【#とある20th企画】鎌池和馬☆平成主人公VS令和主人公 チームサバイバル勃発!! 作:白滝
可憐の不条理パワーによって、下記が調整されています。
ご了承ください。
●物理法則と各シリーズの異能法則が全て矛盾なく同時に存在しそれぞれ機能します。
●クウェンサーとヘイヴィアは日本語で意思疎通できるようになっています。
●恭介は他人の視界から外れても存在を忘れ去られなくなっています。
●戦う動機がなくても、イベント参加に前向きになるよう士気高揚の感情制御を全員が受けています。
●テレパシーによって、敵味方の所有スキル・異能情報だけ共有されています。それ以外の人格・経歴・武装の情報は共有されていません。
会場は学園都市第七学区…に非常に似せて作られた謎時空の謎マップ。
本物同様に街並みが再現されてはいるものの、人は存在しない。ただ風力発電のプロペラとドラム缶型の警備用巡回ロボットが動くだけの舞台。
ビル街という程ではないが、学生マンションの数がやたらと多いこの地形は遮蔽物が多く、遠距離からの射線を通しづらい、裏を返せば直接戦闘要員の役割が非常に重要となる。
開始地点は、各チームとも学区の端から。そこから中央へ進軍するか、はたまたどこかの建物へ隠れ籠城するのかは各チーム次第。
パン、パン…!と数発の花火が撃ち上がる。
静けさのある開幕となった。
『実況中継は私、不条理パワーで全てを把握するスーパーアイドル可憐ちゃんが引き継いでお送りいたします!』
上空のドローンから騒ぐバニーガールの声を無視し、平成チームは固まって中央へ向けて進軍する。
ヘイヴィアは『正統王国』軍らしさ溢れる、アサルトライフルの先端に過剰に取り付けすぎているゴテゴテした集音マイク・赤外線センサーをせわしなくあちこちへ振り回しながら、
「いきなりミヤビがマップ兵器で地形もろとも消し飛ばしてくるかと思ったが、そんな雰囲気はなさそうだな。助かったぜ」
「単純に、辺り一帯を焼け野原にしちゃったら、向こうの暗殺組の腕を発揮しにくいからじゃない?陰からこっそり殺す、みたいな事できなくなるじゃん。『クリーンな戦争』前ではこういうのよくあったみたいだよ。戦車が通る前の歩兵での地均し」
「うへー、原始的…生まれる時代にオブジェクトがあって良かったぜ。つか、俺様のクリアリングだけに頼らず、ちゃんと機械の目は働いてるんだろうな、天津?」
「問題ないよ。マクスウェル、みんなにも解説してあげて?」
そう言うと、サトリの持つスマホのスピーカーから人工音声が流れ始めた。
『初めまして、当システムはユーザー様・天津サトリの組み上げた災害環境シミュレータの管理AIを務めます、人工AIのマクスウェルと申します。ユーザー様にはハッキングの知識はございませんので、管理AIの当システムがオーダーを代行いたします。ちなみに当システムの本体は、携帯ゲーム機一四〇〇台を繋げただけの演算装置ですので、この端末に内蔵されている訳ではございません。とある街の港の空きコンテナに保管されている一四〇〇台の演算装置が、皆さまの所有する各携帯端末と通信している、という構図でございます。既に皆さまの端末にも当システムとのコミュニケーションツールをインストールさせていただきました』
ピロンという通知音とともに、LINEみたいな謎の会話アプリが勝手にインストールされていた。スマホのパスワードも勝手に解析され突破されている。
「…なんだこりゃ。『情報同盟』もビックリだぜ…怖すぎ」
