自分を見る感情はおおよそ三つ
一つは僕の事を全く知らない地球人とカカロット達の、-お前は誰だ-の戸惑い
これは自分がラディッツ達に親しげに話している事が起因しているだろうけど放っておいても問題はない
一つは僕がネズミであるという事自体に驚いているラディッツ
父親バーダックとの縁ではあるが、其れなりに良好な関係を築いていると思っているラディッツ的に驚きだろうけどこれも今はいい
最後は僕の事を視線でい殺せるほどに殺気立っているフリーザ様とマトマとリーキュとスーナ
これは・・・そうだねぇ・・・・今までさんざん皆のお悩み相談していた相手が、実は元凶でしたって言われたら僕だってキレる・・・・かな?
キレないな、だって僕は-そういうの-が視えるんだから
直近の事から先の事まで、自分に関わる事から辿ってみたいと思う五十年内の-起こる事象-を視る事が出来るから、騙される事はないからね~。
とはいえ
「フリーザ様、あまり怒らないでくださいね?」
バーダックの側に降り立った、白衣を着たサイヤ人の態度は実に舐め腐っている
十八年もの歳月をかけてラディッツ探しと並行して探したネズミが、実は自分たちの側にずっといた、フリーザ軍において時に特戦隊の下す命令よりも優先的な発言権を持つ高級医官だったなんて!!!
なんどあの子がいないと嘆いているのを見ていたか!
何度この人に悩みを相談した事か!!
・・・・この人に俺のガキの健康診断してもらってるのかよ!!!
この人に慰められた事が悔しい!!!
今すぐに八つ裂きにして殺してやりたいくらいに憎らしい!!!!!
様々な意味で殺意を露わにするフリーザ、リーキュ、マトマ、スーナであるが、その四人の殺意を感じ取ったラディッツは、すぐさまトンミの前に立ちストッパーになるのを、ラディッツはいい子のままなんだね~とか!のんびり言うのやめてほしい!!
「トンミさん!!」
「なんだいラディッツ?」
「・・・・これってきちんと説明してくれますよね?」
守るように前には立ったが、ラディッツだとて内心はらわたが煮えくり返りそうなほどに怒っている。
地球に来て様々な出会いをして大切な人達が出来たからいいだろうとかトンミさんが
言った日には!フリーザ様達の前に俺がトンミさんの顔面・・・・は可哀そうだから腹パン一つでやめておこうと・・・
くらいには
そのラディッツ達の様子にも態度を変えない図太いトンミは、何時もの様に柔らかい笑みを浮かべ応えた
「一つ昔の話をしようか」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
むかしむかし・・・・そうだね・・・もう四十年以上も昔
惑星ベジータに一人の-弱い-サイヤ人の子供がいた
弱ければすぐに死んでしまうその星のご時世下でも、弱い子供は無事に生き延びた
子供は戦闘力が一しかない代わりなのか、奇妙な力を持っていたから
一つは未来が視える
これは子供が視た未来を三度体験して分かった事
最初は自分が殴られる未来を視て、縁起でもないと憤慨した次の日に見た場面そのままの状況で同じように殴られ、二度目の時は一度目は偶然だと片付けようとしたせいで回避できず、三度目は視た事を信用して回避することが出来た
なるほど、自分の事に関して先が視えるのが便利だと、子供はその能力をどんどんと磨き、ある朝起きた時自分の体に異変が起きる。
長い黒髪が白銀となり、上半身も色の体毛に覆われたおかしな姿に、子供は首を傾げましたがまぁいいかと気にも留めなかった。
そんな事よりも昨夜の夢で見た食料のお子溺れに預かれるところの方が遥かに大事だったから。
