俺ラディッツは弟を絶対に守り抜く   作:ドゥナシオン

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慈愛の優しさ

「あの馬鹿!!まさか受ける気じゃないだろうな!!??」

「・・・・何故お前がそこで怒るのだピラフ?」

 

地球人五百人の中にはきっとお前もはいっているだろうにと、神殿に避難させたカリンが持ってきた水鏡で状況をつぶさに見ているピッコロ大魔王が不思議そうに尋ねるが

 

「大魔王様!あいつはとんでもないお人好しなんですよ!!??」

 

確かに大魔王様の言う通り、こうして空の神殿に避難する事を進められた自分と、この場にいる神様とミスターポポと、聖地カリンのカリン様とお供の位置にいるようなヤジロベーと自分達はばっちりと入れてもらえるだろうが・・・・

 

五百人助けてもらえると心を揺らしているのが丸わかりなあの馬鹿は、本当に馬鹿な奴なんだ・・・・・

 

「お前の望みはそうじゃないだろう・・・・・」

 

圧倒的な力を前にしてか、其れとも慕う者からの温情が心に届いてしまったのか・・・

 

ピラフとしてはフリーザという圧倒的な敵の言葉に惑い始めたラディッツの姿に嘆息すると

 

「・・・ポポも、ピラフが怒る理由何となくわかる・・・」

 

意外かもしれない、しかしそうでは無いのかもしれないが、ピラフがラディッツに怒っているというか・・・・案じていると言ったらピラフの方が怒って躍起になって否定してあんな奴と言いそうなのでポポはそこらへんは黙ってピラフの考えに賛意を示したのを、カリン様と神様が少し驚いた。

 

「ほう?そうなのかポポ?」

「はい神様、ポポ分かる。

悟雲は今、自分から地獄への道を行こうとしている・・・・」

 

死んで地獄に行く事ではない

 

生き地獄を行こうとしていると、悲しそうに答えた

 

・・・・・・・・・・・・

 

揺れている・・・・そして・・・決意にひびの入る音が聞こえる・・・・

 

抵抗しようと決意する為に、沢山沢山一人で泣いたのに・・・・

 

誰にも見られずに呻いて喚いてそして・・・・その果ての決意であった筈なのに・・

 

こうも簡単に崩される・・・・こうも簡単に靡いてしまう・・・

 

間違っている・・・・

 

地球に住む人は何十億といるのに、その中のたった五百人だけを残すという言葉に揺れている事自体が酷い間違いの筈なのに・・・・

 

フリーザ様に勝てるイメージが湧かない半面、自分達の死を何度も夢に見てきた・・

 

倒れ伏している弟達を助けようにも、力尽きて横たわっている自分に出来る事は無く、幾度愛しい者達が自分の夢の中で死んだか知れない・・・・

 

跳ね起きてもそこがどこか分からない程に錯乱している事が多くて・・・

 

「息を吐け・・・そうだ・・・親父・・・夢だ、今のは夢だ。

俺はここにいる、悟空もクリリンも大爺様も皆いる。」

 

だから安心しろと言われて安堵して、何度ジュニアの腕の中で泣いたか知れない

 

夢の中では大切な者達もまた守り切れずに殺されて・・・・・気が狂えればいっそ楽であったのにそれをしてしまえば本当に守ることが出来なくなってしまうから踏み止まって・・・・だが・・・いま・・・あの手を取れば・・・・少なくとも弟達と家族と・・・・その周りの人達はきっと・・・

 

ラディッツの瞳が苦悩しぐしゃぐしゃになりそして・・・・何かを決める様に焦点を結び始めるのをフリーザは微笑んで見守る

 

弟達や周りが何かを喚くように言おうとも、ラディッツに届いていないようで滑稽であった。

 

今のラディッツはきっとその喚いている哀れな弟達を助ける方と助けない方、両方の事を考えて考え抜いてそして・・・・きっと

 

「・・・・フリーザ様・・・・」

 

あぁほら・・・・・弱々しく今にも泣きだしそうで・・・・別にいいじゃありませんか

 

真に大切な者なぞ、五百もいれば多い方

 

何十億の他人なぞ放っておいても、貴方の大切な者は約束通り守りますから

 

罪悪感なぞ抱かなくていい

責任なんぞ、本来来る筈も無かった世界に持つ事なんて端から無いのに

 

それもこれもラディッツが優しいから、甘いからラディッツを知った者達が縋るのが悪いのだから

 

そんな輩は私とゲンイン達できれいさっぱりと消してあげますから

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

自分達が何を言っても、腕を引いても体を揺すぶっても兄の表情が動く事は無く、悟空達は自分達の言葉が届かないと焦燥感を駆り立てられる!

