エイジ756
「親父!!病院の中は走るな!!」
「だがジュニア!!・・・どうして俺が大切に思う者達の大事な時に・・・いつもいつでも何かが入るんだ!!!」
「親父・・・親父が仕事をしなければ大勢の・・」
「分かっている!俺の一存で大勢の人達を路頭に迷わせるわけにはいかないのは・・」
繰り言だと分かっている
サイヤンℱを立ち上げたのは自分であり、社長ではなくともオーナーという立場にあり続ける限り、重要案件の立会いや書類は未だにラディッツがする事である。
しかし・・・・飛べない事と走れない事が頃ほど苦痛であるとラディッツと父を注している筈のジュニアの気は逸くばかり
地球に来てから一度も病院に来たことの無いラディッツと病院なんて無縁のジュニアにとって、正面玄関から目当ての病棟までの道は煩雑に感じ、テロ対策で階段があちこちになっているので仕方なく直通のエレベーターに乗ろうとするとお年寄りの方や車いすや乳母車の人達に譲って乗るまでに十分もかかり、ようやく目当ての病室のあるフロアーに辿り着けた。
この扉を開ければ向こうには・・・・心臓が壊れそうだ・・・隣にいる息子の鼓動もいつもよりも速くて、自分の喉もカラカラになる・・・
この扉を・・・・・
「遅い!!!」
ラディッツが意を決して開けようとした扉を、扉向こうにいたブルマが躊躇いもなくスライドさせて開け放った!
「ブルマ!」
「いつまで部屋の前にいる気だったのよお兄ちゃん!ジュニアもサッサと開けさせなさいよ!!」
さっさと中に入りなさいよと病室に兄を引っ張り込めば・・・
「兄様・・・・元気な男の子が生まれただよ・・」
今悟空さが新生児室に行っているから一緒に見てやってくれと、産後で疲れながらも幸せそうに微笑んでベットで横たわっているチチの横には、号泣し続けている牛魔王とお祝いに駆け付けた武天老師様達も牛魔王を労わり、お前も早く行けと促される。
今日、孫家に新しい家族が生まれたのだ。
昨日の夜中から陣痛が始まったチチは、初産という事もあってなかなか生まれずに、男ども同様に、臨月のチチを心配してきていたブルマもモンブランも分娩室の前で行ったり来たりとソワソワし、チチに何かあったらどうすればと思いつめる弟をクリリンとジュニアと宥めていたラディッツも、仕事の時間が来てしまい離れざるを得なくなって、其の一時間後に産まれたという。
先程と同じく逸せ気持ちを落ちかせながら言った先に見たものは・・・
「ちっちぇえな・・・・おらが抱っこしたら壊れちまいそうだ・・」
「何言ってるんだよ悟空!お前チチにするように力加減すれば大丈夫だって!」
「でも悟空さんの言う通り、フワフワとしてて・・・なんだか柔らかすぎませんか?」
身近に赤ん坊がいた事の無い大人三人は、まだ瞼も開いていない赤ん坊の心配をする。
生きていくには頼りなく、何が何でも守ってあげたくなる気持ちが自然とこみ上げるに任せてあれこれと話している。
新生児室の中で、一人だけ眠っている赤子に大人が群がっていてその中心には弟達と
「儂も生後間もなくの赤子を見るのは初めてかもしれんのぅ~。」
車椅子に座った悟飯も、産まれたての曾孫に目を細める。
ふんわりとした産毛しかない可愛らしい頭に、フニャフニャとした柔らかい手足にそして、孫達にあるのと同じ尻尾を無意識に揺らめかしている可愛い曾孫に、悟飯はすっかりと夢中であり
「爺様・・・カカロットすまん、遅くなった。」
同じく夢中で周りに気が付かなかった悟空とクリリンも兄に声をかけられて驚いた!
「にい!!」
「しぃ・・・・赤ん坊の周りで大きな声を出すな。」
赤ん坊は目が見えない代わりに周りの音や振動に敏感で、何が起きているのかを察知しようとする。
大きな声を出せば確実に驚かせてしまうという兄の言葉に、弟達とモンブランは驚いた。
「あの・・・悟雲兄様は赤ん坊の面倒を見た事があるのですか?」
「あぁ、弟の面倒を見て慣れている。」
お締めも替えたしミルクも上げたしなんなら子守唄も歌ったぞというラディッツの言葉に嘘はない!
なにせカカロットが大泣きしたら!お隣のブロリー君が泣いてさぁ大変になってしまいかねなかったあの三日間!!
