眷獣を宿したホムンクルスになりまして。   作:黒色ぬーめん

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16話です。今回アスタルテは出ません。

というか思いっきりオリジナル設定ぶち込んだので、もうこれ陰実世界なのかなって感じてます。

え?助手という名のミ○○が生きてる時点で今更?
んまぁ、それはそう。


16話 ただ一つだけ守りたいから

 

――アスタルテがゼノンと交戦する数分ほど前――

 

 

「……やっぱりこの辺りに師匠が居たいのか」

 

 

巨大な魔力を感じ取り、私はその場所へ向かった。

 

 

「……でもアレを使った形跡は無さそう。確かにあの魔力は大きかったけど、師匠のアレよりはまだ大きくない反応だった。問題はその後よね」

 

 

悩ましげに残滓を探るが、相変わらず()()()()。厳密には僅かに残滓は見えるが、他の魔力と混じって判別が非常に難しくなっている。

ずっと言ってなかったけど、師匠の魔力は普通の人より特殊らしい。何て表現すればいいのか分からないけど、強いて分かりやすく挙げるなら——

 

『無色透明』

 

特殊過ぎて判別が付かないが、その()()()()()()()が、私にとっては逆に良い目印になる。

だからその特殊すぎる魔力である程度は分かるけど、時間が経つとすぐに他の魔力に紛れて認識が困難になる。

 

 

「……師匠って魔力を使う時は分かるんだけど、師匠特有の特性のせいで他の魔力との判別かつかないほどに紛れちゃうから分かりづらいなぁ」

 

 

困ったように残滓を注意深く探ろうとした——その時だった。

 

ドゴオオオオン

 

地響きと共に遠くから大きな音が鳴り響く。

其方に目をやると、街の方で巨人とも言える大きさの化け物が暴れていた。

 

 

「――何、あれ……」

 

 

あまりの出来事に私は一瞬思考が止まるものの、首を横に振って我に返る。

 

 

「……とにかく急いだ方が良さそう。…………ッ。師匠、ごめんなさいどうか無事であることを祈ってます……!」

 

 

何処にいるか分からない師匠に謝罪しながら、暴れている化け物の方へ向かう。——もしかしたら、私も本気を出さないといけないかもしれない。

 

なんて思いながら、足早にその場を離れ、街へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

アイリス視点

 

 

 

―一体何が起こっているのか。

 

アイリスは赤い髪を靡かせながら深夜の王都を疾走する。

最初は耳を疑うような報告を受け、半信半疑で現場へと向かうが、彼女の下に次々とその報告が届く。

 

——建物が斬れた、と。

 

この報告の多さから、大規模な同時襲撃事件が起きていると結論付ける。だが、これらの襲撃に統一性が無い。

商会、倉庫、飲食店、貴族の私邸……。

何か計画性のある犯行なのは間違いないのだが、目的が全くと言っていいほど見えてこない。

 

だが、事実として王都は揺れていた。

騎士団が緊急で出動が掛かり、要人の避難も始まっている。

 

――明らかにただの事件ではない。

 

と、アイリスの直感はそう告げていた。

 

「一体何が起きているというのですか……!」

 

野次馬に向かう市民に対して家に戻るように叫びながら、焦燥した表情で現場に向かう。

と、その時——

 

 

「ば、化け物だッ!!応援を……!!」

 

 

騎士団の声。そう遠くはない。アイリスは方向転換して悲鳴の元へと駆けつける。

角を曲がり、路地裏を進んで大通りに出ると、そこには——化け物が居た。

 

醜悪かつ、巨大な化け物が。

 

 

「何よ、これ……」

 

 

それは肥大化して血塗れの腕を振り回し、騎士たちを肉塊に変える。

 

 

「離れなさいッ!」

 

 

流れるように抜刀する。闇夜に白刃が煌めき、化け物の胴を通り抜けた。

 

両断

 

一太刀で化け物を両断した。

 

 

「怪我はない?」

 

 

アイリスは倒れゆく化け物を尻目に、騎士団へと声をかける。

 

 

「アイリス様だ……助かった……!」

 

「流石はアイリス様だ!あの化け物に一太刀だ!」

 

 

彼らの身体はほぼ無傷であった。ここにいる生きている騎士は皆、僅かに傷などはあるものの、ほぼ無傷だった。——生きている騎士は。

 

 

「8人やられました」

 

 

死者はいずれも一撃。とても言葉で表せるものではないほどの凄惨な遺体に、彼女の瞳が揺れる

 

 

「あなたたちは遺体を回収して下がりなさい。隊長に報告を——」

 

「アイリス様ッ!」

 

 

