真・女神転生オタクくんサマナー 薄明記録あるいはキリギリス回想記 作:ほびー
本官は警視庁特別資料《しりょう》課分室・悪魔対策機動捜査隊の杉本佐一だ。
あの頃の話だな、そうだな、どこから、ん? 特別資料課とはなにかから説明してくれ? んなもんどこの組織でも聞けばわかるだろ、いや、それもないこと想定?
わかったわかった。
じゃあざっくりとだが、説明するぞ。さすがに警察の説明とか警視庁がなにかとかはいらないよな?
警視庁特別資料《しりょう》課、通称第0課は言わばオカルト、ざっくりいえば超常現象、悪魔、異能者、霊地、特異存在に関わるもの全般に関わる警視庁の秘密課だ。
警視庁の埋葬課とはまた別のオカルト担当の部署だ。
これらは第二次大戦後、その手の超常現象を担当していた超國家機関ヤタガラスがGHQの介入によって解体され、そのあと超常現象類、悪魔が関わる事件に対して国の治安機構で対処する管轄がないために設立されたものとされている。
まあ実際にはほぼ素人の塊で、民間の拝み屋、市井に溶け込んでいたヤタガラスの関係者などにそれとなく依頼を投げて、なんとか凌いでたわけなんだが、それも限界があり、一般の拝み屋……まあ現代のデビルバスターや、異能を用いた私立探偵、立場を変えたヤタガラスの関係者などが加わり、段々とノウハウを身に着けて、簡単な事件なら解決できるようにしたわけだ。
(悪魔退治などの類なら今まで通りデビルバスターや復活したヤタガラスに投げるのではだめだったんですか?)
いい質問だ。
実際のところ現代の第0課や俺たち対悪ならともかく、当時の面子だとほとんどレベルも2~5、10もあれば高いっていう面子だったって聞いてる。
だがそれでも必要だったのが、国際事件や、ヤクザのクズどもや組織犯罪、まあ色々デリケートな問題に、悪魔や異能者が絡んでる事が多かったからだ。
例えばヤクザ共の連中に悪魔が混じってるとする。
この場合、どこか最初に対処する? うちじゃない、
過半数が悪魔っていうならうちみてえなのが対処するが、その中の一人か二人が悪魔だったり異能者ってならわからねえし、普通に考えてそいつだけマークしてヤサごと叩くっていうケースでもなければ、ぶつかるのが四課の連中なんだよ。で、その中でおかしい強いやつが居たってことで初めて、第0課に情報が回るわけだ。
まあ時にはその強い奴を真っ向からぶちのめしちまって、そこから覚醒してたことに気づいて所属が変わることもある。俺がその口だ。
とはいえ今は悪魔の存在が暗黙の了解になってるもんだから、護符や、それを対処するようの重装備などもぶつかるだろうところにはどこでも配備されてる。
今の時期までに色々と急激に変わっちまったもんだ。
と昔を懐かしんでる場合じゃねえか、第0課の説明はここまでにして、対悪……悪魔対策機動捜査隊は、この第0課でも悪魔への直接捜査及び戦闘を前提にした面子で構成されてる。
戦闘特化というか暴力担当だな。
ペルソナ使いなどが関わってたマレビト事件や精神暴走事件、悪魔を使った人間拉致、あとファントムソサエティの連中ともやりあってたし、今もやりあってる。
解決した事件もあるし、まだ捜査中の事件も腐る程ある、そのあたりの話はここまでだ。
で、あー、そうだな。滅びの噂が流れてた頃だったな、まだファントムソサエティの連中がくたばってなかったころだ。
あの頃は何もかもがどん底だった。
悪魔業界だけじゃない、世間の空気もどん底だった。
頭のいかれた政治家がどうでもいいことで議会で大声を上げてるし、景気はよくないし、気温も日に日におかしくなって、エコテロリスト共とカルト共が人類が悪いだの、地球が悲鳴を上げるんだ! とか耳が腐りそうな頻度で叫ぶわ、忙しい日々だった。
こんな世の中を守る価値があるのか? そんな風にうんざりと言うやつもそこそこいたよ。
そんな時に、世界が終わるっていう噂だ。
まるで1999年と2012年、世紀末*1と人類滅亡説*2が流れてた時のような雰囲気だった。
唯一の違いはあの頃みたいに恐怖の大王がなんたらってテレビで大真面目に喚いてないだけで、それ以外はそっくりだった。
そっくりだったってのは同じことがあったってことだ。
世界が終わりに近づくと自殺者が増える。
なんで世界が終わるのに自殺するやつが出るんだって? そりゃあ楽に死にたい、怖いものから逃げたいっていう気持ちだろう。
死ってのは色々な動機があるが、自分から選ぶのにはパワーが要る。勇気がいる。
だがそのパワーを簡単にひねり出す方法が一つだけある。それが逃避だ。
現実逃避と同じだなおい。
んで、それで自分だけで死ぬならまだいい。さらに最悪なのが、道連れを求めることだ。
――道連れですか?
