眷獣を宿したホムンクルスになりまして。   作:黒色ぬーめん

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遅くなってしまいました。
仕事やらで忙しかったのと色々あってモチベーションが上がらず時間がかかってしまいました。


19話 うまくやるコツは、やらなくてもいい面倒事に首を突っ込まないこと

あれから数日が経過しました。

ゼノンが起こした王女誘拐事件は、王女が無事に戻ってきたことで徐々に風化していき、今となっては『そんなこともあったな』という程度になっている。

それ以降は特に目新しいことが起こることはなく、平穏無事に過ごしている。……まぁ、表面上は、ということだが。

 

 

「——事件の詳細を要求」

 

「詳細も何も、真夜中に辻斬りが現れて、手当たり次第に被害を出しているって話です」

 

 

アレクシアの準備運動を手伝いながら、彼女が今騒がせている事件について伝えてくる。

何でも夜に辻斬りが現れては、無差別に人を斬り、酷い時は殺害されているとか。ミドガルの騎士団にまで被害が出ているらしく、まぁアレクシア達からしたら由々しき事態ではある。

 

 

「状況の把握。……この事件に対し、私の力を行使を要求していると推察」

 

「話が早いですね。私としては単独で捜査しても良かったんだけど、姉様が断固反対してきたのよ……」

 

 

——そりゃそうだろ、と心の中で呟く。

一月前に身内があんな目に遭わされたというのに、そんなことを言い出すのだ。過保護になるなという方がおかしい話だ。まぁ、この世界での常識がどうなのかは知らないけど。

 

 

「だから先生、お願いできないかしら?もちろん報酬は弾みますよ」

 

却下(リジェクト)

 

 

スッパリ断る。

自分から危険なことに首を突っ込みますって言っているのに、私が許可するわけないだろう。

ただ向こうは断られるのは想定していたのか、そのまま話を続ける。

 

「……一月ほど前に捕らえたゼノン・グリフィは覚えていますか?」

 

「肯定」

 

 

アイツか。力に溺れた哀れな人って認識でいたけど。

というか元々アイツはディアボロス教団だったわけだし、今起きてる事件じゃなくても、何かしら情報持ってそうだから聞きに行くのもいいだろうと考えていたら、アレクシアはその考えを予見するようにこう告げる。

 

 

「──彼が数日前に、死んだのよ」

 

 

…………。

 

 

「……意外ね。あまり驚かないのかしら」

 

 

「肯定。彼の所属を考えれば、こうなることは想定していました。──しかし、想定よりも早く、そして相手が容易く死亡した為、驚愕の意を示しています」

 

 

まぁ、ディアボロス教団が易々と生かすとは思えないので、恐らく暗殺されたんだろうな。

 

 

「……死因についての詳細を要求」

 

 

とはいえ表向きはどう処理されたのだろうか。仮にも剣術指南役でアイリス王女と同格以上。そう簡単にやられることはなさそうだけど。

 

 

「死因は自殺よ。隠し持っていたナイフで喉を裂いて自決という結論で調査は打ち切られたわ。ナイフの指紋も彼と一致したことで、証拠もしっかり残っていたし。ご丁寧に遺書まであったわ」

 

 

……自殺、か。

 

 

「……口封じ」

 

「やはり先生もそう思いますよね。直に剣を交えた私と先生だからこそ、彼が自決するような男に思えない」

 

 

それは一理ある。とまぁ、ソイツの経緯については置いといて、問題はここからだ。

 

 

「──このことを私に話した理由についての説明を要求」

 

 

わざわざこのことをこっちに話した理由だ。

 

 

「──先生ならもうお分かりではなくて?取引よ。先生も誰がゼノンを殺したのか。もし先生が言う教団なら、さっき言った辻斬りの事件とも無関係とは言えないでしょう?だから、私と一緒に調査をお願いしたいの」

 

 

……成る程、そういうことか。私にとって動く理由を上手いこと作った、と。

 

 

「……明確に関係性があるとは限らないと推測。その辻斬りとゼノン暗殺に関して別件の可能性があると考えられますが」

 

「だからそれも含めての調査よ。それに、今回その教団が関わっているだけじゃないわ」

 

 

そう言ってアレクシアはある資料を見せる。

それはよくある張り紙みたいなものだが、そこにはこう書いてあった。

 

 

『シャドウガーデンが死の裁きを!』

 

 

……。何、この……何?

 

 

「そしてこれを裏付けるように、被害に遭った者たちはみんな『シャドウガーデンと名乗る謎の人物にやられた』って証言もあったわ」

 

 

──ミシ、という亀裂の走る音が、助手の剣からわずかに響く。

 

 

 

成る程。正直この件に関しては騎士団に放任するつもりだったんだけど、その名前が出るのは予想外。

 

 

「アレクシア。貴女はどう考えていますか?」

 

「……そうね。どっちが犯人、というのは分からないわ。けど、シャドウガーデンというのがわざわざ辻斬りするとは思えない」

 

「──理由を要求」

 

「決まってるわ。ただの勘よ」

 

 

さいですか。……しかしまぁ、そこまで動いているなら結論は一つ。

お断り!

一国の王女をそんな危険地帯に連れて行けません!却下!先生許さなーい!