突然、騎士の一人が叫ぶ。アイリスの後ろを指差しながら、他の者たちも声にならない叫びを上げた。

 

 

「なっ……!」

 

 

化け物の腕が此方に向かってきた。彼らを守るために咄嗟に剣を振ろうとした——その時であった。

 

 

「――はぁぁぁぁ!!!」

 

 

誰かが右腕を切り落とし、化け物の攻撃を中断させた。

 

 

「流石はアイリス様……!」

 

 

――違う。今の一撃は私ではない。

 

 

他の騎士は見えなかったが、今のは一撃ではなく、()()()()()()()()()()()。一体誰が放ったのか。

と、アイリスが考えていると、誰かが叫んで此方に呼びかける。

 

 

「――アイリス王女!助太刀します!!」

 

「あ、あなたは……!」

 

 

その人物は、医務室に居たアスタルテ——の助手。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

視点無し

 

 

 

 

 

 

「あ、あなたは……!」

 

 

医務室の担当医の助手。彼女の名前を聞いたことはない。が、多くの者からは『助手』と呼ばれている人物。

 

 

「何故あなたがここに……!」

 

「説明なら後でお願いします。怪我人は?」

 

 

説明を要求したアイリスだが、押し切られて仕方なく、現状を答える。

 

 

「ッ……。生存している騎士は無傷。それ以外は……」

 

 

それを聞いて察した助手は、何も言わずにほんの数秒だけ目を閉じて黙祷する。

 

 

「……分かりました。アイツについてですが、分かりやすく言えば『悪魔憑き』に似た状態だと思います」

 

「あ、悪魔憑き……!?」

 

 

その発言に、アイリスどころか他の騎士も驚いている。悪魔憑きについては知っているが、その果てがこれだというのか。

 

 

「アレは肉体が腐敗する奇病だと——」

 

「腐敗するのは、急激に増えた魔力に肉体が耐え切れないためです。よほど魔力に関して精通しているか、人為的にでもない限りこうはならないのですが……」

 

 

アイリスはいきなり重要なことを聞かされて、これが現実なのかと疑いたくなる。

しかし助手はそれを気にせず解説していた。

 

 

「そのため急激な再生能力を得ていると推察します。なので、普通の斬撃では有効打にはならないかと。——アイリス王女」

 

「え、は……はいっ!」

 

 

急に声をかけられて我に帰るアイリス。

 

 

「……時に聞きますが、アーティファクトは持ってきていますか?」

 

「……アレはミドガルの国宝です。いくら緊急事態とはいえ、おいそれと持ち出せません」

 

「……そうですか。なら、アイリス王女。アレは私が倒します」

 

 

その言葉に、アイリス含め他の人が驚いている。

 

 

「き、危険だ!相手はアイリス様の一撃でも倒し切れない相手だぞ!?」

 

「ッ……それに、貴方の言葉を信用していいのかまだ分かりません。再生するなら、出来なくなるまで斬れば——」

 

「――果てが見えないマラソンをやるつもりですか?魔力が切れたら此方が圧倒的に不利になります。それに——コイツそのものが陽動かもしれません」

 

「陽動ですって……?」

 

「これだけ目立つ存在かつ強大な存在なら、まずアイリス王女がここに釘付けになる。その間に何かしらのことをして、目的を達成させようとしていることもあり得ます」

 

 

アイリスは苦虫を潰したような表情で押し黙る。——言っていることは正しい。もしこれが全て本当なら、全て敵の掌の上で踊らされているようなものだ。

だが、目の前の相手にも踊らされているような気もしてならない。

どうするべきか、アイリスは迷っていた。

その時、あることが浮かんだ。もし、それが関連しているのなら……。

 

 

「……私は何をすればいいんですか」

 

「なっ、アイリス様!」

 

「……悔しいですが、彼女の言う通りです。もしこれが陽動なら、向こうの作戦にまんまと乗せられている状況です。……もし、これがアレクシア誘拐に関連しているのなら、時間をかけていられません」

 

「し、しかし……!」

 

「他に手が無い以上、今は最善策を選ぶしかありません。……貴女を信用していいんですよね?助手さん」

 

 

アイリスは助手に問い掛ける。

 

 

「――勿論。『非才なる身の全力を以って』」

 

「ひさ……何と?」

 

「……気にしないでください、アイリス王女」

 

「そ、そうですか……。それと、『王女』はやめてください。『アイリス』で構いませんよ」

 

「分かりました。……では、アイリス。秘策はあるんですが、貯めるのに少し時間が掛かります。30秒、時間を稼いでください」

 

 

急げと言ったのは何だったのか、と言いたくなるアイリスだが、ほかに手がない以上、その言葉を信じて剣を構える。

 

