「爺さんはダイーズ達にしっかりと保護させてる。」
普通に診察が終わった後、エアーカーで時間をかけて山村の家に戻ってもらっている道中、俺ちょっと用があるからこいつ等置いてくわと適当ブッこいて一路決戦の場に来たターレスは、今にもぶっ倒れそうなラディッツに朗報を届けた。
「そうか・・・・そうか・・・爺様も無事か・・・」
良い事が聞けたとラディッツは心の底で安堵した。
爺様が無事、自分の身内の居る場所の安全も確保された・・・あぁ・・・あぁ・・・だったら!もう何も案じる事は無い!!
ブチィィ!!
その行為に、特に悟空は心の底から驚いた
兄が、あの温厚篤実なあの兄が獰猛な笑みを浮かべセルに付けられたガジェットを、犬歯で噛みちぎって粉々にした!!
腕にぴたりと張り付くように付けられていた事で、ガジェットと共に己の腕の肉を切り裂き血が流れているにも構わずに鬱陶しい物が取れたと、口の中に入った血と肉と共にガジェットの欠片を吐き捨てた兄は・・・・
「に・・・兄ちゃん?」
・・・呼んだのに・・・・兄は自分の方を向くどころか返事すらしてくれない!
大気が騒めいている
セルと悟空達が激突をして大気を揺らしたのとはまた違った振動が起き
「・・・・俺の戦い方を卑怯と言おうが知らん・・・」
貴様を叩きのめせるのであれば何でもする!!!
地獄の底から這い出たような低く冷たい声音のラディッツの言葉が終わるか終わらない内に、セルの体は吹き飛んでいた!!
それもベストは焼かれ、上半身を赤黒い火傷状態にされながら
「浅かったか・・・」
「!!・・・貴様!何を・・・・」
「再生したければすればいい!!その分とことん気を使ってもらうぞセル!!!」
気の供給を止めるガジェットを壊したラディッツは、躊躇う事無く地球の気をふんだんに借り受けた!
これが純粋戦闘を愛するタイプのサイヤ人が見ていれば、己の力だけで戦えない臆病者だとセルではなくラディッツの方こそが罵られ下手をしたら殺されていただろう。
だがラディッツはらしくない上に合理的な戦いを重視するサイヤ人であり、潔く負けて戦場で散っても!弟達が守れなければ本末転倒な事この上ない!
潔く?己一人で?
そんな麗しい事が出来る程に自分は強くも一人でもない!!
みっともなく足搔いて泥を啜てでも、誰かの力を借りて一対多数をしてでも敵を仕留める事の何が悪い!!
守りたいと誓った者を、誓った事を、守れずに破る事こそが悪であるとラディッツの心中は決まっている。
其の想いを爆発させるように、吹き飛ばしたセルを上空に蹴り上げ瞬時にセルの上に飛び出たラディッツは、背中を蹴り上げられた事でのけぞった体勢のままのセルの胸にぴたりと右手を置いた。
先程とは真逆の立場・・・・違いがあるとすれば・・・・
「う・・・・・ぎゃぁあぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
セルよりも慈悲の心を消し去ったラディッツの心の在り様が行動で示されたことかもしれない。
敵であっても自分とマーク達に賛辞を送っていたセルと違い、自分の大切な者達全てを危険に晒し生命を脅かしたセルの胸に、ラディッツの掌は高熱を発し高温の振動を内臓に送り込み火傷と内臓破壊を引き起こさせた。
内臓への直接ダメージは生命の危機であり痛覚を切断されたのではなく鈍らせていたセルをしても叫ばせ、飛ぶ事もまして受け身をとる事もできずに大会の石畳の舞台の上に墜落したのを
「仕舞にさせてもらうぞ・・・・」
蹲る事も出来ずに呻いているセルの上に、数多の光の粒子が叩き込まれた!!
「風切羽乱舞・仕舞」
それはラディッツが、相手を倒しつくす時の為に作った技
粒子を鳩ほどの羽の大きさに拵え、それを数多生み出し敵に突き刺す必殺の技足りえるものであったが
「ブォォォォォォ!!!!」
悟空達の合わせかめはめ波同様に、セルはラディッツの仕舞のダメージを受けつつも幾ばくかを口内で受け取り気を吸収して回復をして
「父君!!!!!!」
ラディッツを殺そうとする事をやめなかった・・・・セルだとて分かっている
ここで未知の相手ではあるが瞬時に同族だと分かる尻尾を持ち、自分と同等の力を持ったサイヤ人の乱入を許してしまった時点で・・・それよりも父と呼んでいるラディッツのガジェットが壊された時点で自分が詰んでいる事を。
地球が存在する限り無限に回復できる等という、おとぎ話だって鼻白むような馬鹿げた事をされて勝てる程に自分のパワーはラディッツを圧倒的に上回ってはいない!!
