side悟空
「兄ちゃん!おらな!!兄ちゃん守れるくらいにうんと強くなる!!!」
「ん?・・・強くなるのは心や精神も強くならないといけないんだが・・・急にどうした?」
「そっか!おらクリリンと一緒に亀仙人のじっちゃんに沢山教わって、心や精神ってのも大事にする!」
おらが十二の時、大人なのに子供の姿のままだった兄ちゃんは、おらと姉ちゃん達で集めることが出来たドラゴンボールで身長が伸びた・・・・だけど・・・天兄ちゃんやヤムチャ達みたいな武道家の鍛えた体にはなれなかった・・・神龍でも無理だって・・・
山村のシュウよりも、爺ちゃんよりも細くて、女の人みたいな体の兄ちゃん・・・
おらは別に其れでも良かった
だって兄ちゃんは強かったんだ・・・・誰よりも速く動けて、誰にも負けた事が無くて、そんで・・・・飛んだ時は本当に魔法を使ったみてえに見えなくて・・・
でもおらは兄ちゃんを守りたいと思った
だって兄ちゃんは誰よりも優しいから
本当は戦う事なんて好きじゃなくて、強くなるのもおら達を守る事だけが目的で、空を飛べれば後は強さなんていらないんじゃないかって・・・だったら、おら達が強くなって、敵って奴等が来たらおら達でぶっ飛ばして、兄ちゃんにはそのための計画とか作戦とかを考えてもらって、おら達が矢面に立って戦えばいいと。
だからそうした
王様達と姉ちゃんのカプセルコーポレーションを始めとした会社の人達を中心にして皆を隠す算段を付けて、おら達はフリーザ軍をぶっ飛ばしていた。
上手くいってたんだ・・・中には手足をフッ飛ばされちまった人達もいたけど、誰も泣き喚く人達はいなくて・・・もしかしたらこのまま押し返すことが出来るんだって・・・・そんで!兄ちゃんと地球を守れるんだって思っていたんだ!!!!
sideフリーザ
「ラディッツ・・・・何度も言いますが、私は貴方に強さを求める事は無いですよ?」
「・・・はい・・・」
「ラディッツ・・・・」
困ったものです・・・私はこの子に文官としての資質とそれ以上に可愛いから手元で飼っておきたいだけなのに、文官であっても強くなって私を守りたいと願って、ギニューさん達に鍛えてもらおうとして・・・・大惨事な事があるたびに言い含めようとしても、普段ならばどんな命令であっても良い返事をするラディッツが、この事に関してだけは頑固になる・・・
この宇宙で私よりも強い奴なんて片手で数えられる程しかいなくて、其れも出会う確率があるのはほぼ皆無であるのに・・・なにから私を守る積りでいるのでしょうかねこの子は・・・・この事に関してだけはほとほと手を焼かされる
強くなる必要は無いのです
ギニューさん達がいて近頃はドドリアさんとザーボンさん達も、この子の幼馴染の子供達に刺激を受けて再び鍛え始め、それに釣られるように軍全体も強い方が私の受けがいい、カッコいい、弱い奴はダサいとか様々な理由で強くなる事が是とされつつあり、おかげで軍の増強にもつながっているのですから
貴方は弱いままでいいのです
私の近くで優しい言葉を慈雨の様に私と周りに降り注ぎながら、優しい笑顔でいてくれさえすれば、それだけで良かったのに!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・ディ・・・ラディ・・・」
・・・・声が聞こえる・・・・俺の知っている親父の声で、酷く必死に俺を呼んでいる声がする・・・俺の知っている親父は、何時だって冷静で不器用で優しさを見せるのが下手で、間違ってもこんな声を出す人なんかじゃないのに・・・・
夢でも見ているのかと、確かめたくて目を開けたいんだが・・・・開かない・・・体が酷く疲れているのか力が入らなくて・・・・眠っていたくなる・・・・だけど、何故か・・・起きないといけない気がして・・・・・俺・・・なにしてたんだっけ?
「ラディッツ!!!目を開けろ!!!!堕ちるんじゃねえ!!!!!!」
ようやく死の淵の崖から戻りそうなラディッツに、バーダックは必死の形相で叫ぶように呼びかけ続ける。
ー自分達の闘気ーを分けた後、ラディに回復薬を飲ませればラディは息を吹き返しやがった。
良かった・・・もうこいつ等を回復させていたメディカルポッドの成分を持ち歩けるような仙豆という物の中で、ラディの弱い体にも合う弱い成分の弱仙豆というのが一つしか残っていなくて、-仮死状態-にまでなったラディの息を吹き返させることは出来たが、今意識落としたら今度こそ死んじまうだぞ馬鹿野郎!!!!!!
・・・・・・・・・・・
遡った数分前
ー誰もがーラディッツは死んでしまったと嘆き悲しみ、そして理性をも吹き飛ばしてしまった者が二人いた。
悟空は兄が自分を庇って死んでしまったと、理性も情も優しさも一切を捨てて、兄の体を父に預けた瞬間・・・・髪は金色となり逆立ち、碧色の瞳でフリーザを睨み上げ、ギリっと歯噛みをしたと思えばフリーザをぶちのめし・・・ぶちのめされたフリーザもまた赤い瞳を更に血走らせ、フルパワーの肉体を更にランクを上げたのか赤黒い気を放出しながらそのまま悟空と肉体のぶつかり合いをし、距離を取ればそこからエネルギー弾の撃ち合いの攻防となったのだ。
どうして!!!!
