俺ラディッツは弟を絶対に守り抜く   作:ドゥナシオン

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-幕間-白き道を行けるように・・・

エイジ750は地球でも宇宙でも色々とあったように、エイジ758でも様々な出ごとがあった

 

757から758に年が切り替わる目出度い年またぎのその日、孫家は大わらわであった。

 

 

「ふ・・・う!!痛い!!痛いよ!!!」

「頑張んべソラ!!痛いのは赤ちゃんだって一緒だべ!!!」

「ソラちゃん!今赤ん坊の頭が出て来てるべ!!!」

「あ・・・あぁ!!うあああっ!!!!」

 

晦日の昼にソラの陣痛が起き、かれこれ十二時間以上が経ってようやく赤ん坊の頭が見え始めている事に、経産婦のチチもソラの体力がもつかとやきもきし始めており、いわんや子供を産んだことの無い女性陣と、産めない男どもの心配はそれ以上であった!

 

「・・・・赤子とは・・産まれるのにこれほどの時間を要するのか父君よ・・・・」

 

人造人間という奇妙な生命体の自分が片親だから、何か不具合が起きたのだろうかという弱気なセルの言外の言葉を感じ取ったラディッツは、不安そうにしている弟妹達の側を離れてソファーに力無く座っているセルの隣に座って自分の方に抱き寄せた。

 

皺や他の老化は未だに無いが、すっかりと白髪となってしまったセルの長い髪をゆっくりと撫でてやりながら。

 

セルは尻尾の他にも髪型が終生変わらないサイヤ人の特性を受け継いだようで、手入れも大変だから切ればいいではないかという周りの言葉に、いつもきまって

 

「これは私が父君の子供だと言う確たる証であるからして、切るなどとんでもない。」

 

その父君を倒そうとしながらも、縁(よすが)を大事にしたがる奇妙な息子・・・

 

仕方のない奴だとラディッツは苦笑しつつも好きにしろと言うお達しで、誰もセルの髪について言う者はいなくなった。

 

その髪をラディッツに撫でられ、セルは次第に落ち着きを取り戻して顔を上げて周りを見た。

 

自分の・・・・式は挙げてはいないが書類上は妻になったソラの身を案じてかそれとも子供の誕生を祝いに来たのか、ラディッツ曰くの孫家の身内は言うに及ばず、天津飯達も駆けつけお師匠様ズも来て、何に関係があるのか悟空の義理父でチチの父牛魔王までやって来た・・・・牛魔王なんてお前がおっとうになるんだからしっかりとせにゃならんとかセルに豪快に笑っていい放ち、言われたセルの目が点になった。

 

何故この者達は父君を殺そうとした自分と、真っ赤な他人であり記憶喪失の宇宙人などというソラの出産場面にやって来たのだ?

 

自分を助けると言ったあの時の父君以上に理解不能だ・・・・

 

男は役に立たんと産婆に言われるわ、見られるの嫌だから外に行ってとソラにまで言われ、チチはいてくれというソラの頼みで産屋になっている部屋にはソラとチチと産婆さんだけで、ブルマもモンブランも外で男達と待っている。

 

「あ・・・・雪・・・・」

 

痛みの声が激しくなるのを聞いて辛くなったブルマが、気を紛らわせようと窓を見た時に空から一欠けらの雪が舞い降りた

 

赤ん坊を産むならば都ではなく自分が落ち着ける山村の自宅がいいと言ったソラの為に、産屋にもなる広い寝室を拵えた。

 

今その寝室は言うの及ばず孫家の家全体に灯りがともされており、その灯りに照らされた事で、深夜であっても一欠けらの雪が見られた。

 

「・・・本当だ・・・・どんどん降ってくる・・」

「こりゃ積もるな・・・」

「親父、冷える前に少し暖房の温度を上げてくる。」

 

ブルマの声が聞こえてクリリン達も気を落ち着かせる為に窓の外を見てみれば、どんどんと降り始めあっという間に外の草木の上に白く積み重なっていった。

 

・・・・今ソラが味わっている痛みが溶ける雪のように無くなってくれまいかと、変な事をと思いながらもセルは感傷的な思いを抱いた。

 

近頃の自分はどうもおかしいとセルは自覚している

 

単なる気を吸い取る相手を好ましく思ったとて、足跡を残す相手としか見ていなかった・・・筈なのに・・・

 

「あんたの事やっぱり嫌いだ!!!」

 

ソラの中で子が大きくなるにつれて膨らむソラの腹を見ていると時折撫でたくなり、撫でようとしたのだがいつもそう言われてこっぴどく手を叩かれて跳ねのけられる度に胸が痛い・・・別にそこをうたれでもされた訳でもないのに・・・

