【#とある20th企画】鎌池和馬☆平成主人公VS令和主人公 チームサバイバル勃発!! 作:白滝
【平成ヒロイン達の応援コメント②】
彼岸「え、私達が城山さんのヒロイン枠なの!?なんで!?」
蓮華「……"あいつ"にインタビューしてこのイベントを認知されたらヤバいからでしょ…」
ベアトリーチェ「ぶーぶーなら誰にも負けない!一番かっこいい!!頑張って!」
エリカ「あら、ここの寄せ書きは委員長でもヘレンちゃんでもないのね」
アユミ「本編では出番の少ない私達の精一杯のヒロイン要素だね、お姉ちゃん…」
『平成チームの天津サトリ様と令和チームのハーランド・ディフェンス様が死亡いたしました。残り六対六ですね。意外と戦力差はなく拮抗してます?さぁさぁ、あちこちで起こる斥候の衝突は終わり、本陣メンバーの衝突へと進んできてますねー!ここからは先はバッタバッタと脱落メンバーが増えそうな予感!!皆さんがんばれー!がんばってころせー!』
可憐のアナウンスにヴァルトラウテは一安心した。
地下通路を進んでいたサトリが脱落したのは心が痛むが、少なくとも平成チームのジョーカーである上条と隠れエースたる恭介(とついでに忍)の両名が脱落しなかったのは幸いだ。ハーランドも脱落したということは、彼が地下に潜伏する令和チームの伏兵だったのだろう。今頃平成チームの本体が敵陣のミヤビを強襲するために地下を進んでいるはずだ。
そしてミヤビの制御剣を破壊して爆撃機ルシフェルホーンを稼働停止させてくれるに違いない。
そうでないと困る。
なにせ今の自分は、この状況を覆す勝ち筋が本当に細いのだから。
どんなにルシフェルホーンへ『滅雷の槍』を放っても、地上のミヤビに『デコイ壁』を生成されて攻撃を吸い込まれる。
そして、
「甘いですね」
アイネの無機質な声が死神の足音に聞こえてきた。
ヴァルトラウテの放った『滅雷の槍』の弾速は雷と同じ。弾道を視認してからの回避行動は生物学的に不可能なはずだ。
しかしアイネはそれを軽々と避ける。厳密な定義が生物ではなく鉱物である彼女は、スパコンのような機械じみた演算速度でヴァルトラウテの攻撃予備動作を学習し、その視線と手首のしなり方、投擲時の手首のスナップのモーションから射線を弾道計算して予測回避する。
投擲しようと『滅雷の槍』を振り被った時には、もう既にその射線ルートを避けられている。
一発も当たらない。
対する彼女の攻撃を、今度はこちらが避けられない。
アイネのいた世界にある水晶魔法の使い手はその全員が音速での飛行が可能。アイネは音速域での空中機動戦の経験値がありすぎるのだ。
日本刀の先端に銃剣のように取り付けたられたレーザー短銃ユニットから発射されるビームが、ヴァルトラウテのオーロラ装甲を削る。逃げ先を先読みする偏差射撃の精度があまりに高すぎる。どんなに音速の三倍で動けても、移動先を読まれて攻撃を設置されるので被弾してしまう。
そして、動きが鈍れば、
「しまっ―――――」
ガカァ―――!!と灼熱の熱線がルシフェルホーンの角から放たれる。
緊急回避も取れない。
雷の収束が間に合わず槍へと固定化できない『滅雷の槍』をそのままチャフみたいに前方へ投げ放ち、少しでも威力を相殺しようとする。
浅く拡散した雷を熱線が正面から喰い破りながらヴァルトラウテへ直撃する。オーロラが消失し、その肌と髪を炎に焼かれながら裸の彼女が黒煙を立ち昇らせ地上へ墜落していく。
