【#とある20th企画】鎌池和馬☆平成主人公VS令和主人公 チームサバイバル勃発!!   作:白滝

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【令和ヒロイン達の応援コメント①】

ミドリ「あ、妹さんじゃなくて私か…自己紹介にあったシスコンって、もしかして友人の妹である私のこと…?え、ちょっと待ってそれは考えたい、え、やだなんで急にそんなこと言われても心」

テレリア「アヤトさんへの応援ですか?…最近私ばっかり戦わせてバトルをサボりがちですけど、本当に大丈夫ですかね…?」

桜花「私達弟子4人組なのね。鬼百合はヒロイン枠じゃない、と」
薔薇「あらあら、意地の悪さが顔に出ちゃってるわよ桜花ちゃん」
鬼灯「でもさすがにあいつは凶悪すぎて、ヒロイン認定はぜってぇ無理だろ」
朝顔「応援するどころか先生が負けるの見てケラケラ笑うかもよ?」

マリカ「応援?…っていうか、会長の能力で平行世界を渡って私達もイベントに参加すればいいじゃん。カルタより私の方が強いんだし、代わりに出るけど?」
キョウカ「私が万全ならそれもできたんだけどねえ。ここはカルタ君とアイネちゃんを信じて大人しくしていましょうか」








4章 最強VS最強

 

 

 ミヤビの制御剣を掌握したアヤトが走る。

 そのままルシフェルホーンの邪神の角の照準設定に移る。

 標的は人工霊場内の怪物、陣内忍に憑依したチゾメノザシキワラシ。

 令和チームの攻略法はたった一つだけだ。

 『防護円』で無敵の耐性を持つ城山恭介を無視して、彼が操り降霊させている陣内忍を撃破すること。先程、上空でルシフェルホーンを砲撃した時は、何故かサキュバスではなくわざわざ城山恭介本人が『防護円』で射線に割って入り盾となっていた。

 つまり、陣内忍には攻撃が通るのだ。

 カルタが人工霊場内部で囮となって城山恭介の注意を引く間に、アヤトの操るルシフェルホーンが人工霊場の外からの遠距離砲撃で怪物のコアを狙撃し一撃で粉砕する。

 これしか勝ち筋はない。

 ルシフェルホーンがこの『平成VS令和』の勝負の行方を決めると言っても過言ではない。

「射角調整完了、薬品を角へ―――――」

「いたぞクウェンサー!!あそこだ!!」

「――――ッッ!?」

 慌てて地面に伏せる。頭上をアサルトライフルの弾丸が掠めていく。

 続いてアヤトの頭上へと投げられた四角い塊には、信管が刺さっていた。

 剣と魔法のファンタジー世界で生きるアヤトには科学兵器など知りもしないが、それは対人用の手榴弾なんかではなく、対物・対戦車用、そしてビル解体用としても知られるプラスチック爆弾だった。

 それを、人間相手に投げて来た。

 この事実を把握できたかどうかが勝負の決め手になった。

 当然、アヤトは手榴弾を警戒し、地面を転がってマンションの壁の後ろに隠れる。

 直後、起爆。

「ご、ァ―――――!!」

 マンションの壁ごと爆破して瓦礫が礫となってアヤトの背中を叩いた。

(痛っつ……!?爆風の有効殺傷圏が広すぎんだろ―――――ッッ!?)

 爆弾自体は知っていても、科学兵器を知らないアヤトには対処しようがなかったかもしれない。

 立ち止まったら銃で蜂の巣だ。傷の手当ても後回しにして、急いでアヤトは目の前のマンションのベランダから部屋に飛び込んだ。そのまま建物内部の通路に飛び出し階段を駆け上がる。屋内の閉所戦闘なら、ヘイヴィアの銃撃は活かせない。警戒するのはクウェンサーのプラスチック爆弾だけだ。

 クウェンサー=バーボタージュが取り扱うプラスチック爆弾『ハンドアックス』は、世界一有名なプラスチック爆弾『C4爆弾』をも超える『正統王国』軍製の特注品だ。グラム単位の製造単価はプラチナより高価で、その性能も通常のプラスチック爆弾を遥かに上回る。グラム単位の調整が容易であるため、対物だけでなく対人にも小回りが利き、爆発力に関しても対オブジェクト戦にまで通用するなど、幅広い用途に応えられる『ドラゴンキラー』を支え続けた相棒だ。