 

「わかりました。貴女を信じますからね。——聞きましたか!?ここは私と彼女に任せて、あなたたちは遺体を回収したのち、避難してください!!」

 

アイリスは騎士団に向けて叫んでから、いつの間にか再生した右腕の攻撃を受け止める。

 

 

「ぐっ……!なんて力……!これを30秒ですか……!無理ではないですが、無茶を言ってくれますね……!」

 

 

力負けしそうになるも、魔力を解放して弾き返す。チラリと後ろに目を向けると、騎士たちは動揺しつつも避難しつつある。それを見て少し安心しつつ、構え直す。

 

 

「……悪魔憑き、ですか。……貴方に恨みはありませんし、赦しを請いません。ですが、ごめんなさい……!」

 

 

剣を握る拳に力を込めて、化け物を切り刻む。

化け物は痛みに叫び声を上げる。

 

 

「……不服ですが、助手さんの言った通りですね。これではジリ貧になって、負けるのはこちらですか……!」

 

 

何度も剣を振るうが、向こうは何度も再生し、全快する。対して此方は大幅に魔力を消耗していく。加えて無茶な扱いのせいで、剣も長くは持たない。

 

 

「はぁ……はぁ……。助手さんはまだですか……!」

 

 

息が上がりながら、なおも剣を構えて、化け物に対峙する。その時だった。

 

 

「あああああぁぁぁぁぁぁ……ぼ、ボクノケンキュウノ、ジャマヲスルナァァァァァ!!!!」

 

「!?」

 

 

急に人語を叫んだことに驚くアイリス。そして、その驚きによって隙が生まれてしまい、飛んでくる拳に反応が遅れる。

 

 

「しまっ……!?」

 

 

咄嗟に剣で防ぐものの、あれだけ魔力を込めた反動故か、それが引き金となって粉々に砕けてしまう。

 

 

「……っ、まだだ……!剣がなくても、まだ……!」

 

 

拳を構えて、素手で化け物に挑もうとした。——だが、その時だった。

 

 

「――ありがとうございます、アイリス。充分です」

 

 

強大な魔力を感じた。自身より遥かに大きな魔力。これが、あの担当医の助手だと言うのか。

 

 

「その魔力は……!?……それに、その剣と手首は……」

 

 

アイリスは目を疑った。切っ先から刀身の端まで真っ赤な、持ち手の無い刃。そして、その刃の出現先が、彼女の手首からだった。

 

 

「詳しくは伏せますが、これが私の切り札です。後は任せてください。ここからは——私の喧嘩(たたかい)だ」

 

 

化け物はアイリスに目を向けず、強大な魔力に向かって襲い掛かる。

 

 

「助手さん!」

 

 

アイリスが叫ぶ。しかし、助手は、あの赤い剣で化け物の攻撃を弾く。弾かれた化け物は、大きく体勢を崩した。そうして無防備になった化け物に赤い剣を突き刺してから、持ち手の先端を掌で押し込めるように触れる。

 

 

「ぐぅあああああ!!?!?」

 

 

体勢を崩し、更に剣を突き刺され、化け物は叫び声を上げる。

 

 

「――これが貴方たちの末路ですか、ディアボロス教団。——哀れとは思いますよ。だけど……」

 

 

掌に魔力を込める。使うのは、師匠の技。何度も見て、教わって、自分なりに真似した技量。

 

 

「――お前らが私や父にした仕打ちを、許すつもりはない」

 

 

急速に魔力を込め、赤い剣を起点に化け物を上空へ吹き飛ばす。

 

話は逸れるが、この助手の剣について説明する。

この赤い剣は助手の血そのものである。血液は魔力の伝導率が100%となっており、己の魔力を1%のズレもなく送り込める。その血を凝固させ、魔力を絶え間なく流し、それを暴走しないようにコントロールしながら扱う。

無論、その間も自分の腕から血を流し、出血多量で死ぬことが無いように治癒しながら戦うという、超複雑な状態で戦わなければならない。

 

だが、この助手の奥の手は此れではない。

 

絶え間なく流した血の剣に、魔力の逃げ場を無くし、爆発寸前まで練り上げる。

そうして臨界点を超えてもなおコントロール下にある剣を、内包したまま放り投げる。いくら霧散すると言えど、絶えず練り上げて作った血の剣をコントロール下から解き放つ。その爆発力は——

 

 

「――超新星」

 

 

――上空に吹き飛ばされた化け物の再生すら追いつかないほど吹き飛ばすのには充分すぎる威力であった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

助手視点

 

 

 

 

 

「――助手さん!」

 

 