その肉体が蒸発しなかっただけでも、オーロラの魔法装甲は破格の防御性能を誇る神造兵装だ。単純に、相手のルシフェルホーンも神の力を再現する超火力兵器だったというだけだ。
そして、感情を持たないアイネに慈悲はない。
地上へ墜落するヴァルトラウテの首を狙って、その頭を胴体から斬り離すために日本刀を振り被る。
その寸前、
「――――これを、待っていた」
「――――ッ!?」
ヴァルトラウテのオーロラ装甲が再展開され、アイネの日本刀を受け止める。その一太刀で緑の鎧に亀裂が走った。
でも構わない。その一太刀だけを防げれば。
そう。オーロラの魔法装甲の耐久値ぐらいヴァルトラウテ自身だって把握している。
だからこその『鎧が壊れた振り』。
熱線が直撃する瞬間に、再展開のための余力を残すためにオーロラの密度を下げ、わざと鎧の耐久度を下げたのだ。
ヴァルキリエたる神の使いの肉体がルシフェルホーンの爆撃を耐えうることを信じて。
即死しなければ勝ち。即死すれば負け。
そんな無謀ともいえる、北欧神話の戦乙女らしい大胆な賭けだった。
全てはこのタインミグを作るため。
ルシフェルホーンの砲撃直後、角の冷却が始まり再励起まで砲撃が来ないこのタイミングで、アイネに手が届く間合いまで接近してもらう必要があった。
日本刀を掴んで引き寄せる。
アイネが足掻いて腕を振り回すが、単純な腕力勝負なら本物のヴァルキリエたるヴァルトラウテに敵うはずがない。
そして、アイネとはこの少女の姿を指すのではなく、少女とこの日本刀をセットで指す名称だ。少女が武器を持っている訳ではなく、少女の手から武器がニョッキと生えていて体の一部である、と表現すれば分かりやすいかもしれない。
つまり少女の肉体も日本刀も同じシリコン性の鉱物であり、武器のように体から切り離せないのだ。
そしてアイネの攻撃性能も、この日本刀に付随したものにすぎない。日本刀さえ封じてしまえば、あとは音速で飛べてやたら耐久力のあるだけの解析マシーンだ。ヴァルトラウテの膂力で何度も殴り続ければいずれは壊れる。
しかし優先破壊対象はミヤビだ。
彼の制御剣を破壊することが平成チームの最優先ミッション。それさえできれば戦況の天秤はこちらに傾く。
遠方で息を飲むミヤビとカルタが見えた。明確に焦っている。
ここから『滅雷の槍』で狙撃しても、どうせミヤビの『デコイ壁』で受け流されるだけだ。接近戦しかない。
「む……!!はな、して、ください…!!」
アイネの文句を聞き流し、彼女を引きずりながら地上スレスレを滑空する。
対応したのはカルタだった。
手にした改造懐中電灯を点灯させ、ヴァルトラウテの顔に照射する。
直視すれば失明の恐れさえある強烈な照度だが、ヴァルトラウテの肉体は人間ではない。一瞬目が眩んだが、すぐに慣れる。
「下がれ、ミヤビ君!!」
カルタがミヤビを守ろうと、ヴァルトラウテの突進の前に突っ込んだ。改造懐中電灯をヴァルトラウテの顔面に振り下ろす。
音速挙動の相手の顔面へ正確に攻撃を当てただけでも人間技と思えない腕前だった。しかし、残念ながらヴァルトラウテは人間技程度では止まらない。
まるで走行中の新幹線の真っ正面に飛び出たかのような勢いでカルタが跳ね飛ばされた。両腕が千切れ、肩口から血を噴き出した彼の遺体が竹トンボかなにかのようにくるくると錐揉み状に吹っ飛んだ。
そのままの勢いで、ヴァルトラウテが逃げるミヤビの背中へ突っ込んだ。
全身の骨が砕ける異音がヴァルトラウテの肩越しに伝わってくる。
ミヤビが吹っ飛んで壁に激突し、ズルズルと地面に崩れ落ちた。