「くそ、どこにもいないぞ!爆風の有効殺傷圏だ。絶対に手負いのはずだ、遠くへは行ってない!!」

「あの外見はアヤト=クリミナルトロフィーって野郎だ。魔法攻撃はできない、ハッキング専門の裏方タイプだろ。手負いなら一旦逃げたんじゃねえか?……オイ、あそこのベランダ、窓ガラス割れてるぜ!」

「いや、瓦礫を投げてガラスを割っただけかもしれない。そっちへ逃げたと俺達に勘違いさせるために。その辺にまだ潜伏してるかもしれないぞ!ヘイヴィア、本当にセンサーに反応ないのか?」

「この辺にゃ熱源はねーよ。やっぱこの建物の中に逃げ込んだんだ!だとしたら、やりづれえ。屋内の閉所戦闘か」

 ヘイヴィアがナイフと五〇口径のハンドガンを構え、クウェンサーが粘土状の『ハンドアックス』を指でこねながら信管起爆用の無線機を握りしめているのが二階のこちらから見えた。

 ここは逃げるしかない。

(……くそ……別にあんな奴ら、万全の状態なら簡単にやれるんだけどな…)

 アヤトは裏方専門の魔導ハッカーだが、元々は『六発目の悪魔(ヘキサジンクス)』という通り名で恐れられた傭兵職に就いていた。近接戦も銃撃戦もこなせるマルチアタッカーとしての経歴も持つ。例え魔導銃を持っていなくとも、平時の彼ならヘイヴィアやクウェンサーなど人数差のハンデを覆し簡単に制圧できたはずだ。

 だが、

(……足が…これじゃまともに走れないな…)

 先ほどの爆発によるダメージが大きい。迂闊だった、と今から後悔してもどうしようもない。初見殺しのプラスチック爆弾相手に即死しなかっただけでも運が良いと思うことにする。

 この手負いの体で現役の正規軍人と閉所戦闘となれば、勝算はかなり低いだろう。

 ただでさえ一対二の人数差。

 装備に関しても、彼らがアサルトライフルとプラスチック爆弾で攻めるのに対し、こちらはハッキング用の魔導剣のみ。

(せめてクイーンアスタロト=リボルバーさえあれば……)

 寿命と引き換えに絶大な力を約束する悪魔の銃の誘惑に、心が揺れる。

 首を振って思い直す。悔やんでも仕方ない。心が弱っている証拠だ。

 そもそもアヤト自身の近接戦が鈍っていることも事実ではあるのだ。普段の戦闘をテレリアやマミレス、ヘンリエッタに丸投げしすぎていたかもしれないと反省する。

 ドガッッ!!と、地震かと間違うほどマンションを揺らす爆発音が階下から響く。

「畜生!一部屋ずつ爆破してんのかあいつら!?俺ごと制御剣ぶっ壊す気かよ雑な仕事だな!!」

 それでも確実な有効策であることに変わりはない。

 逃げ道を断たれ、上へ上へと追い立てられることで遂に屋上へと出てしまった。ここにはアサルトライフルの射線を妨げる遮蔽物もない。

 ルシフェルホーンに彼らを砲撃させようにも、二人との距離が近すぎて爆撃でアヤトも焼死してしまう。

 この高さから飛び降りる訳にもいかない。

(なんかないのか!?逆転するような方法…!!)

 水晶タロット(リンケージモニタ)を展開し、制御剣の機能を調べる。何かないか。戦況を変える一手が。

「……ん?これって……」

「見つけたぞ!!」

 ドアを蹴破ってヘイヴィアが屋上へ先行し、アサルトライフルを斉射する。

 身を捩りながらその場から飛び退いたが、それでも弾丸が腹部を貫通し、血飛沫が背中から尾を引いていく。

「がぁ……ッッ!!」

 遮蔽物はない。防ぐ盾もない。ならば避けれるはずもない。頭部を守れただけでもよく凌いだと言える。

 クウェンサーが『ハンドアックス』を投擲するのが見える。

 このままじゃ殺される。自分が死んだらルシフェルホーンの直接操縦は不可能。自律稼働に切り替わり、令和チームの唯一の勝算である『陣内忍への精密狙撃』ができなくなる。

 その事態だけは避けなければならない。

 やるしかない。

 たった今見つけたばかりの機能に希望を託すしか道はない。

 制御剣を地面に突き立ててアヤトは叫んだ。

「来い、ルシフェルホーン!!俺を角城本拠(かくじょうほんきょ)に匿え!!」

 声と同時、どこからか飛来した巨大な長いワイヤーが、アヤトの首筋を引っ掛けた。そのまま、まるで遊園地のアトラクションか何かのように人間一人をそのまま上空へ引っ張り上げた。