 

「駄目だ兄ちゃん!!あんな奴の言葉に耳を貸したらなんねぇぞ!!!!」

「親父!!あいつに縋ってなんになるって言うんだ!!」

「やめてください悟雲兄さん!!そんな方法で助かったって!!その先に幸せなんてないですよ!!!」

 

悟空、ジュニア、クリリンをはじめてして、天津飯達も言葉を尽くしてフリーザの提案を熟考しているラディッツを引き留めようと喉を嗄らしても構わんとばかりに叫んだが、誰一人の声も届かなかった・・・・

 

兄にとって・・・・・自分達は頼りになるものではなくひたすらに守りたいと思わせるような駄目な奴なのか?

どれ程強くなっても、兄に守られなければ生きていけないような弱い奴なのか・・・

 

確かに最初に見た兵士達や兄の幼馴染達にはそれなりに戦えるイメージが湧くが、フリーザは底がしれない・・・・だからと言って!引けを取るつもりも無いのに!!

 

言葉一つで兄を絡めとり思考の海に突き落とし!!兄を自分の手元に手繰り寄せようとしている!!

 

自分達の命を保証する事で!!

 

兄はいつも自分達の事を愛してくれて、その為ならば何でもしてしまう・・・・それがこんな事に繋がるなんて!!

 

自分達を助ける為に、兄は地球の大半の人達を捨てようとしている!!

 

そんな事しないでほしい!!

 

そんな事をしてしまったら・・・ああ・・・なのに!フリーザ様と・・・あのくそ野郎の事を弱々しく呼んでいる・・・・やめてくれ兄ちゃん!!

 

兄ちゃんの綺麗な心を!!思いを!!あんな奴に渡したら・・・

 

 

そう悟空達が望んでも、ラディッツは手を上空に差し伸べようと動かす

 

それはまるで-誰-かの手を取るように・・・縋ろうとしているかのように・・・

 

何時だって、どんなに寂しくっても自分から言った事なんて一度か二度しかないあの兄が・・・・・たったの一言三言で容易く手を伸ばす様に・・・・悟空達の心が痛くなった・・・・本当に兄は・・・・あのフリーザという男に心の底から・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

細くしなやかな腕が蒼天に伸ばされようとしている

 

ゆっくりと迷う様に・・・・・だが確実に

 

それでいい

 

貴方が選ぶのは最後には私なのだから

 

その上が伸び切った時、私が迎えに行くのは決まっている事なのだから

 

フリーザもドドリアもザーボンも、リーキュ達もラディッツをせかす事無く見つめている

 

心の中では早く腕を上げきりフリーザ様に迎え入れられる光景を見たいと叫びながらも

 

いつの間にかラディッツを止める声も、戻ってきてほしいという声も聞え果て静寂がその場を支配した

 

よせては返す波の音が、時折吹き付ける風の音以外無音であった

 

その静寂を破るのはフリーザ軍であり、ラディッツ様を取り戻したと歓声を上げるだろうと誰もが予想をしたその時

 

 

          

 

               お兄ちゃんの馬鹿!!!!!!

 

 

 

誰もが予想だにしなかった、其れこそあらゆるパターンを考えていたフリーザとても考え付かなかった罵声が静寂を破ったのだ・・・・

 

それこそ罵声の主をよく知っているラディッツも悟空達も、聞こえるはずの無い罵声の声に唖然とし、そして血の気が引いた!!

 

だって!!この声が聞こえているという事はだ!!