ただその白銀の姿になれば、視える先はどんどんと増え、時に見た人の先すら見えるようになった時は情報屋になれると喜び、そして情報を売って生きている時に-運命の一つ-と出会った。
「君さ、君の事はスラム中の噂で知っている。」
嘘、本当は目の前の自分と同い年くらいの子供の側にいたら生きるのが楽そうな未来が視えたから擦り寄ったのだが、相手は不信感剥き出しで自分の事を邪険にし時に殺すぞと脅してきたが、そんな未来がこない事を知っている子供はめげる事無くせっせと同い年の子供バーダックに有益な情報を渡しお零れに預かり、そして時に手当てもしていつしか腐れ縁にまでなれた。
「・・・・お前さ、俺に近寄って来たのってなんでだよ?」
出会ってから五年ほどして、其れなりの信頼を得た子供・トンミはあっけらかんとバーダックの質問に答えた。
「君といたら生きるの楽そうだったから。」
其の方が上手くいく未来が視えていたからね~。
「・・・・俺の強さに惹かれたってか?」
「まぁそんな感じだね。」
「・・・け!」
自分で言っておいて照れるとか・・・可愛いな~バーダックは・・・・そのバーダックが、いや・・・僕達そのものが惑星ベジータごと消されるっていうのは・・・きついな・・・
トンミはバーダックにくっついて王宮の軍に挑戦して入隊を果たした
バーダックは言わずもがなの武官、弱いトンミはバーダックを手当し続けてきた事で得た医療知識と持ち前の知能で軍医枠を勝ち取った
弱い奴は死なせておけというのは話半分で、そんな事をしていては好戦的なサイヤ人なぞあっという間に絶滅してしまう。
それを防ぐのが軍医であり、トンミはそこには入れたがベジータ王を見た時-視えて-しまった未来には流石にまいった
未だに出会った事が無いが、怖ろしいフリーザとかいう輩にサイヤ人の大半は殺されバーダックも立ち向かう中死んでいく・・・・ならば自分その時点で消されているだろう・・・なにせ弱いのだから
だが希望も見えた
それから何年経ちある時バーダックを見た時に、見た事も無い女性と結婚をして二人の子供を授かっている場面を見た時からそれは始まった。
一人はギネにもバーダックにも似ていない髪型の子供で、後から生まれたほうはバーダックそっくりの髪型であった。
あの不器用な男が二児の父・・・・大丈夫かなと不安になった
時折視た未来が何かの要因で何もしていないのに変わる事があるので、あの不器用な腐れ縁殿の良い未来のためにと、戦場で死にかけているバーダックの番候補を見つけた時は自分が助けられてよかったと安堵した
何故なら助けた事を縁に、さりげなくバーダックの良さを伝えながら何かの折に出会わせれば上手くいくかなと思えば、すんなりといって二人は子を授かり恙なく番になった。
其の時はバーダックのチームの人間もいた。
視た未来ではバーダックの前に死んでしまう人達だけれども、-今-は生きているのだから互いに楽しまなければ損だろうと、酒を呑みあい楽しい時間を共に過ごす
誰かを殺し、誰かに殺される
それが自分達戦闘民族サイヤ人だからだと
そしてトンミはフリーザを見た時に視えた
バーダックそっくりの青年が、フリーザと対峙しそして倒すところまで
なるほど、バーダックそっくりの子供が僕らの仇をとってくれるのか
ならばいいと思った
誰かが自分達を殺したものを殺してくれるのが確定しているのならば溜飲が下がる
バーダックそっくりの子供を逃がせるようにしてあげるかと、其の時のトンミはバーダックの第一子はどうでもよかった・・・・その赤子を見るまでは
その赤子が生まれた時、トンミは人生において初めて動揺し驚愕をした。
自分と同族の死を見ても驚きもしなかった男が
その赤子は、下級戦士の両親を持ちながらも戦闘力千なのは凄いなくらいでどうでもよく、それよりも視えなかったのだ!