 空振りした『ハンドアックス』が空中で起爆したが、その時には既にワイヤーに首を吊られたアヤトが上空をかっ飛んでいくシュールな姿が見えるだけだった。

「な、なんだ――――――!?奴が空を飛んでったぞ!?」

 ワイヤーの先を辿ると、爆撃機ルシフェルホーンに繋がっていた。

 爆撃機の機体内部に吸い込まれるようにして、アヤトの体が消失する。

 クウェンサーとヘイヴィアは知る由もなかったが、ルシフェルホーンはとある次元の狭間に作られた離れ小島と空間を共有する次元転移機能がある。

 角城本拠(かくじょうほんきょ)と呼ばれるその場所は、ルシフェルホーンだけが干渉し訪れることのできる、次元内部に隠されたミヤビ=ブラックガーデンのアジトなのだ。

「よくわかんねえけど、逃げられたってことだろこれ!?あの爆撃機には操縦者を緊急脱出させる機能があったってことだ!!やべえぞ、アヤトへ手出しできねえ!!」

「まずい、まずいまずいまずいまずいまずいまずい!!そうなると、当然俺達って―――――」

 上空のルシフェルホーンが機体を旋回させる。薬品が注入され、邪神の角の励起が開始される。

 その角の先端が、マンション屋上へ向けられた。

「――――飛び降りるぞ、ヘイヴィア!!」

「いや嘘だろオイ死ぬぞ何階だと思ってんだ!!」

「ここにいたら蒸発して死ぬぞ!!階下の部屋からベッドに飛び乗って着地の衝撃を和らげる!!急げ!!」

 クウェンサーが階下の部屋を抜け、ヘイヴィアと二人でベッドをベランダに担ぎ出す。二人がベッドと一緒に飛び降りた瞬間に砲撃が来た。

 ジュガッ!!!!と、コンクリートが焼けて溶解する異質な音と同時、個体が蒸発し気体に変わる爆圧に押された二人が自由落下以上のスピードでベッドごと地上へ叩きつけられた。

「ァ、つぁーーーーーーッッ!!い、き、がーーーーーッッ!!」

 衝撃で呼吸がままならない。

 二人して痛みで呻きながらも、なんとか呼吸を整えて立ち上がる。

 骨折もない。走れる。間一髪だったが、これで生きていたのなら儲けものだ。

「死んだと思った!!マジで死んだと思った!マジでほんとに殺されると思ったマジで!!!!」

「落ち着けよヘイヴィア。意外にも砲撃が連射されないぞ。おそらく砲身の冷却に時間がかかってるんだ。オブジェクトみたいな対人・対戦車用の副砲がないってことだろ。これが判明したのはデカい」

「……いやいやいや、ちょっと待てよオイ死にたがり野郎。まさかアレとやり合う気なんて言うんじゃねえだろうな!?勘弁しろよ、俺らの出番はたった今終わっただろうが!!こっから先は超能力者や魔法使い共のターンだぜ!!」

「その超能力者や魔法使いがもうチームにほとんど残ってないじゃないか。俺達でやるしかない。幸い、アヤト=クリミナルトロフィーが地上から緊急脱出したってことは、今までみたいな操縦者が機体の外でこちらを見ながらマニュアル操作するラジコン操縦みたいな訳にはいかなくなった。今のルシフェルホーンは、直接操縦はされていても照準管制が甘い」

「操縦系がどうなろうが関係ねえだろ!どっちにしろ俺らじゃ空飛ぶ相手に攻撃は届かないんだぞ!」

「でも命をベッドできる程デカい情報だよ、こいつは。そもそものラジコン操縦の段階でルシフェルホーンの照準管制システムはだいぶ甘かっただろ。二、三キロ程度のこの射程で俺達に直撃しなかったんだ。もし仮に相手がオブジェクトだったらこんな目と鼻の先の距離で外したりしないよ、俺達はさっき即死してた。操縦者がこちらを観測してない今の照準管制なら、さっきよりさらに砲撃の精度は落ちるはずだ」

