エイジ739 惑星ベジータ
・・・・・俺ってお偉い人達の諍いに巻き込まれるスキルでも仕込まれているのだろうか?
今日は親父も母さんも長期任務が入って家には俺と保育カプセルに入って育ってるカカロットの二人だけ。
帰ったら俺一人だけで飯食うの味気ないが、早くカカロットの顔も見たいので食堂で適当なサンドイッチとか買って帰ろうとした・・・・それが運の尽きだったのかも知らない・・・
食堂に近づくにつれてとっても聞き覚えのある人とそうでない人の怒鳴り声が聞こえて来た時から嫌な予感がして、食堂入り口前が中にはいられず恐る恐る中の様子を覗き込んでるフリーザ軍の武官・文官の人だかり・・・・回れ右したいが・・・
「この世で一番美味いのはカレーだ!!!
多くの具材を炒め溶かし込み、その味わいは食材によって無限に変わる究極の逸品なのを何故分からん!!」
「違う!究極の逸品はスペシャルパフェだ!!
それは食材によって甘くも酸味も調和させ、疲れた者を癒してもくれる素晴らしいものだ!!」
「ふん!甘味とはなんとも女々しいものを好むものだな貴様は!!かつて俺と-クウラ機甲戦隊-の隊長の座を、俺と争った男とは同一人物とは思えない程の落ちぶれようだな!!!」
「なんだと!!??荒々しさしか理解せずに、慰めるものの風流が解せない猪武者に成り果てたかサウザー!!!」
・・・・・聞こえて来る単語に・・・うん、不味いワードが沢山あるな。
ギニュー隊長は別にいいんだが・・・・クウラってもしかしなくともフリーザ様の兄君なのか?
機甲戦隊って聞こえたから十中八九間違いないよな!!
確かフリーザ様と兄君の仲ってバチバチじゃないけれど良くなくて、特戦隊の人達と機甲戦隊の人達も・・
「お前達のファイティングポーズは馬鹿みたいに長すぎるんだよ。
俺達みたいにシュバっと見せつけ次の瞬間には見惚れた敵達を瞬殺するっていうスマートさがないんだよ。」
「ドーレの言う通りだな。お前達のは野暮ってもんだな。」
「手前等!俺様達のファイティングポーズにケチ付けてただで済むと思ってんじゃないだろうな!!!」
「リクーム!バータ!!こいつ等外に叩きだすぞ!!おいグルド!!!構わんからこいつ等金縛りに・・・」
・・・・・ファイティングポーズの事まで張り合ってるジースさん達もキレてる・・よし!俺はしらない・・・
「あぁ!!!ラディッツ様!!!」
「おお!!騒ぎを聞きつけて駆け付けてくださったか!!」
「おいお前達!!ラディッツ様に道をお開けしろ!!!ささ、どうぞお通りを。」
・・・・これって・・
「む!ラディッツが来たか!!丁度いい!!」
・・・なにがだろう?
言い争いで怒鳴り合ってるのに俺が来た話が聞こえるってギニュー隊長って耳がいいんだな・・・・取り巻いている人達に見つかる前に撤退しなかった自分が悪いか。
戦略的撤退は諦めたラディッツは覚悟を決めた
「失礼します・・・」
「お!ラディッツ!!本当にいいところ来てくれたな!!こいつ等に言ってやってくれよ!!ファイティングポーズはギニュー特戦隊のが一番だって!!!」
「然様!お前も俺達が食べているスペシャルパフェを絶品だと日ごろから言ってるだろう!その良さをあの者知らずどもに存分に教えつけれやれ!!!」
「・・・・先ずは何があったのか順を追って説明お願いしますギニュー隊長。」
食堂の中で互いが推す食品と、自分達のファイティングポーズの方が優れていると口論になって十分以上経ってすっかり双方殺気立つ中に、文官姿のサイヤ人の子供が、何かに諦観したような様子で入ってくる様に、物凄い場違い感を持ったクウラ機甲戦隊隊長のサウザー達は唖然とする。
自分達を怖れて取り巻いて見ている者全員が、サイヤ人の子供に信頼の眼差しを向けていること自体があり得ない。
確かサイヤ人は皆殺しの計画を立てられている筈だが、それを承知しているギニューと特戦隊達がサイヤ人の子供の周りに集まり、子供の要請通りに事態の説明をしているのが奇妙以外の何物でもない。
「ふんふん・・・・なるほど・・・・しかし好みはそれぞれかと・・」
「ファイティングポーズも独自性が多用しているのがあるは好ましいと思いますし、そこに優劣が必要とは・・・」
「あちらの方達はフリーザ様の兄君様の配下の方達なのでそれは不味いかと・・・」
事態の説明を受けるサイヤ人の子供は、ギニュー達の話を一つ一つ聞きながら、真っ当な意見を述べてはギニュー達ががっかりとしている様子に、何の話をしているのかサウザー達が痺れを切らしかけた時、絶妙なタイミングで向こうから声をかけてきた!