 

だが・・・・いくらラディッツ達が気を探ろうとも罵声の主は見つけられなかった。

 

見つけられなくてそれは当然だった・・・・何故なら・・・

 

「お兄ちゃんの馬鹿!!!!!!」

「ブ・・・・ブルマ!!???・・・・モニター?」

「そうよ!!まさかとは思うけど!!私が今そこにいるなんて頭の悪い馬鹿がやるような事を私がしてるって勘違いした!!???

だったらもっと馬鹿よお兄ちゃんは!!!」

 

自分達を必死になって守ろうとしてくれる人達の足を引っ張るようなおバカな事する様に見られたのかと思うと、それはそれで頭にくると、更に腹が立った顔のブルマの顔が-モニター-に映し出されている。

 

ちなみに!行ってもいいなら今すぐお兄ちゃんに抱きついてべったり張りつきたいわよ!!

我慢してるのくらい分かってよ馬鹿!!!

 

心配だったから・・・・お兄ちゃんはいつも大丈夫だって言うけど!ちっとも大丈夫だったためしがないのを自分達に知られてるのに往生際が悪くて!!心配でコッソリとモニターを岬の崖の所に張り付けるように飛ばして一部始終を見ていたら案の定馬鹿な事になっていたではないか!!!

 

大好きな人達と戦うだけでも一杯一杯のお兄ちゃん・・・けどね!だけどね!!!

 

 

「たったの五百人残されるなんてちっさな話に揺らがないで!!!」

「・・・・ブルマ・・・・お前・・・見てたのか・・」

「見てたわよ!全部全部見てたわよ!!」

「そうか・・・・あのなブルマ聞いてくれ・・・・大切な・・・」

「うっさいわよ!!!!」

「・・・・・へ?」

「聞いてほしいのは私の方よ!!!あのねお兄ちゃん!!!お兄ちゃんこの地球に来てどんだけの人助けて!!どれだけの人々に愛されてるか知ってる!!??」

「え?・・・・えぇ・・」

「ファンレターや感謝の手紙!それがおじいちゃん先生達の道場にお兄ちゃん宛に月に数百は届くのよ!!!」

「・・・・そうなのか?」

「そうよ!!サイヤンℱの警備会社の方には助けられた人達のビデオレター入れたら月に数千にもなるのよ!!!!」

 

兄は、ラディッツは、孫悟雲は、ありとあらゆる危機から地球の人々を助けて来てくれた

 

自然災害から、交通機関のトラブルから、時に宇宙の侵略者や地球内部の大悪党達からずっとずっと!地球に来た時からずっと地球の人々を守ってきてくれていた!!

 

「そんなお兄ちゃんに感謝している人達がどれだけいると思ってるのよ!!??

お兄ちゃんの事大好きな人達がどれだけいるかお兄ちゃん分かる!!??」

 

月々送られてきている感謝のメッセージやそれに付随しての活動資金にしてくださいという寄付金、ビデオメッセージやメール、果ては子供の絵をブルマは数えていた。

 

兄が助けて人達が兄の事を好きになってくれて嬉しくて・・・・寂しがり屋のお兄ちゃんにいつかこんだけの人がお兄ちゃん大好きなんだよと言ってあげたくて!!

 

 

「この地球に住んでいるほとんどの人達が!!お兄ちゃんの事大好きなのよ!!」

 

数えたら・・・・ほぼ地球の人達の総人口くらいになっていて・・・・こんなにも兄は愛されているというのが嬉しくて・・・・・なのに!!

 

 

「お兄ちゃんはその人達の事見捨てるの!!??見捨てられるの!!??」

 

・・・・ブルマの声は・・・・相も変わらず自分の耳に響いて・・・・いつだって自分の考えを間違っていると言ってくれて・・・

 

「お兄ちゃんが私達を助けようとしてくれることは嬉しいわよ!!!」

 

間違っている思いでも、どうしてそう思っているかも察してくれて・・・

 

 

「それでもそんな事しないでよ・・・・・」

 

勢いよく言いだしてそしてこうして弱々しくなっていく・・・・

 

大勢の戦士達が見ている中で、ブルマは泣いた

 

ボロボロと泣いてぐしゃぐしゃの顔になって子供の様に鼻水まで流れてきているが構わずに泣きながら大好きなお兄ちゃんに想いを告げる

 

 

 

何時もの様にお兄ちゃんが一人で何もかもを背負おうとするのが悲しくて嫌で・・いつでもそんな悲しいお兄ちゃんの想いを壊したくて・・・

 

「お兄ちゃん・・・・地球を一人で背負わないでよ・・・・悟空だってクリリンだって・・・ジュニアも天君も餃子君も!黒君や白君やピューリ君だっているじゃないのよ!!

