宇宙の中でこれほどの多種族から追いかけてもらったのって俺だけだろうな・・・
同種族が一人もいない混成部隊はフリーザ軍では珍しくなく、俺が面識あるのって専ら部隊長かその辺のクラスで、今では引退してもおかしくない人達がちらほらいるんだが・・・・
エイジ758 十二月二十四日 地球の海上
ラディッツが己を餌にして誘き寄せたフリーザ軍は・・・・なんといおうか・・・
「ラ・・・ラディッツ様だ!!」
「生きて・・・本当に生きておられて・・」
「良かった!諦めずに探し続けて本当に良かった!!!」
侵略者ではぜってねぇ・・・・ラディッツが子役俳優時代によく演じていた亡国の王子が忠臣達に見つけられて喜ばれている図でしかありゃしねえ・・・・
歳とって髭に白いものある奴なんて絶対に爺の立ち位置だし、隻腕だったり片目だったり傷だらけの奴等なんてもうはまり役だろう・・・・シネマキーンが見ていたらこの場の映像を撮り続けて映画一本作っちまうぞ?
見てみろ、周りで親父が・兄ちゃんが危なくなったら即開戦だと意気込んで力をため込んでいた悟空達がポカンとしているぞ
外側で待機している若手っぽいフリーザ軍もドン引きしてるぞ!
何てことは・・・・天然阿呆子ザルにもある意味において組織として終わっているフリーザ軍の尖兵(ラディッツ様親衛隊!!)には知ったこっちゃねえのだ。
フリーザ軍の古参達がラディッツを思う様に、ラディッツもまたフリーザ様達と幼馴染達の他にも、関わりの深い者達をよく覚えている。
引退しようと考えている武官を募集しますという胡乱な募集で来てくれて長い事現場の事を教えてくれた者を、いつも最前線で切り込む代わりに死にかけても軍の為ですと言ってくれていた武将のような武官を、お茶を淹れれば喜んでくれた武官達を、餅つき大会で仲良くなった武官達を
その中で最も記憶に残っている武官達が揃い踏みしてる・・・・してくれている・・本当に俺って奴は・・・
自分に会えて喜んでいるこの武官達とて、百戦錬磨の戦士で、戦いに関してはカカロット達が素人だと言えるほどの手練れなのに
「・・・・会いに来てくれたのか・・・」
来ないでほしかったとも、立ち去れとも言えずにこれしか言えないなんて・・
そんな馬鹿な一言にどうして泣くんだお前達は・・・
奇妙な光景であった
地球の戦士達はフリーザ軍が空から続々と降りてきてラディッツを取り囲んだ時、ラディッツが何か拒絶するような事を言い放ち開戦の火蓋が切って落とされると疑いもしなかった。
それ程までにラディッツの侵攻を防ぐ為に出された知恵や熱量は凄まじく、誰もがそれに引きずられるような形で今日まで来たのだから。
だが、蓋を開けてみれば互いを懐かしむ双方の姿に悟空達も鶴仙流の高弟達も誰もが呆気に取られてしまった時、急にラディッツが-ナニカ-を避け始めた!
「兄ちゃん!」
「親父!!!」
誰かがラディッツを攻撃したのだと認識した悟空は、ラディッツの待機命令が解除されてなくとも構わずにラディッツの下に行こうとした。
だが
「カカロット達は来るな!!!!」
武官達の間を縫う様に避けながら、弟達が来ることを拒んだラディッツは、海面すれすれのところまで下りて行き上空を睨みつけ
「俺の三メートル手前で飛ぶ気を消せマトマ!スーナ!!」
怒鳴り上げた内容が意味不明であった。
マトマ?スーナ?それは確か兄の・・・・
兄の訳の分からない怒鳴り声の内容は直ぐにその場にいる全員に理解された。
ドサリという音共に、兄がピンク色のタイツに戦闘服を着ている小柄なサイヤ人と思しき者と、大柄で癖っ毛が腰まである大柄で筋骨隆々で赤いタイツの上に肩までの軽装備をしている男がラディッツに覆いかぶさり・・・・
「「ラディッツ!!!!!」」
・・・・・わんわんと泣き叫び始めたのだ・・
・・・泣くのはいいのだが、二人ともあまり力を入れすぎないでくれ
さっきだって飛んだ力を抜かれずにそのまま抱きつかれていたらミンチだったんだぞ?
しかし、二人はそんなことに構い付けている余裕は全く無かったのだ
見つけた!ようやく見つけて・・・やっと触れられた!!