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。-僕-はフリーザ軍にて文官長補佐をさせていただいているサイヤ人のラディッツと申します。
本日立ち寄られておられたのはご存知ありませんでしたが、よろしければおもてなしの品を作らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「は?・・・・・今からこの食堂の料理人に料理を作らせて俺達に振舞おうというのか小僧?」
サイヤ人のガキに、フリーザ軍の調理人とはいえそうさせる権限があるのかと訝しむサウザーの言葉は、別の意味で思いっきりひっくり返される。
「少し違いますえっと・・・サウザー様でよろしいでしょうか。」
「そうだが・・」
「良かったあっていましたか。黒髪の方がドーレ様で、隣の方がネイズ様ですね。
よろしければ僕の拙い料理で持て成させていただければと思います」
・・・・・・・は?
いきなりのサイヤ人の子供の発言に、間抜けた声を出したのは誰だっただろうか?
「えぇと・・・ターメリックに、これが生姜っぽいな・・ニンニクはこれで、野菜はこれとこれで~・・・」
・・・・・
「おいギニュー・・」
「・・・・・なんだサウザー・・・」
「何だはあの小僧の方だろう!サイヤ人のガキが文官長補佐とは一体何の冗談だ!」
「いや、あいつは本当に文官長補佐であってるぞ。あいつはな、そんじょそこらの奴等とは全く違うんだぞ。」
「ジース・・・しかし・・」
「いいから見てろよ。おいラディッツ!お前器用なのは知ってるが料理できるなんて聞いた事無いぞ。」
食堂のど真ん中を特戦隊と機甲戦隊が独占してテーブルを挟んで睨みあい、ピリピリとした雰囲気に相変わらずフリーザ軍の一般連中は外で成り行きを固唾をのんで見守る中、鼻歌交じりで調理し始める可笑しなサイヤ人の小僧は何だと、突っ込んだサウザーはまともだろう。
サイヤ人は近々皆殺し・絶滅計画はどこ行ったと暗に言うサウザーを、こいつ等の情報古すぎだろうと・・・・クウラ達に計画変更伝えてない事を棚に上げたギニュー達はラディッツを自慢気に話す中
「カレーは大丈夫です!ここスパイスと野菜が沢山あるので美味しいやつができますよ。」
野菜をみじん切りにし、飴色になるまで炒めてひたひたになる水を入れて沢山の粉にしていたスパイスを入れて煮込み始め、その傍らでフライパンで肉を焼き、焼き目をつけ出た油ごと野菜を煮込んでいる鍋に入れかき混ぜる。
「とろみがついたらもう少し味を調えますね~。」
お玉で焦げないように優しくかき回すと、食堂には得も言われぬ美味しい香りが漂い始める。
「こ・・・香ばしい・・・何と香しい香り!!」
「これは・・・俺でさえ引き込まれる・・」
「ラディッツ!お前そんなのどこで覚えたんだよ!俺達にもっと早く作れよ。」
「・・・・リクームさん・・・俺・・・いや僕・・」
「おいおい小僧。もう素が出てるんだから俺でいいぜ。」
「気取った喋り方なんてかたっ苦しいだけだろう?」
「ほらドーレもネイズもこう言ってんだ。いつも通りの言葉使えよラディッツ。」
「えぇ・・・まぁ、俺の職業文官ですよ?ご飯作るのは違う気が・・・」
「分かってるなら何をしてるんですかラディッツ?今日は早く帰ると言ってませんでしたか?