ラディッツは有給とって弟の側にいるからには面倒全部見ると言って、病院スタッフの制止を振り切って本当に全部の面倒を見たのだ!・・・・何やってんだろうこの文官様はであるがそれは兎も角、
「ほっほっほ、育児の達人がいるならばみんな心強いの。」
「はい!任せてください爺様!そんな訳でどんとこいだぞカカロット。」
祖父がこんな頼もしい育児のプロがいれば怖いものなしじゃと笑っている。
めっきりと弱くなってきている祖父・・・だが・・・・ピッコロ大魔王の診たてが当たっているのであればまだ大丈夫なはずだ・・・
▲▲▲
エイジ755 九月
「・・・・地球では赤ん坊が出来るのが早いんだな・・」
新婚旅行を十日間した後、悟空とクリリンは新婚生活をラブラブに送りながら四ヶ月後に、悟空とチチからお目出度い報告があった!
「兄ちゃん・・・チチの腹の中から小さな気を感じるんだ・・・」
そこからは物凄かった・・・トニーはまだ医学生なので、次善策で
「・・・・儂は確かに生命工学の専門家だが・・・・どうして儂に頼む・・」
阿呆兄はなんとドクターゲロにチチの診察を依頼しやがったのだ・・
「いや・・・・だってな・・・・」
自分を倒す為に生態データをよこせという注文を昔受けていたので、サイヤ人の生体構造にも詳しくなっているドクターゲロが、ラディッツにとってはうってつけに思えたのだ。
地球人のみならずサイヤ人の体の事を知っていれば、その二つの種族のハーフになる赤ん坊を診てもらうのが一番いいのではなかろうかと・・・・確かにその通りだとドクターゲロも思うのだが・・・
「儂の知る限りの一番の産婦人科専門医を紹介してやる。」
何かあった時は自分も対応してやるから先ずはそちらに行けと紹介状を貰ったラディッツは満面の笑みを浮かべてお礼を言ってゲロ宅を辞した。
「あの小さかった悟空とチチが結婚して早くもお父さんお母さんですか・・・早いものですね~。」
二人を小さなころから知っているゲボは感慨ひとしおに呟くのを
「お前は-マイ-とどうなっておるんじゃ?」
この村生まれのマイとゲボは十五歳年が離れているが、二人は恋人同士になって早くも二年が経っている・・・そろそろ結婚してお前こそ孫見せろという父の催促に、もう少しだけ待ってくださいとゲボは笑って話を有耶無耶にする。
もう少しだけ甘い恋人生活を堪能したいから
そんな父と子を後にしてラディッツ達は紹介された病院にジェットフライヤーをジュニアが運転してラディッツとチチと悟空の四人で訪れそして診断の結果、チチは悟空の言う通り身籠っていた。
その日から数日孫家と周りはお祭り騒ぎになり、チチは安定するまで家事の大半はモンブランと自宅仕事が可能なラディッツが請け負った。
舞空術が速くなったクリリンは、いっその事俺も山村に住所移すよと引っ越してきて、同じ敷地内にカプセルハウスを設置して住み始めた事が、妊娠初期のチチにとっては心強かったし、同じ日に結婚式をした最早姉妹どうぜんのモンブランがいてくれるだけで、撮影で家を開けなければならない悟空も安心できた。
チチの事をよろしく頼むと言った時の悟空の顔は夫でありそして父になる男の顔であった事も父の心を安心させる事に繋がる中、ラディッツは祖父の実を案じていた。
慶事があろうとも、誰よりも祖父の近くに居続けるラディッツは、祖父の気が細くなっている事にどうにかならないのかとまたもやゲロに相談したが、ゲロだとてどうにかできるのであればとっくにどうにかしている。
悟飯はもしかしたら人生初の自分の友かもしれないのだから・・・だが、
「老衰を止める薬は無いのだ・・・」
ゲロの無念気な声に、ラディッツはせめて弟とチチの赤ん坊が生まれるまで生きていてほしいと消極的にならざるを得なかった・・・そんな冬の日に、ラディッツは神から念話を受けてジュニアと共に神殿に赴きそして・・・
「ピラフ・・・ピッコロ大魔王・・・」
意外な者達に再会した。
最早大魔王たる邪気は無いとはいえども世界を騒がせた二人がいる事に、ラディッツとジュニアは心の底からの驚きを隠せなかった。
しかし驚いているのは自分と息子だけで、神殿に二人を入れた神とポポは兎も角としてピラフ達の方は自分達を待っていたようで何も言わずにホイポイカプセルを渡された。
「お・・・」
「お前の為じゃない・・・・孫悟飯さんの為だ・・・・」
