俺ラディッツは弟を絶対に守り抜く   作:ドゥナシオン

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決着の果てに・・・

「そこどいてくれよ兄ちゃん!!!」

 

何だってそんな奴を体全部で庇うんだよと悟空は泣き叫ぶ。

 

ダメージがないとはいえ、自分が兄を攻撃してしまった事が、ダメージによる激痛よりも何よりも悟空を苦しめる・・・大好きな兄がもしも自分の攻撃で傷がついたらと思った瞬間、心が奈落に落ちたようにさえ錯覚するほどに・・・

 

「すまない・・・だが、こいつの中にジュニアが取り込まれたんだ!!」

「な!!・・・・あ・・・・お前!!!!」

 

ラディッツの言葉を聞いた悟空は瞬時に怒りに沸き

 

「返せよ!!!おら達の家族を!!!兄ちゃんの大事な息子返せよ!!!!」

 

 

スラッグはジュニアを取り込んだ事で多少は気が回復したように、悟空もまた山吹色の亀仙流の道着の中に忍ばせ、スラッグに踏まれた事で粉々なって破けた袋から幾らもなくなった仙豆の残りを口にした事でそこそこ回復し、スラッグに迫ってジュニアを返せとスラッグの首を掴んで揺すぶった。

 

ピッコロ大魔王が生んだ卵から出てきた大切な家族は、常に兄の傍らにあり自分達と共に在り、孫家の男の一人として山村の家族達を守る仲間!!

 

その家族が!こんな最低な恩知らずの中に取り込まれたなぞラディッツにとっても悟空にとっても許せない!!

 

だが、スラッグはそんな二人を嘲笑う

 

 

「儂を殺しても最早お前達がジュニアと呼んでいるあの者は戻らん!!」

 

ナメック星人同士の融合は、互いに同意を得るか得ずとも強い者がベースになる!

 

先程まで死にかけていた、ましてナメック星人としての知識もないジュニアが今の状況を理解できずに戸惑いながら消えていく感触を直に感じ取っているスラッグは

 

「どうする?儂を殺せばジュニアは永遠に取り戻せまい?」

 

ジュニアを生んだというナメック星人が、仮に龍族で願い玉・ドラゴンボールを生み出していたとしても、お前達が儂諸共にジュニアを殺したという事実は消えてはくれんぞと嗤い続けた。

 

悪の心しかないスラッグからすれば、善性だの愛だの戦いの邪魔になるか弱ければ食い物にされる格好の餌食でしかない

 

現に自分にとどめをさせるであろうラディッツも悟空も、自分の言葉に衝撃を受けている・・・筈であったが・・・

 

「そうか・・・・お前の中にはまだジュニアがいるのか!!!」

 

ならば返してもらうぞと、不敵に笑ったラディッツの考えがスラッグには理解不能であった!

 

取り込んだと言ったというのに・・・・

 

ドオン!!!

 

「兄ちゃん!!!」

 

スラッグは自分の体力の半分を気の爆発に回し、悟空を吹き飛ばしたが・・・・

 

「貴様・・・・何故儂にしがみついている!!??」

 

ジュニアの意識はもう無いのだと喚くように言われても、ラディッツは笑っていた。

 

だって・・・・ジュニアは・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

堕ちていく・・・・ただただ暗く底の見えない、それでいて不愉快なものが頭の中に流れ込んでくる記憶の欠片達・・・・

 

だがそんなものが流れて来ても、一時は浮上した自分の意識がスラッグの真っ黒い意志に絡めとられ、今度こそ二度と浮上させまいとするように堕とされていく自分・・・

 

ただの賭け事で生み出された自分・・・そんな自分がすぐに存在意義を手に入れることが出来たのは幸運以外の何物でもない

 

卵の自分を抱きしめていた父の心に寄り添って生きていくのだと・・・誓ったはずなのに・・・

 

役に立たなかったのだ・・・・結局、いつも最後の最後には父が・・・守ると誓ったラディッツが解決して、自分はそれを見ているだけで・・・

 

自分の存在意義が分からなくなった!

 

守りたいのは本当で、でも最後に守られるのは自分達で・・・・同族でもない自分が守られるだけの存在で居ていいのかすらわからなくなる場所であった・・・

 

愛など嘘だ

虚構だ

 

全ては自分を良く見せる為の手段

揺るぎない支配を綺麗に見せるだけの所詮は上辺だけの・・・

 

「う・・・五月蠅い!!五月蠅い五月蠅い五月蠅い!!!!」

 

流れ込んでくるどす黒いスラッグの思念・・・取り込まれまいとジュニアは己の体を丸めて耐えようとした・・・・だって・・・愛を否定してしまったら・・・自分とあの人との縁(よすが)が何もなくなってしまうではないか・・・

 

種族なぞまったく違うどころか、敵であった生み主が戯れに生んだ自分とあの人と繋ぐのはその愛しかないではないのだから・・・それが嘘などであったら・・・自分は

 

・・・ア・・・

 

 

・・・ニア・・・

 

お・・・おや・・じ?

