池袋編、完結です。・・・ちょっと文字数が少ないかもしれない。
「よーし、準備完了。今から四、五時間はじっとしといてもらうことになるからね、ちょっと窮屈かもしれないけど我慢して欲しい」
新羅は、そう言って人工透析を開始した。
「どんな食生活をしたらあんなになるっていうんだい・・・・・・」
そうぼやきつつ、新羅は様子見をする。万が一何かあった場合、責任問題に発展しかねないだけでなく、信頼を失いかねないからだ。「闇医者にそんなもんあるか」という意見もあるだろうが、闇医者とはいえ医者は医者。客層は広く、お得意様を失うわけにはいかないのだ。
「・・・・・・暇であります」
「今は何もやることないからなー。エルザの気持ち、わかるゼ」
ノーブルレッド年少組は、数分して沈黙に耐えられなくなった。
「ああ、説明が悪かったね。あくまで動いちゃダメなだけで、喋るのは一向に構わないよ」
「それならそうと言って欲しかったんだゼ・・・・・・」
「とはいえ、僕とおしゃべりするのもあれだろう。あまり、話が合うとは思えない。セルティなら、同姓だし、話しやすいかもね」
新羅は、セルティを呼んだ。
《どうした? ・・・・・・ああ、そういうことか》
「理解が早くて助かるよ。話し相手をしてあげてくれ」
《わかった。話題は何でもいいんだな?》
「ジェネレーションギャップには気をつけてね」
そういうと、新羅はモニターに集中した。
《話、か・・・・・・》
女子四名。女が三人よれば姦しいとはいうが、今回は、どうもそれが当てはまりそうにない。気まずい沈黙が、ダラダラと流れた。
その沈黙をはじめに破ったのは、ミラアルクだ。
「・・・・・・なあ、アンタも化物なんだろ?」
《ああ、そうだ。でも、君たちとは違って、生まれた時からそうだった》
「・・・・・・!」
《ま、色々あって、私の首──デュラハンとしてのアイデンティティの一つは、切り離されてしまったんだけど》
びくーんと、エルザは耳を立てた。
「そんなことができるのでありますか!?」
《ああ、できるんだ。
「・・・・・・何があったのでありますか? 喧嘩とか・・・」
《そういうわけじゃないから安心してくれ。一回目は、どちらかというと研究対象としてやられたんだ。・・・・・・しかしまあ、あの時は、意識の残ったまま解剖されたからな・・・・・・。森厳め、あの時は痛かったぞ・・・・・・》
「生きたまま・・・・・・」
「解剖・・・・・・」
「で、ありますか・・・・・・?」
ノーブルレッド、驚愕。自分たちの時は、目覚めたらこの体に・・・・・・という感じだったので、いくらなんでもありえないだろうと思ったのだ。
《そう。正確には、麻酔はかけられたんだが、その、何というか・・・・・・。効かなかったんだ。デュラハンには、人間の薬は効かないということなんだろうな》
「うぇー・・・・・・。想像したくない痛みだゼ・・・・・・」
「人工的な化物でよかったであります・・・・・・。・・・・・・いや、よくないであります!」
「でも、どうしてあなたは、今の姿を──首のないデュラハンであることを受け入れられたの?」
マザリモノに過ぎない彼女らにはそれが不思議だった。デュラハンのアイデンティティの一つは、傍に抱えた己の首である。それを喪失しているのに、なぜ受け入れられるのか。
《色々要因はあるけど、そうだな。まず、『首なしライダー』として有名になったこと。池袋の都市伝説になったことで、当時記憶を失っていた私は、自分はこう言う存在なんだと理解できた。それと、やっぱり新羅だな。あいつは、いわゆる普通の人間から見たら、やっぱり変人だ。個性の強すぎる連中と多く絡んでるせいで、忘れがちだけど。でも、一途なやつだ。受け入れてくれる人がいたから、私も受け入れられたんじゃないかって思ってる》