其れとも貴方は私に嘘をついたのですか?」
ラディッツの突然の調理と意外なほどのおいしそうな香りに場が和みかけた時、猛吹雪を背景に背負っていそうなフリーザ様の突如の出現に、百戦錬磨の特戦隊と機甲戦隊をして本気で凍りそうになる。
「あ!!」
「い!!」
「・・・フリーザ様・・・その・・・・」
「あ!・・・貴方様は・・・」
何が怖ろしいかというと、食堂に来たのはフリーザだけではなく
「お前達一体何をしているんだ・・・」
「・・・クウラ様・・・」
絶対的に相容れない兄弟が食堂に来る意味が不明である!
「・・・・フリーザ様と、クウラ様でしょうか?
あの・・・俺・・・その・・」
フリーザの兄のは知っているが、実際のクウラの姿を知らないラディッツは、それでもフリーザに似て同じようなポットに乗っている人物に色々と察し、フリーザの横にいるのがクウラだとあたりをつけて慌てふためくのを横目に、フリーザは首を少し引いてラディッツを呼びつける。
「来なさいラディッツ。」
「あ・・・その鍋が・・」
「ラディッツ。」
「あ、隊長。」
「俺がこの鍋の面倒を見る。とろみがついたらこの小皿の中にある調味料を入れればいいのか?」
「はい、おねがいします・・」
久々のカレー作りをラディッツはつい楽しくなっていた。
前世ではカレー好きの某イエローの影響で、大人になっても週一で自分で作るほどカレーが好きで、凡そ十年振りのフリーザ軍の豪華調理室でふんだんにスパイスを使って作れたのが楽しかったのだが、フリーザ様の言う事は絶対であり、お玉をギニューに預けてフリーザの横に直ぐに飛ぶ。
ラディッツは戦闘はそこそこだが飛ぶのは跳躍の方も溜めなく出来るので、初見の機甲戦隊やクウラは戦闘力が二千弱のラディッツの動きとは思えない速さに目を惹かれるが、フリーザはそんなことはどうでもいいと傍らに来たラディッツを直ぐに自分の尻尾で捕獲し自分のポットのふちに座らせ不機嫌全開で、冷たいフリーザの瞳がラディッツの心をしょんぼりとさせる。
「それでラディッツ?帰ると言っていた貴方が何故料理なぞをしているのですか?」
ラディッツとしては、特戦隊の人達と機甲戦隊の人達のいざこざを知られたら全員叱責されるのは嫌だが、フリーザ様に嘘を言う訳にも増して誤魔化すわけにもいかずに、内心で両者に謝りながらラディッツは知った事の顛末を話して、片方が推していたカレーを食べて和んでくれればいいなと思って調理した事を余さず話す。
話を聞いたフリーザは、日頃から自分と兄、そして自分達の配下同士の角の突合せを知っているので溜息をつくのを、ラディッツは呆れられているのかとしょんぼりとする。
「・・・何故貴方が落ち込むのですかラディッツ?」
「え・・・や・・」
「大方私がギニューさん達に呆れて後で叱ると思っていると思っているのでしょうが、私は単にいつもの騒々しさが起こったかと思っている程度ですよ?」
「・・・いつもなんですか?」
「そうです。元々私と兄は考え方のそりが全く合わず、ギニューさん達とそちらの機甲戦隊もそりが合わないのでこれが通常なのです。」
「そ・・・そうなのですか・・・」
「其れよりもラディッツ、貴方料理が出来る事を何故私に隠していたのです?」
「え!!??いや・・俺文官ですし・・・」
「ふん、他に何が作れるのか、キリキリと白状なさい。」
「あ・・え、スペシャルパフェとは違いますがフレーク入りのパフェとか、オムライスとか・・」
「今度作って私に食べさせなさい。」
「え?俺の料理・・・」
「私が食べると言っているのに、何か問題があるのですかラディッツ?」
「いえ!はい!!頑張って美味しい物作りますのでお願いします!!」
「ふふ、食べさせてもらうのは私の方なのに、お願いしますとは本当におかしな子ですね貴方は。」
「だって・・・嬉しいんですもん・・」
フリーザはラディッツの手料理を食べる事が決まれば途端不機嫌が吹き飛び、いつもの周囲が入り込めないラディッツとのイチャイチャタイムに入り、特戦隊達とフリーザ軍一同は、嵐は去ったとほっとしかけたのだが、そうは問屋が卸してくれなかった。
「フリーザ、なんだその子ザルは。お前はいつからそんな悪趣味なペットを飼う趣味が出来たんだ?