 

それはどうしてかと父たるラディッツに問うても、父に悲しげにされてどうしてか一緒に考えようかと抱き寄せられて・・・答えを教えてもらった試しがない・・・

 

セルは知識があれども知恵も実践的な経験も何も無い

 

ただ強く成る為だけに生み落とされた-物-であり、者となる予定など始めから無かったのだからそれが当然と言われれば当然なのかもしれない・・・科学の世界では

 

だがラディッツはそんな科学の枠組みの中で生まれて死ぬだけであったセルを、理知では測れない感情だらけの世間という場所に強引に引っ張りこんだ。

 

もしかしたら長くとも二・三年しか生きられなくとも、零と一の世界ではなく十人十色どころか百も万もある感情の世界で生を全うさせたくて・・・それは自分の押し付けかもしれないが、それでも世界には戦い以外の楽しい事も嬉しい事もあるのだと

 

それは確かにセルを変えるに足る経験が待っていた

 

山村の中を少しずつ出歩けば、誰かしらが気に掛けてくれる。

 

話好きで世話好きな人が多い山村は、あのターレス達をも受け入れてしまう剛の者達が住んでいるところであり、ある意味においてペンギン村に似てきているかもしれないとんでも村になりつつある。

 

そんな人達が多い・・・人しかいない山村は、記憶喪失のソラにも優しく悟雲の養子になったセルをも優しく包み込んだのだ。

 

チチとブルマ以外にはなかなか心を開かなかったソラの心を溶かし、父ラディッツ以外には排他的なセルの中にもするりと入り込み、入り込まれたセルの心の中に戦いと父親以外の事を思う気持ちの種を植えていった。

 

ソラの中にいる赤ん坊が気になる

ソラがチチとブルマ達と笑っていると気になる

ソラが時折泣いていると気になる

ソラが・・・・ソラが・・・

 

気が付けばさして気にも留めていなかったはずのソラの事が気になる

 

それがソラを、ソラの中にいる赤ん坊を想い始めているという事を知らずに

 

知るには、セルは心というものを知らない、愛というものを知らない、心情という者を知らない、絆というものを知らない・・・・戦う術以外の事を、本当の意味で知らないセルが、ラディッツにとっては堪らない・・・一歩間違えれば、弟のカカロットも下級戦士として戦い侵略する教育プログラムを植え付けられる事で、愛情というものを塗りつぶされてしまっていたかもしれない事を知っているからだ。

 

其の方がサイヤ人の上層部にとってもフリーザ様達にとっても都合のいい兵士達が出来るから・・・幾重もの幸運と奇跡の果てにそれを免れることが出来た自分達の、もしかしたらそうなっていたかもしれない姿をセルを通して見てしまったから・・・

 

惑星侵略の兵士として作られる生命もある

単純な労働力として作られる生命もある

玩具として、趣向として造られる生命もある

 

広大な宇宙では様々な思惑で生み出される生命がある事を知るラディッツとしては、何も知らずにこの世に無為に生まれる生命の・・・何という奇跡的な事だと知れば知るほどに、戦闘用人造人間セルが生まれなければならなかったのが自分の所為だと思う度にラディッツはセルにすまないと叫びたくなる

 

だが、それはお前は真っ当な生命体ではないと言っているも同然であり、そもそも憐憫を掛けられる同情をセルが許す筈も無い

 

サイヤ人の特性を本当に色濃く受け継いだセルは戦士として凛として誇り高く、寿命の大半を使い切って戦った事を後悔など微塵の欠片も抱かずに死に向かっている己の身を愉快気に笑い飛ばす心の強さを備えている。

 

そんな漢が、同情を許すはずが無いのだから・・・

 

そんな漢の子を身籠らせられたソラとしては、セルは最悪な奴の儘なのは致し方ないとも、ラディッツと事情の一切を知っている者達はソラの考えを受け入れている。

 

如何に甲斐甲斐しくされたとしても、ソラに無体を強いた事にかわりは無いのだから

 

四年間も監禁されて気を吸い取られて解放されるどころか子まで孕まされて、それを愛しいという思いに変わる者がいるかもしれないが、そうならないままでいる者もいるのだから。

 

だが、ソラは己の腹の子は不思議と憎まなかった

 

憎い男の種であっても、腹の中に宿った生命はソラを、ソラだけを頼らないと生きていないその儚さが、記憶がなく何も分からず無体をされて不安しかなかったソラの心を落ち着かせた。

 

自分だけが守れる者、自分だけがこの腹の中の子を守るのだと、母性本能が生まれたのかもしれないのが功を奏し、ソラはラディッツ達の中で生活をするようになっても腹の中の子を第一に考えていた。