「受け入れてくれる人・・・・・・」
《ま、新羅はだいぶ変人だけど》
「あまりそうは見えないでありますが・・・・・・」
「こーゆーのは、ウチらがいない時とかそこそこの付き合いになった時に本性を出すタイプなんだろうゼ」
《そう言うことだ》
「でも、受け入れてくれる人・・・・・・」
ヴァネッサは、見ず知らずの自分達に、交換条件付きとはいえ衣食住を与えてくれた人物のことを思い出した。
《まあ、だからと言ってリッパーナイトの時みたいなことはしなくていいと思うけどな。思えば、あの時まで静雄は単なる怪物だったのかもしれない》
「リッパーナイト?」
ミラアルクは、吸血鬼としての本能か、いかにも流血が起こっていそうな単語に興味を示した。
《そうだな、知っていても損はしないだろうし、教えておこう》
そう言って(書いて)、セルティはリッパーナイトについてを話し始めた。ここで語りたいのは山々だが、そうすると本題から外れかねないので割愛する。詳しく知りたい方は、『デュラララ!!×3』を読んでいただきたい。
「そんなことが、池袋で・・・・・・」
「罪歌、恐ろしいんだゼ・・・・・・!」
「でも今は、古道具屋にあるのでしょう? なら、安全であります!」
《ああ、言い忘れていたけど、ここにもあるから気をつけておいた方がいいぞ》
『!?』
セルティの爆弾発言に、背筋が凍った三人であった。
***
一方、こちらはグレイムVSマンティスマルガム。
「このタコが! 調子こいてんじゃねえぞ!」
「そはこなたの台詞なり。ブルースクエアなりかすずろに知らねど、とこしへにきしかたの栄光に縋るはやめたまへ! かくて、蟷螂の斧といふ言の葉を知らずや!」
グレイムは、怒っていた。それは、ゆっくりと池袋を案内してもらうはずだったのに、急に出てきて妙な因縁をつけられたからである。仏の顔も三度とはいうが、彼の沸点を突破させる最短の人物は、一才の礼儀を知らない人間なのである。あとは、転売ヤー。礼儀知らずと転売ヤーには、一切の容赦をしない人間なのである。
「黙れェ!」
マンティスマルガム(以下MM)は、グレイムの言い放った言葉の意味を知ってか知らずか激昂し、鎌を振り上げた。しかし、グレイムを構成するケミーであるジェットスワローとスタッグバインは、それぞれツバメとクワガタをモデルとしている。それぞれ、鳥と甲虫であることは読者諸君もご存知だろう。カマキリとクワガタでは圧倒的にクワガタの方が強く、カマキリとクワガタは最早言わずもがなであろう。また、蟷螂の斧という言葉の意味も、一矢報いるとは違って、果敢無い抵抗を意味している。
聡明な読者諸君は、これらのことがMMの敗北を必然のものとしていることがよくわかるだろう。
もっとも、人生経験だけで言えば、MMの方が倍以上なのだが。
「死ねや!」
MMは、グレイムにその鎌で斬撃を浴びせてくる。
「ぬっ、ふっ、ほっ!」
しかし、その太刀筋はあまりにも単純な真っ向斬り。グレイムは、簡単に見切って回避する。そして、
「たッ!」
その脚で、蹴りを叩き込んだ。
「ギボハ・・・・・・ッ!」
「あ。」
蹴りは、腹を狙ったつもりが、踵がちょうど男の急所に当たってしまった。マルガムの股間がどのような構造なのかは知らないが、おそらくその痛みは、普通にズボンを履いている時と同じくらい(装着型)か、それ以上(肉体変化型)であろう。どちらにせよ、筆者も男なのでよくわかっているが、金的を食らった時の痛みは想像を絶するものがあるということだけは確かだ。
「・・・・・・」
《ジェットスタッグ! フィーバー!》
