「そうか・・・・-お前達-もあれを欲するか・・」
「お前達も?・・・・って・・・」
「おら達の他にも、陰陽の理っていうエネルギーに満ちた土地の果実を欲しがっている奴がいんのか?」
悟空とクリリンの結婚式以来のシュラとの再会に
「シュラさんお久しぶりです。」
「メラとゴラは元気か?」
二人は元気よく挨拶し、相も変わらない元気な小僧どもだとまたぞろ退屈の虫が騒ぎかけたシュラの目を楽しませる。
アンニンと冥界の世話になるのは吝かではないが、しかしやはり娯楽というものが圧倒的に地上界に比べれた少ない・・・・・また烏になって出掛けようかと企んでいた矢先の訪問客に、メラとゴラは冥界の仕事で出掛けているのでシュラ自ら悟空とクリリンにお茶を用意し、旧交を温めそして聞かされた内容に
「お前達の兄は相変わらず大変な事に巻き込まれているな・・・・一度神仙に頼んでお祓いでもしてもらった方がよくはないか?」
幸い太上老君ことアンニンとは旧知の仲なのだから、頼めばあの懐の深い優しき神ならば喜んでやってくれそうだとお祓いを本気で二人に勧めた後、陰陽の理に満ちた土地で実りし果実を手に入れたいう願いに、悟空とクリリンよりも以前に欲して手に入れたであろう者の名を二人に教え、教わった二人は目を丸くした・・・・
だって・・・・その人はもしかしたら・・・・珍しいどころか話で聞くだけでも物凄いお宝な果実はそう簡単にはもらえないだろう事は容易に考え付くのに、それを手に入れたであろう人物が・・・・
「選りにもよって!!!なんであいつなんだよ!!!!!!!!」
新しき黄泉の国に響く悟空の絶叫に、さてこの大騒動の結末はどうなるのだろうと、叫んであばれもしそうな悟空を宥めるクリリンと、どうしてあいつが先に見つけてんだよと絶叫する悟空を見ながら娯楽を見る目で見ているシュラは本当にいい性格してんな・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふえっくしょん!!!・・・・なんだ?」
「どうしたピラフ?寒いのか?」
冬は日が暮れるのが早く、寒さが増す
寒いならばもっとくっつけと、ピラフがくしゃみをすればピッコロ大魔王は野営の為の焚火に薪を足し、毛布を被ってすぐさまピラフを懐に抱きしめる・・・・パチパチと薪の爆ぜる音を聞きながら大魔王様の懐に抱きしめられて温まる・・・はぐれ魔族として世間から冷たくされていた自分が、こんな穏やかな時間をおくれるようになってもう何年になるだろうか?
孫悟空達に負けて孫悟雲に捕まり、あいつの態度が悔しくてこのお方を復活させて沢山の計画を練って・・・・それでも負けたのに・・・・自分は安住の地を得た。
それはどこかの土地に根付いて暮らす事ではないが、きっと自分が望めば大魔王様は・・・
「お前が望めばどこにでも立派な宮殿を建ててやるぞ?」
「大魔王様・・・」
「ピアノ達に命じて地の底で眠っている宝石とやらを掘り起こさせれば容易いが・・・」
お前はどうしたい?
何時だって・・・私の心のままに決めろと言われる大魔王様・・・・始まりはただあいつへの復讐だったのに・・・・あの当時ならば魔族を束ねあいつさえいなければ人界なぞあっという間に支配できたであろう偉大な大魔王様が、私の意思で動かれるという・・・・
「大魔王様・・・・私は・・・・」
自分の安住の地はとピラフが答えかけた時、ピッコロ大魔王は夜の帳が下り、星空となった上空をはたと見てそして・・・
「無粋だな、こんなにいい夜にお前との会話を邪魔する客達が来るとは。」
ニヤリと笑う大魔王様って本当にかっこいいなと思ってしまうピラフの前に、ピラフとしてはあまり会いたくない者達が姿を現してそして・・・・・
・・・・・人生最大の決定を降せと迫られ懊悩する・・・・・
あいつは嫌いなんだが・・・・・
ピラフ君、お腹すいていないかい?