手応えアリ。
令和チームの本陣へ突っ込み、たった一人で半壊へ追い込むことに成功する。
「……勝、った…!!というには、気が早いかな……」
ヴァルトラウテが肩の荷が降りたかのように、ほっと息をついた。
これでルシフェルホーンは停止するはずだ。おまけに令和チームの主力であり司令塔的なポジションにある歌貝カルタを撃破できたことも大きい。こうなれば平成チームの主力陣が負けることはないだろう。
そう、思っていた。
ボフン!と、煙を立ててミヤビの変身が解けるまでは。
「――――――は?」
先ほどまでミヤビと呼ばれていた黒髪の少年の姿が、宮廷学者のような服を着た赤毛の少年に変わっていた。
「……へへへ……残念、でし、たね……僕は、影武者だったんすよ……」
クラオス・ノックバーンの使える唯一の擬態化魔法・カムフライズ。
あらゆる動植物の外見へと、自分の肉体の内臓以外を完全再現し擬態するこの能力で、令和チームの戦力の核たるミヤビ及びカルタのどちらかに化け、影武者になることがクラオスの役割だった。
先程、カルタが改造懐中電灯を照射してヴァルトラウテの目を眩ませたのもこのため。
攻撃目的ではなく、クラオスが変身魔法を行使する瞬間を彼女に目撃させないためだったのだ。
全ての行動が無駄じゃなかったのだ。
ザクリと、ヴァルトラウテの胸が日本刀で貫かれる。背後からアイネが日本刀を突き込んでいた。アイネの傍に立つ歌貝カルタも生きている。腕もくっついている。無傷だ。
そう言えば、いつの間にか手で掴んでいたアイネの体が消失していたと遅れて気付いた。
バタリとヴァルトラウテが地面に倒れた。
「……どう、して……」
「水晶魔法の行使者には自己再生能力が備わっているんだ。僕の体は、腕だろうが頭だろうが、どんなに破壊されても瞬時に水晶が体を覆い尽くして欠損部を保護し、三〇秒程度で再生される。水晶で保護される欠損部を三〇秒以内に再破壊しないとダメージは通らない不死身システムになっているのさ」
「……そう、ではなく、……」
「ああ、アイネのことかい?僕があなたに殴りかかったのは攻撃のためじゃなくてね。アイネが僕の体に潜って拘束から逃れるためさ」
アイネはカルタの肉体に潜ることができる。アイネからすると、歌貝カルタの体は異次元トンネルのようなものであり、好きなお菓子やベッドなどをポンポン放り込んでそこで生活できるくらいの広さの容量がある。
カルタの肉体に触れたことで吸い込まれるように彼の体内へ退避し、ヴァルトラウテの腕力の拘束から逃れたのだ。
全ての行動に意味がある。
歌貝カルタは無謀な突撃も闇雲な戦術も取らない。冷酷に計算し、しっかりと有効打を打つ策士だ。例えどんな手段を使っても。
「ありがとう、クラオス君。君のお陰で助かった。そして、君の献身のためにも、」
カルタがヴァルトラウテの顔を見下ろす。
「……悪いがあなたには倒れてもらうことになるね。申し訳ない」
カルタの振り下ろした改造懐中電灯が、今度こそヴァルトラウテの顔を叩き潰した。
『なんとまたまた今度も、平成・令和チームの両方から敗退者が出たー!!ヴァルトラウテ様とクラオス・ノックバーン様だー!!一進一退の同時脱落が連続しますが、平成チームはぶーぶー様とヴァルトラウテ様の二名を失い、令和チームの爆撃機ルシフェルホーンは健在!これは勝利の天秤の針が令和チームに大きく傾いたぞー!!』
「だってよ。こりゃ平成チームの切り札は君一人だけになっちまったな、上条君」