気まずい空気の中、グレイムはベルトを操作し、必殺キックを放つ。金的で悶絶しているMMには、回避する術はなかった。MMは、法螺田とかマンティスに分離した。
「・・・・・・」
しかし、グレイムの胸中には、これで良かったのか・・・・・・? という、なんとも言えない感情が渦巻いていたのであった。
***
池袋では、静雄によってチンピラがのされていた。
「ち・・・・・・きしょぉおおお・・・・・・」
「手前、調子こいてんじゃねえぞ・・・・・・! 俺らのバックにゃよ、粟楠会がついてんだからよ・・・・・・!」
「あ?」
静雄は、訝しんだ。粟楠会といえば、現在茜が専務=若頭をやっている組織ではないか(道元は、年齢が年齢なのですでに亡くなっている。現在の社長=組長は幹彌)。また、折原双子もちょこちょこ関わっており、その全員が静雄の脅威を正しく認識している。そうでなくとも、現在の日本は暴力団にとって肩身の狭い国であり、表立って目立つような動きをするものはまずいない。静雄としては、「これはただのハッタリか」と思うだけだった。・・・・・・が、事実だったら困るので、念のために連絡を入れておく。
『どしたんですか静雄さん。なんかやらかしました?』
「あー、やらかしたってか、なんて言えばいいのか・・・・・・。お前らがバックについてるとかいうやつに喧嘩売られたから買ったんだが、本当に関係がねえか確認しときたくてな」
『うえー、まだいたんだそういうの・・・・・・。大丈夫、そんな奴は今はもううちにはいないから。安心して大丈夫ですよ、存分にチンピラをボコしちゃってください!』
「あのなあ・・・・・・。もう俺はそんな歳じゃねえんだよ、正直ちと筋肉が痛え。あまり暴れんのも好きじゃねえし、喧嘩売って来なけりゃいいんだけどな・・・・・・」
『そりゃー無理でしょうね。だって、平和島静雄最強伝説は、結構広まっちゃってますから』
「・・・・・・マジかよ」
『マジです。多分、イザ兄も一枚噛んでますねこりゃ』
「よーしわかった、今度イザヤを見かけたらぶっ殺す」
『にしても、イザ兄も律儀ですよねー。あれから大体三十年、一度も池袋の土を踏んだことがないっていうんですから。だから、ぶっ殺すならちょっと面倒くさそうですね』
「あー・・・・・・。そうだったな、あの野郎は妙なところで律儀なやつだった」
それから一言二言言葉を交わし、静雄は舞流との通話を終了した。
「さて、と」
『ヒッ!?』
静雄は、チンピラの方に向き直る。その目には、怒気が籠っていた。
「手前らよぉ、虎の威を借る狐ってのは知ってるよなあ・・・・・・」
近くにあった道路標識をその手で掴み、力を込める。
「あれはよ、虎が実在したから成立すると考えられるよなあ・・・・・・」
力を込められた道路標識は、バキィ! と音をたてて、根元で引きちぎられた。
「存在しない虎の威を借るってのは、人としてどうなんだろうなあ・・・・・・!」
『ひッ・・・・・・ヒィイイイイイ!!!』
その後、チンピラたちは追い打ちをかけられ、半殺しどころか四分の三殺しになってしまった。
と、そこに、法螺田を掴んだグレイムが現れた。ワイルドモードで飛来してきたのである。
「・・・・・・えらくシュールな絵面だな」
「私が一番よくわかっていることですよ。なんだかよくわからない形をした鳥のような何かが、成人男性一人を抱えて空を飛んでいるんですから」
「・・・・・・ってアンタ、さっきの・・・・・・」
静雄は、思わず目を丸くした。ついさっき変身した青年が、なんだかよくわからない姿になって帰ってきたのだ。驚くな、という方が無茶であろう。
法螺田を降ろしたグレイムは、変身を解除した。
「あんな気まずい勝ち方は初めてだった・・・。ともあれ、カマンティスゲット、と」
『カマ!』
