こっちもちゃんとやります。
アスタルテ視点
「……クク、あっはははははは!!!!」
何か急にゼノンが笑い出した。
「何を言い出すこと思えば、貴様には分からんようだな。ラウンズとは、教団の存在を知っていれば誰もが欲しがる称号だ。その功績と実力によって、一生尽きな財力……!朽ちることのない権力……!全てが手に入る!!」
「……剣術指南役も、真っ当な地位と推察」
「あんなもの、ラウンズに比べればゴミ同然だ!それより遥かに価値がある!」
ゴミ……?今コイツゴミって言ったか???
「……その為に『悪魔憑き』と名付けた彼女たちをあんな風にした、と」
「クズをどう扱おうが強者の勝手だろう。弱者は強者の糧となるんだ。寧ろ、あのまま腐るより、私がラウンズになる為の足がかりになったんだ。役に立って本望だろう?」
「……赤子のまま『悪魔憑き』になった者も確認されたこともありました。その力を無理矢理植え付けられて嘆いた者も。それでも——」
「くどいぞホムンクルス。その力に呑まれてくたばった失敗作に何の意味がある?」
……。
「――私利私欲のため。他に大義があるわけでもない、というのが結論と判定」
「人聞きが悪いぞホムンクルス。私という強者が、高みを目指す為だ」
――怒りとは沸点に大小あれど、それが許容限界を凄まじく超えた時、逆に酷く冷静になれる。先程までぐつぐつと煮え滾り、爆発しかねないほどの怒りが、まるで綺麗さっぱり無くなったかのように。
……。
…………。
………………。
「……かつて、私を利用した男がいました」
「……?何だ?いきなり」
ゼノンが怪訝そうな表情をする。
感情が止め処なく流れ出す。……怒りか、哀しみか。少なくとも喜びは無い。
「彼はある目的の為だけに私にある力を植え付け、国一つ滅ぼすほどの計画を実行しました」
尚も言葉は止まらず、ある男について語る。
「元々の用途ではない使い方であり、それを使えば、2週間も持たず死に至るほどエネルギーを要する対価を押し付けた。彼は計画のために一切の良心を捨て、数多の犠牲を出してきました」
……今でも脳裏に過ぎる。
「……私個人の感情に、彼に対して禍根、憎悪といった悪感情はありません。貴方と同じく、目的の為に行った手段は目に余ることが多くあれど、彼は不当に奪われた聖遺物を取り返そうとした。己が信仰する神を冒涜することを許せないから。……その点に関しては、彼にも正義があったのだと推察します』
どうでもよさそうな顔で話を聞いていたゼノン。
「……それで?何が言いたいんだい?」
『……その正義すら無い貴方の行動を許容することは出来ないと断定』
――くだらない、と小さく呟いてから、ゼノンは続けて嘲笑うように言い放つ。
「正義だと?この世に正義なぞ存在するわけないだろう!強者こそ正義だ!這いつくばるだけの弱者は、強者に蹂躙させるのを待つだけの駒でしかない!」
……その言葉を聞いて、もう語ることはないと感じた。
『――問答終了。対象の鎮圧に伴い、眷獣の解放を行使』
その瞬間、急激に魔力を練り上げる。
――魔力を解放したアレクシアよりも。
――錠剤によって無理矢理魔力を高めたゼノンよりも。
より強く、より疾く……。
「な、何だ……!?何が起きている……!?何だその魔力は……。ホムンクルス、貴様何をした!?」
その魔力は更に膨れ上がる。
更に大きく、止め処なく膨れ上がる。
もはや、人が扱うにはあまりに無謀とも言える魔力量。
「な、何だ……これは……!何なんだ……!?」
尚も止まることなく練り上げ、膨れ上がる魔力に、ゼノンは呆然とするだけだった。しかし、すぐに冷静さを取り戻す。
「……何が起きているのか分からんが、そんな無防備では、この剣は避けられまい!!君が何をするのか知らないが、それをさせると思うかぁぁぁ!!!!」
剣を構えたまま私に飛び掛からんとする。
その冷たい刃が胴を捉えかけたその時だった。
私はは見据えている。相手の動きを、その目を。
そのまま、私はある言葉を唱える。
――それは、多くの同胞が犠牲となり、自らもその一つになりかけた呪い。
――それは、今日に至るまで幾度となく危機を救った、己の切り札。
『
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
視点無し
「ぐ、一体何が起きた……?」
アスタルテが唱えたと同時に爆風が上がり、吹き飛ばされるゼノン。辺りが土煙で見えなくなり、アスタルテを見失ってしまう。
「この状態の私すら吹き飛ばすとは……。だが、アレが奥の手なら、奴を倒すのはたやす、い……」