『現在、学園都市第七学区の清掃ロボット・警備ロボットを全てハッキングし、搭載カメラの情報を検索中です。今のところ敵陣メンバーはどのカメラにも映っていないようですが』
「この謎時空は俺の住んでる学園都市と瓜二つだから、地形は全て把握してる。ドラム缶型ロボットのカメラの目で主要ルートを監視させておけば、令和チームの進軍ルートは全部抑えられると思う」
上条に地の利がある。これは明確に平成チームが有利だ。とある二〇周年記念のためのボーナス効果だろうか。
ヴァルトラウテには科学の話はサッパリなようで、
「……そんなまどろっこしい事をせずとも、我が上空まで飛翔し、空から見下ろせばいいのではないか?」
「…さすが神格級
「ぶー」
「オークも話が難しくて知恵熱出してるぞ。ほら、よしよし、俺が退屈凌ぎにいっちょ面白い話をしてやろう。これは俺が小学生の時にインテリビレッジ納骨村で起きた事件なんだが、」
忍の学校の怪談を聞いて、四メートルの巨体がぶひー!と小動物みたいにプルプル縮こまった。見かけによらず意外と小心者らしい。
緊張感がないもののどこか弛緩した空気に、思わず笑みを零した上条当麻の左目へ向けて飛来した空圧クナイがその眼球を貫通し脳漿をぶちまける、
―――――その寸前で、城山恭介の取り出した
「「――――――ッ!?」」
刹那の中で戸惑いは二ヶ所。
一つ。索敵網に自信のあった天津サトリは驚愕していた。
マクスウェルがハッキングした警備ロボットのカメラによる包囲網は、街のあらゆる死角を塗り潰す。それらの一台にも引っかからずにどうやって敵はこちらへ接近できたのか。まさか相手チームにも、機械を攪乱することができる能力者がいるとでもいうのか。
一つ。襲撃者である杉宿総覇は驚愕していた。
メンバー全員の視界を計算し、その全員の死角へと投げ放ったクナイに対し、反応してみせた男がいる。城山恭介。なんだあれは。どう考えても人間の知覚領域の外であったはずだ。そもそも奴は、目視せずに腕を動かしてクナイを弾いた。事前に弾道計算でもして射線と着弾時刻を把握でもしているのかこいつは。
そして、戸惑いに対する回答もそれぞれだ。
一つ。アヤト=クリミナルトロフィーは魔導ハッカーだ。あらゆる利器に
「科学兵器も魔導利器も、構造は違うが原理は同じだ。演算領域が存在する。それだけ分かれば、あとはこっちの領域だ。むしろ、俺のいた世界みたいに霧状マナのネットワークが必要ない分、こっちの方が楽なぐらいだね」
マクスウェルの収集していた警備ロボットの映像は全て、実は三〇分前から仕込みに動いていたアヤトの事前工作により仕込まれたダミーのループ映像だったのだ。
そして杉宿の疑問への回答は、城山恭介の性質にある。彼は常日頃から目に入る自身の周囲数キロの地形を記憶し全ての動体のベクトル・モーメント計算を掌握している。これは召喚師としての職業病というか、幼少期に過ごしたとある箱庭での訓練のせいというか、とにかく本人は無自覚でやっていることで誇る事でもないのだが、周囲の地形の変化には敏感なのだ。
直径十数センチにも満たないクナイから延びる数ミリ程度の小さな影が近くのマンションの壁に映っているのを視界の隅で捉えた瞬間に、その影を作る動体の座標及びその弾道計算を全て終えて対処へと体が動いていた。
そして、奇襲の一手が外れれば、当然、真っ正面からの撃ち合いとなる。射線からスナイパーの潜伏場所を逆算したヘイヴィアが即応。アサルトライフルをぶっ放したが、
「ぶー!!!!」