秋月は、喜びをあらわにする。ノーブルレッドの体をもとに戻す、その一歩である。己自身の命題というわけではないが、それはとても嬉しいことである。
「ええと、一体何があったんだ・・・・・・?」
「あ、静雄さん。これにはちょっと、深い事情がありまして。あまり詮索しないでいただけると助かります」
──どれだけこの人が強かろうとも、あくまで彼は一般人。錬金術とはなんの関わりもなく、巻き込む義理はない。・・・・・・岸谷先生のところに連れて行ったのも、本当は良くなかったんだろうな・・・・・・
いくら彼らがデュラハンと関わりを持っているとはいえ、超常についてはおそらく素人だ。おいそれと巻き込むわけにはいかないと考えたのだ。
「まあ、そんな話したくねえことを無理に聞き出すほど、俺もバカじゃねえが・・・・・・。ま、ひとつだけ年長者っぽいことを言わせてもらうと、だ」
静雄は、池袋の空を見上げる。かつて、真っ黒な影に覆われたとは思えないほど、美しい青空だ。彼は今、数十年前の、
「そうだな、うん、そうだ。どうありたいか、どうあろうとするか。それを決めるのは、お前自身だってことだ」
かつての静雄は、その人外じみた力を持て余していた。それは、側から見れば化物以外の何者でもなかった。まさに、生ける都市伝説である。しかし、リッパーナイトを境に、その力を受け入れられた。どのように使うのか、ということを定義できたのだ。自分の在り方、なりたい姿。それこそが、重要なことなのである。
「つっても、なんていやいいのか。友人を大事にしろってのもそうだし、色々やっといて損はないってのもそうだし、クソ、纏まんねえ。・・・・・・ま、そういうこった」
「あらま。ですが、はい。なんとなく、言わんとすることは伝わりました」
「そうか、ならよかった」
秋月は、静雄の発言を、「身近な人間を大切にすることを初め、自分のあるべき姿を定義するために様々なことをするべきである」というように理解したのである。
彼らは、そのまま新羅の元へ戻ろうとした。だが、その思惑は外れることになる。
「さて問題でぇす・・・・・・!」
瞬間、戦慄が走る。彼らの背後から、その声は聞こえてきた。振り向くと、そこには、大きな火傷痕を持ち、サングラスを身につけ、ハンマーを持った男がいた。
「誰です・・・・・・?」
「あぁ? ひょっとして、よそ者か? だとしても、名乗る必要はねえか・・・・・・。起きろ!」
男は、先ほど静雄にのされた者たちを蹴り起こした。
「ぎょふぇっ! ・・・・・・い、い、泉井さん・・・・・・! どうしてここに・・・・・・!」
「法螺田のタコがよぉ、なにやら訳の分からんことをしでかしたみたいなんだわ。それで、ブルースクウェアからの付き合いである俺に、お鉢が回ってきたってことだ。ま、盃は交わしてないがね」
泉井。本名、泉井蘭。蘭と聞くと、読者諸君は、某名探偵漫画に登場するあのヒロインを思い浮かべるだろう。しかし、彼は、そんな名前とは裏腹に、とてつもなく危険な性分を秘めている。
「まぁ、仮にも元弟分・・・・・・。やられたらやり返すってんのが筋だよなぁ・・・・・・?」
そう言って、手の中で、パシリ、パシリとハンマーを玩ぶ。その視線は、静雄と、秋月を確りと捉えていた。
「まあそんじゃあ改めて・・・・・・。さぁて問題でぇす・・・・・・! 仮にもこいつらは元弟分、ボコした奴は一体どうなるでしょうか・・・?」
「・・・・・・この手の問題って」秋月の頬に、ツツーと汗が伝う。「どう答えても、ろくな目に合わない奴じゃ・・・・・・」
そして、その予感は的中している。
「静雄から殺るか、そこの和服から殺るか・・・・・・ってところだな。まあもちろん、正解は『こいつらの分をまとめてボコされる』、でしたァ!」
