眷獣を宿したホムンクルスになりまして。   作:黒色ぬーめん

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影実二次創作してる人って学園襲撃される話のラストってどう決めてるんだろうって気になってます。

個人的にあの辺が二次創作の鬼門だと思うんです。


20話 予定調和だって簡単ではない

 

流線型の現実とは何か。その謎を解くべく、私オリ主こと——アスタルテはアマゾンの奥地へと向かった。

 

……はい、冗談です。

 

今私は、長い長い列の中に埋もれています。この列の先にあるのは何と——ミツゴシ商店というお店です。

なんでも、つい最近……というほどでもないが、そこそこ新しく出来たお店らしい。そこのお店で新商品のチョコレートが売られていると聞き、並ぶことにした。ことの発端はこうだ。

 

 

 

 

──それは数日前のこと──

 

「……チョコレート?」

 

「はいっ。ミツゴシ?というお店なんですけど、そこのお店で販売するっていうチョコレートが絶品らしいんですよっ」

 

 

いつになくテンションが上がっている助手に対し、アスタルテは変わらずノーリアクションのまま、書類仕事を片付けている。

 

 

「師匠はご興味ないんですか?」

 

「肯定」

 

 

前世の記憶と肉体の記憶(アスタルテ)を持つ彼女にとって、チョコは実のところ目新しいものでもない。

唯一気になるのは、この世界にもチョコレートというものがあったのか、というくらいだ。

 

 

「明日から発売するんですけど、気になるんですよねぇ〜」

 

「……行くことを推奨」

 

「行きたいのは山々なんですけど、その日はちょうど、アレクシアさんと辻斬り事件の調査をしないといけなくて……」

 

 

しょんぼりした顔で項垂れる助手。その助手を気にせず書類仕事を終えるアスタルテ。

 

 

「……師匠、お願いが」

 

「却下」

 

「まだ何も言ってませんよ!?」

 

「『チョコレートの購入を要求』と推測。要求を拒否」

 

「ちょっとぐらいいいじゃないですか〜」

 

 

むぅ、と唸りながら頬を膨らませて不貞腐れる弟子。その姿に少しだけ罪悪感があったのか、小さく「はぁ……」とため息を吐いてから続ける。

 

 

「……要求の拒否について撤回します。受諾はしないものの、当日の予定においては視野に入れるものとします」

 

「!本当ですか!?」

 

 

途端に機嫌が良くなる。こういうところは年相応、というところだろうか。そして……

 

──こういう姿を見てると、甘やかしてしまいたくなる私も、まだまだなのだろうか。

 

と、心の中でぼんやりとアスタルテは考えていた。

 

 

──回想終了──

 

 

 

 

まぁ、私自身チョコにそこまで興味は無いんだけど、助手があそこまで言っていたので仕方なく。

因みに助手は今、アレクシアと一緒にある事件の調査をしているので居ません。

……少し高級なチョコにするか。幸いにも金は余ってるし。

 

なんて考えながら列を待っていたら、列の後ろへ向かう見覚えのある3人組が。

 

確か……芋みたいな名前のクソガキ(ジャガ・イモ)と、ほっそりしたうるさいクソガキ(ヒョロ・ガリ)と、ぱっとしないように見えるやつ(シド・カゲノー)だ。

物珍しさに惹かれるのは若者の性ということなのか、彼らもチョコを買いに来たらしい。

門限がどうだのと話していたので、他人のプライバシーに干渉せずに前の列に目を向けた時だった。

 

 

「最近は夜に辻斬りも出るって噂ですよ〜……」

 

 

——辻斬り、ねぇ。

そういえばアレクシアも言ってたな。

前世……というより彼女(アスタルテ)の記憶にある絃神島に比べたらこのくらいの治安はまだまだマシ……いや、表面上は絃神島の方がまだ遥かにマシか。しかしまぁ騎士団も看過出来ないほどなら、私も独自に調べるとするか。

 

そう思いながら、列を進んでいく私。

しかし列が長いな。これだと夜まで掛かりそう。後ろもまだ長蛇の列だな、と思いながら列を眺めている。すると、先はどの3人組の1人が、店員に連れられて移動していった。……なんかあったのかな。それにあの店員、どこかで見たような……。

 

 

「嬢ちゃん、列が進んだぜ」

 

 

……なんて考えていたが、列が進んだため、今は目当てのものを買うためにその事に関しては後回しにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

お店の中に入れました。チョコやらクッキーやら、色々なお菓子があります。普通に美味しそうだし、何なら私が前の世界で見たチョコと遜色ない。

味見も出来るとのことで一口食べてみたが味も同様だ。めちゃくちゃ美味い。

これは弟子がハマるわけだ。ただ──それと同時に疑問も生まれた。

 

──どうやって作ったんだ?