それを、四メートルの巨体が後ろから追い抜いた。
地響きを立てて地を跳ねた重量数百キロの分厚い筋肉と脂肪の塊が、ライフル弾を後ろから追い抜いて弾き飛ばしながら学生マンションの屋上に身を屈めていた杉宿総覇へ突進する。
「…チッ!!!」
ぶーぶーが振り下ろす得物は片刃の大剣『善悪無用』。研磨された刃物ではなく、モンスターの背骨そのものを刀に見立てただけで、棍棒というかただの硬い骨そのものなのだが、イベリコオークの凄まじい膂力で振り被れば、どんな鈍な刃物でも大木を切断する威力を誇る。イベリコオークにとっての武器とは、刀などの切れ味に意義はなく、どんなに振っても自分の馬鹿力で壊れることのない岩やオリハルコンのような硬さだけが評価基準となるのだ。
つまり、杉宿総覇には受け切れない。
そもそもの話、総覇は全身に後遺症があり、まともに物を持つ事ができない。砕かれた背骨にはボルトを三本埋めているし、引き裂かれた両足の靭帯もスプリングで補っている。五キロ以上の物を持てないということは、つまり五キロ以上の荷重のダメージをその体で受け止められないということだ。
当たれば即死どころか、掠っても古傷が開いて半身不随に逆戻り。
眼前に迫る鬼神の如きイベリコオークの突進に、回避不可能と判断した総覇は、服の袖に仕込んだクナイを投げ放つ。
ぶーぶーが『善悪無用』を握る、その五本の指の股へ。
直後、爆圧が響く。
空圧クナイ『
合金製のこのクナイはグリップ部分がカートリッジ装填式になった忍具であり、瞬間窒素発泡剤を仕込みダイヤルで作動時間を調整すると、最大荷重圧力一五トンで先端部が開き対象を強引にこじ開ける工具と化す。
人体に刺せば傷口を裂き開き、機械に差せば装甲を引き剥がす、後遺症で弱体化した彼でも運用できるよう考案した軽量かつ火力の高い兵装だ。
それを五本の指の股にそれぞれ正確に投げ放ち、起爆させる。
どんな怪物の筋肉だろうと、指一本一本への爆圧を抑え込める訳ではない。指が開いて握力が緩み、大剣の軌道が数センチ程度ズレる。
その数センチに命を滑り込ませた総覇が、死の交差を脱出する。風圧だけで体が浮き上がり、叩きつけられた学生マンション屋上のコンクリートは粉々に砕かれブロック片を周囲に撒き散らした。
(あっぶねえ!?なんだこの怪物!?パワーもスピードもイカレてやがる!?まともにやり合ってられねえぞ!?)
奇襲は失敗したのだ。ならば逃げるが吉。
そもそもが逃走の成功率が最も高いため、総覇が令和チームの斥候に選ばれたのだ。
すぐさま屋上から飛び降り、街路樹へ飛び移り、軽々とした身のこなしで立体的な機動を取りぶーぶーの視線を巧みに切りつつつ追跡を振り切ろうとする総覇。
だが、
「ぶー!こっちから匂いがする!」
(犬かよ!?匂いで追ってんのか!?)
イベリコオークはただのオーク種ではない。あらゆる種と交配可能で子孫を残すことで、その形質を取り込み進化してきた強化種族。当然、犬を遥かに上回る嗅覚を有する。
追いつかれ接敵する度に『
そして、総覇は全身含めると一五キロまでしか物を纏えない。衣服を除いたほぼ全ての荷重が服に仕込んだ空圧クナイの残弾で占められており、一本一本は軽いといえその残弾には限りがある。この逃走は永遠には成立しない。
スマホを取り出した総覇がかけた相手は、
「駄目だ、追っ手を振り切れない!プランBだ、カナメ!!」
『オッケー、今向かうよ』
電話を受け取り、道路のアスファルトを踏み砕きながら爆進するぶーぶーを双眼鏡で眺めるカナメが感心しながら呟いた。
