何時だって・・・どんな時だって・・・・俺はこの方を・・・
天地が割れる程の破壊音がした
振われた拳の先にあった、フリーザの背を支えた岩山も塵と化し粉塵が舞い上がった
ラディッツがフリーザに力の全てを叩きつけ、振動で遺体すら残さずに消したかのように
「あ・・・・あぁぁぁぁあぁあああ!!フリーザ様!!!!!」
大好きで探し続けてきた幼馴染が、同じくらいに大好きなフリーザ様を消してしまった
スーナは・・・・今生で二度目の絶望感に膝が崩れた
一度目はラディッツが誰かの思惑で自分達の下から離されたと知った時・・・・スーナは惑星ベジータが消えても何も思わなかったが、ラディッツの行方不明を知った時、三日三晩熱で魘される程に衝撃を受けそして、フリーザにあのラディッツの生命石の事を教えてもらい、欠片をネックレスにして渡されたのだ。
この石が輝いている限りあの子は生きています
寝ている場合じゃありませんよ、あの子を探さなくてはいけないのですから
しっかりしなさいと、言った時のフリーザ様の顔はふわりと微笑まれた・・・だから頑張れた
フリーザ様達と共にラディッツを探すのだと・・・・その先に待っていたのが!!
スーナの絶望は、マトマとリーキュの絶望でもあった
何時もいた幼馴染とフリーザ様達・・・・自分達はずっと一緒だと、死ぬまで笑い合っているんだと疑いもしなかった時もあったのに・・・・
ラディッツがフリーザを・・・
様々な意味で、ラディッツを知る全員が沈黙をした
ただ気絶させて、そして帰れと周りに言って終わる結末を誰もが想像していたからだ
ラディッツは敵には容赦なく、昔魔族とピッコロ大魔王が生みだした脳無したちを瞬時に屠ったのを知っているジュニアをしても、絶句した
親父が関係ない者は基本関心を向けず、敵になったら日頃の優しさが鳴りを潜める
だが・・・・今回の敵は・・・・なのに・・・
「やった!!あの小僧やりやがったぞ!!!!!」
地球とは異なり、西・東・南の界王達はその光景に歓喜の声を上げた
宇宙を、それも一銀河ではなく東西南北の全てさえも目的の為ならば手にかけようとして悪の帝王が倒された事は、秩序を守る側としては至極当然で喜ばしい事・・・の筈なのだが、ラディッツを見つけてからは時間があればフリーザ達の動向を追っていない時は極力見続けてきた北の界王の胸中は複雑であった。
あの愛を知るサイヤ人は、フリーザの本質を知っていても其れでも愛する事がやめられないと、震えて泣いていたというのに・・・その本人が手にかけ・・・・一人のサイヤ人の心情など、宇宙の平和という大事の前の小事と、言えるほどに北の界王は薄情にはなれなかった。
一方的に見続けてきた存在なれど、ラディッツという男はどこまでも真っ直ぐで優しくて愛情に溢れていてそして・・・・脆い心を抱きしめ無理やり前に進もうとあがいている男であった・・・
そんな者が、大切で愛していた者を手にかけて・・・・生きておれる筈が無い
真の勝者はもしかしたら・・・・
北の界王ははたっと思い至った考えに冷や汗をかいたが・・・・現実世界の出来事に目を見開く
「・・・・そ・・・だろう・・・」
「どうして!!!!」
「馬鹿な・・・・」
その光景に、喜びはしゃいでいた三人の界王達も冷や汗を流しながら顔を歪める
「・・・・・ラディッツ?」
「フ・・・・リーザ様・・・・」
拳を握っておらず、フリーザを抱きしめているラディッツに、フリーザが一番驚いているかもしれない光景であった。
何故私を殺さないのです?千載一遇の機会は、どのような時であっても逃してはいけないとあれ程に教え込んできたのに、この子は私を殺せる機会を逸してなにをしている?
何故・・・・何故?