「だから命を大事にしましょうね、って教訓だろそれは。どうしてそこから『じゃあ壊せるな』って思考回路になんだよド畜生が!!俺様は手伝わねえからな!!なんでこんな謎時空でまで俺らがいつもみたいに死にそうな目に遭わなきゃならねえんだよ!!」

「俺達しかいないからだろ。ほら、走るぞ。次の砲撃が来る」

 いやああああと情けない声を上げながらヘイヴィアが慌てて駆け出す。近くに駐車してあった車の窓ガラスを砕いて開け、運転席に飛び乗った。いつも通りの手癖の悪さでダッシュボードをこじ開け手慣れた動きで配線を弄り、キーも無しにエンジンを点火させた。クウェンサーも助手席に乗り込む。

 マンションやビルを遮蔽物にしながら車を発進させる。

「可憐の不条理パワーのテレパシーで受け取った情報を思い出せよ。ルシフェルホーンは魔女術ベースの魔導兵器だかなんだかとか言ってたけど、結局は機体内部で薬品を調合して触媒となる邪神の角(?)を励起させレーザービームを発射してるんだろ。システムにどんな魔法を挟み込もうが、やってることは薬品を使って励起させた波長を調整してるってことだ。これ、似たようなオブジェクトを俺達は見た事あったじゃないか」

「オブジェクトオタクのお前と違って、俺様は嫌な思い出なんて一秒たりとも記憶してねーんだよ!」

「いやお前なら特に覚えてるだろ。ほら、麻薬戦争絡みで妹さんが絡んでたやつ」

「ぶっ――――――!?」

「アフリカ南端の喜望峰で、『情報同盟』軍の第二世代に『スペクトルQ&A』ってやつがいただろ。あの、南極近くで人工流氷を作って流しまくってたやつ」

「……あーーーー、あれね……」

「あれの主砲が色素レーザービーム砲なんだよ。似てるだろ、機構が」

「はいはい似てる似てる。俺様とアズライフィアは一ミリ足りとも似てねえけどな」

「色素レーザーは、溶媒の色を変えることでその波長を紫外線から可視光、赤外線まで変幻自在に変えられるオールマイティな面白ビーム砲だ。これもあの時に説明したはずだぞ」

「知るか!巻数が変わったら情報リセットされるのがヘヴィーオブジェクトの醍醐味だろうが!」

「……じゃあもう一回同じ説明するけどさ、色素レーザーってのは便利だけど、そもそもが光学解析のための研究用途が本来の機能であって、これを兵器として扱うのはめちゃくちゃ効率悪いんだよ。理由は、変幻自在な波長をレーザーへと収束させるためにさらに別のレーザーシステムを併用しなきゃいけないから。『レーザーを撃つためのレーザー』がわざわざ必要になっちゃうんだよ。普通に考えて電力の無駄だろ」

「その説明を聞いてお前の言いたいことが分かる奴なんて読者に一人もいねえからなマジで」

「ルシフェルホーンに同じ事を当てはめて考えてくれ。どうして薬品を注入して触媒である角を励起させ熱エネルギーを取り出してるんだ?魔力なんてものがあるなら、薬品なんか使わずその魔力エネルギーとやらを直接ぶっ放せばいいじゃないか。でもルシフェルホーンはそうしてない。魔力砲ではなく熱エネルギー砲を使用してるってことは、砲撃の威力も薬品の化学反応に依存するんだよ。邪神の角も魔力とやらも、触媒の性能に過ぎないって推測できる。主砲のメイン構造は全て科学の産物だよ」

「自信満々に勝つ算段あるみたいな話しぶり止めてくれない?」

「自信満々に勝つ算段があるんだよ。――――――俺達二人で邪神をぶっ壊すぞ」

 クウェンサーがニヤリと笑って、ヘイヴィアの顔が青ざめた。

 エンジンが点いた。『ドラゴンキラー』の、エンジン音だ。

 さぁ、此処に伝説が回帰する。

 いつも通りの二人で始める、いつも通りの起死回生。

 『ドラゴンキラー』の神殺しの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 もし接近戦が成立したのならば、城山恭介VS歌貝カルタの勝負はカルタに軍配が上がっただろう。

 我流の棒術を扱う恭介に対して、鎌池和馬主人公にしては極めてレアケースだが、カルタは作中で(自ら強く成長する事を望み)特訓により格闘術をマスターしたという稀有な経歴を持つ。