・・・・あの人が・・・・
・・・・・・・・・・・・・
「カカロットとクリリンの奴・・・・まだ戻ってこねえ・・・どこで愚図愚図してやがるんだ・・・」
「バーダック・・・。」
-息子二人-が、夜が明けても戻らないと家の外で腕組みをしながら待ち構えているバーッダクを、ギネは溜息をつく。
仕方のない人だ・・・・ラディッツの事もカカロットの事もそして、地球で出来たクリリンという子の事も心配なのに、悪態をついてしまう不器用な夫である。
二人が心当たりがあると言い、飛び出したから任せてみようと真っ先に行ったのはその不器用な夫だ。
ラディッツが愛している二人の弟で自分達の大切な息子達・・・・その息子達は・・
「バーダック!!あれ!!二人の他に誰かいるよ!!!」
「・・・・やかましいぞギネ・・・・」
見ればわかるとぶっきらぼうに言いながらも、二人が返って来た事にバーダックも笑みを抑えきれず、ほんの少しだけ笑みが浮かんでしまう。
二人が返って来たという事はそれは・・・・
「結論から言わせてもらえば、私は孫悟雲にこの果実を渡す気は毛頭ない。」
・・・・・は?
「殺してでも奪うというなら好きにしてくれればいい。」
「お・・・・おめえ!!!昔おらと兄ちゃんに捕まったのがそんなに許せねえってのかよ!!!その後の面倒全部兄ちゃんに見てもらって!!おめえが逃げてもマイとシュウの面倒もきちんと放り出さずに見てくれたのは兄ちゃんだろうが!!!!」
「・・・・・・・」
「ピラフあんた・・・・」
-こんな面子を前によくそんな事を言えるな-と、怒れる悟空を他所にブルマは本気でピラフのクソ度胸に感心した。
だって見てみなさいよ
怒っているのは悟空だけじゃない
お兄ちゃんのお父さんとお母さんはもとより、フリーザ達なんて今すぐにピラフ殺して見せられた果実を奪おうとしてるのだ。
なんなら天津飯どころか餃子とヤムチャも参戦する気満々で、鶴のおじいちゃんが実行しようとしているのを武天老師のおじいちゃんが必死こいて止めてるのよ?
どっからそのクソ度胸が出て来るのかと、ブルマはピラフの態度に呆れながらも本気で感心する中
「だが、この果実は孫悟飯さん、貴方に差し上げます。」
・・・・・・・は?
陰陽の土地にのみ成る、聖果にも等しいそれは-陰陽和合の果実-と呼ばれ人々に大切にされてきた。
だが記憶も記録も風化され忘れ去られた・・・・人間の世においては
それを覚えていた魔族の長が特別に教えてくれて、大魔王のとっておきの情報によって得たこの世の至宝にも等しい果実を、ピラフは惜しげもなく悟飯に渡すという。
「その果実の存在を私が知ったのは孫悟飯さん、貴方に長く生きていてほしかったからです。」
「・・・・儂に・・・・まさか!!」
「そうです、今から三年前、そこの悟空とクリリンの結婚式の後に、孫悟雲は貴方に長生きをする為のものだからと、これと同じ白い実を出しませんでしたか?」
他の大多数の者達が殺気立つ中、家の中に招き入れられ席に座ったピラフは五つの桃のようでいてもっと白い果実を五つ取り出し悟飯に見せれば
「確かに、少しづず儂に出された健康に良い実と同じじゃが・・・・ピラフ君、これは君が・・・」
「・・・・・大罪を犯しそれを知った後もあなたはこんな私にも心の底から笑いかけてくださった・・・」
あれが無ければマイとシュウの事があったとしても、ピッコロ大魔王を復活させた時山村に対して手を一切出さないで欲しいと心の底から願わなかったかもしれない。
山村の人達は、人族でも獣人族でもない得体のしれない胡乱な自分に対して物凄く優しくて親切にしてくれた。
だが、自分の犯した罪を知りつつも同じように優しくしてくれた孫悟飯さん・・・この人が悲しむのは自分も嫌で・・・
「私はあいつから・・・あいつの生い立ちを全部聞いた事があるんです。」
「あの子から・・・」
「はい、私があいつの事を恵まれた奴だと思っていたのが余程気に入らなかったのか、あいつ自身から-惑星ベジータ-の頃からの話から地球に来て私に会うまでの半生全部です。」
忘れない・・・・忘れようもない・・・・・あいつのあんな真剣で心の底からの嘆きと怒りをまき散らした孫悟雲の表情を・・・
お前は俺に!お前の何を知ったつもりでいるとか言ったな!!だがな!!!お前が!この平和な地球で生きてきたお前が俺の何を知っているって言うんだ!!!!