あったかい・・・映像と違って背がひょろりと伸びたラディッツは暖かくてきちんと心臓の音がして・・・何よりも・・・
「スーナ・・・マトマ・・・」
昔と変わらずに優しい力で包み込んでくれて柔らかい声で名前を呼んでくれるラディッツのままで・・・
「ウエェェエエ・・・・」
「バ・・・・バッケロ・・・・」
「あぁあぁ・・・二人共・・・そんなに泣いたら溶けるぞ?」
訓練が辛いときはよく泣いた
腹が減ったのにほったらかしにされてよく泣いた
全員の所属が上官の悪意で最悪なところに放られて泣いて
腕力ではどうにもならない陰湿ないじめによく泣いて
その度にラディッツがこんな風に抱きしめてくれて・・・
何にも変わらない・・・・宇宙が物凄いことになったって、自分達がどんなに強くなっても、この暖かさには敵わない、敵わなくても別にいい・・・ただ、側にいてくれるだけで・・・それだけで
不意に自分達がいどうしたのを感じたスーナとマトマは何だと顔を上げた
ラディッツが飛んだとしたらこのまま自分達を地球で布陣している陣営に連れて行くつもりだろうかと顔を上げれば
「リーキュ・・・・元気そうだな。」
ラディッツを慕って来た武官達のさらに上空で待機していたリーキュの横に飛んだようで、物凄く不機嫌で殺気すら瞳に浮かべているリーキュは・・・
「・・・・・俺達に絶縁状を叩きつけて今更何の用だ?」
「いや・・・あれは地球の人類を滅ぼすつもりなら帰ってほしい、もしも来るのであれば反撃して追い返すと送っただけだぞ?」
リーキュが愛しいラディッツにここまで怒り狂っている理由は、フリーザ軍が地球に到着する前日にあった
「フリーザ様!!文官長補佐官ラディッツ様のコードで地球よりメッセージ送信が届きました!!」
コード728-737Z 宛フリーザ様へ発軍本部付き文官長補佐官ラディッツより
-お久しぶりでございますフリーザ様
私を十八年もの歳月が流れているのにも関わらず、宇宙全てを探してくださったことを心より嬉しく思い、またその恩に報いたいと存じます。
しかしそれは、フリーザ様が地球の人々に一切手を出さないでくださればの話ですが、私の知るフリーザ様であるのならば、私が愛した人々を見逃して呉れようはずもないと存じます。
必ずフリーザ様のお側に戻ります故、地球を滅ぼす事をどうかなされないでほしいのです。
そうでなければ、私は貴方様の恩義に背き道義に反してでもこの地球に住まう人々を守る為に手向かわせていただきます。
願わくは、再会は喜びと歓声だけの物音の中、穏やかになる事を切に願います。
私は今でも貴方様と皆様を愛しています・・・・どうか、どうかこの願いをお聞き届けください-
簡素で、しかしラディッツの想いの丈が詰まったメッセージに、フリーザは目を細めたが命令は変わらなかった
地球の者達は殲滅する
「そうフリーザ様がお決めになられた。」
スーナを胸元に抱き、マトマを背負いながら左手で自分の肩に手を回す幼馴染に、甘い夢は捨てるんだなと忠告しながらリーキュはラディッツに忠告する
土台フリーザ様と自分達と地球の人々全てを選ぼうなんて虫がよすぎる話だとぶった切りながら
甘いどころか完全に夢物語
子供の戯言
悪の帝王がそんな事を許す筈も無いのに
「分かってる。」
・・・折角フリーザ様が送信しなかった答えを教えてやったのに、十八年振りに会う幼馴染は酷く落ち着いていて
「あの方が、フリーザ様が俺が送ったメッセージに諾と答えたほうが偽物だって疑ってるよ。」
「・・・・なら何故?」
否と分かっているメッセージなぞ送って来たのか意味が分からんと訝しむリーキュは本当にいい男になったなと、つい思ってしまう。
スーナも柔らかく綺麗になってすっかり美しい女性になって、マトマは俺が理想とした戦士になって、リーキュは想像通り落ち着いたいい男になっている。
そのリーキュが分からない事があると言うのがちょっと嬉しい。
「あれは俺が-文官-だからさ。」
「なに?」
「なにそれ?」
「・・・・ラディって時折意味不明な事言うよな・・・」
「・・・・マトマちょっと黙ってろ・・」
リーキュとスーナの言葉は普通だが・・・マトマの言葉は失礼だろう!!
「あれは俺なりの-宣戦布告-だよ。」
「「「な!!??」」」
ラディッツの答えに驚く三人を置き去りにするように、ラディッツはスーナとマトマが力を込めていた腕の中からすり抜ける様に落下しそして
「今の俺は弟達を絶対に守ると決めているんだ。」
いつの間にか、崖の端で兄の動向を見守っていた悟空の頭を優しく腕の中に納めて寄り添っていた!
まるで本当に魔法でも使ったかの如くの相も変わらずの出鱈目な兄・・・すり抜けられたマトマ達は呆然とし、悟空自身も声を発せられるまで自分の頭が包まれた事にすら気が付けなかった悟空だが、兄の言葉が嬉しくて
「へへ・・・兄ちゃん・・・」
戦場にあって甘えた声が出てしまったが、気を取り直して兄の腕の中から抜け出て体中に気を巡らせる。
「兄ちゃん・・・・」
兄に、懐かしい人々と幼馴染達と戦ってもいいのかと悟空はそっと尋ねる
生半可な絆ではなく、双方本当に互いを想い合っている・・・それも今この時であってもそうだと分かるほどの光景を見た悟空やジュニア達は複雑な気持ちではあるがそれでも戦う兄の方が辛いだろうと・・・
そんな弟達の心配をよそに、ラディッツはさらりと答えた
「どうあっても戦いは避けられん。」
冷静なラディッツの言葉に、ラディッツを知る者達全員が驚いた
自分達の知るラディッツであれば、親しい者達と戦う事に嘆き悲しみ心を痛めるのだと
だが、ここにいるのはかつてのフリーザ軍で万の大軍を眉一つ動かさずに指揮した文官長補佐官の頃のラディッツであった
情だけではどうにもならない、嘆き悲しんだとて大切な者達が守れるわけでもない
それを教えてくれたのは・・・
「そうでございましょう、フリーザ様。」
リーキュ達よりもはるか上空で、最側近のザーボンとドドリアを従えてポッドに乗っているフリーザその人なのだから・・・・