 そのフェイント主体の軍隊格闘術アレンジは、上条やヘイヴィア、アヤト程度なら簡単に制圧しうる域にあるし、失明効果のある改造懐中電灯と合わせて、実はアイネ無しでも本人がかなりの戦闘力を有する。音速挙動の聖人に負ける上条と違い、貪欲に強さを求めるカルタは音速挙動の相手をしてもアイネ無しの単身での勝利を重ねている。

 しかしながら、両者を囲む人工霊場と、それにより展開される召喚儀礼のシステムが簡単な決着を許さない。

 恭介は『防護円』に守られており、あらゆる攻撃を拒絶する。文字通りの無敵だ。

 対して、カルタは水晶魔法の使い手だ。腕が千切れても頭が潰れてもあらゆる傷を三〇秒で再生する、不死身の再生能力者だ。

 互いに不死身。となると、接近戦は成立しない。必然的に勝負の行方は彼らではなく相方が握ることになる。

 カルタの半身―――水晶魔法のアイネ―――は人型シリコン製半導体。音速で空を飛び、日本刀とレーザー短銃を武器とする遠近両用のマルチアタッカーだ。

 アイネ自身は、『難問排除』の仰神魔法(ぎょうしんまほう)を真っ正面から打ち倒す等、神を殺す経験は意外にも多い。地球の神どころか宇宙で異星の存在まで殺している。

 先のヴァルトラウテ戦でもそうであったように、破格の戦闘力を秘めるアイネは純粋な戦闘力を以てして神すら圧倒する。

 つまり、たかが妖怪程度に遅れは取らない。

 恭介の半身―――チゾメノザシキワラシ―――の長い黒髪を切り裂き、運命が改変されるより速くアイネの日本刀が彼女の袈裟を裂く。被召物(マテリアル)の急所―――『人郭(じんかく)』に亀裂が入り、チゾメノザシキワラシが絶叫した。

《くっそ!?強え!?このアイネって子、速いし、攻撃が痛すぎるぞ!!》

 依代としての経験が浅く素人同然の忍では、被召物(マテリアル)の欲望の照準制御が甘い。攻撃速度や照準のブレが荒く、ただでさえ音速で動くアイネをまともに捉えられない。

 アイネが人工霊場内部を上へ下へと縦横無尽に旋回し、日本刀を構えてミサイルみたいに突っ込んだ。人郭(じんかく)が貫かれ、被召物(マテリアル)としての存在を維持できずに肉体の崩壊が始まる。

 その一瞬前に、恭介のブラッドサインが突いた『白棘』が『花弁』を弾いてスポットに吸い込まれ、チゾメノザシキワラシの姿がぐにゃりと歪んだ。

 その姿が笠を被った農夫、油取りへと変貌する。人郭(じんかく)は傷がない初期状態へ戻った。

「なるほど。その妖怪は変身を繰り返して、蓄積するダメージをリセットできるシステムなのか」

「レベルアップした時にHPとMPが全回復する仕様のRPGみたいなものだと思ってくれて構わないよ」

 召喚儀礼とは、錬成(アップデート)を繰り返して依代に憑依する被召物(マテリアル)を高レベルへと成長させていくシステムの儀式だ。

 規定級でアイネに勝てないのならば、上位存在である神格級やそのまたさらに上の未踏級を錬成すればよい。

 しかし、ここに来て陣内忍の弱点が露呈する。

 彼の霊媒適性は『妖怪好かれ体質』に依存しているため、その降霊も規定級の妖怪系被召物(マテリアル)に限られる。

 つまり、恭介がどんなにコストを増やし錬成数を稼いだところで神格級被召物(マテリアル)へとレベルアップすることは不可能なのだ。

 ……実は、恭介は妖怪系以外の被召物(マテリアル)をうっかり召喚してしまわないように、細心の注意を払って全『花弁』の軌道を把握しているのだが、その苦労を忍は知らない。もしうっかりどこかの『花弁』がスポットに吸い込まれてしまったら、妖怪系以外の被召物(マテリアル)に忍が変身してしまい、彼の意思の制御から外れて暴走し自壊する。