それでもセルはラディッツに避けられようが弾き返され時に跳ね返されてダメージにされようが構わずに、ラディッツにぶつかるように戦いを挑む事をやめなかった
それはドクターゲロからそうプログラムされたからかそれとも・・・・
分からないし分かってやるつもりはない・・・・分かったら・・・・それはきっと・・自分は動けなくなってしまう気がするから、分かってしまう前に!!
「セル!!!!!!」
父君と呼びながら放つセルの気のありったけを込めた手刀を躱すには距離が近すぎシールドを張ったが、音をたてて四重の内の三つまで破られたが、最後の一つで止まった時
ズッ!!
ラディッツの手刀がセルの心臓を刺し貫いた・・・・
・・・初めて・・・・本当にこの世界で生まれて初めて狩りではない、一方的な蹂躙ではない、生命のやり取りをなす戦闘をした
初めて・・・気功弾ではなく己の手で敵を刺し貫いた・・・・
温かい内側に、再生しては自分に潰され又再生される憐れな肉体・・・こうとなっても自分に向けて拳を叩きつけているセル・・・・
「セル・・・・」
「あ・・・う・・」
「セル!セル!!もういいだろう!!もう勝負は決したのはお前だとて分かっているだろう!!!」
心臓を潰され再生できたとしても、ここからの勝ち筋が見える筈も無いのに、激痛を押してまで抗うセルの考えが分からずに、ラディッツは堪らずに叫んでしまった。
手刀を抜けば、抜いてしまったら自分の気をセルが奪い取ろうとする事は分かっている。
手刀を抜けないままに、空中でセルとラディッツの奇妙な押し問答が始まった
ここまでになっても、セルの心は折れず痛みをものともせず、ラディッツの問いに馬鹿げたことを聞くと血を吐きながら嘲笑い、ひたりとラディッツの瞳を射ぬいた
「奇妙な事を言われる・・・貴方とて、私に勝てない状況であっても後ろの弟妹弟子達を庇う事をやめなかったではないか・・」
「それは!!・・・あれは俺には守りたい者達がいたからだ!!生きて守り抜きたい者達がいるからだ!!!・・・・お前は・・・俺を倒すプログラムの通りに動く事を辞められないのか?」
あの時、背中にいた弟妹弟子達とマークと弟達を生きて守る為に必死で抗ったが今のセルを突き動かしているのは、ゲロによってプログラミングをされたからかと暗に問えば
「ふっふ・・・はっはっはっはっは・・・あぁ・・・確かに私はそうあるべく生み出された者だ・・・だが・・・私は・・・純粋に貴方と戦いたかった・・・」
初期と中期のデータでは地球上最強であるという孫悟雲という男と戦う事を、羊水と同じ培養液の中で、まだ形の定まらない細胞の頃からの夢を・・・果たしたかったのだ
ラディッツとカカロットというサイヤ人兄弟の細胞を多分に組み込まれたセルは、その細胞主であるラディッツよりも戦闘を楽しみにしていたのだ
それは実に戦闘民族サイヤ人らしい考えであり、本能であるとも言えた
最強に挑みたい、自分の力をぶつけたい、そしてその果てに勝ちたい!!
そう!それゆえに勝ちたかったのだ!!!
最強と呼ばれた男に・・・だが・・・父君の周りもデータを寄こしてきた制作者もとんだ節穴だらけであった・・・・なにが弟達の方が強くなりつつあるだ・・・この男は蓋をしていただけ・・・普通の人々の中で恙なく生きていきたいと願う無意識から力をセーブしていただけであったと、自分の心臓を直接ラディッツの手刀に貫かれているセルは知った
自分は・・・
「セル!!・・・・お前・・・髪が白く・・・」
「ふん・・・老化が始まってしまったか・・・つまらん・・・」
己の寿命を戦闘細胞と回復させる分裂細胞に回したとても届かぬ戦士であったと
己を貫いている父君と呼んでいる男と同じ長い黒髪の中に白いものが混じり始めた事を聞かされては
興覚めもいいところではないかと・・・・寂しげな声音でセルは呟いた
夢では、戦闘とは勝つにしても負けるにしても華々しく楽しいものであった筈なのに・・・今の状況の何処に、憧れていた華やかで血湧き肉躍る戦闘があるというのか・・・