「…いやあれ、忍者がすごすぎるだろ。あんな怪物相手にどうして生身の人間が立ち回れてるんだ?スピードで負けてるのに、何故か逃走が成立してるぞ彼……しかも全身後遺症の人が」
「あの小僧のいた世界は、忍者が強すぎて海外を追っ払い、世界大戦中も日本が鎖国を貫き続けた世界らしいからの。しかも幕府公認の国賓クラスの忍者らしいし、死にかける事件が起こるまでは世界トップだったんじゃないかの。まぁでも、怪物殺しなら旦那様も【マネー(ゲーム)マスター】でやってたろう?銃と車とわらわがいれば、旦那様だってやれるやれる」
あらゆる非合法行為を是とする金融取引ヴァーチャルゲーム【マネー(ゲーム)マスター】。殺人もインサイダーも何でもござれで仮想通貨を奪い合うこのゲームユーザーには、車と共に契約する
サキュバス型マギステルス、ツェリカはカナメの所有するミントグリーンのクーペのボンネットの上に寝そべりながら、
「こんなワクワク、あの頃を思い出すんじゃないかの?」
「……あの頃、ね…」
蘇芳カナメは、そのゲームにおける伝説的なギャングチーム『コールドゲーム』の直接戦闘員であり、死神と恐れられるエースだった経歴がある。涼しい顔して感情を抑える少年の胸の内に、狙撃とカーチェイスを誰よりも楽しむ獰猛な戦闘狂たる一面が眠ることをツェリカはよく知っていた。
「確かに、久し振りに楽しめそうだ。じゃあ、行こうかツェリカ。第二幕はハリウッドさながらのカーチェイスでいこう」
「忍者とオークとサキュバスでカーチェイス、ってもうそれハリウッドというよりB級映画なんじゃないかの?」
「馬鹿野郎、あのオーク、追い過ぎだ!俺様達と完全に離れちまったじゃねえか!作戦忘れてんじゃねえかよーーー!!」
ヘイヴィアの泣き言も分からなくはない。そもそもミヤビの操る爆撃機ルシフェルホーン対抗策がぶーぶーとヴァルトラウテの二名だ。その片割れが早速いなくなってしまった。
わざわざ固まって進軍したのは、奇襲への警戒と、平均スペックの高い令和チームに対して一対多の構図を作るため。戦力を分散したら各個撃破のセオリーで潰されるのは目に見えている。ルシフェルホーンが召喚される前はできるだけチームに同伴し遊撃は控えて欲しかったのだが。
「仕方ない、俺達でやろう。幸い、ヴァルキリーのお姉さんがいれば爆撃機には対処できる。このまま進軍して、俺の右手でミヤビの制御剣をぶっ壊す!」
「でも進軍ルートは変えた方がいいな。こっちの座標が斥候にバレたんなら、爆撃機が発進されるかもしれない。このままじゃいい的だ」
「おい、どうすんだよ!俺様は嫌だぞ、なんで謎時空でまでオブジェクトみたいなやつの砲撃に怯える人生なんだ畜生!!」
「待った、マクスウェルにルート検索かけさせた。…地下道だ!マンホールをくぐろう!地下なら上空からの目を誤魔化せる!」
学園都市第七学区には電柱がない。そのほとんどが地中に埋まっている都合上、地下道も下水施設としての機能以外にも通信業者の整備場としての役割も担う。
よって、下水道のような異臭は少なく、むしろ電灯が完備された明るいトンネルのような場所になっている。かなり広く、平成チーム七名が入ってもそこまで閉塞感はなかった。
「FPSの裏取りみたいなもんだよ。このまま相手のスタート地点の真下まで移動して、そこから地上へ出る。それで後ろから仕掛けよう」
となればスピード勝負だ。
令和チームに地下へ逃げたと気取られる前に、そして相手がスタート地点から離れる前にできる限り早く地上へ到達しなければならない。