二人の頭の中は其れで一杯となった
どうして兄ちゃんが!どうしてラディッツが・・・・二人はその言葉と、目の前の憎い-殺したいほど憎い奴-を殺す事だけが全てになった
だが、片腕で息子を胸に抱けずにそっと地面の上に降ろしたバーダックの考えだけは他の者達とは違った
デスビームは、人体を突き抜けるはずだ
十八年前、同じようにフリーザのデスビームに殺されそうになり、其の時ラディッツの様にトーマに庇われた。
その時のデスビームはトーマを貫通して軌道がそれたが、真横をかすめた冷たいエネルギーを忘れようとしても忘れられる事はなかった・・・
悟空がフリーザの蹴りを食らう少し前に、バーダックの目は冷めておりだが体が動かな状態であり、全てを見ていた。
フリーザのあの冷たいエネルギーを秘めたデスビームが、ラディッツの-背中-に撃ち込まれたのが・・・・・愕然とした・・・・そして・・・怒りが沸かなかった・・・酷い虚無感だけが襲ってきて、呆然とした自分に、ラディッツを預けた息子の背中を見送る事しか出来なかった・・・
だがそのおかげで頭の中は酷く冷静で、受け取ったラディッツを仰向けにして降ろした時、ジュニアが酷く狼狽しながら、ぐしゃぐしゃの面でラディッツの頭の方にへたり込んだが、その様子にバーダックは顔を向ける事無く、ラディッツの心臓に左手を置いた。
心臓は止まっている・・・・だが・・・暖かい・・・もしかしたら!!
「俺の全部をくれてやる・・・・」
だから、戻ってきてくれラディッツ!!!!
ドオオオオオオオオ!!!
穏やかな気持ちがバーダックを満たしながら、守りたい息子を守れなかった己への怒りがバーダックの限界を突破させ、悟空同様に髪を金色にして逆立てたが、それは一瞬の出来事であった。
バーダックは己の中から溢れるエネルギーの大半を、止まっているラディッツの心臓に注ぎ込んだのだ
ラディッツ・・・・ラディ・・・・頼むから・・・・もう一度目を開けてくれ・・・
どんなに怒っても濁る事の無かった澄んだ黒曜石の瞳を、何時だって明るく笑って光らせていた瞳を見せてくれと・・・・トーマが目の前で殺された時も流れなかった涙は・・・ラディッツの事になると流れ出らしい・・・・こんなもの二度と流したくはなかったのに・・・流さなければいけないような事を食い止めたくて・・・・
膨大なエネルギーを注いだおかげか、はたまたバーダックの切なる願いが届いたのか
ト・・・・ン・・・・・・ト・・・・・・ク・・・ン・・・・ト・・・ク・・ン
「・・・・ラディ?ラディッツ!!??死ぬんじゃねえぞラディッツ!!!」
「あ・・・あぁ!!!!親父!!!親父!!!!死なないでくれ親父!!!」
弱々しくだが鼓動を再開させたラディッツに、バーダックとジュニアの声に、一連の全てで呆けていたリーキュ達も直ぐに近寄り
「ラディッツ!!!俺のエネルギーもくれてやる!!!」
「死んじゃやだよラディッツ!!!!」
「俺の全部もってけ!!!!」
三人も残り少ないエネルギーをラディッツに分け与え少ししてラディッツは虫の息ながらも呼吸を始め、ジュニアはその気を逃さずそっと抱え起こし、弱仙豆を桃水と共に口に含ませれば
コク・・・ン
少しずつ、本当に僅かずつ飲み込みそして・・・・
「・・・・お・・・やじ?」
目を開けてくれた・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
ラディッツも、何の算段も無く弟とフリーザの間に割って入ったのではない
飛ぶ前に地球から気を借り、体内の心臓と周囲の臓器に纏わせそして振動させていたのだ
硬質系のシールドであれば貫通されるだろうが、シールドを振動させる事で無効化できないだろうかと考えた結果、威力を殺す事には成功して貫通は免れたが、ダメージは心臓に及び仮死状態になり、あのままバーダックまでもが諦めていたら確実にあの世に逝っていた
だが、ラディッツが目を開けても地獄のような戦いが収まる事は無かった
悟空もフリーザも最早互いを殺す事しか頭になく、怒りに満ちたエネルギーが空間を埋め尽くしていた
酷い戦い方で、それは戦いとも呼べる代物ではなく獣の食らい合いが、ラディッツの目の前で繰り広げられていた・・・
「あ・・・・あぁ!!!やめろ!!!やめてくれ!!!!」
「ラディ!!!!」
「「ラディ!!」」
「親父!!!!」
瀕死の重体であったラディッツは、それでも二人を止めようとジュニアの腕の中から出て飛ぼうとしたが、体が動かずにふらつくのを周りが止めようとして手が止まった
ラディッツが泣いている・・・・
「フリーザ様!!!カカロット!!!!!もう止まってくれ!!!!」
文字通り、血を吐きながら愛している二人を止めようとするが声すらが二人には届かなかった・・・・・
いつかの日、地球の神龍がラディッツを見た瞬間に突如見た未来の光景
燦然と輝くエネルギー弾の中で泣き叫ぶラディッツの姿が此処にあった・・・
関わった者達のみならず、全宇宙の全てと言っても過言でない程の膨大な者達の運命が決しようとしている戦場が此処であり・・・・神龍の予言が果たされた瞬間であったのだ・・・
そんな事は知らずとも、最愛の者達を止めたいのに、弱い自分の体が心底恨めしく、声すらも届けられない己をラディッツは呪った
空を見上げ、戦う二人に声を嗄らしながら涙を流して叫ぶも届かずに・・・・