 

チョコレートって、確かカカオ豆を砕いてペースト状にして、砂糖やら入れて作る食べ物のはず。そして、この世界にカカオってあったんだろうか。世界中旅をしたけど、私の記憶の中でそんなものは無かった……と思う。

 

 

「…………。」

 

 

チョコレートを凝視してる私に対して何か気になったのか、一人の店員が声を掛ける。

金色の綺麗なミディアムヘアに、眼帯がトレードマークの女性店員。

 

 

「お客様。宜しければ、ご試食なされますか?」

 

 

そう言って、笑みを崩さず商品と同じものを一つ差し出してくる。

あ、試食とか出来るのか。まぁ確かに目新しいものは注目を浴びる分、手を出すには些か不安が残るものだ。

まぁ、拒否する理由もないので、私はそれを受け取って、一つ試食する。

 

 

「……美味(グッドフレバー)

 

「ふふ、気に入っていただけたなら良かったです」

 

 

美味しい。期待はしてなかったが、味も元の世界にあったチョコレートと遜色ない。……私が10年旅していた時は、こんなものが生まれるほど発展してたとは思えないんだけど。

……ミツゴシ、か。調べることが多くなりそうだなぁ。

まぁ一先ず、弟子たちのお土産を買おうかな。

 

「……試食した商品と同じものを3つ。こちらの棚にある16個入りのものを。それと……隣の棚にある箱入りのビスケットも1つ」

 

 

チョコは私と弟子とアレクシアの分。ビスケットは……最初に会った馴染み深いやつに渡すか。あれから帰ってなかったし、そのうちまとまった休みを取って向こうへ行ってみるか。

こうして私は、包装され、紙袋に入ったチョコレート3つとビスケットの箱を受け取ってから、他の場所も見て回る。

後の買い物は雑貨が殆どなので、それほど悩むものはないだろう。

 

……そういえばこれの賞味期限とかあるのかな。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

──すっかり遅くなってしまった。

 

夕暮れの日差しも消え、星が点々と輝く夜空になってしまった。

本当なら夜になる前に帰るつもりだったのだが、何かと入り用になる道具やら、医療用に活用できる雑貨も数多く存在したため、吟味しながら購入してを繰り返していたらこの時間になってしまった。まぁ、遅くなったのはそれだけではなく、あの店のオーナー──確か名前はルーナだったか──から声をかけられたからだ。理由は医療に使用する道具などの仕入れを、学園を通さず私に直接取引するとの申し出とのこと。

仕入れ先を変えることを特に気にしないのだが、裏が気になったので聞いたところ、私はその手の界隈では有名らしい。その人物が率先してミツゴシで仕入れていると知れば、良い宣伝になると見込んで申し出たのだとか。無論、興味が無いので保留とかいう形で話は終えたが、そんなこんなでこの時間にまでなってしまったのだった。

別段急ぐことはないのだが、辻斬りが出るとのことで少し足早に自宅へ向かう。

辻斬りが怖いわけじゃないけど、今手持ちがいっぱいなので襲われたら私のお土産が大惨事になる。それだけはやめてほしい。

なんて考えながら歩いていると、とある声が聞こえてくる。

 

この声は……。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

シド視点

 

 

 

 

 

「門限間に合わねーぞ!」

 

「シドくんが遅いからですよ!」

 

「悪かったって。チョコレートあげたじゃん」

 

 

僕ら3人は、すっかり日の落ちた王都を走っていた。

ニューだっけ?彼女からアンケートもとい、ガンマとの話が長くなってしまったのも確かにあった。けれど、そこの二人(ヒョロとジャガ)がニューについて色々聞いてきたせいでもある。はぐらかしておいたけど。

それにしても、辻斬りがシャドウガーデンの名を騙るやつなのか。僕個人としては、無差別殺人鬼になるのは特段悪いことではないと思う。例え知り合いがそうなったとしても、僕は否定するつもりはない。

けど、もしそれが『シャドウガーデン』の名を騙るなら話は別だ。そんな奴を許すつもりはない。

なんて考えていたとき。

 

 

「ねぇ、何か聞こえなかった?」

 

「自分は何も」

 

「俺も聞こえなかったぜ」

 

 

二人には聞こえなかったようだが、僕にははっきりと聞こえた。

金属同士がぶつかって弾けるような音。剣戟の音だ。

足を止めようとした時、更に思いもよらないことが起きた。

 

 

「──警告(ウォーニング)。この時間帯は辻斬りが活動しているため、速やかな帰宅を推奨します」

 

 

──アスタルテ先生が現れた。

普段のメイド服の上に白衣を羽織った姿ではなく、普通の私服だ。

そして両手にはミツゴシで買ったと思われる紙袋がたくさん。見かけによらずショッピングが好きなんだろうか。アスタルテ先生も割と女性らしいところがあるようで。

 

 

「あっアスタルテ先生。ぼ、僕は違うんです!シドくんがミツゴシでアンケートを行ってて!」

 

「そうなんです!これから帰るところなんですよ!なぁシド!」

 

「あ、うん」

 

 

慌てたような感じで言い訳をするヒョロとジャガ。

 

 

「……迅速な帰宅を推奨。門限まで残り僅かと進言」

 

 

アスタルテ先生が自分の腕時計を指差し、僕たちに今の時刻を伝える。──あ、あの時計かっこいいな。僕も付けてみようかな。

 

 

「うわ、やべぇ!おいシドいくぞ!」

 

「そうですよシドくん!あ、アスタルテ先生も気を付けて!」

 

 

僕を引っ張ってヒョロとジャガはその場から走り去る。

仕方ない。今さっき聞こえた戦闘の音が気になるけど、仕方ない。

 

 

「後のことはよろしくね」

 

「何か言いましたか!?シドくん!」

 

「というかお前も急げ!マジで門限間に合わなくなるぞ!」

 

「はいはい、急ぐから引っ張らないでよ」

 

 

ヒョロとジャガの問いかけをはぐらかしつつ、僕は何処かに潜んでいる彼女(ニュー)に任せることにした。

 




感想、誤字報告、要望お待ちしております。

章ごとに幕間と本編分けてるけど、分けない方がいいかな。(さっき確認したら言ってることがおかしかったのでアンケート訂正)

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