「くっ……曲がり道が多いし天井も低くて我だと飛びづらい…」
「地道に走るしかないな。急ごう」
「上条ちょっと徒歩移動に慣れ過ぎてねえ?嫌だよ誰かバイク持ってきてくれよ~」
ぶつくさ言いながらも走る。忍とサトリが真っ先に根を上げ始めたが、そうは言ってられない。
五分ほど走ったところで、八方に枝分かれる広い空間に出た。
「マクスウェル、最短ルートを検索」
『シュア。右手三番目の通路になります。……お待ちください、ユーザー様。通路奥のカメラに――――ザザザジジジジジ―――』
「お、おいどうしたマクスウェル!?くそ、電波妨害か!?」
マクスウェルはサトリのスマホの内蔵アプリではない。どこかの海岸コンテナに保管されている携帯ゲーム機一四〇〇台が本体で、それと各端末が通信を行うことで演算処理をオーダーしているのだ。
電波妨害はサトリのマクスウェルを無力化する最善の一手だった。
「地下に逃げるの、読まれてたんじゃないか?どうする?来た道を引き返すか?」
「焦るな陣内。今から戻っても地上の敵と鉢合わせになって、地上と地下から挟撃されるだけだ。罠だろうけど、突破するしかない。幸い、上条の右手とヴァルキリーのお姉さんがいれば、正面突破もできなくはないはずだ」
「いや、それもまずいだろクウェンサー!地下にいることが令和チームにバレてるってことは、もう爆撃機の照準設定いつでもいけるってことじゃねえか!地盤もろともブチ抜かれるぞ!?さっさと地上に逃げるべきだ!こんな狭い通路じゃ爆風から逃げらんねえぞ!!」
「いや逆だよ。狙われているなら、尚更地下に潜伏する敵へ接近すべきだ。まさか相手チームも、味方を巻き添えに爆撃なんてしないはずだが。地下の潜伏者を見つけ出して生け捕りにし、砲撃を躊躇させよう」
「城山少年、だとしたら我はもう地上へ出て爆撃機の撃墜へ向かうべきでは?幸い、敵も地上と地下へ分散しているし、集中砲火もなさそうだ」
「…そうだね。じゃあ、戦乙女の活躍をお願い奉ろうか」
「御意。期待して待て」
そう告げると、ヴァルトラウテの鎧が淡い光を放ち宙に浮く。不可視の推力を得た彼女は、ドカン!とロケットか何かみたいに天井をぶち破って空へ飛翔していった。
「…スケールがデカすぎて魔神の僧正を見てるみたいな気分になるな。…よし、俺らも動こう。索敵するなら分散するしかないと思う」
「単独行動は危険だから、二班に分かれよう。僕は陣内君と天津君と行く。君には軍人のヘイヴィア君とクウェンサー君がついていってくれ。トラップの外し方は分かるだろう?」
「罠に関しちゃ、正規軍人の俺よりも何故か戦地派遣留学生のコイツの方が詳しいんだが。……そっちはいいのか、一般人二人を抱えて」
「問題ないよ。それにどの道、陣内君は僕と一緒にいた方がいいしね」
短く告げて、二班はそれぞれ通路に飛び込んでいく。通路に目を光らせ、曲がり角からいつ敵影が来てもいいように迎撃姿勢で警戒する。
「頼むぜ城山。役に立たないからって盾にしないでくれよ」
「大丈夫だって。……どっちかって言うと、不安は向こうの班なんだけどね」
「そうか?こう言っちゃなんだが、お前よりも正規軍人の方がトラップに関しちゃ詳しいだろ?」
「……通常の戦争の範囲ならね。でも多分、相手は恐らく殺し屋ハーランド・ディフェンスだ。僕は『イリーガル』相手は慣れてるけど、彼ら三人が裏のやり口に慣れているとは思えなくて。例えば、こんな風に」