辺境にいたせいで栄光ある我が一族の程度を落とすなぞ情けない事この上ないぞ愚弟が。」
「・・・・なんですって?聞き捨てなりませんね愚兄が・・・」
・・・・猛吹雪第二弾!!
ファイッツの声が響きかけた時・・・
「クウラ様!!!見てください!美味しそうなカレーが出来上がりました!!
船の定期点検でこちらに降りられてから何も召し上がっておられないとか!!
確かにラディッツはサイヤ人ではありますが、周りの者共とは何もかもが違い、このカレーも味見をしましたが自分も食べた事が無い美味しさでした!!
ぜひご笑納ください!!!!」
ロイヤルファミリー兄弟の喧嘩を常日頃から仲裁しているギニューが、決死の想いで仲裁に入る。
「よろしければ美味しいものが出来た祝いに!私の喜びのダンスなぞも・・」
カレーの入った鍋を持ちながら、今にも本当にダンスしそうになるギニューの姿に、フリーザとクウラは毒気が抜かれ、何よりフリーザは横に座らせているラディッツが、自分の事が諍いの種になっているのに落ち込む姿に怒りは冷めた。
ポンポン
落ち込んで俯き始めるラディッツの頭をフリーザは尻尾の先で優しく叩く
「貴方の料理が思いの外直ぐに食べられますね。頂きますよラディッツ。
まさか配下が懸命になっている姿を、無下には扱いませんよね兄さん?」
「・・・・ギニューに免じて乗ってやる・・・」
なんだかんだと互いが本気で激突したらまずいので、ギニューを口実にクウラも引っ込んだが
「・・・・美味いな・・」
「えぇ・・・・こんな才能があるとは。」
ラディッツの作ったカレーはマジで美味しく、食事にそこまで興味のないクウラをして美味であると言わしめた事に、カレー大好きで、敵の眼前であっても食べかけのカレーを食べきるサウザーは自分も食べたいとちらりとラディッツを見る。
自分も食べさせてほしいというアイコンタクトに、相変わらずポットふちに座らされているラディッツはこれまたフリーザに瞳で訴えれば
「・・・元々貴方達が食べるはずだったものです。ギニューさん達と一緒に食べるなら許可します。」
「俺の部下に随分上から目線だな・・・おいサイヤ人の小僧、貴様俺の所に来い。」
「はい?・・・・貴方殺されたいんですか兄さん?」
「ふん、料理が気に入った、子ザルの一人くらい文句はなかろうフリーザ。」
様々な意味で自分の地雷を踏み抜いたクウラに、マジもんの殺気を飛ばすフリーザと、自分を引き抜こうとしているクウラの真意が分からず周囲と騒動の渦中に放り込まれかけるラディッツがおろつきかけた時、ラディッツのスカウターが文官の指令室からの通信が入って来た。
「これは・・フリーザ様、クウラ様、失礼します。指令室から緊急連絡が入りましたので通信を失礼します。」
きちんと断りを入れてスカウターの音声をオンにする
「こちら文官長補佐菅のラディッツだ。緊急入電とは何があった・・・・なに?コール星の魔獣討伐部隊からの報告・・・・・な!!!フリーザ様!!コンソールお借りします!!!」
「・・・構いませんが、指令室との通信を私の方に回しなさい。」
指令室はフリーザ軍が請け負っている仕事をしている全ての部隊を統括する場所であり、そこからの報告を聞いたラディッツの顔から血の気が引く様にフリーザは只ならぬ事が起きているのを直接聞こうと回線を回させた。
「フリーザです・・・・前置きは良いのでラディッツに報告した事を直接私にも報告を・・・・ラディッツ?」
「あ・・・・あぁ・・・・」
突然の自分の直接通信に慌てた部下に、何事かと指令室に報告をさせようとした時、ポットに積んでいるコンソールで何かを確認した直後に顔を歪めて泣きそうになるラディッツに驚く中、ラディッツはフリーザに回線を回した事でオフにしたスカウターの通信を再びオンにして-指示-を出す。