 

 

「提案を──」

 

「あ、そうそう。先のゼノンの自殺や、先の証言については騎士団の中でも私や姉様しか知らないわ。所属していない先生が知ったとバレたら、『先生』としてやっていけますかね……?」

 

 

……アレクシアが悪そうな笑みで問いかけてくる。

成る程。私が断ることも織り込み済みでこの話を持ちかけたか、この野郎。

思いの外コイツ強かだな。素振り倍にしてやろうか。

とまぁ、聞いた以上私に選ぶ権利はないのだ。ちくしょう。

 

仕方なく「了承」と言葉を紡ごうとした時であった。

 

 

「──その調査への同行、私がします」

 

 

ちょうど素振りを終え、一息つこうとしていた助手が、いつになく真剣な眼差しで割り込んできた。

助手の中で無視できないものがあるのだろうか。

 

──と、会話していたら遠くからさっきを感じた。

 

気配は……向こうか。

殺気のした方向へ顔を向ける。

 

 

「……先生?どうかしたんですか?」

 

 

一点を見つめる私に、アレクシアが不思議そうに首を傾げる。

助手はなんとなく察したのか、私が向いている方向に目線だけを向ける。

 

 

「……いえ、何でもありません」

 

 

教団か?とも思ったけど、邪悪さがなく、真正面から殺気を放つ奴は教団に居ない。だとすると……。

 

 

「…………。」

 

 

今はまだ気になる程度。でもまぁ、こうしてあからさまに監視してくるのは厄介だなぁ。鬱陶しいし、しつこいようなら

 

 

——まぁその時はその時ってことで。

 

 

僅かに感じた殺気の方向から目線を外し、また二人の鍛錬に目を向ける私であった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

ニュー視点

 

 

 

 

 

 

——私は今、ミドガル魔剣士学園に潜入している。今は放課後で帰る生徒も多いため、制服を着て紛れ込めば、怪しまれれことはない。

 

 

「…………。」

 

 

ただ、学園を見るたびに思い出すことがある。私がまだ、『ニュー』と呼ばれる前の過去のことを。

 

 

「……悪魔憑きでなかったら、私もああやって、何も知らずに楽しんでいたのでしょうね……」

 

 

何人か帰路へ向かう人たちを、憐れみと羨みが混じった感情のまま横目にしつつ、ある場所へ向かう。

 

この学園の担当医、『アスタルテ』という人物だ。

 

 

 

 

──それは、数日前のこと──

 

 

「ニュー。貴女にはシャドウ様へ付いてもらうのと同時に、ある人物の監視をお願いするわね」

 

 

我らが盟主のシャドウ様こと——シド・カゲノー様へ付くことと同時に、ある任務をガンマ様より言い渡される。

 

 

「ある人物、ですか……」

 

「えぇ。主様が通われている学園内におります『アスタルテ』という人物です」

 

 

その名前に聞き覚えはある。かれこれシャドウガーデンにて良くも悪くも話題の尽きない人物だとされている。ガンマ様も一度だけ、その名の人物に遭遇したことがあるという。

 

 

「……分かりました」

 

「ありがとう、ニュー。けれど無理はしないでくださいね。相手は仮にも──」

 

 

〜〜〜

 

 

「……古代の龍を倒した存在、か」

 

古代の龍。私たちのアジトを守る存在こと、『霧の龍』。私自身はその姿をあまり拝見したことがなく、その強さを目の当たりにしたことがない。だが、かつて七陰の方々やシャドウ様ですら倒しきれなかったと言われてる存在だ。

 

そんな相手を下せるほどの実力者なのだ。

 

 

「……警戒は必要ね」

 

 

独り呟きながら、(くだん)の人物を探すため、校内を見て回る。すると、思いの外早く、その存在を見つけた。

校舎の窓から少し遠くであるが、

特徴的な青くて長い髪。顔は見えないが、アレがガンマ様の仰っていた『アスタルテ』という人物で間違いないだろう。

 

 

「……」

 

 

確かに他の生徒や騎士団に比べて異質な何かを秘めている感じはする。だが、今の彼女はあまりに隙だらけだ。アレクシア王女と、もう一人の銀色の髪の女性は鍛錬に集中している。アルファ様や他の七陰が警戒するほどの脅威なのだろうか?──もし可能なら、この距離からでは無理でも、件の剣術指南役を屠った程度なら、一人の時を狙えば狩れるのではなかろうか。

攻撃する気はないが、わずかに殺気を漏らしていた。

 

 

──その行為が、僅かに己の内にある慢心だと気付かされた。

 

 

『──』

 

「っ!?」

 

 

明らかにこちらから音も気配も分かるはずもない距離から、振り向いてこちらを捉えていた。

 

──動けない。剣どころか、銃も届くか分からない距離で、彼女が少し此方に視線を向けただけで、私は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。

 

しばらくしてから、彼女はこちらへの視線を外し、アレクシア王女たちの方へ向き直った。

 

 

「っ……はぁ……はぁ……」

 

 

緊張が解けると同時に、額から汗が流れる。ここまで追い詰められたのは、七陰の面々と訓練をした時以来だろうか。

 

——アルファ様やガンマ様の推測は正しかった。彼女は脅威だ。

 

あの距離で寸分違わずに私の気配に気付くのは、七陰の面々でも難しい筈だ。

 

 

 

 

だが収穫はあった。今ので彼女の感知能力はずば抜けているということ。その高さから、不意打ちによる攻撃はほぼ不可能ということも。

 

 

「謎の存在、アスタルテ。……一先ず、ガンマ様に報告すべきね」

 

 

一度、アジトに戻って情報を持ち帰ることにした。

 

 

 

 




感想、誤字報告など、お待ちしております。

章ごとに幕間と本編分けてるけど、分けない方がいいかな。(さっき確認したら言ってることがおかしかったのでアンケート訂正)

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