 

沢山食べれば腹の中の子が丈夫になる

良いものを自分が見れば、聞けば、腹の中の子が喜ぶかもしれない

こんなものを着せて上げたい

こんな事を産まれた後に教えて上げたい

 

いつか生まれる自分の子供に良きものを・・・それがソラを良く生きる道を歩かせる導(しるべ)になり、四年間ですっかりと無気力になりつつあるソラの心を温め朗らかになっていくのを、自分があの顔をさせたかったのだがなと、ソラの笑顔を見たかった理由が分かっていなかったセルの心も少しずつ変化させていき、遂には出産で苦しむソラに何もしてやれないと無力で弱音を溢す程になったそんな日、天から白い雪が、後から後から降っていく

 

産まれてくる赤子の行く道が、真っ白で無為で無垢な未来である事を祈ってくれるように

 

 

ふぎゃあ!!!ふぎゃああああ!!!

 

 

孫家の自宅前が白い雪に敷き詰められた時、産声が孫家の中を満たした

 

産まれた・・・産まれたのだと知った瞬間にセルは気力を込めて立ち上がり、入る許可も得ずに扉を乱暴に開けて室内へとずかずかと入って行った。

 

日常芝居がかって気取っているセルらしくない態度に、出産で疲労困憊しているソラは目を丸くし、チチが止めようとしたがセルの顔を見て黙って脇に避けた。

 

扉の方を見れば、兄達もそこから先に入って来ようとしていない・・・つまりはそいういう事かと・・・分かっていないソラは呆然とセルを見て

 

「お前・・・お前がどうして泣いている?」

「・・・私は泣いているのか?」

「お前・・・死にそうになってどっかおかしくなってないか?」

 

疲れているであろうソラの目線に合わせる様に跪いたセルは泣いていた

 

何故泣いているのかは本人も、涙を見せられているソラも、他の者達もわからない

 

推察は出来るがそれが正解かどうかわからないので、誰にもセルの涙の理由は分からない

 

だがそれでもいいではないかと、ソラとセル以外の全員が思う

 

少なくとも今のセルは、ソラの手を握ってはたかれても笑っているのだから・・・

 

「ほら!赤ちゃん綺麗になったから二人共見てごらん!!」

 

元気のいい御年八十の梅婆ちゃんが、羊水と産道で付いたものを綺麗に拭き取り産着に包んだ赤ん坊を優しく抱いてセルとソラの前に来た。

 

「お父ちゃんの方に似たんかね・・・真っ黒いはねっ毛の髪が肩下まであって。

めんけえ尻尾もちゃんとついてた元気な男の子だよ。」

 

セルとソラの間に産まれた赤子は、セル同様にサイヤ人の特性を色濃く受けついだ子であったが、ソラはそれを嫌だという思いは欠片も浮かばなかった。

 

「婆ちゃん・・・私その子を今抱っこしたい・・・」

「大丈夫かい?」

「抱きたい!!」

 

体力があるとはいえどもお産後のソラを気遣う梅の言葉にも、面倒を見てもらう内に心を開いたソラは頑固に強請り、出産後であるはずのソラの声の元気の良さに梅は驚いたが

 

「そうかい・・・ならそっと両手を出して、そう人形で学んだ時の様によそのまま。」

「あったかい・・・あったかいよ・・・・」

「んだよ、命ってのはなあったかいんだよ~。」

 

数奇な運命を辿って産まれた生命を、抱いたソラは暖かいっと言って泣き崩れ、セルはソラにはたかれるのを承知でソラの背を支えた・・・暖かい・・・確かに生命とは暖かいのだとセルも初めて識った・・・幾度も腕の中にいさせながらもこの瞬間までその温かさを見てこなかった自分は・・・何と勿体ない事をしてきたのだろうと思う程に・・・そしてそんな光景は尊くて暖かいものであると部屋の中に入って見守る者達の心に温もりを生んだ

 

誰が何と言おうと、ソラの産んだあの子供を守ろうと誓う程に

 

 

「この子供の名前は・・・そうじゃのう・・・白(はく)とするかのう。」

 

出産が長引いた為に休む事になった悟飯が朝になって目を覚ました後、名付ける子供の名前をどうしようかと考えた時、自然と白という文字が浮かんだ。

 

「セルとソラの子供、孫 悟白(ごはく)じゃ。」

 

セルとソラも孫姓に入っており、戸籍では孫セルと孫ソラになっており、その二人の息子の名前は孫悟白となり、悟飯と祖父仲間になったラディッツと父親のセルを始め、身内一同がソラの腕の中で眠っている赤ん坊を悟白と呼んで祝福した。

 

そんなエイジ758の元旦であった

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