 これほど錬成が難しい(敢えて悪辣な言い回しをすると、性能の低い)依代は、高アワード保持者の召喚師でなければ扱い切れないだろう。

 そういった苦労を全く感じさせない棒術捌きで恭介は飄々と『花弁』を穿つ。

 ハンデを背負った恭介の勝算は一つ。

(依代の勝負で負けている以上、本体である歌貝カルタを狙うしかない。……となると、アイネの猛攻の隙を突いて、三〇秒で自己再生する水晶魔法を上回るスピードの連続攻撃で、彼の修復部位を迅速に再破壊しなければならない)

 対する、カルタの勝算はこうだ。

(周囲の赤い破片を使って妖怪を変身させているのか。つまり、この赤い破片が召喚儀礼の変身コマンド。こいつを逆手に取って城山恭介を自滅させる)

 カルタが手にした改造懐中電灯を恭介に照射する。

 直視すれば失明する照度のライトは、しかし『防護円』に保護された恭介にはダメージとして通らない。

 カルタも最初から攻撃が通るとは思っていない。

 単純な目潰し。視界が白一色で染まれば『花弁』をブラッドサインで打てなくなる。錬成の手が止まれば、アイネの攻撃による蓄積ダメージをリセットすることはできない。

 しかし、

「その手は二度目な訳だが。令和チームは好きだね、こういう戦術」

(……効果がない!?赤い破片の弾道を把握されている!?『防護円』とやらのバリアでライトが防がれているのか?)

 ならば対応を変える。

 目を潰せないなら、破片を潰す。

 改造懐中電灯のつまみをスライドし、電灯モードを赤色に切り替える。元は機械の赤外線センサーやサーモモニターを潰すために改造した機能だが、応用もできる。

 赤い破片の上に強烈な照度の赤色光を重ね、同じ赤色の風景で塗りつぶす。

 赤一色に塗りつぶされた光の帯で、破片の輪郭を識別できなくさせる。

 これならブラッドサインを振るう手も止まるはずだ。

 そう思っていたが、城山恭介の動きに戸惑いは見られない。

 一切の迷いなく、識別できないはずの赤色の風景の中からピンポイントで同色の破片を弾いてスポットへ突き込んでいく。

 目に頼っていてはこの芸当は不可能だ。

 ならば、導き出される結論は一つ。

(……まさかこいつ、この膨大な量の破片を全て記憶しているっていうのか!?いや、そんな馬鹿な話があるか!?何個あると思っているんだ!?)

 カルタには到底信じられないが、恭介は本当にただ全てを記憶しているだけなのでどうしようもない。

 視覚欺瞞は効果はないと諦めるしかない。

 ならば別の手段を取るまでだ。

「……くそっ!だったら……アイネ、地面を破壊して瓦礫を空中へ巻き上げろ!」

 カルタとアイネはブラッドサインを持たないため『白棘』に干渉できないが、それならば地形を変えて障害物を生み、『白棘』や『花弁』の弾道を変化させてしまえばいい。

 アイネは日本刀で地面のコンクリートを削り上げ、瓦礫を空中へ打ち上げる。瓦礫に衝突した『花弁』がその進行方向を変え、恭介の計算外のルートへと動き出す。

 それに合わせて恭介の動きも変わる。ブラッドサインで『白棘』を擦るように打ちつけカーブさせることで予想外のルートに進んだ『花弁』の軌道を修正していく。

「……一回、二回を修正できても、いつまでも続けられるはずはない!まぐれだ!」

「さて。それはどうかな?」

 不敵に笑う恭介の余裕は崩れない。

 アイネが忍へ攻撃し牽制しながらも、続けざまに瓦礫を巻き上げて地形を変えていく。

 しかし、どんなに『花弁』の動きを邪魔しても、恭介はすぐに『白棘』を弾いて軌道を修正する。

 忍の錬成は止まることはなく、一向にダメージが蓄積されない。

(……なんてやつだ!?こんな曲芸みたいな技を、ここまで緻密に記憶し計算できるのか、こいつは!?)

 パワーがあるとかスピードがあるとか、そういう分かりやすいスペックの問題ではなく、城山恭介はとにかく人間規格ではない。平然とした顔で取る行動一つ一つが、どう考えても人間離れしている。

 全てを記憶するって何だ?

 周囲に拡散する二一六個の『花弁』を全て暗算で弾道計算するって何だ?

 こちらのアドリブでの地形変化を読み切って『白棘』で『花弁』を弾いて軌道修正をかけるって何だ?