『カマ!?』
『バンブー!?』
そこには、強烈な悪意がこもっていた。それに反応してか、秋月の持つケミーカードのうち、なんとカマンティス、バンバンブーが反応してしまった。秋月はまだ知らないが、ケミーには、『悪意に触れさせてはならない』というルールがある。ケミーを悪意に触れさせると、それは怪物──マルガムを生み出してしまう要因となるからだ。悪意を持つ人間に取り込まれ、ただ悪意のままに動くだけの、醜悪なる姿。とても醜く悍ましく、悪意の徒と呼ぶに相応しい存在である。
「バンバンブー! カマンティス!」
「お? なんだ、コイツらは・・・・・・。まァいい。手前らまとめて、砂にしてやらァ!」
秋月が叫ぶも、時すでに遅し。バンバンブーとカマンティスは、泉井と融合を果たしてしまった。その姿の名は、バンブーマンティスマルガム(以下、BMM)! 竹の鎧を纏ったカマキリ男、という姿である。
「だったら・・・・・・!」
秋月は、ジェットスワローとスタッグバインのカードをベルトに装填し、レバーを引く。
「変身!」
グレイムは、BMMにタックルを仕掛ける。しかし、全く効果がない。
「そうか、手前素人か。じゃあ、喧嘩のやり方を教えてやんねえとな!」
BMMは、竹でコーティングされたハンマーを大きく振りかぶり、グレイムに振り落とした。
「ぐ・・・・・・ぶはっ!」
頭蓋骨が砕けるということはなかったものの、脳味噌に大きな衝撃が走る。
静雄は、標識を遠慮なくBMMに叩きつけた。
BMMは少し驚いた様子だったが、すぐに標識を掴み、人間を超越した握力でへし折ってしまった。
「マジか・・・・・・!」
「手前も所詮は人間ってこった。とっとと粉になれや!」
BMMは、ハンマーで静雄を殴り飛ばした。静雄は、ビルにクレーターを作り、気絶してしまった。
「さぁて、だ。手前、覚悟はできてんだろうなァ?」
「・・・・・・」
グレイムは、無言でワイルドモードとなった。そのまま飛び立ち、BMMから距離を取る。
「何をしようってんだ?」
「・・・・・・」
撤退。その2文字が、脳裏に浮かんだ。しかし、それを実行すれば、如何程の被害が出るかは計り知れない。
──ケミーの弱点は? 無論、そんなことは知らない。ならば、あの泉井という人物の弱点は? ・・・・・・そういえば、顔に火傷痕があったな・・・・・・。
──イチかバチか、だ!
グレイムは、両腕のエンジンを力の限り蒸した。そのまま、大気圏に上昇し、急降下してBMMに突撃する。その影響で、彼の全身は熱を帯び、発火しかけていた。
そう、グレイムの狙いは、自らを火の玉とし、BMMを燃やすことである。失敗すれば、自分が大火傷を負うだけに終わる可能性もあるこの危険なギャンブルに、彼は賭けることにした。
「なっ、手前、どこでそれを・・・・・・!」
案の定、BMMは狼狽した。かつて泉井蘭は、遊馬崎ウォーカーという男に、自身の車を燃やされたことがある。その際に大火傷を負わされたことで、彼は火に対して異常なまでのトラウマを植え付けられてしまったのだ。グレイムは、彼の火傷痕からもしやと考えたわけだが、見事にその考えは的中したというわけである。
「名付けるとするならば、急降下ファイヤーボールといったところか!」
グレイムは、見事にBMMを貫いた。
「チ、畜生が・・・・・・!」
「ではここで問題を出そう。この後、この私こと仮面ライダーグレイムは、貴殿に一体何をするか答えてみよ!」
意趣返しである。
「手前、まさか・・・・・・」
「そのまさかだ!」
レバーを操作し、グレイムは必殺技の構えに入る。
『ジェットスタッグ! フィーバー!』
天空に飛び上がり、炎に包まれ動けなくなったBMMに狙いを定める。
そして、急降下キック!