何かを言いかけたラディッツの言葉を遮るように、ピラフはホイポイカプセルの中身を説明しだした。
「その中には陰陽の気が等しく詰まっている特別な果実が五つ入っている。」
それを全て食せば気の運用の達人の悟飯さんならば、寿命がわずかに伸びるかもしれないという言葉に、ラディッツは弾かれたようにピラフの顔を見たが
「重ねて言うがな、それは孫悟飯さんの為のものだ。」
にべもなく撥ねつけられるように同じ事を言われた
孫悟飯さんの為だと・・・
遡った悟空達の結婚式の日、あの日ピラフはピッコロ大魔王に連れられてこっそりと式・・・というか式で喜んでいる悟飯を見ていた。
結婚式の一ヶ月前に、ラディッツは祖父に頼まれてピラフにも式の招待状を持っていったのだ。
「慶事の時ならお前が村に来ても誰も咎めないと爺様からだかが、」
「・・,あのお人らしいが、行かんぞ。」
悟飯の心は嬉しいがまだマイとシュウに会う勇気がピラフには無く、なんとなく察したラディッツは、何も言わずに頷いてピラフ達の下を後にした。
「で?本当のところはどうしたいのだお前は?」
生み出した配下達はそれぞれ興味のある土地にいつき、二人旅を満喫している大魔王の言葉にピラフは偽れなかった。
せめて遠目からでもと
素直に心情を吐露したピラフの頭を大魔王は優しく撫でて抱きしめそして、当日ピラフの望む通り山村が見えるところに連れて行ってやった。
倍率の高い双眼鏡でピラフは元気そうなマイとシュウを見てホッとしながらも、何故マイの隣に常に自分を捕らえた一人のヤムチャがいるのだと歯軋りしながら、自分の事も気にかけてくれていた孫悟飯を探して、そして見て驚いた・・
「何故、」
「何をしているのだここで?」
悟飯の弱り様にピラフが愕然とした時、地球の魔族の長・シュラが来た。
式場にはメラとゴラがモンブランのそばにいる。
彼らはラディッツがアンニン様に相談をして、陽の高いうちならばと許可得て黄泉の国より悟空達、というよりもモンブランを祝福しに来たのだ。
一時とは言えども本気で惚れた娘の、幸せな姿を目に収めたくて来てみれば、大魔王とその庇護の下にいる小さな同胞の気を感じてきてみれば、どう見ても小さな同胞・ピラフは不審者だが、
「・・・魔族の長であるあなたにお聞きしたい。」
そのピラフが真剣な面持ちで何かを問いたいと言って来た。
その眼差しに、シュラは質問を許してみれば
「古来の魔族の文献によれば、人間であっても気の達人は総じて魔族ほどではなくとも長命であったと記されていました。」
地球のあちこちにある遺跡の中には、百年もの間同じ人間の戦士と戦いいかに手強くうんざりとしたかを愚痴の様に書かれた文献を見て、ピラフは悟飯さんの様な達人ならば後五十年は生きるのかと思いつつ、あの孫悟雲もそうなのかと思ってムカッとしたがそれは今はどうでもよく
「何故気を扱う達人の悟飯さんがあんなに弱っているのです!!」
もっと悟飯に寿命があると思っていたピラフは本気で焦っていた。
少なくとも後五年、十年はあり、その前にきちんと悟飯さんには顔を見せる決心をつけようとしていたピラフに、シュラはそれはとても簡単に事だと教えてくれた。
今より三百年前、すなわちピッコロ大魔王が現れる時代より少し前までは、人間は魔族同様に陰陽の気に満ちた食べ物を摂取しては己の体内の気を整え体全体を活性力を促し、それが長命に繋がっていたのだが
「そこな大魔王がそういう御技を知っていた者どもをごく一部を除いて殺し尽くしてしまったのでな。」
知識も技の継承も途絶えて久しく、そもそもが地球の中に陰陽が等く交わる場所は数えるほどになり、そんな食べ物はそれこそ夢物語になる程に希少なものに成り果ててしまった。
それをして今の人間はほぼ小粒になったとシュラは判断したのだ。
技が無くなり知識も失せ果て、短命になったと。
だが
「ではその陰陽が等しく詰まった食べ物があれば良いのだな!!」
ピラフは星を掴むというほどの途方もない事にその日のうちから挑戦した。
陰陽の食べ物を見つける事も、もし見つかったとしても食べさせる相手は手遅れかもしれないとシュラに言われてもピラフは諦めようとは欠片も思わなかった。
僅かでも望みがあるのならばと
その熱意をピッコロは笑って惜しみなく手伝った。
かつて発掘した遺跡にヒントはないかを探し、僅かでも可能性があるならばピッコロは黙ってでも連れて行ってやり、土地のものに話を聞いて探して・・・季節が二つ変わった。