先頭を走っていたサトリの首根っこを恭介が引っ張った。見れば、首の高さにワイヤーが張ってあった。至近三〇センチ程度まで近づかないと視認できない。走っていたら気付かず首の動脈を傷つけていた。
「電灯の光で反射が起きないようにツヤ消しのグリーンでペイントされてる。即席の割に丁寧だな」
「……あっぶねえ!?俺も気づかなかったぞ!?」
「でもこの程度はバレバレな部類だ。素人しか引っかからない。罠の解除で足を止めさせて時間を稼ぐ策だな」
「何のために?」
「そりゃもちろん、片方を襲っても、もう片方の仲間がすぐに応援へ迎えなくさせるためさ」
『こちらハーランド。予想通り敵チームは地下ルートへ移動してきたよ。いつでも撃てるよう、爆撃機を起動待機させておいてくれ』
「了解、本当にアンタの言う通りになったなハーランドさん」
『これでも獲物を追い込むのには慣れていてね。砲撃のタイミングはミヤビ君に任せるよ。こちらの位置はGPSの信号で追っておいてくれ』
「じーぴーえす、ね。了解了解、すごく理解した」
「え、分かってんのミヤビ君!?」
「…異世界出身だもんね君達は。宇宙空間にある衛星から地上の信号を拾ってるんだよ。空に目があるって思ってくれ」
こちらは令和チームのスタート地点。ミヤビとクラウスとカルタの三人が待機していた。
平成チームは、斥候の杉宿から連絡あった座標から移動し地下へと逃げたようだった。ハーランドが事前に「地下へ逃げるだろうから罠を仕込みに向かわせて欲しい」と進言しなかったら、誰も対応できていない進行ルートだった。やはり経験値が違う。
殺し屋稼業における一〇の部門で最高ランクの認定を受けた国家公認の人類最強のヒットマン。獲物を追い詰める犯罪心理学にも長けていて当然か。
「よっし、俺も自分のやるべきことをやろう。―――――制御剣より核たる角へコンタクト。爆撃機ルシフェルホーン、タクティカルオープン!!」
それを正確に表現するのならば、召喚ではなく通信だった。
どこからともなく、地平線の向こうから飛来する黒い影が近づくにつれ巨大さを増す。
全長三〇メートルもの巨躯。コウモリの翼で作ったハンガーのような外観。機体内部のラボから植物より抽出した薬品を角へ送り、邪神の角を活性化させる事でエネルギービームを照射する魔女術ベースの自律可動式対地殲滅用巨大魔導飛空艇だ。
放たれる光の空爆はビルなど容易に融解し焼き尽くす。当然、人体ならば消し飛び、炭化した肉片の灰すら蒸発する熱量だ。対象が個体や液体であることを許さない死の熱線。
規格外。オーバースペック。ミヤビ=ブラックガーデンの相棒にして真骨頂。
ただし、規格外は彼一人ではない。
遥か彼方、地盤をブチ抜いて上空へ飛翔する天使が一人。
遠すぎて表情は分からないのに、明確に目が合った感覚があった。
ヴァルトラウテ。
戦場の魂を拾って天界の館ヴァルハラに持ち帰る、主神オーディンの尖兵ワルキュリエ九人姉妹の四女。姉妹それぞれにはオーディンから専用特性が与えられており、ヴァルトラウテは特に機動性に優れた個体である。
「神の代行者VS邪神の再現装置か。上等だ」
天使と邪神の正面からの砲撃戦が始まった。
最初に動いたのはルシフェルホーン。薬品が邪神の角へ注入され励起する。放たれる熱線は空気を裂きビームとなってヴァルトラウテへ迫った。
しかし、ヴァルトラウテは機動性に優れるヴァルキリー。音速の三倍で飛翔する彼女を射止めることは難しい。
回避自体は余裕があった。しかし、
(……くっ、火傷しそうだ!?)