「……俺だけじゃねえよ。みんな強い。まだ負けた訳じゃないさ」
上条が息を切らしながらも、右手を構え直す。
事前情報の通り、『
魔女の魔法は『憧憬』『太古』『邪悪』の頂点を回す三相構造で成り立つ。
『憧憬』の頂点は、ATU0328a『ジャックと豆の木』を励起。
『太古』の頂点は、四大元素と赤黄青緑の対応。
『邪悪』の頂点は、蝋人形の呪い。偶像による遠隔攻撃。
起きる現象は緑の閃光。水平に振るう警棒の先から噴き出す閃光の奔流が、破壊槌となって上条を襲う。
それを、バキン!と重ね合わされた右手の掌が跡形もなく消失させた。
「くっそ!!本当に何でもアリだし!!」
「何度やったって同じ事だ、俺には通じないぞ!」
同じ事など一度もやっていない。放った魔法は全て別種の効果を持っている。
上条本人は魔法構造をまるで理解せず解呪しているようだが、さきほど放った緑の破壊槌は、物質そのものには作用せず、物質に宿る概念存在を狙い撃つ概念攻撃であった。
しかし、それすら問答無用で解呪する。
右手の効果圏に触れたら理屈も何もない。三相構造が崩れるとか逆算しどこかの頂点が中和されるとかそういう訳ではなく、魔法という現象そのものが世界から消失する。そのあまりに暴力的すぎる機能は、『
(……ちっくしょう。解呪の原理は意味不明。使用者が制御を失って
認識を変える必要がある。
『
これまでの戦い方を観察する限りでも、上条は使うか使わないかの二択しか行動を起こせていない。
それが"右手"という肉体の一部だから能力だと勘違いしやすいが、おそらく『
となれば、原理は分からずとも対抗策も考えうる。
(そろそろ結論を出そう。魔女の魔法で『
思わず溜息をこぼす。
これまで人生で積み上げてきたものを全て失う。こういう経験は初めてではない。
それでも、矢頃はそこで諦める人間ではないのだ。異世界に墜落したあの時も、魔法の全てを否定された今も。
今度は戦法を変える。
魔法の行使はする。その片手間で、上条へ接近しパンチを繰り出し構えた右腕を弾いてズラす。
「―――――ッ!?」
上条が頭を振って毒の泥を躱す。
しかししゃがみ込んだその場所は、まさに矢頃の引いた足が振り被られる位置だった。
ゴルフボールを打つように、あるいはサッカーボールを蹴るように、上条の頭部を思い切り蹴り上げる。
「ごっ、がァ……ッッ!!?」
「成功例、一つ目。有効策だし」
口内を切って血を吐く上条が慌てて距離を取る。
魔法攻撃が牽制目的に変わった。多種多様な魔法が放たれる訳ではない。魔法の連射タイミングとその軌道に変化を付け始めている。
格闘攻撃を当てるために、わざと変な軌道から魔法を放って、無理矢理に右手を構えさせ上条の重心と体勢を誘導する。その隙を穿つようにガードの手を潜って拳や蹴りを叩き込んでいく。
(……『
あの時は、結局は自力ではどうしようもなく、ステイル=マグヌスとの共闘(?)が功を奏して上手く出し抜けたが、今回は一人。助けはいない。
こうなると防戦一方だ。
そして『
それは『
防御を右手に依存する関係上、右手に引っ張られて重心が移動するため、攻撃を繰り出す際に態勢を立て直し、もう一度右手を振り被る必要がある。
矢頃の弾幕を右手で防ぎ続ける限り、上条に攻撃のチャンスが訪れることはない。それは、オリアナ戦でもかつて経験した、克服できない『
(……くそッ!こうなったら、バードウェイ戦の時みたく、なんとか右手を温存するしかない!右手を使わず回避できる攻撃はできる限り自力で回避する!)