雪山の奥深くの里に陰陽の等しい土地を見つけたが食べるものはなく、渓谷や砂漠、荒涼とした岩山にも赴いたが見つけられないのを、ピラフは苛立ち時折泣いた。
何故自分は物事を成し遂げられないのか、今回は自分の勝手ではあるが善行なのだからこの事だけは成し遂げさせてほしいと、人がどうにもならない時と同じ様に、ピッコロ大魔王の腕の中でピラフは神に祈った。
不死などと大それたことではない、せめてあの優しい人に曾孫が見られる寿命だけでのいいのだと、祈られた神は複雑な思いで神殿からピラフを見守っている。
強い祈りは時に神に届な事があり、まさかピッコロ大魔王の庇護者から祈られる日が来ようとは複雑に思うが、それでもその願いは確かに清きことであると神は認めてピラフにほんの少しの気を分け与えた。
それはピラフが諦めない限り、ほんの少しだけ前向きになれる気持ちを呼び起こす気だが、元来神は地上の事に干渉する事はない。
それを思えば、エールの様にピラフに神が力を与えた事に察知した大魔王は驚きそして愉快げに笑い、
「とっておきの場所に連れて行ってやる」
ピラフを伴い北西の大地に飛んだ。
「大魔王様・・ここは?」
「人間達がユンザビットと呼んでいる土地だ・・確か、ここだ。」
そこはかつてー自分達ーが孤独に蹲っていた場所がある土地であり、ピラフの健気さに大魔王は聞かれなくとも自分が知る陰陽の等しい場所に連れて来た。
ピッコロは最早ピラフを手放す気がないほどに可愛がっている。
何事にも驚き知りたがり探求し、喜怒哀楽のままに飾らずに動くピラフが愛おしい。
そのピラフが心の底から願っている事を、偶には自分から助けるつもりでユンザビットの中でも北の大地に降りたてば
火山の火口があった
そこは地熱で暖かく、なのにどこか冷やりとする凄みも感じる。
「これが、陰陽の等しい土地なのでしょうか?」
今まで味わった事のない感覚にそうなのだろうかと体感での感想を口にしたピラフに、そうかもしれんとピッコロは答えてそしてピラフを抱えて目当ての場所に歩をすすめる。
程なくして泉が湧いている場所に、一本の木が立っていた。
冬も近いというのに葉は青々として白い果実を実らせている。
不思議な光景であった
周りには同種の木はないのに、それひとつだけが力強く立っており、ピッコロの腕の中にいるまま木の幹に触れば冷やりとし、実は温かい
「確かに、この実からは不思議な力を感じる。」
大地の恩恵を十二分に受けているというピッコロ大魔王の言葉を信じてピラフは十個実を取りカプセルに入れ、そして大魔王はなんと神殿に向かったのだ!
何の用だと神殿の前で待ち構えていた神に、お前は全部知っているだろうと嘯くかつての自分の半身に、ピラフに力を貸した事は見越されている事を悟った神は、二人を神殿に招き委細承知している事をピラフに告げた。
そして次の日にラディッツ達が呼ばれたのだ。
かつて世界のどこにでもありながらも、今はユンザビットの一角のそれも一本の木にしか無い貴重な実を受け取ったラディッツは、静かに涙を流し驚くピラフに深々と頭を下げた。
言葉も無い
なにを言っても足りない程の感謝の気持ちを全身で表現するラディッツに、だからお前の為ではと言いかけたピラフは口をつぐみ
「礼は、悟飯さんにそれを食べさせてくれる事だ。」
だから頼んだという言葉に、ラディッツはジュニアを伴って行こうとした時にピッコロ大魔王から忠告を受けた。
この実を食べても手遅れかもしれない、仮に効いたとしてももって五・六年という短さしか無いと
それでも
「十分過ぎる、本当にありがとうピラフピッコロ大魔王。」
柔らかな笑みと感謝の言葉を残して、二人は悟飯の下に急いで帰り、少しずつ白い実を与えて一ヶ月がたった頃から、祖父の最弱は止まった。
そこから回復する事はなくとも横ばいのままのような、小康状態の様に見えるが、食欲もあり何よりも疲れる事が少し減る中、悟空とチチの子も順調にお腹の中で成長してそして
エイジ 757年の五月十日に、孫家に男の子が産まれ名を与えられた
「この子の名前は悟天じゃ。」
空を父に持ち、雲を叔父に持つ赤ん坊が全てを包み込んで愛してくれる子になる事を願い、孫家の家長・孫悟飯が名付けたのであった。
これまでの陰陽フラグ全てを使い、悟飯さんの寿命は少し伸びました