アイリスが助手の方へ駆け寄る。右手首からは止め処なく血が流れている。

 

 

 

「今止血します……!」

 

 

自身の上着を脱いで手首を縛り、助手の傷口を塞ぐ。今は包帯が無いので、応急処置をしている。

 

 

「……ッ、すみません……。これ使うと、魔力をごっそり持っていかれるもので……」

 

「なんて無茶を……っ!」

 

「今出来る最善の策を行っただけです……。成功するかは賭けでしたが……」

 

 

「それよりも」と助手は言葉を続ける。

 

 

「アイリス王女は急いでアレクシア王女の捜索を……。彼女の誘拐とこれが関連しているのなら、このゴタゴタの中で彼女を連れて国を出ているか、もしくは暗殺している可能性もあります……」

 

「しかし、今のあなたを放っておくわけには……!」

 

「―一介の医師よりも、自分の妹を優先してください!家族に会えなくなってからでは遅いんです……!!」

 

 

腕を押さえながら、助手は真剣な眼差しでアイリスに訴える。その目からは、生半可な人間が出せるものではない圧と説得力を感じさせるような感情が読み取れた。

 

 

「ッ……分かりました……。では、あなたもすぐに避難してください……っ!」

 

 

少し迷いつつも、アイリスは妹を探しにこの場を後にした。

その後ろを、助手は止血した腕を押さえながら見送った。

 

 

「…………どうか、アレクシア王女が見つかることを祈っています」

 

「――その必要は無いわ」

 

 

小さく祈りを呟いたその時、彼女の後ろから声がかかる。

 

 

「っ!!」

 

その声を振り返りながら、飛び退いて距離を取る。若い女性の声。しかし、聞いたことがない声だった。

——気付かなかった。声をかけられるまで、全く気配を感じなかった。

声の主と思われる相手は、漆黒に身を包み、黒いローブでフードを被っていて、僅かに漏れる金色の髪。顔は奇術師のような仮面を付けていて人相が分からない。

 

 

「――そう警戒しなくてもいいわ。あなたの敵になるつもりはないもの」

 

 

その声からは敵意は感じられないものの、助手は警戒を解く気はない。

 

 

「そんな怪しげな格好と振る舞いしておいて、はいそうですかと言えるとお思いで?それに、名前も知らない相手を信用できるとは思えないのですが……」

 

「信じるか信じないかはあなたの自由よ。けどそうね。名前くらいは名乗っておくわ。——アルファ」

 

 

助手は手を抑えながら、魔力を練りつつ、結んだ傷口から滴る血から剣を出そうとする。

 

 

「――やめておきなさい。無駄に死期を早めるだけよ」

 

「…………っ」

 

 

助手は魔力を練るのをやめる。助手から見て、相手の実力が一切分からない。が、ただ立っているだけなのに、一切の隙を見せないのが、自分よりも格上だと嫌でも見せつけられる。

 

 

「言ったでしょう?貴方と敵対する気はないわ、助手さん。それとも、この名で呼んだ方がいいかしら?」

 

 

――ミリアさん

 

 

「っ!!……何で私の名前を……お前たちは一体何なんだ……!」

 

 

驚愕する助手を気にすることもなく、淡々と助手の疑問に答えた。

 

 

「――シャドウガーデン。陰に潜み、陰を狩る者。」

 

「シャドウ、ガーデン……?」

 

「えぇ。……今は貴方のお師匠に伝言を残しておくわ」

 

 

その言葉を聞いて、助手は更に警戒心を高めた。

 

 

「……師匠を知っているんですね」

 

「えぇ。有名人よ、彼女は」

 

 

——暫しの沈黙の後、アルファの方から口を開く。

 

 

「――彼女に伝えておいて。『住居のお礼はまたいつか』、とね」

 

「……は?」

 

 

――何を言っているのか、この女は。

 

 

「彼女に伝えておいて。――それじゃ」

 

 

アルファと名乗った人物がその場を去っていく。

 

 

「ま、……ッ!」

 

 

アルファを追いかけようとするも、手首の痛みに足が止まり、蹲ってしまう。そのせいで完全にアルファ見失ってしまった。

 

 

「…………アイリスさん、申し訳ありません。まだ安静には出来なそうです……。師匠を、探さないと……」

 

 

助手は立ち上がり、借りた上着を着つつ、その場を後にする。

 

 

 

――切れた手首は、すでに塞がりつつあった

 




感想、要望お待ちしております。

章ごとに幕間と本編分けてるけど、分けない方がいいかな。(さっき確認したら言ってることがおかしかったのでアンケート訂正)

  • 分けずに投稿しまくれ
  • ソノーマーマーデイーイー
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