真・女神転生オタクくんサマナー 薄明記録あるいはキリギリス回想記 作:ほびー
序 混乱の始まり
話をしよう。あれは今から36万……いや、1万4千年前だったか。
失礼。
おおよそ1年前ぐらいだったか、つい先週のようにも思えるし、10年ぐらい戦ってるような地獄を見ているんだ。
あれはそうだな、2年前以上前だろうか。
2019年初頭、世間では精神暴走事件がおおよそ収束したころだった。
霊脈の活性化が観測された。
霊脈……レイライン、龍脈とも呼ばれる大地の下、膨大なエネルギーの渦が流れている。
これは人間が発する霊気、いわゆる生体マグネタイトが長い月日を重ねて、世界中から汗、体液、生命活動を通して土の下に高まったものとも、あるいは魔界魔法のエネルギー源である魔界のエネルギーが、冥府は土の下にあるという認知から地面の下に繋がっており、それがこぼれ落ちて渦巻いていたものとも、あるいは彼らが倒した世界龍が発していたエネルギーなのか。
もしくはこの地球を守護する。繋げられ続けた量子ネットワーク、人々の深層心理の渦、是と非のフォースそのものか。
まあそれらの真偽はまだわからないし、複数の仮説があるし、どれも正しくてどれも間違ってるのかも知れない。
さすがにこれの検証はしたくない。
重要なのはこのエネルギーが、異界に繋がり、それを活性化させているということだ。
最初はたった数レベルの上昇だったが、やがて5レベル……あの頃においてはDBとして一段階違いが出る強さの悪魔に。*1
そして、10レベル以上の差が出てきた。
私たち悪魔業界は驚嘆した。
え? この程度で? と思われるだろうが、当時にとってはそれだけありえないことだったんだ。
1~2レベルのレベル差に一喜一憂し、悪魔を繰り返し倒し、高みにあるものに指導をしてもらい、一つずつ強くなる。それが当時のDB、覚醒者たちの王道だった。
それがいきなり悪魔が段飛ばしに強く、強力な悪魔が
全国で適正レベルで修行していた、あるいは管理していた覚醒者たちの被害と悲鳴が上がりだした。
これに拍車をかけたのが、終末の噂だった。
予知能力を持つ幻視者、悪魔、未来を占う預言術のことごとくが十数年先の未来が見えない、断絶したという報告が相次いだ。
世界は終わる。
心の怪盗団の事件が世間を賑わしていた頃に囁かれていた噂が世間に流れ、私たち悪魔業界のものたちはその未来予知情報から真っ二つに別れた。
一つは終末逃避。
これに関しては今の時代の誰かや、あるいは次の世界の君たちも覚えがある、あるいは考えていることかもしれない。
避けようがない災害に対して逃げることは決して間違ってはいない。
辛いこと、苦しいことに関しては距離を置く、叩かれ続ける必要はない。
誰もが立ち向かえるほど強くはない、それが現実だ。
そして、これには名のある強者や、歴史ある組織、一般的なDBから、覚醒者たちまで大半の人間が皆姿を消した。
今でもまだ隠れ住んでいるものは少なからずいるだろう。
私たちの戦いに付き合いきれないと再び
彼らの未来が幸有るものだと祈ると言えればいいのだが、そうならない確率が高いことを私たちは知ってしまっている。
ままならないものだ。
2つ目は支配統治。
いわゆる一つの火事場泥棒だ。
隠れ、逃げ去り、支配を蜂起された空白地帯を支配しようと、動くものたちがいた。
これは新参の成り上がりが多くを占めていたが、ガイア系列や、メシア勢力もまた加わっていた。
まあそのどちらも次の世界で自分たちが支配するために力を蓄える、そのための強奪だった。
本来維持されるべき治安は誰もが手放しに、一般人を含む気にいったものを拉致し、異界を維持するための人間牧場に繋げる。
上がり続けるGPと消え去る力あるものたちに、見えない未来。
今から振り返ればあれは確実に文明が滅び、人類社会は崩壊するところだった。
力だけが支配する、最後の最後まで貪り続ける者共がもろともに洪水に流されて、僅かな生き残りだけが残る終末神話になったのだと。
人は人の愚かさで滅び去る。
方舟のノアとソドムとゴモラから逃げ出したロトだけが助かる神話再現になる。
そのはずだった。
なんか捨てちゃいけない大事なものを思い出した誰かの一言がなければ。
「世界滅びたら来週のジャンプ読めなくね?」