しかし、それができれば最初から苦労はない。
矢頃の体術も素人の動きではない。
可憐からのテレパシーで受け取った情報によると、矢頃は異世界へ墜落する前は宇宙飛行士であり、『隊』にも所属していたはずだ。軍隊仕込みの対人格闘術も習得している。
必死に食らいつこうとする意気込みとは裏腹に、矢頃の魔法・格闘の二段攻撃は的確に上条を追い詰める。
無理して右手を使わず、肩を氷のミサイルで貫かれながら強引に突進して右手で殴りかかったが、矢頃に腕を構えられてガードされてしまう。
捨て身で作ったチャンスを活かせない。出血が多い。これでは割に合わない。
「さっきまでの自信はどうした?降参するなら早めに申告してくれよ。オレだって不用意に痛めつけたくないし」
「冗談抜かせ。まだまだこれからだ」
それが強がりだと見抜かれていても、意地だけは貫く。
勉強の天才と称されるだけあって、学習能力も高い。
上条の有する近接戦闘術は、矢頃のような軍隊格闘術のようなフォーマットが存在するものとは異なり、路上の
これでは必死に右手を温存し数少ないチャンスを作っても、矢頃をノックアウトに持ち込めない。
せめて軍人を相手に組み付かれることだけは阻止しようと、必死に間合いを取る。それは逆に上条の攻撃射程圏を自ら手放すことに繋がるが、格闘術を熟知した相手に関節技や絞め技を受けることだけは致命的だ。
嫌が応にも下がらざるを得ない。
(……何か……何か、あと一手が必要だ……『
悩む上条の数メートル横、いきなり地盤が沈下して何かが地下から飛び出していった。
「「――――な、なんだ!?」」
これには矢頃も上条も同時に慌てて、一度距離を取る。
道路を突き破って地下から飛んで行った存在は、
「―――――城山……?」
『つまり、平成チームの残り戦力は、上条当麻、クウェンサー、ヘイヴィア、陣内忍、城山恭介の五名だ。矢頃君がハーランドさんの要請で上条当麻、クウェンサー、ヘイヴィアに対応してるから、地下の陣内忍と城山恭介はフリーになってしまっている。そっちを対応できないかい?』
「陣内忍と城山恭介は無能力者だろう?そっちは後回しにして、『
『……いや、僕が一番警戒するべきだと思うのは、城山恭介だ』
「どうして?無能力者である以上、上条当麻より弱いだろう?」
『……なにか……なにか、彼からは嫌な予感がするんだ。何か秘策があるんだ……そうじゃなきゃ、ハーランドさんを倒せた理由が分からない』
「……了解。まぁ、君の意見に従おう。チームリーダーは君だからね」
『……リーダーのつもりはないけど。でも気を付けてくれ。僕の悪い予感は、往々にして当たるから』
返答する前に事態が変わった。
突如走った、出血するんじゃないかと思うほどの鼻への強烈な痛み。
『獅子の嗅覚』が、悲鳴を上げている。
ドスン!!と、空から結界が落ちてきた。
カナメの乗るクーペの前方一〇メートル。そこに城山恭介と怪物が佇んでいる。
強襲された。
思考時間は〇・三秒。
アクセルを目いっぱい踏んで轢き殺す。怪物に攻撃される前に。
今からハンドルを切って躱しても意味はない。怪物を操る城山恭介を殺すことが最優先。
即断したその速さは蘇芳カナメのアドリブ対応力の高さがあってこそ。その判断は決して間違ってはいなかった――――召喚儀礼に関する知識がない立場ならば。
残念ながら、悪手だった。
ガツン!!と、恭介に衝突したクーペのボンネットがひしゃげた。ハンドルのエアバックが作動してカナメの頭部のダメージを緩和する。
「な、なんじゃ、どうして奴は生きておる!?生身じゃろ!?」
助手席で目を回すツェリカが、驚きの声を上げる。
周囲を檻のように取り囲む立方体の結界とは別に、恭介本人を保護するような球形の結界があった。
召喚儀礼というシステムの機能の一つ、『防護円』と呼ばれる召喚師専用のバリアである。