フリーザ軍で医療内勤に配置されてから、トンミはサイヤ人の赤子をそれなりの数を取り上げた
それぞれに大体の未来が視えたが、バーダックの第一子-ラディッツ-の未来は欠片も視えなかった
そしてあろう事か、それまで視えていた自分とそして周囲の未来が真っ白になっていた
視えないのではなく白い空間を見るだけで・・・まるでその先は分からないとばかりに・・・・そんな馬鹿なと思う程に、その赤子が生まれた日を境に未来が白紙になった
それを証明するように、赤子が大きくなり六つになてからフリーザ軍と自分の周囲は完全におかしくなった・・・・
六歳のサイヤ人の子供がフリーザ軍に入隊する未来なんてなかった
その子供がバーダックそっくりの青年にぶっ潰される予定だった特戦隊と仲良くする未来なんてなかった
その子供を中心に、サイヤ人の子供達がフリーザ軍に馴染み心を寄せる未来なんてなかった
決定的だったのはその子供、ラディッツがフリーザの傍らにいる未来なんて断じてなかった
本当に、その子供ラディッツが絡めばなかったはずの未来が次から次へと生み出されていく・・・・それも自然体にあっさりと生み出しそして、変わっていく者達を惹きつけている。
誰もがラディッツに夢中だった
特選部隊達は自分達の趣味も性格も全て受け入れてくれるラディッツを愛し
そんな特戦隊達に手を焼いていたナナバ文官長を始めとしたフリーザ軍の者達はラディッツに感謝し
自分達に懐くラディッツをザーボンとドドリア達は可愛がり
フリーザ軍の良さを啓蒙していくラディッツに面白さを感じた子供達はいつしか戦闘力の差も階級も忘れ果て幼馴染とまでなり
そして・・・・愛を知るはずの無いフリーザの心の中にするりと入り込み相思相愛になった・・・
死ぬ未来が視えたサイヤ人も、命を落とす筈だった武官達も、ラディッツが関わればフリーザ軍の中に入り込み、助けられ、未来が変わっていくのをずっと見続けてきて感じたトンミは笑いが止まらくなった
たった一人の子供がこの世界の一部であろうが未来を書き換えていく様が愉快であった
自分も視て得られた情報から回避し未来を変えてきたが、それは狭い範囲
だが、この子供が今まさに変えているのは-世界の未来-
スケールなぞ比べるべくもない!!
そしてトンミは決めた
たった二人のサイヤ人を残して滅びる未来を完全に変えられるかもしれない子供を守ろうと
・・・・・・・・・・・
「そうして僕はネズミになる事を決めたんですよフリーザ様。」
白銀の姿になっても視えなかった未来が、ラディッツとフリーザ様が相思相愛になったある日突然見えた未来に絶望をして
その未来は、ラディッツの存在のお陰でサイヤ人の有用性が認められそれなりの数が生かされ遂には惑星ベジータの時くらいの人口に戻った時
「固まったお前はもう詰まらないからね、破壊するよ。」
有無を言わせない圧倒的な-何か-が、惑星ベジータを滅ぼした後は他の星を依頼によって侵略し或いは討伐をして、特に変わり映えのないフリーザ軍として過ごしていたあるどこかの日に起きたであろう場面
其の時フリーザ様の側にいたラディッツが大人になっていたのでそれなりの時間が経ってからだと推測が立ったが、そこはどうでもいい
問題は、ラディッツがいる事に満足をしてしまったフリーザ様は積極的に宇宙を支配しようとか、軍を発展させようともせずに-現状維持-を選んだことがまずいらしいことが伺える会話の後にフリーザ様が殺されそして諸共に生き延びたサイヤ人達と自分の死・・・・僅かばかりに寿命が延びただけで発展しなければ滅ぼされる事が確定されているらしい・・・・
せっかく面白いかもしれない白紙の未来が、確定されるとー死ーが自分た達を捕まえにくる
まるでサイヤ人の運命はそうあるべきだと嘲笑う様に
悔しかった
死は怖ろしくないが、死という運命に弄ばれる様な事が許せなかった!!
ならば、窮鼠が死という運命の猫を噛み殺してやるのも面白いじゃないか
手始めに、フリーザ様の心を満足させてしまっているラディッツを引き離すところから始めよう
白紙の未来を手にする為の第一歩を