世界を救ったヒーローの元レッドですが、働く場所がありません。   作:仮乃英

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難産でした.....遅くなってしまい申し訳ございません。
第五話です。よろしくお願いします。


世界を救ったヒーローの元レッドですが、仲間と再会するそうです。

 

「───知らねえ天井だ」

 

 人生で二度目の知らない天井を見上げながら、赤司は目覚めた。しかし、微かに香る薬品のような匂いや、肌に触れる寝具の感触から、ここが自宅ではないことを悟った。

 

 おそらく、ここは病院だろうと当たりをつける。そして赤司は手のひらを眺め、拳を握ったり開いたり、自分の頬をつねったりして生存確認を試みた。

 

「いてぇ......てことは生きてんのか。確か胸ぶち抜かれて、それで......」

『おはよう、天生』

「うおビッッッックリした!!!......ってなんだ、おやっさんかよ」

 

 思いがけない来客に、赤司は思わず仰け反った。しかし、それがカイルであることに気がつく。

 今ここにいるカイルは、いつものようなモヤではない。ハリウッド俳優ばりの堀深い顔に、藍色の着流しに袖を通した格好をしている。これがカイルの人前に出ることのできる『世を忍ぶ仮の姿』なのだ。

 

「なんか久しぶりに見たわ、人のカッコしてんの」

『流石に他の人がいるところでモヤのまま生活出来ないからね。で、どうかな?体の具合は』

 

 そうだそうだ。と、赤司は自身の胸をさすり、少し体を捻ってみる。まだ動かした時に若干の違和感はあるものの、ほとんど気にならない程度のものだった。

 

「すげえな.....ほとんどなんともねえ」

『戦争があったら科学や医療が発達する。シン人類の登場も、それに似たようなものなのだろうね。まあ、お医者様は『奇跡的に致命傷を避けていた』とも言っていたが』

「イリョーってすげえな」

『まったくだ。人の進歩は素晴らしいね』

 

 人類の進歩にしみじみとしている二人。その静寂を破ったのは、病室の戸が揺れる音だった。

 

「外にいるのは、アイツらか?」

『ああ、そうだよ。キミが起きるまで待っていたんだ。そして『リーダーが会うって言うまで入らない』と皆口を揃えて言っていたよ』

「そうか......」

 

 赤司は目を伏せる。今の自分に仲間と会う資格があるのだろうかと。テンメイジャーを終わらせてしまった自分に、彼らの青春を奪った自分に。

 

『まだ、怖いかい?あの子たちと顔を合わせるのは』

「.....たりめーだ。今更どんなカオして会えば良いってんだ」

『別に、どんな顔でもあの子たちは喜ぶだろうさ。泣いていても、笑っていても、ね』

「でもなぁ......」

 

 悩む赤司を見てカイルは一つため息を吐き、我が子を優しく諭す父の如き様相を浮かべて懇々と話し始めた。

 

『キミは日に五箱は吸っていたタバコも、毎日吐くまで飲んでいたお酒も、ひどい時は十万円スっていたパチンコも、あの子達が来てすぐに止めたよね』

「いきなりなんだよ。つかそれは.....気分だよ、気分。金もかかるしケンコーにも悪い、それだけだ」

『ふふふ。君がなんと繕っても無駄だよ。あの子たちは言わないだけで、キミをちゃんと見て、そしてどんな人間かを知っている。いやはや、子供とは存外侮れないものさ。私も苦労した』

「......おやっさん、なんか説教キャラが板についてねえか?」

『そういうキミは、随分と素直じゃなくなったね。まあ、仕方のないことかもしれないが』

 

 まだ煮え切らないのか、赤司は顎に手を当て唸る。が、せっかく来ているのに待たせ続けるのも野暮かと考え直した。

 

「まあ、色々考えたって仕方ねえか」

『そういうことさ。君たち、入っていいってさ』

 

 堰を切ったように、病室に人が押し寄せた。色とりどりの髪をした、かつてのテンメイジャーの面々だ。

 

「ようやくお目覚めか、バカリーダー」

「リーダーおひさー!」

「思ったよりめちゃくちゃ老けてるねリーダー」

「お久しぶりです。リーダーさん!」

 

 

 

「色々言いたいやつが二人ほどいるが......まあいいや。久しぶりだな、みんな」

 

 長らく会っていなかった仲間たちの顔を目に焼き付けるように赤司は眺める。そこで、あることに気がついた。仲間の他に、見知らぬ人間が混じっていることに。

 

「おん?誰だ、その()()は?」

『そういえば君はまだ知らなかったね。彼は新たな仲間だよ。さ、自己紹介を』

 

 カイルに促され、一人の青年が赤司の前に立つ。それは、黄色のパーカーの上に白のブルゾンを羽織った、いかにも好青年な金髪の男であった。

 

「光の使徒『金光(きんぴか) (ぴん)』ッス!!!若輩者ながら、テンメイジャーやらせてもらってるッス!」

『彼は、この前の名礫(ナザレ)市の一件で巨大化途中のプライデスにトドメを差すという大金星を上げた、新たなテンメイジャーだ』

「ほえーそいつはすげえ。よろしくな!えーっと.....」

「金ちゃんでもピンちゃんでも、なんとでも呼んでくださいッス!いやぁ〜ずっと憧れのリーダーさんに会えてマジ嬉しいッス感激ッス!」

 

 金光は赤司が伸ばした手を掴み掛かるような勢いで握り、仮にも病人にするべきではない速さで腕を上下する。

 まさしく光と言うべきその元気の良さに当てられて、次第に赤司の表情も明るいものとなっていった。

 

「ははは、元気いいなぁ!嫌いじゃねえ、そういうの───っておい、金ちゃん。なんか後ろの奴らからすげえ黒いオーラが見える気がすんだけど......」

 