召喚儀礼とは、召喚師が霊場に神を降ろす儀式。しかし、意図せず悪霊や悪魔を呼び込んでしまった際、儀式が破綻し暴走するリスクがある。それを防ぐための安全装置として、儀式のシステム自体が召喚師を保護するためにバリアを貼るのだ。
それが『防護円』。召喚師に対する物理的・異能的・病的干渉の一切を断絶し拒絶する。例え核爆弾が真横に落ちようと、宇宙空間に放り出されて酸欠に陥っても、寿命を超えて死亡しようと、召喚儀礼というシステム自体が召喚師を延命させ強引に命を繋ぐ。
召喚儀礼が起動した時点で、召喚師はシステムに保護され死ななくなる。
これを倒す方法は二つしか存在しない。
一つは、召喚師の操る怪物を倒す。
もう一つは、展開される人工霊場が時間制限を過ぎて儀式が終了した後に、『防護円』を失った無防備の召喚師を殺すか。
そして、残念ながらそのどちらもカナメには届かない。
衝突のダメージで体が動かないカナメの眼前で、
「こうやって相手を捕まえて人工霊場の稼働時間をリセットさせ、本来一〇分間しか持続しないリミットを延長させていくんだよ。このテクニックが『チェイン』っていうのさ」
《……さっぱりわかんねえ。まぁショーカンギレーのあれこれはお前に任せるわ。悪いが、俺は体の制御を取るので手一杯だ》
眼前の怪物が形を変える。
規定級の音域『中音』、コスト7『
青白い肌の鬼女が笑うと、ツェリカが血飛沫を上げて息途絶える。
青行灯は一〇〇個の怪談を束ねる怪談の主。その全てを行使し支配する。正体不明、原因不明の恐怖がカナメを襲う。
『な、なんと、蘇芳カナメ様が戦闘不能!リタイアです!同時脱落はありません!これは一帯―――――――きゃぁ!?』
実況用ドローンの真横、上空を城山恭介が人工霊場を展開したままかっ飛んでいく。
地面を忍に砕かせて、空に浮いた自分を真下から攻撃して大空へ打ち上げさせたのだ。『防護円』に保護された彼をピンボールのように攻撃して弾くことで二人は上空を力技で飛翔していく。
忍に憑依した怪物の姿も翼を持つサキュバスへと変わっていた。
恭介は
相手に逃げ回られる前に、敵陣に乗り込んでからミヤビとカルタを確実に捕まえたかったが、地下で忍が起爆させてしまった以上、もう後戻りはできない。
『チェイン』を繋げて人工霊場の稼働時間を延長し続け、敵を捕まえる。
そして、令和チームもその狙いは分かっている。
二人の視線の先、遥か遠方、上空を舞っているのは彼ら二人だけではない。
爆撃機ルシフェルホーンが動いた。邪神の角が励起し、死の熱線が迫る。
それを真っ正面から『防護円』で受け止め、恭介は涼しい顔で空を舞う。
「邪神の力も怖くはないさ。『あの人』以外で恐れるものなんて僕にはない」
《体を大百足に変えてくれ!嵐を呼んでアレを落とす!》
大百足には嵐を呼ぶ伝承がある。大百足となった忍が放つ突風がルシフェルホーンを襲い、
「契約の主アンダーリリス!パレットダイスを動かす力を!」
やはり、地上のミヤビの生み出す『デコイ壁』で攻撃を捻じ曲げられた。
ミヤビ=ブラックガーデンが存在する限り、ルシフェルホーンは砲撃戦において無敵だ。この事実は変わらない。
ならば優先撃破対象も定まる。
恭介が敵陣に狙いを定めて突撃する。
着地点はミヤビの正面。
「―――ッッ!?契約の主アンダーリリス!パレットダイスを動かす力を!」
生成したのは『デコイ壁』ではない。とにかく眼前にブロックを積み上げ、迫り来る結界をブロック壁に衝突させて阻もうとしたのだ。
だが、人工霊場は召喚師が最初に足で踏んだ基準面以外の物質を全て透過する。地面に着地した恭介を基準に人工霊場が再展開され、ブロック壁越しにミヤビも人工霊場に取り込まれてしまった。
「くそ!出られないぞ!!」
制御剣で人工霊場の壁を斬りつけてもビクともしない。