それはフリーザ達が来る前の、もっと言えばターレス達が来る前の話・・・山村に住むシュウとマイの頼みで、時折ピラフの様子を見に行った時、あまりにつんけんしたピラフにさしものラディッツもブチギレを起こして-全部-ぶちまけたのだ。
平和ではいられなかった自分と違って、本気で助けを求めれば助けの手がどこからか伸びて来てくれる地球に住みながらも、お前は本気で誰かに助けを求めたのかと詰られる前振りとして・・・・・確かに、自分ははぐれ魔族で人々から冷たい仕打ちを受けたが・・・・・本当にそれだけであっただろうか?
中には自分を助けてくれようとした人がいたのを・・・・情けを掛けるのかと手を振り払ったかもしれなくて・・・・
それ以来、ラディッツの全てを知ったピラフはラディッツを拒絶する事は無くなり、そして次第にいろんな話も少しずつするようになりそして
「惑星ベジータが破壊された後、孫悟飯さん、あいつは貴方に拾われて幸せだとも言っていました。」
今俺が穏やかに地球で住んでいられるのは全部爺様のお陰なんだよ。
他の人だったらもしかして、尻尾のある赤ん坊だった悟空を怖れて捨てていたかもしれないし、兄の俺がいるのを知って二人なんて面倒を見られないと放られていたかもしれない。
そうなったらそうなったで、自分は弟を養う自信はあったのだ・・・・荒野の中で狩猟しながらの、惑星ベジータでのサバイバル生活を思い出しながら・・・だが、そんな生活に今の様な平穏な心は保てる気はせず
-俺と悟空は、爺様に拾って貰えたから地球で穏やかに暮らせているんだよ-
それはそうかもしれないと、ラディッツが好きではないピラフもその言葉にはすべて同意する。
自分も・・・・悪の道に行こうとしたが物理的な意味合いでは孫悟雲によって阻止されたが、心が堕ちる事が無かったのは・・・
「貴方の優しさがあいつとそこの孫悟空を助けて・・・・私も救われたんです・・・」
十八年前の孫悟飯の善行が、巡り巡ってピラフの悪事を二度も止めてピラフが本当の意味での悪の道に行かずに済みそして・・・・
「私が貴方を助けようとした果実です・・・・この果実は、貴方が好きに使ってください孫悟飯さん。」
「・・・・ピラフ君・・・」
また再び愛おしい者守る助けになっている
ピラフの言葉に、ピラフに怒りを覚えていた者達がいつの間にか静まりそして
「そ奴の言う通りかもしれん・・・」
「・・・・鶴仙人様・・・」
「孫悟飯・・・・お主が馬鹿弟子・・・・孫悟雲と名付けたラディッツを助けておらねば、儂はあ奴と出会う事は無かったのじゃろう・・・」
十八年前のあの日、大嫌いな亀と比較されてくさくさとした自分はプカプカと空中に浮いていた小僧に物凄く腹を立てそして・・・数奇な出会いであった・・・それもこれも、孫悟飯がラディッツと赤子を引き取りパオズ山で育てていなければ無かった奇縁
それが無ければ・・・・
「儂が小僧と出会い、都に行きあ奴が映画に出て有名になり、握手会の為にブルマが来て悟空とお主に出会った・・・・・なにもかも、今ある事のきっかけは孫悟飯、全てお主のお陰なのだろよ・・・」