 

早く起きろジュニア

 

 

卵の中にいた時の様に体を丸めながらも、堕ちていき溶けていくジュニアの耳に声が聞こえた・・・・

 

冷たいこんな場所に似つかわしくない春の日差しの様に暖かい声が・・・

 

「お・・・・おやじ・・・俺は、また負けた・・・ターレスの時も、セルの時も、親父を守ってやると偉そうに言いながらも俺はずっと負けてる・・・」

 

何が、終生父を守る為に側にいてやるだ・・・・

 

いつの間にか、丸めていた筈の体がまっすぐに伸びて立ち尽くしているジュニアは、目の前にいない筈のラディッツがいるような気がして話し出すのを、くすりと柔らかく笑われた気がして

 

「俺はなジュニア、お前が強いから側にいて欲しいんじゃない。」

 

俺がお前を愛しているからいて欲しいんだ

 

「お前が消えたら、きっと俺は寂しくて悲しくてどうしていいかわからなくなるぞ。」

 

きっと、冬の寒さの中で迷子になった子供の様に、お前をずっと探しに行ってしまうだろう・・・

 

「お・・・親父・・・俺は・・・」

「ジュニア。」

「は?・・・ああ・・」

「それがお前の名前だろ?」

 

お前は俺の大切で愛しい息子なんだ

 

「俺は・・・・」

 

そうだ・・・そうだ!

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

「放せ!!儂に話し続けて何になると言うんだ!!この狂人が!!!」

「黙れ!!!ジュニア!お前は俺の大事な息子だ!!!俺の命を懸けて守りたい大事な子供なんだ!!!」

 

こんな奴に負けずに!!起きてくれ!!!!

 

 

 

現実世界で暴れるスラッグをラディッツは取り押さえ、幾度も幾度もジュニアを呼ぶ続ける!

 

どれ程言っても言い足りない程に愛している息子の名前を、諦める事無く何度も何度も・・・・

 

その言葉は、確かにスラッグの精神世界で辛うじて残っているジュニアの意識に届き、少しずつ弱り消え始めていたジュニアの意識の支えになった!

 

だがスラッグの精神もまた強靭であり

 

 

「外にいるサイヤ人はお前を戦力として欲しているだけだ!!」

「ここにおれ!いつかお前と共にナメック星にいき同胞達に会わせてやる!」

「儂しか本当のお前を分かってやれんのだぞ!名もなきナメック星人よ!!!」

 

惑わそうと甘言を弄し、ジュニアの触れられたくない精神の傷まで手を突っ込んできた!

 

スラッグの言葉に葛藤が浮かばないと言えば嘘になる・・・それでも自分は・・・

 

「戻ってきてくれジュニア!!」

 

 

              

              俺の最愛の子!!!!

 

 

 

親父!!!!

 

 

必死に懸命に自分を呼び続けてくれる父の下に・・・いつか、スラッグが言った言葉が現実になろうとも、それでもいい!!

 

あの人を守れるならばそれで!!!

 

「行かせんぞ!!!」

 

手を伸ばし浮上しようとするジュニアを、スラッグの精神が揺らいだ・・・それはまるで・・・泣いている様な、先程の自分と同じく頼りない迷子・・・あるいは、自分が生まれた時の父の心の様で

 

そんな、まさか・・だがもしかしたら

 

「・・・・・孤独だったのは・・・お前の方だったのかスラッグ?」

「ッ!!??」

「そうか・・・だからお前はお前に似た俺に興味を持ち、取り込もうとしたのか?」

 

スラッグから流れ込んできたナメック星の人々は、スラッグとは似ても似つかない穏やかな人ばかりで、もしかしたら同族の中であってもスラッグは・・・・

 

「ち・・・ちがう・・・・違う!!儂は!!どのナメック星人よりも強かった!!優秀だった!!!そんな儂を理解できないものが出来損ないなのだ!!!」

 

どれ程叫ぼうとも、ジュニアにはスラッグがもう怖ろしい者とは思えなかった・・・そこにいるのは・・・・哀れな孤独な老ナメック星人であった・・・

 

一人ぼっちで、自分がしたように他者から切り捨てられた・・・・たった一人で死を迎えようとしている・・・・脆弱で、消えかけている

 

そう感じた瞬間、ジュニアの口から言葉が転がり出た。

 

「・・・・・俺の中に、いたいだけいればいい・・・」

「な・・・なんじゃと!!??」

「俺の中にいて、満足したら消えればいい・・・・」

 

どうして地球を食い物にしようとした奴にこんな事を言っているのか、ジュニアにだってわからなかったが、言葉が自然紡がれた・・・同情だろうか?

 

寒い中で一人消えてしまう同胞への・・・

それとも・・・あの父の真似事なのかはわからないが・・・

 

儂を馬鹿にするのかと喚きながらも、どんどんと小さくなっていくスラッグは、最期にはジュニアの手の上に収まり・・・・蹲っってしまった・・・まるで卵の中の雛の様に・・・・

 

スラッグは認めたく無かった!