「先程の報告通り、ナナバ様が他の重要案件交渉中である事を鑑み、文官長補佐であるラディッツが代理で指示をフリーザ様に仰ぐのでそのまま音声をオンにしたまま聞いて居なさい。」
泣きそうになるラディッツは、今知った-絶望-をフリーザに報告をする。
「二週間前にアフール商人達からの要請で、船発着に使っている現地住民が住んでいるコール星にて、船発着場を荒らす魔獣討伐の依頼がありこれを受諾しました。
今より五時間前にナップル隊が現着しましたが、魔獣を発見しましたが体中に奇妙な黒ずんだ斑点があり衰弱し、訝しんだナップル隊はそこに住む現地住民達の様子を見に行ったところ・・・」
「宇宙ペストの疑惑ですか?」
「・・・・はい。中には体を搔きむしりながら吐血し、鼻や目が腐り落ちている者もいると。
軍の病状履歴を検索した結果、フリーザ様の懸念通りです・・・」
宇宙ペスト
どれ程科学が発展しようとも、それに対抗するように未知なるウィルスが出るものであり、中には解析不能のものがあり代表格が宇宙ペストである。
特徴としては体中に黒い斑点が出現し、やがて顔の部分から腐り果て体が異常にかゆくなり血が噴き出て肉をむしるほど掻きむしりながら吐血する事が最大の特徴である。
ウィルスを突き止めてはいるが、未だに特効薬が存在しない厄介なその病気は
「ラディッツ、分っていますね。」
「はい・・・ラディッツよりフリーザ様の命令を伝える。
惑星コールは現地住民と、接触した・・・ナップル隊諸共に消滅させる惑星破壊弾を今すぐにコール星上空に留まっている母艦に撃つように伝えろ。
宇宙ペストの潜伏期間は未だに未知であり、コール星に立ち寄っていた商人達を今すぐにロボット兵士達を送り込んで拘束し、疑わしい時は直ぐに・・・処分せよ。
以上となりますが・・・他にご指示は?」
「ありません、ラディッツの言葉をすぐさま実行させなさい以上です。」
ふ・・・く・・・
通信が切れた途端、堪えていたラディッツは血が出る程唇を噛みしめ手を握りしめる。
宇宙ペストは自分の知る限りの宙域において、自分が出した指示以外に対処できる方法がないのは知っている。
薬がなく、感染力が爆発的に広がる脅威であり、疑わしいものを残せば被害が広まり、やがては惑星ベジータにも到達しかねない。
見知らぬ他人よりも、惑星ベジータに住まう家族と仲間達を守る為に、自分は他人の生命を勝手に終わらせた事が辛くて、其れでも他に術がなくてどうしようもない事が悲しく、それすらも自己憐憫であり情けないとぐちゃぐちゃの感情が溢れて涙を流すのを、フリーザの指にそっと拭われる。
「ラディッツ、貴方は正しい判断をしたのです。」
「・・・分かってます・・」
「いいえ、分っていません。泣くという事は何かを間違いだと思うからこそでしょう。
それは引いては私の意向をくみ取り、その判断を下したことが間違いだと言っているも同然で、私の判断も間違えたと言っていることが分かりませんかラディッツ?」
「っ!・・・申し訳・・・」
「いいえ、優しい貴方に、酷な事を指示させましたね・・・私が直接言うべきでした。
赦してくださいラディッツ・・・」
「そんなフリーザ様!俺はフリーザ様の、この軍の文官長補佐です!!代理であっても今この時フリーザ様にお伺いを立てた後は指令室に指示を出すのは俺の仕事です!!・・・・弱音を吐きましたこと申し訳ありません・・・」
「分かってくれますかラディッツ・・・・貴方は本当にいい子ですね。」
泣いているラディッツを叱咤し、そしてやさしく慰めるフリーザの姿に、特戦隊達は意味ありげな笑みを浮かべ合いながら見守り、機甲戦隊がたかだか・・・それも絶滅させる予定の子ザルにフリーザ様は何をしているのかと混乱する中、クウラは-全ての意図-を看破して鼻を鳴らし、冷めてしまったカレーを放りだす。