鶴仙流の高弟の人達だって!サイヤンℱの人達だって!!皆いるのよ!!!

お兄ちゃん一人だけじゃないの!!!」

 

 

お兄ちゃんは一人なんかじゃない

 

この日の為に歯を食いしばって自分とラカセイ達が作り上げた重力装置の部屋で血反吐を吐いては仙豆で治してまた修行するのを止めようとしても止まってくれず

 

ボロボロになって眠る悟空達を何度チチ達と看護したか分らない夜を超えて、兄の側に今立っている。

 

戦士だけじゃない・・・・・戦えない人達だって中には兄達の無事を祈ってくれているとブルマは信じている

 

だって・・・自分もそうだから・・・自分だって!!自分だって!!!

 

「お兄ちゃんは負けた時の事を考えたんでしょう?」

「ブルマ・・・あぁそうだ・・・・そうとも!!負ければ全滅!!だから俺はそれだけは止めたい!!

今なら・・・まだお前達だけでも・・・・」

「嫌よ!!!絶対に嫌よ!!!!」

「・・・・・なに?」

「私達だけ生きてればいいなんて話!!絶対に嫌よ!!そしたら見捨てられた人達はどうなるの!!??

お兄ちゃんも私達も!!その人達を忘れられるなんて出来っこないじゃないのよ!」

 

そう・・・・自分はもしかしたら薄情にも忘れてしまうかもしれない・・・兄と家族といられる幸せの中でいつしか見捨てた痛みを忘れ果てて・・・・

 

だが兄は?優しくて情が深い兄が!五百から零れ落ちてしまった鶴仙流の弟妹弟子達や!今まで絆を結んで来た人達を忘れられるはずがない!!

 

ラディッツという男はそれだけ大勢の人達と絆を結んで生きてきた

 

山村の人々

東西南北の都の人々

軍から警察の人々

カプセルコーポレーションの人々

そして・・・・王族の人々と・・・

 

一人一人との思い出を、時折思い出したように話してくれては嬉しそうにするお兄ちゃんが耐えられる訳も無いのに・・・・・フリーザって奴は!!お兄ちゃんの幼馴染達って奴は何にも分かってない馬鹿よ大馬鹿野郎よ!!!

 

 

「負けたっていいじゃないのよ!!!」

「な!ブルマ!!??」

「お兄ちゃん達が負けた時は!!絶対に自分達のありったけを使ってくれても負けたんでしょう!!??どうしようもないんでしょう!!??」

 

お兄ちゃんはいつもどうしようもない時は諦めてくれって言ってるのにそれを忘れてる

 

きっと私達が助かるなんていう罠に絡めとられてしまったから・・・・狡い言葉に甘い言葉に飲まれて・・・

 

 

そんなの駄目よ!!絶対に駄目なんだから!!私がそんな事許さないんだから!!!

 

 

「お兄ちゃん達が全部を使っても負けちゃたら!!悔しいけどもうどうしようもないんだって納得するわよ!!」

 

だってきっと、お兄ちゃん達は精も魂も使い果たすだろう事を分かっているから・・・だから!!

 

「負けて全滅の時!!一緒に死んであげる!!

だから安心して戦っていいの!!!

お兄ちゃんが死んで地獄に行くって言うなら!!私も地獄に行けるように閻魔様でも神様でも沢山の悪口を言って地獄に落としてもらって一緒に行ってあげるから!!」

 

 

絶対に!!どんな最後の時までも一緒だから・・・・・約束するから・・・

 

「抗ってよお兄ちゃん・・・・・・」

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