プロローグ:弟は俺が守り抜く!前編
「どうして・・・・コンピューター!航路変更!!リンクしているカカロットの宇宙ポットと共に進路変更!・・・駄目か・・・なら!ポットの現在位置の座標を今すぐにフリーザ軍本部司令室に緊急連絡!コード728-737Zーフリーザ軍本部付き文官長補佐ラディッツ!・・・・これも駄目か・・・なんで・・・どうして・・・・親父・・母さん・・・・」
初めての宇宙ポットでの宇宙進出は、片道一週間をスリープで向かうだけの近場の仕事で、仕事内容は出来レースに近い中身であった。
フリーザ軍の中の大人のサイヤ人武官達に対しての風当たりが強い自分とカカロットに功績を積ませてくれる内容であった・・・・筈なのに!!
コールドスリープから目が覚めてから直ぐにラディッツは驚愕した。
一週間の筈がポット内の月日は一年も経っていた!
其れを見ただけでも愕然としたが、緊急超長距離通信受信の点滅ランプに気が付き推した時、ラディッツの心は絶望に染め上げられた。
惑星ベジータが惑星の半分ある隕石衝突によって消滅した事、
その際大半の大人のサイヤ人がベジータ王に率いられ隕石衝突の時間を遅らせ子供達を逃がす為に犠牲になった事
そして、犠牲もむなしく惑星ベジータは隕石によって破壊された・・・・ラディッツは惑星ベジータを、家族と仲間とそしてフリーザ達同様に愛していた。
山や湖に父や思い出を込めた名前を付ける程に・・・そして、大半の大人達が犠牲になったという事は、偶々任務が早く終わって帰って来た父や母、そしてトーマさん達が犠牲に・・・・
「・・・え・・らなくちゃ・・・」
帰らなくてはいけない!
父と母とそして仲間達の安否を!その前に・・・
「いた!!・・・・カカロットも俺と同じくここに送られて来たか・・」
ラディッツは帰る算段を付ける前に最愛の弟の安否確認を忘れる事はなかった。
どれ程動揺しても、自分にとっての最優先事項を忘れるなというナナバの教えが此処で役に立った。
今の自分の最優先事項は、一年前の情報で慌てふためくのではなく、そんな緊急事態の最中に一年という超長距離航路の最終行程に来てしまったからには、ポット内の緊急航路変更を作動させるか、最悪は司令室かそれが無理でも近い宙域の軍司令室に連絡を入れつつ、インプットされている惑星に着陸するして救助を待つしかない。
行動を定めたラディッツは、すぐさまポットの窓から前後左右を見る。
きっと・・・・いた!後方の左に、自分と同じポットが同じ速度で航行している。
最優先事項確認、次の行動に移るが全て不首尾に終わった・・・終わってしまった
「ちくしょうが!!!!!」
弟の無事で多少は落ち着いた心は、千々に乱れてラディッツは怒鳴りながら反応を示さないコンソールを叩き、そして嗚咽を漏らす。
「親父・・・母さん・・・みんな・・・なんでどうして!!!」
何故惑星が災厄に見舞われている時に自分はここにいる・・・・どうして-こんな所-にいる!!
当初の通りに定められた航路にいたのであれば最悪でも直ぐに家族と仲間の安否は知れたのに、自分と弟のカカロットは何故一年も飛ぶような超長距離の場所に・・・一体何故・・・-誰-が自分を・・・
伊達にフリーザ軍の文官長補佐をしておらず、ラディッツはフリーザの小姓と言う忖度でその地位についたわけではなく、実力で勝ち取ったのだ。
故に敵も多かったのをラディッツは知っている。
同族の大人達のみならず、同僚で競争相手であった者達からの嫉妬・羨望などの負の視線に晒される中、仕事をする事で黙らせてきたのだが・・・自分だけであったればどうとでもなろうと覚悟は出来ていた。
サイヤ人の自分がフリーザ様の傍らで働き、軍内部の文官トップグループで働く時に覚悟は済ませておいた。
弱い自分は油断すれば様々な理由で命を狙われ死ぬかもしれない覚悟を・・・だが何故弟までが巻き込まれなければならないのだと呻くように泣く。
カカロットは、まだ何もしていないのに・・・・自分の弟というだけで巻き込むほどに、かほどに自分は恨まれ憎まれていたのかと思うと遣る瀬無い気持ちもこみ上げる。
ラディッツは同族を心底嫌い抜いて捨てる事は出来なかった・・・どれ程他星の善良な人々を殺す手伝いをしたとしても、家族と仲間と同族は大切だった・・・それが身勝手で最低で、きっと自分は地獄に落ちる事は分かっていてもそれでも・・・愛していたのだ全てを・・・・
もうこれ以上喪う訳にはいかない・・・そう思い定めたラディッツを、まるで運命は嘲笑うかの如く更なる悪夢をラディッツに見せつける。
今まで起動すらしなかったコンピューターが警報を鳴らせる。
それはリンクしているポットの緊急性を告げる青いアラームが点滅を光らせながら鳴ったのだ!
「あ・・・駄目だ!!!」
アラームの意味を理解したラディッツは即座に窓に張り付き弟のいるはずの場所を見てみれば、失速して目の前にある緑と青い海が見える惑星の方に向かって落ちていっている。
宇宙ポットは飛ばし子が幼ければ幼い程生命維持装置のバッテリーを使う
故に、乗り込む子供の年齢に応じて規定以上の燃料を入れなければならない・・・俺のポットと同量の燃料だったら、足りなくなっている!!
自分は・・・・確かにウルトラマンレオが好きだった・・・その生き様と半生に夢中になったが!!!
「俺はウルトラマンレオになりたかったわけじゃないぞ!!!」
故郷の星が滅びる中、唯一の弟と離れ離れになる・・・物語の様に誰かが都合よく助けてくれてうまく行くわけもなく、ここで離ればなれになってしまっては生涯会えなくなってしまう!!
「カカロット!!カカロット!!!!」
声を嗄らしながらポットの扉や壁をぶち破ろうとしても、戦闘力五千弱のラディッツには内部からの破壊も叶わず、惑星と家族の事で絶望したラディッツの心を更なる奈落へと誘う。
どうして・・・・神様・・・・俺が何を・・・・・大勢の無辜の人々を殺した報いですか?
直接己の手でなくとも、ラディッツの仕事は実行する戦士達を助ける為のもの・・・穢れた自分に、神様が笑いかけてくれるなど都合のいい事だ。
この世界の神々が、自分の知る神とは違う事を知らないラディッツは、きっと天罰が下ったのだと断じる。
その罰に、無垢な弟を巻き込んでしまったと絶望の底で昏い声で笑いかけた時、自身の乗るポットもまた、カカロットが向かっている惑星へと降りようとしている事を察した。
これは・・・・同じ星ならば!!!
パン!!!!
「しっかりしろラディッツ!!!こうなったら俺しか弟を守ってやれないんだぞ!!情けない事をするんじゃ無い!!!」
己の顔を両手で打ち据え渇を入れながら、カカロットが落ちようとしている方角と景色と、太陽の位置を必死に覚える。
自分の位置から見て、惑星の左に落ちている!つまり自分の降り立ったところから東側を重点的に探せばいい!
「必ず俺が迎えに行く!!それまで無事に待っていてくれカカロット!!!!」