土煙が晴れた時、ゼノンは言葉を失った。先程アスタルテがいた場所には彼女が居らず、代わりに居たのは——虹色に輝いた、半透明の巨人。中心にコアのような緑色の球体があり、そこから薄ら、アスタルテが見えたのがわかった。
だが、ゼノンが驚愕したのはそれだけじゃない。
「な、何なんだ……。何なんだ、それは……!何なんだぁ……!?!?」
その存在感そのものは理解できない。しかし、強化された視力によって、その
その巨人の頭からつま先まで、超濃密な魔力の塊なのだ。
——自分にこのような芸当が出来るかと言われれば、無理と断言出来る。
「くそ、舐めるなぁぁぁ!!!」
自分を無理矢理奮い立たせるように剣を振るう。だが……
カキィィィィィン
——ゼノンの持っていた剣が巨人の身体に思い切り当たったが、その巨体には傷一つ付くことなく弾かれたのだ。
「な、バカな……!こんなこと……!」
『…………』
「く、くそぉ!私は次期ラウンズだぞ!?こんな、こんなぁ!!!」
もはや剣術指南役の肩書きとは思えないがむしゃらに振るう剣。型も動きもあったものじゃない、力任せの剣。
アスタルテは答えない。もはやこの存在に問う言葉も無い。
ただ彼女は見つめるだけ。
そうして焦燥に満ちた表情で剣を奮い続け——折れた。
剣の根元から先が消え、天井にカツンと当たると、そのまま後ろの下水からポチャンと音が響いた。
「あ、ああぁあ……!!」
もはやゼノンは現実を理解出来なかった。自身の魔力を込めた剣が無惨に折れ、向こうは擦り傷すらなく佇んでいるだけ。やがて――
『……』
白い巨人——
何をするのか察したゼノンは、もはや先ほどの自信たっぷりの表情とは無縁の顔になっていた。
「ま、待て……!そうだ……!この研究所に投資した資金の残りがある!それを全部お前に渡す!教団にも君のことは口外しないと約束しよう!!だから……!」
みっともなく命乞いにも似たことを吐く。
だが、アスタルテは答えない。その表情が一つも変わることない。
ただ一言、ゼノンに向けて言い放った。
『
振り下ろした拳は、ゼノンが見切れないほどの速さで放たれ、彼ごと地面に巨大なクレーターが出来るほどの、地面に拳を叩き付けた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あ、が……」
その一撃で虫の息に瀕したゼノンを一瞥してから、アスタルテは
『……』
一先ず瀕死のゼノンの首根っこを掴んで、外へ向かうとした——が、足を止めて、脱出用の出口の先を見る。
『……』
言葉は発さないが、遠くを眺めるかのようにジッと見据えていた。
『……騎士団、もしくは教団とも違う存在を確認。
「――ほう。気付いていたか」
暗闇から、漆黒に身を包んだような格好の青年が現れる。顔は奇術師のような仮面を付けており、よく見えないが、背丈と魔力の質を見れば、とてつもない実力者だと分かる。
「――プレリュードを奏でる筈だったが今回は貴様に譲ろうか蒼き少女よ」
『……』
アスタルテは答えない。黙ったまま、魔力を練らんとしている。が——
「——やめておけ。俺に挑むなら、もう少し早く魔力を練っておくことだ」
どうやら相手には読まれていた。
——何者だろうか。
そう思い、思わずアスタルテは口を開く。
——会ったことはない。しかし、他人と呼ぶには、何処か因縁のある存在。
『……情報の開示を要求』
「……我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者——」
『……陰。ディアボロス教団のことを指していると推察』
その言葉に、青年——シャドウは「フッ」と微笑む。
「それを決めるのは貴様ではない。我らはこの世に潜む陰がを暴き、その陰を葬る――」
『……』
アスタルテは無言のまま対峙する。
どうするかを思案しながら。
「――行け。貴様は貴様の成すべきことがあるのだろう?こんなところで立っている暇は無いはずだ」
『……肯定』
その言葉を聞き、ゼノンを引きずりながら、シャドウの横を通り過ぎる。
去り際に彼は、アスタルテにこの言葉を残していった。
「……決着はいずれ付けよう。蒼き少女——いや、アスタルテ」
その言葉が届いたのか定かではないが、アスタルテがもう一度だけ振り返ってシャドウを一瞥すると、ゼノンを掴んだまま出口の方へ去っていった。
次、皇女誘拐編エピローグです。
感想、要望お待ちしております。
章ごとに幕間と本編分けてるけど、分けない方がいいかな。(さっき確認したら言ってることがおかしかったのでアンケート訂正)
-
分けずに投稿しまくれ
-
ソノーマーマーデイーイー