フリーザはラディッツの事を愛するようになっても、自身がラディッツを思う感情と、ラディッツがそして子供達が自分に向けてくる忠誠心以外の感情が理解できなくてそれでも問題はなかったのに・・・
何故が付き纏うようになって・・・・それはとても暖かくて居心地が良くて気に入っていたのが遠くに追いやられ、必死に取り戻しに来てそして・・・・死をも自分の勝ちだと受け入れたのに・・・・
「フリーザ様・・・フリーザ様!!!!」
「・・・何故、私を殺さないのですラディッツ?」
泣き叫びながら自分を抱きしめ離そうとしないラディッツに問えば、ラディッツの体は酷く揺れそして
「・・・・無理です・・・・・でき・・・ません・・・・」
さんざん侵略行為の手伝いをして、自身でも敵を屠ってきた者が言っていい台詞ではないと分かっていても
ラディッツにフリーザを殺す事なんて端から無理であったのだ
どんなに酷い目に遭わされても命じられてさせられてもそれでも、愛しいという心に変化が訪れる事は一度もなくて
「フリーザ様・・・俺はこの星の人々も愛しています・・・・」
フリーザに偽りを言えないラディッツの告白に、抱きしめられているフリーザは憮然とした表情を崩す事無く鼻を鳴らして応える
「そんな事は百も承知ですよ、貴方は絆されやすいのですから。」
だから、許せなかったのだ
絆されやすいこの子の心に棲み付き合いを受け取る相手が多くなる事が
だから、五百人で手をうってやると言ったのにこの子は拒絶して自分に歯向かってまで守ろうとした事がさらに許せなかったのに
「フリーザ様・・・・俺は・・・俺達この場にいるサイヤ人は、カカロット以外の全員はきっと死後は地獄に落ちます。」
そんなラディッツの言葉を聞いて、誰かが息をのむ音がしたが知った事ではなく、何が言いたいかと鼻を鳴らして続きを催促すれば
「俺の寿命は長くても百年・・・その後は沢山の罪を償う為に地獄で何百・何千年と刑罰を受けるんです・・・」
この世界には本当に地獄と天国と、そしてこの世界の危機を救ったような特別なものだけが特別な待遇を得られる世界があると、太上老君ことアンニン様に教わった事をラディッツは訥々とフリーザに話し
「地獄で貴方様を待ちます・・・そしてフリーザ様が地獄に来たら・・・」
俺の全てを貴方に捧げます・・・
「だから・・・・今は引いてください・・・・」
死後の約束をした
生きている間は、どうしたって弟妹達が可愛くて、息子と娘と孫達が愛おしくて、祖父達も大事で・・・・フリーザだけの者になるには大切な人達が大勢いる
その言葉に、フリーザはどうしたものかと思案する
地球勢の幾人かが手足を無くすほどの被害が出ている・・・・・確かに今の自分ではラディッツにその気が無くともラディッツに勝てる見込みがないし・・・・第一
「兄者!!!そんな大悪党を逃がすというのですか!!!!!」
ほら、ああいう輩が貴方の周りにはいそうですし本当にいましたか・・・
それは、途中から目を覚まし、一連の遣り取りを見ていた天津飯の悲痛な叫びであった
天津飯とて、無益な争いを避けられるのならば避けたい
無駄に流血をするものを愚か者だと思っている
だが!!あのフリーザという男は猛毒であり、消さなければならないと天津飯の本能が訴え続けている
いつかの時、その毒の中に気高さと美を見つけたラディッツとは違い、その毒の中に狂気さえ孕んでいる事に気が付いた天津飯
たった一人の者を探すのに宇宙全てをひっくり返そうという気狂いのような事を平然と仕出かすだけの力を有している危険人物なぞ!!消せるうちに消すべきだと至極真っ当に吠え上げる。
悪党の末路は罰を受けるべきだと
過去に兄弟子ラディッツが犯した罪は目下償っていると言えるだろうが、どう考えてもフリーザという奴は改心するという目はない事が見て取れる!!
悪は撃ち滅ぼすべきだと弾劾する天津飯に、ラディッツは何も言えなくなる
それが正しい事だから、天津飯が正しく間違っているのは-自分達-で・・・
そう・・・・自分-達-なのだ・・・・カカロット以外のサイヤ人全員と自分とフリーザ達・・・・
それでも・・・・自分にフリーザ様を殺す事なんて出来なくて・・・・
己の言葉に頷く事無く狼狽する兄弟子に、天津飯の心は搔き乱される
悪から弱い人々を守る為にサイヤンℱの警備会社を立ち上げた兄弟子・・・・まさか
「兄者・・・・答えてください・・・サイヤンℱとは・・・兄者のサイヤ人のサイヤと・・・・」
「天・・・・」
「そのフリーザのFを・・・・・」
その問いに、ラディッツはフリーザに回していた腕を抜いて天津飯に向き直り
「・・・・その・・・通りだ・・・」
天津飯の言った言葉が正しいと肯定した
弱者を守りたいという思いに偽りはなかった
そしてフリーザ軍も依頼によって時に警備的なものを幾度もしたのは事実で、ずっとそれだけであれと願い、遠くにあってもそうあれかしと祈るように付けたサイヤンℱ
だが、その思いこそが天津飯の正義の心に怒りの炎が注ぎこまれる
宇宙を踏み躙るようにここまで来た巨悪を、後生大事に愛しいというラディッツの思いが裏切り行為の如く映って、酷い言葉を吐きかけた時
「止まってくれないかな正義の味方君?」
どこからか、惚けた様な酷く間延びした声が当たりに響いた
「ラディッツと弟のカカロットをこの地球に飛ばしたのは、酷い言葉を受け取らせる為なんかじゃ断じてないんだから。」
僕の行いに水を差さないでくれ給えよという言葉に、力を抜いていたフリーザの顔に一瞬にして怒気が浮かび、リーキュ達も同様になりそして・・・自分を飛ばしたという言葉にラディッツは弾かれたように声のする上空を見れば・・・・
「久しぶりだねラディッツ。
君はきちんと大きくなったのか・・・・・これも-予想外-の事が起きたみたいで何よりだよ。」
歌う様に謎の言葉を言っているのは
「トンミさん・・・・」
そして・・・
黒く長くつやのある真っ直ぐな髪を、何時もの様に後ろで軽く結わき、細目を益々細めて人好きする笑みを浮かべている、白衣を着たサイヤ人
「あなたが・・・ネズミ?」
昔馴染みの大人に、答えを求めれば
トンミはイエスともノウとも言わずに嗤いそして
己の長い黒い髪と茶色の細い尾をラディッツと同じー白銀ーへと変えていった