「ミヤビ君、こちらも召喚儀礼を使うんだ!その儀式は、城山恭介だけのシステムではないはずだ!」
カルタの助言に弾かれて、ミヤビが制御剣で眼前の白球を弾こうとする。恭介はこれをやって化け物を操っていたはずだ。
しかし、制御剣は空を切った。眼前の白球は動かない。手を伸ばしても透明であるかのように素通りして、触れられないのだ。
「……残念ながら、『白棘』へ干渉できるのは
だとしたらミヤビに打つ手はない。
最後の意地で、彼は制御剣を人工霊場の外に投げた。例え自分が死んでも、これさえ無事ならルシフェルホーンは自律稼働する。
制御剣は人工霊場の壁で跳ね返ってしまったが、人工霊場の外にいるアイネがレーザーで制御剣を弾いたことでその軌道が『ミヤビの意思』から外れ、今度は何故か人工霊場の壁を透過して外へ飛んでいった。
「逃がすか!忍!」
チゾメノザシキワラシへと姿を変えた忍がミヤビの意識を一瞬で刈り取り、人工霊場が基準面の固定という楔から解き放たれる。
急いで制御剣を破壊しようとしたが、
「こいつは俺が預かっていくぜ」
横から飛び出してきたアヤト=クリミナルトロフィーが、
魔導ハックにより、その演算領域を乗っ取り支配する。所有権をミヤビからアヤトへ書き換えた。これでミヤビが死んでもルシフェルホーンを直接操縦し続けられる。
そのまま恭介から離れる。こいつから逃げ、ルシフェルホーンを守ることは令和チームの勝敗に直結する。
制御剣を掌握したアヤトを追おうとした恭介の前に、男女一組が飛び込んで来た。
言わずもがな。歌貝カルタとその水晶魔法アイネである。
人工霊場が対象者を捕まえてしまったことで、基準面が再び地面に固定されてしまった。
逃げるアヤトを追いかけることができなくなる。
「召喚儀礼へ干渉できないことは理解したはずだが……さっきの戦闘を見ていてもわざわざ人工霊場に自分から飛び込んで来るなんて、何か勝算でもあるのかい?」
「あるかどうか、試してみなよ。自分が強いって思ってる奴こそ、思いもしない落とし穴があるもんさ」
両者が対峙する。
『フリーダム』アワード九〇二『
『難問排除』を全滅させた次代の最強『天外四神』、歌貝カルタとその水晶魔法・アイネ。
「来いよ、平成最強。タッグマッチといこうじゃないか」
「手加減はしないよ、令和最強。お手並み拝見といこうじゃないか」
【もし○○シリーズが参加してたら~~となってた妄想③】
・拡散性MAシリーズ
アーサー ~魔法の派~
(漫画版で主人公のため、3人の中から代表して参戦)
能力は、騎士の召喚。
円卓にセットしたカードから騎士を召喚して、戦力を増やすことができる。
平成チームに参加していたら、騎士の召喚により圧倒的な人数差をつけて序盤から優位に立つことができていたかもしれない。ただし、矢頃に魔法を解析された場合、召喚システムを乗っ取られたリスクもある。
本人自体は魔法以外にも近接戦も一応できるため、平成チームにはいなかった貴重なマルチアタッカーとなりえる人材だった。
・乖離性MAシリーズ
盗賊アーサー
(格ゲーで抜擢されているため4人の中から代表して参戦)
能力は特に無し。
魔-サーと違い半人前であり、魔女スカアハの『心象の楔』によるサポートが受けられないため騎士の召喚は不可能。
おまけにエクスカリバーを扱う腕前もまだまだ未熟。
平成チームに参加していたら、戦闘面よりも斥候や索敵係としてチームに貢献していたかもしれない。
もしスカアハの補助を受け騎士召喚ができていればファルサリアが召喚できるため、城山恭介をも凌ぐ最もチートな存在になっていた。
その場合、ファルサリアの伝承改竄・設定変更・歴史改変により異能という概念が全て消失し、カナメ・杉宿・ハーランドの非能力者だけしか生き残れなくなる。ファルサリアには人間の通常兵器では効果がないため、令和チームの敗北が決定していた。