきた王子の取巻達をいとも容易く吹っ飛ばし王子から離された私はセリアによって治療される。
「やっぱり君が二人目だったんだな!」
「え?…」
其処に男性がそんな事を告げてくる。
それってセリアと同じ様な力が私にもって事?…
男性はセリアにやったように私の胸に手を翳す。
「ひゃん!?///ちょ、ちょっと!…」
私はヘンな感じがしておもわず声を出して魅了の力を使ってしまう。
でも男性には効いていない様子だった。
は、恥ずかしい!…///
私の恰好は屑王子が着せてきたものよりも遥かに可愛らしいセリアと色違いのドレスになっていた。
「君に宿し託していたのは鉱星霊皇の巫女<ティンクルセイクリッドリウマー>だったか…」
「あ、あのこの力って一体どういうものなのですか?」
「それについては後で話す、今は…」
セリアの疑問に男性は後でと告げ御札を掲げながら叫ぶ。
「ティンクルセイクリッドアーマー!」
男性は宝石が散りばめられた不思議な鎧を纏って再びガドルドに向き直った。
「私の飼い犬として大人しくしていればよかったもの」
「ガドルド…私はもう貴方なんかに従いません!…私だけでなくセリアの事も傷付けた貴方を絶対に許さない!皆の者!国を陥れる逆賊らを捕らえるのです!」
「「はっ!」」
私が下した命令を受けて今迄止まっていた兵達がガドルド達を拘束しようとする。
「こ、こんな所で終わってたまるものかあー!」
「!?」
「「うわあああー!?…」」
ガドルドが発したとんでもない魔力の波動を受けて兵達は吹き飛ばされてしまう。
でも何故?彼にあそこまでの魔力は持ち得ていなかった筈…。
「保険を掛けておいたのだよ!闇の商人から買ったこの特別製のマジックポーションでね!」
「非合法のアイテムですって!?…」
「そんな物を使えばどうなるか理解しているのですか!?」
ガドルドが取り出し見せてきたのは正規の手段で製造された物ではないマジックポーションだった。
そんな物を使用すればどうなるか分からない…セリアも警告を発するが既に襲いようだ。
「ぐ!?グオオオオオー!」
違法ポーションを摂取したガドルドは苦しみだしたかと思うとまるで魔物の様な唸り声を上げて襲いかかってくる。
「と、止まりなさい…!」
魅了の力は効かないし新たに得たこの力の扱い方も未だ分からない。
「アリア!?…」
「マズハァ…オマエカラシネェー!」
「ッ!…」
「これ以上彼女達を傷付けさせてたまるか!」
違法ポーションの副作用で魔力暴走を引き起こしたガドルドは私に狙いを定めて襲い掛かってこようとするが男性が庇った。
「オレハトクベツナノダアー!」
「いい加減にしろ!テメエの自惚れなんか聞き飽きてきてんだよ!」
暴走した馬鹿王子に俺は言い放ちながらトドメの一撃を仕掛ける。
「<ティンクルアクアセイクリッドノヴァ>!!」
アクアモードに切り替えたセイクリッドアーマーにガントレットを翳してパワーを収束させて馬鹿王子に撃ち放った。
「グオオオー!?……」
馬鹿王子は聖なる水流の波動に飲み込まれて跡形も残らず消し飛んだ。
「終わったか…」
「はあはあ…」
「なんだかどっと疲労感が…」
「おっと!」
馬鹿王子が消し飛んだ後、巫女の力を解放させた二人が疲労に襲われて倒れそうになったので俺は慌てて抱き留めたのだった。