 一体なんなんだこいつは。

 一体何と戦うためにここまで強くなる必要があるのか。

 人類最強を目指し足掻き続けた自分とは、この人間の目標設定は異なる気がする。人間を相手にするためだけには、ここまでの頭脳は必要ない。

(……くそ!駄目だ、何をやっても対応される!?奴のペースを崩せない。アイネは妖怪相手に勝っているのに、肝心の僕が城山恭介に勝てないせいで戦闘の決定打が打てない!ずーっと王手の一歩前で地団駄踏ませられている。こうなると、アヤト君の狙撃頼みになるが、)

 恭介は実は先ほどからずっと移動していない。その場から一歩も動かない。

 そう。

 忍とルシフェルホーンの間に『防護円』で保護されている自分を配置し、狙撃のための射線を塞いでいる。『白棘』をわざわざカーブさせて『花弁』を弾いているのも、自分がその場から動かずに済むようにするため。

「……ルシフェルホーンの遠距離狙撃も警戒済みか。食えない男だよ、君は」

「褒め言葉として受け取っておこうかな」

 そして、カルタが攻め手を失えばどうなるかは明白だ。

 目潰し、視覚欺瞞、地形操作が完封されスリーアウト。

 攻守交替で今度は恭介が仕掛ける番だ。

 恭介がブラッドサインで弾いた小石が、攻撃を振り回す妖怪の手に偶然当たり、弾かれたままカルタの頭に直撃した。皮膚が切れて血が垂れる。

「まず一発」

「…こい、つ――――っっ!?」

 偶然ではない。狙ってやっている。

 妖怪の攻撃だけでなく、飛翔するアイネに当てて弾かれた小石がカルタの膝に直撃して移動を妨げる。

 その場から一歩も動かずにカルタの体に石を直撃させてくる。

 なんだこいつは。本当になんだこいつは。

 石か何か、弾ける物さえあれば城山恭介はその全てをビリヤードみたいに衝突の連鎖で標的を狙い撃ちできるとでも言うのか。コンピュータか何かじゃないんだから、弾道計算って言葉をそんな簡単に攻撃へ転用しないで欲しい。

 当然、カルタには水晶魔法の自己再生能力があるため傷の修復がすぐに始まるが、

「陣内君、ここだ!」

《了解!!》

 ピシピシと音を立てて水晶質がカサブタのように傷口を保護するが、そこを狙って妖怪の攻撃が迫る。

「―――!?アイネ、こっちに来い!」

 咄嗟にアイネを呼び戻して彼女の体に掴まって空を飛ぶが、妖怪の攻撃が掠った。水晶質のカサブタが壊れ、足が欠損した。

「ぐっ、間に合わなかったか――――!?」

 同じ不死身の力を持っていても、『防護円』により攻撃そのものを拒絶する恭介と異なり、カルタの有する水晶魔法の自己再生能力は修復中の三〇秒間に弱点が存在する。

 修復中に攻撃を受け水晶質のカサブタが剝がれ落ちると、傷は二度と再生されなくなるのだ。

「勝負アリかな、令和の最強クン」

 恭介の攻撃は止まらない。

 小石や瓦礫の反射でカルタを二次狙撃し、傷がつき水晶化した傷口を忍に攻撃させる。

 負傷箇所を水晶質のカサブタが覆い、しかし三〇秒の回復すら許さない猛攻で手足が削り取られていく。

 時間を稼ぐことも粘って凌ぐこともできない、一方的な蹂躙だ。

 達磨と表現するとあまりにグロテスクだが、しかし水晶質のカサブタが砕ける場合は出血が起こらない。

 水晶質の破片をその場に散らばせながら、手足をもぎ取られたカルタが遂に地面に倒れたまま動かなくなった。手足を失い、這うことすらできなくなった。首も半分千切れており、吸った空気が肺に届く前に首の傷から抜けていく。

 どんなに手足の切断面から出血しなくても、これでは生命活動がままならない。

「く、そ……が…人間じゃ、ない……」

 呪いの言葉と共に、そのまま息絶えた。同時、飛翔していたアイネも動きを止めて墜落した。

 召喚儀礼には、敗北した者、意識を失った者へペナルティが課され、『自身の奉じる神が殺される』衝撃を負う。具体的なイメージに結び付きづらいが、ほぼ全ての人間はこれを受けると意識不明の昏倒状態に陥る。絶望的忘我状態とも称されるこの敗北ペナルティに抗うことはできない。