 

同族の中でも常に一人で在り、外に出ても愛を知らず絆を馬鹿にした果てに、待っているものがこんな寒く惨めな場所であるなどと!

 

此奴とても、同じ様に孤独であるべき存在が!ほんの少しの出会いの違いで冬と春ほどに違う場所にいるなぞと!!

 

そんなスラッグの心情は、ベースになりつつあるジュニアに届いたのか

 

「・・・生まれなおせ・・・・」

 

今生で、未だかつて聞いたことのないほどの穏やかな声が自分にかけられ、信じられないとスラッグが顔を上げれば、そこに見えたジュニアの顔は・・・厳然とし真摯な表情であった

 

それは自分を怖れるでも嘲笑うでもなく、かつての同胞の最長老が一度だけ自分を諭そうとしたあの時と同じ・・・何故、自分のことすら知らない此奴が・・・ーあの人ーと同じ顔をしているのだ!!?

 

わからず混乱するスラッグを、ジュニアは優しく包み込み願った

 

悪であっても、その権利はきっとある筈だから・・・・罪を地獄とやらで償った果てに、今度は・・・自分の様に良き親に恵まれる事を願いながら、ジュニアはそっと掌を閉じ、スラッグの全てを受け入れた

 

悪の心も、自分と父達への憎悪と殺意も全て・・・受け入れそして

 

浮上する様に目覚める意識の中で、ジュニアは様々な人達の笑顔を見た

 

大祖父になる孫悟飯・兄弟の様な悟空とクリリンとブルマ

チチにモンブランに山村の人々に、鶴仙人様に天津飯達

そしてマークとミゲルとトニー達と沢山の人達の笑顔と優しい声の数々

 

あぁそうか、俺はこの人達を愛している様に、この人達にも愛されている

あれは・・・だから孤独をこれまで知らずに幸せであったのだと、守り守られている事が、こんなに幸せで、だからこそ守りたいのだと強く願ったのだと知ったジュニアは、愛する人達の待つ世界へと再び戻り眼を開けば

 

 

「・・・・ジュニア・・・」

 

父・ラディッツの優しい笑顔がそこにあった・・・

 

「親父・・・・」

「お帰りジュニア・・・」

 

自分が帰還するまでこうして抱きしめてくれていたのかと思うと、ジュニアの鼻の奥がツンと痛み、胸が苦しくなる・・・・自分はずっと父を守ってきたつもりであったが、自分はそれ以上に父に、家族達に守られていたのだと思うと嬉しくて・・・

 

親父と・・・心行くまで父を抱きしめようと父の細い体躯に腕を回そうとした時・・・

 

「・・・・親父!!!!」

 

父がズルリと力なく自分の腕の中に崩れ落ちた!!!

 

 

父を横抱きにして全身を見れば・・・・

 

「・・・・どうして!!!!」

 

自分の右腕が赤く染っており、父のわき腹から血が流れているではないか!!

 

スラッグがジュニアを呼び続けるラディッツを屠ろうとした最後のあがきが、ジュニアの愛する父を瀕死の重傷にしたのだ!

 

「ジュニア!!兄ちゃんの口を開けろ!!!」

「悟空!!!」

 

今の今まで兄の気がシールドとなって自分を近寄らせなかったが、兄が気を失った事で解除され、悟空はすぐさま最後の仙豆の欠片を兄の口に入れ

 

「・・・飲んでくれよ兄ちゃん・・・・・」

 

飲み込む気配も意識も無い兄に懇願するが、飲み込んでくれずにどんどんと兄の気が弱まっていく!!

 

嫌だ!!兄がいなくなるなんてそんなの!!!

 

泣く悟空の傍らで、ラディッツを抱えているジュニアは何事かを考えそして

 

「・・・・出ろ・・・」

 

ジュニアの言葉と共にジュニアの指先が光り・・・・そして・・・

 

「・・・・ジュニア?」

「・・・・吸い飲みと中身はとろみの付いた桃水だ・・・」

 

スラッグの知識にある、ナメック星人の龍族の創成を発揮したジュニアは、魔法で出した吸い飲みをラディッツの口の中にゆっくりと入れ、刺激と甘みを感知したラディッツの意識が自然と仙豆ごと嚥下させ

 

ゴクリと動いた喉の動きに、悟空とジュニアは涙が零れた・・・・これで父は・兄は助かるのだと・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラディッツと地球は確かに助かった

 

仙豆で生命力が回復し、体質で一気に回復する事は危険なので病院に入院をした

 

スラッグ達の事は、地球寒冷化も未然に防がれた事も考慮され、宇宙人全てが悪と捉えられては困る関係各所が、望む宇宙船の修理が終わったと同時に地球を去ったと国民向けメッセージが流れ、地球は表面上の平和を迎えた。

 

だが・・・・ラディッツが-瀕死-となった事で、辛うじて地球に住む人類が生き残る可能性があった道が、閉ざされた瞬間でもあったのだ・・・・

 

ラディッツの生命と繋がれている、フリーザ達の手元にある生命の石がラディッツの瀕死を知らせてしまった事によって・・・・

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