「畜生が、ァ・・・・・・」
BMMは爆散した。バンバンブーとカマンティスは解放され、再びグレイムの手元に収まった。
「なんとか勝てた、か・・・・・・」
そう安堵し、グレイムは変身を解除した。
周囲を見渡すと、いつの間にか人だかりができていた。騒ぎの渦中に巻き込まれるのはまずい、そう判断した秋月は、静雄をビルから探り当て、足早に去っていった。
***
「と、いうことがあったわけ」
『何が「と、いうことがあったわけ」よ!(なんだゼ!)(でありますか!)』
事もなげに、秋月はノーブルレッドに報告する。
人工透析は終わり、新羅から料金プランを提示され、定期契約を結んだ帰りの車中のことである。
「いやはや、魔境池袋。まさかあんな目に遭うとは思わなかった」
「それにしても、多重錬成マルガム、まさか錬金術師でもないのに・・・」
「やっぱり珍しいのかい。そういうのは」
「そりゃあそうよ。多重錬成──二体以上のケミーを使うというのは、そのベルトを使ってやっとできるというくらいなのよ。それを、単なる野生の犯罪者がやるっていうのがもう驚きなのよ」
「マジか・・・・・・。それにしても、あの泉井という男、法螺田より余程強かった気がするな。そもそもの格が違うというか、なんと言えばいいんだろう・・・・・・」
秋月は、実を言うと泉井に根源的恐怖を感じていた。あのような狂人に相対し、正気を保っていられるわけがない。
「まあなんにせよ、ケミーがまた一体増えたんだゼ」
「そうであります。これは、大きな前進であります!」
「そうね。私たちの願いを叶えるための──」
ノーブルレッドは、喜びをあらわにする。何せ、ケミーが集まっただけでなく、定期的に血液洗浄(人工透析)を、サブスクできるようになったのだ。稀血こそ入手困難なものの、透析だけでもかなりパフォーマンスは向上する。・・・・・・本作では、まともに戦闘が行えていないが。
そんなわけで、彼女らは少々浮かれているのだ。
「しかしまあ、食生活もこれを機に見直すかな。僕としても健康に気を遣ってはいたけれど、もうちょっとヘルシイにするべきか・・・・・・」
運転しながら、明日以降の献立に思考を巡らせる。とりあえず、近くのスーパーでお得に売っているものを買うか、と秋月は結論づけた。
彼らが、新羅のもとを去る直前のこと。
「・・・・・・そうだったのかい。君たちも、数奇な事に巻き込まれている、と」
「そうなります。いやはや、まさかこんな事になるとは・・・・・・」
「しかも、あの泉井蘭ときた。よくもまあ君たち生きていられたねえ!? 静雄くんも軽い打撲だしさあ。やっぱり、加齢で衰えてきているのか・・・・・・」
「年は、とりたくないものですね・・・・・・」
「まったくだよ。・・・・・・さて」
新羅は、秋月の目を見据える。
「君が連れてきた、あの三人について、詳しいことは聞かないよ。それは、私の領分じゃない。僕から言えるのはこれだけだ。俺みたいに、『セルティLOVE!』とまではいかなくとも、ちゃんと受け入れてあげるんだ。セルティとの会話は聞こえてたけど、はっきり言おう。彼女より、かなり近い存在だ、あの子達は」
「近い・・・・・・?」
「そう。セルティは、元からデュラハンだった。首を引き離したのは、僕の父親だけどね。でも、彼女らは、セルティ曰く『後付け』なんだそうだ。元々人間の価値観を備えていたが、後から何かを植え付けられた。そう言うことらしい。それも含めて、一番近くにいる君が、受け止めてやりなさい。でないと」
新羅は、声のトーンを落として、言った。
「あの子たちは、もう二度と人間の世界にいられなくなってしまうだろうからね」
いかがでしたか?
泉井蘭はどこかで出したいと思ってたんですが、まあ戦って欲しいよなと。そんなわけで、バンブーマンティスマルガムになってもらいました。
前半のマンティスマルガム戦は、完全にギャグです。気まずいタイプの。
後半で、静雄は気絶してしまいました。原作の時代だったら、二十代だしまあ気絶はしないと思うんですが、本作の静雄は五十代のナイスミドルを想定しています。しかも、相手は多重錬成マルガムです。体の衰え+人智を超えた怪物です、致し方ないかなと思いました。いやーでも、実はですね、茜ちゃん(本作ではすでに四十路・・・!)も出す予定だったんですが、いつの間にか没になってました。本作では、茜ちゃんが次期組長的な感じに思っています。クルリとマイルもは、茜の両腕として頑張ってる感じですね。年下に使役される年上・・・。いい!
というわけで、池袋編でした。次回からは、またオリキャラに出てもらおうと思っています。・・・と言いつつ、実際にはちょっと他作品を元ネタにしていたり。
感想、評価、ご指摘をお願いします。
次回からの二話で、秋月の命題が定まる感じです。