 勝負は決した。

 蓋を開けてみれば、最強対決は城山恭介の圧勝だった。

 相方の性能差によるハンデを背負いながらも、歌貝カルタの全ての攻撃を封殺し、そしてその防戦状態のまま棒術を振るう同じ動きの中で遠距離攻撃を成立させた。危なげのない完全勝利だ。

「さて、チェイン待機状態だ。このままルシフェルホーンを落とそうか」

《そうだ―――――――ガハッ!?》

「な、」

 に?とは言葉が続かなかった。

 恭介に『自身の奉じる神が殺される』衝撃が襲いかかる。召喚儀礼における敗北ペナルティだ。

 なぜ、自分が?

 振り返ると、忍の人郭(じんかく)が背後から日本刀で貫かれていた。

 倒れたはずのアイネが起き上がっていた。

(しまった――――――彼女は人型のシリコン製半導体、ただの水晶魔法。生物ではなく感情も持たないから、奉じる神を殺されても心に何も負荷がかからない、のか……!?)

 絶望的忘我状態に抗うことのできる”人間”は存在しない。

 人工霊場が霧散し、恭介と忍がその場に崩れ落ちた。

 両者共に戦闘不能。

 最後に立ったのはアイネ一人のみであった。

「にえさまの作戦通りでしたね」

 そう。

 蓋を開けてみれば、歌貝カルタの完全勝利だった。

 そもそもカルタは、人工霊場に飛び込んだ時点で、この勝ち方しか想定していない。

 あとは恭介の油断を誘うため、「何をやっても攻撃が通じずに殺されてしまう」というシチュエーションにリアリティを持たせるために迫真の演技をするだけだ。

 最初から自分が死んでアイネに背中から襲わせることしか頭にない。そもそも相手の土俵で勝負するなんて、天地がひっくり返っても歌貝カルタにはあり得ないことだ。

 城山恭介の天衣無縫な最強の在り方とは全く異なる、このやり方、この反則スレスレのやり口こそが歌貝カルタが絶望と復讐心を糧に努力で積み上げて来た血と汗と涙にまみれた最強の在り方だった。

 平成の最強と令和の最強の勝負は決した。

 歌貝カルタの作戦勝ち。勝敗としては両者共倒れのドロー。

「残念ながら、にえさまがいなくなった以上、私も活動限界ですね。勝負の行方は、残りの皆さんに任せましょう」

 そう呟いて、アイネの体も虚空に溶けるように消失していく。

 残る戦場は二か所。

 上条当麻VS妙想矢頃。

 そして、クウェンサー・ヘイヴィアVSアヤト・ルシフェルホーン。

 

 

 

 

 





【もし○○シリーズが参加してたら~~となってた妄想④】


・『インテリビレッジの座敷童』シリーズ


 ●内幕(うちまく)(はやぶさ)

 能力『妖怪嫌われ体質』。
  無能力者だが、実は忍の『妖怪好かれ体質』と同様に妖怪系被召物への霊媒適性がある。『嫌われ体質』なので、降霊と同時にすぐに暴走してしまうが。

 平成チームに参加していても、警察官としての制圧術と銃撃で戦うのみで戦力としての貢献度が低め。
 依代としても、降霊した瞬間に『妖怪嫌われ体質』によりすぐに『憑空暴走』するので、被召物が暴れた勢いで白き女王がワンチャン顕現してしまう可能性があった。
 その場合、白き女王は恭介を虐めたくなってしまい令和チームの味方をするので平成チームの敗北が決定する。



 ●菱神(ひしがみ)(まい)

 能力『死出の竜姫』。
 式神を召喚できる。
 これは能力解説とは関係ないが、菱神舞は自身の敗北を悟った時にしか召喚を行わないため、式神の役割は被害・損失の軽減や退路の確保、囮としての運用にしか充てられない。


 平成チームに参加していた場合、30分間の作戦会議中にルールを無視して敵チームを強襲していた。
 『菱神の女』としての超直感・推理能力がまさに敵チームへの急所となっており、危機を予知する『獅子の嗅覚』持ちのカナメや奇襲・暗殺を熟知した杉宿・ハーランド以外の5名を一気に行動不能に追い込んでいた可能性があった。
 のみならず、味方や運営の可憐をも殺す可能性があったため、可憐により事前に出禁にされている。


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