▲▲▲
「ここにいたのですか兄さん、随分と探しましたよ?」
「ふん・・・・お前は本気でサイヤ人の子ザルを飼うつもりか。」
「えぇ、見たでしょうあの子の様子を?あの子はすっかりと私に懐いてくれています。あんなに可愛い子ザルは有能でもあるのですよ。」
「・・・・能力は認める・・」
船の定期検査を偽り、その実クウラは近頃弟がサイヤ人に対する計画を変更する事を父・コルドから聞いて、あいつは何を考えているのだと詰め寄りに来たのだ。
愚弟の乱心を身内の恥すぎて機甲戦隊には言えないので、サイヤ人絶滅計画に手間取り遅らせている愚弟の様子を見にいくと言ったので、サウザー達は本当に何も知らない状態でラディッツに邂逅し、全てがサイヤ人らしくない事に、そしてその能力には予めラディッツのことを掴んでいたクウラをして驚かされた。
先程見たラディッツは、宇宙ペストの兆候を聞いた途端にすぐさま最適解を導き出した。
サウザー達に調べさせてみれば、同族のサイヤ人が二人ほどいる隊であったが、泣きながらも殲滅の指示を出し、商人達の方にも手を回し病原体の元を瞬時に絶たせる手腕は見事であった。
有能でありながら戦闘力が低く、逆らっても直ぐに潰せる有能な人材
普段であれば脅威となりそうな有能は潰すのを信条としているクウラの食指が蠢き出す。
サウザー・ドーレ・ネイズの順で、能力を見い出し機甲戦隊を少数精鋭でとどめてきたが、食事を作らせても文官としての能力も有能なラディッツが欲しくなった。
「・・・・本気であの子ザルを俺に寄こす気はないかフリーザ?
子ザルの見返りにお前が抱えている重要案件を十は肩代わりするぞ?」
「お断りしますよ。そんな目先のものなんかではあの子とは全くつり合いが取れませんよ。」
「大した入れ込みようだな・・・」
「否定はしませんよ。
そしてラディッツのように私と軍を慕う次世代の、通称ラディッツ世代と呼ばわれ大人のサイヤ人から見限られ、同族同士で近頃は訓練以外の日常であっても殺し合いになりかけている子達もいましてね。」
「・・・・そいつらも生かすかの?」
「えぇ、例の-伝説-になりそうな程の狂った闘争心を持つには優しい子ザル達でして。何かあれば直ぐに潰す算段も付けているので、この星を消す時兄さんも見に来ると思いますが、其の時に口を出さないでくださいね?」
欲しいものに手を出さない様、フリーザは確約を取り付けるのを元よりこの地域の担当はフリーザなのだから好きにしろとクウラはどうでも良さそうに約する。
「お前が全てを制御できると?大した自信だが、何があっても俺は知らんぞ。
自分の不始末は自分で始末をつけろよ。」
「分かってますよ兄さん。」
「・・・・しかし・・・・サイヤ人らしからぬ奴だな・・・・よくあんな有能で使い勝手の良いガキがこんな星で育ったもんだな。」
「そこは同感ですね~。」
約定を交わした後、互いに合った認識をすることは珍しいロイヤルファミリーの兄弟が、ラディッツのサイヤ人らしからぬ事を互いに認め合う中、その当人は何も知らずに、保育カプセルの中にいて眠る弟の前にベットを持ってきて横たわり、最愛の弟の眠る顔を見ながらフリーザの-優しさ-を思い出す。
涙を拭ってくださるフリーザ様・・・自分を案じて叱咤しながらも慰めを下さる優しいお方・・・
フリーザ様はお優しいところもお有りになる・・・・・早く、その優しさだけを発揮される軍にしたいと・・・・己の出した指示による胸の痛みを、先程得たフリーザの指の感触を思い出し癒されながら夢想をする
フリーザ達と、クウラ達の本当の思惑なぞ想いもつかずに・・・・クウラの関心を買ってしまった事にも気が付けずに・・・偽りの微睡に漬け込まれたラディッツは眠りの底へと落ちていった