熱波で空気が炙られ、息を吸う度に肺に痛みが走る。ヴァルキリエの緑の鎧は北欧の夜空に漂うオーロラを物質化した魔法装甲だ。熱波程度はオーロラの概念が遮断し無効化するが、熱波に炙られ呼吸を蝕まれるのは体力的に厳しい。無人の自律兵器を相手に有人のこちらが長期戦を挑むのは不利だ。
そうと分かれば短期決戦。悠長に射角や連射性能を分析している場合ではない。今度はヴァルトラウテの番だ。
その手に青白い雷が収束する。
『滅雷の槍』。槍の形をした天罰の事象化。地上の人間達から『雷』という自然現象として観測されるが、その実態は天界から人間界へ落とされる射程数十キロにも及ぶ超々遠距離砲撃だ。
文字通り、弾速は雷と同義。爆撃機ルシフェルホーンの機動性能では回避することは不可能。
しかし、
「契約の主アンダーリリス、パレットダイスを動かす力を!!」
地上にいるミヤビの詠唱と共に、ごぼん!という鈍い音と共に地面のコンクリートが浮き上がり、ブロック状の立方体へと変形した。
すると、上空の『滅雷の槍』が不自然に軌道を捻じ曲げられ、まるでブロックへ吸い込まれるように飛来して粉砕した。
「なにっ…!?なんだあれは!?」
急いで二の矢を放つヴァルトラウテ。しかし、何度放っても、地上のミヤビが次々と生み出すパレットダイスへと見えない糸で引っ張られるかのように吸い込まれてしまい、ルシフェルホーン本体へ攻撃が届かない。まるで避雷針だった。
ミヤビの有する特殊技能…というより、ルシフェルホーンの正式継承者から契約を譲り受けた時の契約ミスで生じたバグ技『パレットダイス』。本来、破壊の力しか振るえない邪神の力が反転し、創造能力へ置き換わってしまったこの世界の特異点。
自身の周囲の物質を使って木箱サイズのブロックを形成する特殊スキルだが、ミヤビはこのブロックに様々な特性を付与できる。
さっき行ったのは特に便利な『デコイ壁』。敵の攻撃を吸い込む避雷針となる特性を与え、ヴァルトラウテの砲撃を誘導して無力化していたのだ。現代戦争におけるミサイル照準攪乱用チャフに役割は近い。ミヤビは他にも『パレット橋』やら『レイヤ階段』等、様々なものをショートカットとして制御剣へ登録しておく事で、一つ一つブロックを形成し組み立てなくても戦闘中でも即時生成できるようにしている。
このミヤビのパレットダイス生成能力がある限り、ヴァルトラウテの砲撃は無力化される。砲撃戦では勝ち目はない。
(ならば、接近して壊すしかない!)
音速の三倍で突撃し、自身の鎧の耐久性能の高さを信じて肉弾ミサイルとなる。
ヴァルトラウテが意を決し、ルシフェルホーンのビームをかいくぐりながら邪神の角の仰角の外、機体上方の死角へと回り込もうとする。
そこへ、
「そちらへ向かうことは容認できません」
機械じみた少女の声が聞こえた。あろうことか、上空を高速飛翔するヴァルトラウテに並走するような位置取りからの声だった。
振り向きざま、首を狙う日本刀の切っ先が迫る。寸前で頭を引いて避けた。
そこにいたのは、自分と同じように不可視の推力を得て滞空する青ざめた肌に白い水晶のドレスを纏う少女。
確か名前は…アイネ、だったか。歌貝カルタの有する水晶魔法の一部にして、彼の指示に完全服従する人型シリコン製半導体。手にする日本刀は、先端にレーザー短銃ユニットが装着されている遠近両用の武装。近接戦・射撃戦・空中戦・高速機動戦全てをこなすマルチアタッカーだ。
アイネはいつも通り、無表情のまま無感情に告げる。
「お命いただきます」
「…地上の戦士に負けるならワルキュリエとして本望だが、人間モドキの鉱物相手に負ける訳にはいかぬな」
【もし○○シリーズが参加してたら~~となってた妄想①】
・『殺人鬼』シリーズ
能力『
致命傷が外れる偶然を必ず引き起こす体質。
不死身能力でも再生能力でもなく、死なない運命を手繰り寄せる因果干渉系。
平成チームに参加していたら、ハーランドの罠を何故か真っ正面から突き進み、単身で引き分けに持ち込めていた可能性があった。
ただし、死なないだけで気絶や行動不能にはなるため退場は早い。