 しかし、当然というべきか、それをよく思わない者たちがいた。よもや一番を新参者に取られるとは微塵にも思っていなかった連中が。

 

「げえ!!!す、すいませんッス先輩方、オレっちが一番しちまって.....」

「いいんだよ、金ピカくん?べーっつに、僕たちは気にしてないよ。君が一番目にリーダーに触れた、なんて事は......ね」

 

 青森はメガネを押し上げながら、器用なものでどういう原理かレンズを不敵に光らせる。

 金光は青森の瞳を覗くことはできなかったが、きっとその視線はレンズとは裏腹に昏いものなのだろうと察した。

 

 しかし、金光へのヘイトはそれほど長く続かない。次に始まったのは、仲間同士の醜い二番目争いだった。

 

「でもさ、始。アンタいっつも『Adam's』からリーダー運んでたらしいじゃん。あーしはずっとご無沙汰なんだ、だから次寄越せ!」

「なんでだよ、ここはどう考えてもリーダーに千勝してる俺が先だろ。勝者の特権を主張する」

「あ、ちょっと皆さんズルいです!私はえーと、えーっと......」

 

 久々の賑やかさに、赤司は郷愁の念に駆られ目を細める。自分の居場所を長らく失っていたために、この光景がとても眩しく見えたのもあるのだろう。

 とはいえ、このままだと収集がつかなくなる。この状況をもう少し見ていたいという名残惜しさはあったが、いち戦隊のリーダーとして赤司は口を挟むことを決めた。

 

「別にみんな一緒にくりゃいいじゃねえか。支えられるかは知らねえけどよ。あと病院では静かにしろ」

『はい、ゴメンナサイ.......』

 

 それじゃあお構いなく。と、四人が赤司へと迫る。それはさながら迫り来る壁のようで、赤司は内心「やっぱ一人ずつにしとけばよかったかな」と若干後悔した。

 しかし、いざ四人が赤司の胸に収まると、そんな後悔は消し飛んだ。

 

「───オマエら......デカくなったな」

 

 気がつけば、赤司の口からはその言葉が漏れ出ていた。

 その言葉を受けて、四人も目頭が熱くなる。それを赤司に決して悟られぬように声を殺し、ただ赤司を抱く力を強めることでその声に応えた。

 

 赤司が世から姿を消して七年。ヒーローや赤司の支援者としてではなく、対等な人間として再会した彼らの心境はきっと、言葉にできるモノではないのだろう。

 しばらくの間、彼らはそうしていた。その温もりを、その存在を確かめるように、ずっと。

 

 そしてそれは赤司の「そろそろイテェ.......っておい!オマエら力強めんなよ!?」というなんとも締まらない声によって終わることになった。

 

 その一連の流れを、病室の外の壁に背を預けて聞いていた福音に、カイルは声をかける。

 

『福音くんは、いいのかい?』

「私だって、話したいけど.....でも、流石にあの中に入れるほど無神経じゃないわ。それに、この先何度だってチャンスはあるもの!」

『ふふふ、そうか。確かにその通りだ』

「───おやっさん、まだ外に誰かいんのか?」

『おっと、お呼びのようだよ。福音くん?』

 

 そんな黒闇を逃してはくれないようで、赤司から声がかかった。

 カイルに背中を押され、『Adam's』で会った時は、黒闇は寝ている時の赤司の顔しか直視していない。故に、明るい環境でシラフの赤司をしっかりと直視したのはこれが初めてだったのだ。

 

「せ、先週ぶりねっ、赤司天生。そういえば名乗りがまだだったかしら。私は黒闇福音、以後お見知り置きを」

 

 黒闇は緊張のあまり怒涛のマシンガン自己紹介を繰り出し、わざとらしくその長い黒髪を後ろにたなびかせてみるが、赤司の反応は芳しくない。 

 

「あー......すまねえ。どっかで会ったか?オレたち」

「ガーン!!!」

 

 どういうことだ。爪痕を残すことはおろか、全く印象に残っていないではないか。

 何か変だと悟った福音はすぐさま青森へと視線を送る。しかし、黒闇が困惑しているのとは裏腹に青森は満面の笑みを浮かべていた。

 

(始!全然刺さってなさそうじゃない!)

(さあ、どうしてだろうね?僕にもさっぱりわからないな!)

 

 黒闇はそこでようやく「コイツ、謀ったな」と気がついた。

 あの時の演技はなんだったのかと、黒闇は天を見上げ狼狽える。そして、青森はまた笑みを深めるのであった。彼は本当にヒーローなのだろうか。

 

「さて、面白いものも見れたところでちょっといいかな」

 

 先程まで愉悦を浮かべていた表情は一変し、青森は真剣な眼差しをカイルへとぶつけながら言った。

 

「みんなに話したいことがある。僕たちテンメイジャーのこれからと───シン人類の正体について」

『ほう?』

 

 青森の言葉を聞いてカイルの眉がほんの少し持ち上がった。

 

「あなたは言った『最大の巨悪「アベン』を打ち倒すことで世界に平和が訪れる』と。ですが、シン人類はいまだに現れ続けている。これは一体、どういうことです?」

『もう君たちに、子供騙しは通用しないな。

 

 

 ......いいだろう、話そうか『シン人類』とは何かについて、ね』

 

 

 




Q&A
>>介護されてるのは分かってるけど奇跡的に上手いこと噛み合って誰が何してくれてるかわかんないけどまぁええやの精神って感じですかね?
 →おっしゃる通りです。赤司はもちろん知りませんし、なんなら仲間同士でも『なんかしてるんだろうけど、具体的にはよく知らない』って感じです。
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