心中だよ。無理心中ってやつだ。
どうせ死ぬなら誰かと死ぬなら怖くない、どうせなら好きな相手がいい、そうやって話したこともない相手とか、ただのファンからこじらせたストーカーになって無理心中を計る。
そんなことが多発してた。
芸能関係には山のように脅迫状や殺害予告が出てきて、表も当然だが、俺たちも引っ張り出されるぐらい忙しかった。
今でも少ないわけじゃないが、あの頃は今の三倍……いや表立ってないだけで五倍以上はいただろうな。
アリ共も分類としては自殺に近い、現実逃避だ。
――当時の人間曰く、緊急避難のつもりだったという声が多いようですが。
緊急避難?
百年後に日本が沈没するので、今から強盗して海外に高跳びしますってのが緊急避難かよ。
人間は集団性の生き物だ。周りがやっていることにつられて、自分もそれが正しいと思って引きずられる。日本人はそれが顕著って言われてるな。
アリ共の異界避難は本気で逃げ出したやつなんて三割以下、あとは周りがやってるからってつられた奴だ。
そんでもってそれを意図的に作ってたやつがいる。
三業会に、メシア教、それと新世塾の連中に、なによりもファントムソサエティだ。
海外では三業会によるマフィアの扇動、十字教では大司教まで抱き込んで、日本ではピンとこないだろうがものすごい数の人間が死んだ。
下手すりゃあ第三次世界大戦を起こそうとしてたっていわれて、今でもまあやれただろうなって思ってるよ。
合衆国大統領や、劉鳳の幼馴染の魔剣嬢ちゃんがいなかったらどうなってたことやら。
んでもってそれとつるんでたり、まあお互い様にやってたのがメシアン共に、色々と政策として動きを鈍らせてたり、自衛隊の権限を強く働きかけてたのが大和田元議員や、島津の糞どもってわけだ。
そこに便乗していたのがファントムソサエティ。
あいつらがやってたことは色々ありすぎて一口で語るのは難しいが、うんざりしたのが人間オークションだな。
一般人、異能者を問わずに、技能や見た目がいいやつを拉致して、闇オークションの商品にしてたんだよ。
文字通り人身売買だが、これに参加する奴らが多かった。それこそ需要に追いつかず、真似する集団や、カジュアルの馬鹿どもが雨が降った後の筍みてえに出てくるぐらいにな。
普通じゃなかった。
人間の拉致は当然だが、それを監禁するってのは口で言うほど簡単じゃない。その時間が長ければ長いほど無制限にリスクを背負うし、露見する可能性が高くなる。
平時なら手を出すような奴はよほどの金とそれで動かせる手駒、権力を持ってる奴ぐらいだ。
犯罪ってのはやればやるだけにじみ出る悪臭みてえなもんだ、俺らからすればぷんぷん臭ってぶん殴りたくなる屑共だ。絶対に生かしちゃおけねえな。
だが終末が迫っているっていうならそのリスクを踏み倒せる。そんな錯覚を与えてた。
明日地球滅亡するってならなんだってやれるってもんだ、明日世界が滅んでも林檎を植えるような奇特な奴は多くねえ。
ついでにあいつらがばらまいてた異界作成キットが、場所問題を解決させた。
普通の警察になら絶対に見つからない監禁場を用意できるってなら手を出す奴らは多い、多かったってことだ。
あの頃は第0課はもちろん、俺たち対悪がいるなんて想像してなかった素人が多かったよ。
なんで警察が! とか言うジジイから、半グレ共のガキどもに、あとあの全身破壊されてた屑もいたな。
自分だけが特別で、他に同じ力と対抗手段を用意してる組織があるってのを考えもしなかった奴は多い。想像力がなかった。
こんなにも色んな情報や同じように扱ってるフィクションもあるってのにな、連想することも出来なかったんだろう。
まあ明日を考える想像力があったら罪を重ねることもねえし、他人の痛みを想像出来るような奴ならあんなことをやってなかった。
俺たちは人間の汚れたところばかりよくみて、その溝浚いをしてる仕事だ。
だからある程度割り切るのが大事だし、同僚たちもみんなやり方は色々あるが割り切ってる。
それでも自分にだけは恥ずかしいことはしたくねえけどな。
なんだって?
そりゃあ俺たちが警察官だからだよ。
3のクズどもをブタ箱に叩き込んでやれば、7のまともな連中が安心して過ごせるってもんだ。
それが昨日の俺たちが世話になってるコンビニ店員でも牛丼屋の店員でもいいし、明日買いに行くスーパーの販売員かもしれねえ。
人間なんてそんなものでいいさ。
それだけで頑張れるっていうのは、まー受け売りの言葉だが、まあまあかっこいいだろ?
人間かっこつけられなくなったら終わりだぜ。
にしても、まったく今から思い返しても事件が多すぎる。
空港が吹っ飛んだことといい、四度もあのくそ怪獣共とやりあうわ、あの潜水艦巡ってヤクザ共とのどんぱちだの。
これからも多いんだろうな。
定年まであとどんだけ解決すりゃあいいんだか……
まあ殉職まではやり続けるさ。
俺は不死身の杉本だけどな。