鶴仙人のその言葉に、孫悟飯は打たれたように顔を上げそして否定しようとした。
孫がした事は全て孫自身の力だと、自分は何もせず、ただあの子の居場所を作ろうと必死になっただけなのだと・・・だがその言葉は遂に出る事は無かった。
「確かに・・・・私がお兄ちゃんに出会ったきっかけって、孫悟雲ことラディッツさんとの握手会に東の都に行ったからなのよね。」
「おらもその時に兄ちゃんに呼ばれたからじいちゃんと一緒に東の都に行ったんだよな。」
「そしたら鶴仙人様の言う通り、悟飯さんが悟雲兄さんとお前を拾ってくれたのが今の幸せ全部のきっかけなのか?」
「そしたら!おらが悟空さとこんな風に幸せなのは全部ご飯お爺様のお陰だか?」
「そうですね、私がクリリンさんのお嫁さんになれたのも、悟空さんと一緒に冒険に出掛けたクリリンさんに会えたからで・・・・悟空さん達がいなかったら私はクリリンさんと出会えなかったのよね・・」
「師兄がお師匠様の弟子になって無かったら・・・」
「ふん・・・・認めたくはないがな、鶴仙流は邪流の一門として天津飯も餃子もおらず、ヤムチャは悟空との縁で亀仙流をやっておっただろう・・・あいつがおらんかったらそうなっておったろうよ・・」
孫悟飯が自分の行いを否定する前に、孫悟飯の行った善行の結果を指を折るように数えてそして
「あいつの心が曇らなかったのって絶対に悟飯爺さんのお陰だろうな・・・」
「こんなにいい人達の中にいられたんだもん・・・・ラディッツが優しいまんまでいられて、カカロットも優しい子に育ってくれたのは間違いなく悟飯お爺さんのお陰よね。」
「まぁ・・・あの子の優しさが損なわれなかったのはそのおかげでしょうね・・・」
「で なければ少しは殺伐とした性格になっていたかもしれませんね。」
「・・・・・そんなラディッツ見たかないぞ・・」
ラディッツの両親どころかフリーザ達すらもが、孫悟飯に拾われ穏やかな生活に守られたおかげでこんにちのラディッツ達がいるのだという言葉に、勢いよく上げた悟飯の顔はまた俯く。
自分は・・・・・自分こそがあの子等に助けられたというのに・・・・たった一人で山の中で侘しく暮らしていたのを、豊かな色彩と温もりを与えてくれたのはあの子達で・・・・・なのに・・・
「悟飯よ・・・」
「・・・・武天老師様・・・」
「俯くでない、お主は顔を上げて誇ってよいのじゃぞ。」
孫悟飯が成した事は、-当たり前の優しさ-なのかもしれない・・・しかしだ、尻尾のある奇妙な赤子と子供に、その当たり前の優しさを与えようとする者は果たしてどれくらいいるだろうか?
それも縁も所縁も無い赤の他人の子供二人を育てるとなると並大抵な事では無かろうに
ただ金銭だけの話ではない
肉体的にも精神的にも、子供を育てるという事は一人だけであっても大変なのに、悟飯は同時に二人抱え込むのを躊躇わずに手を差し伸べて育てそして
「お主がこの温かい世界を作るきっかけになったのじゃぞ。」
孫悟飯が宇宙から飛来した赤子と子供を拾って己の孫とした
全てはそこから始まったのだという師の言葉に、悟飯は泣きながらも顔を上げそして
孫悟飯の事が大好きな者達がいつでも見たい、あの人好きのする優しい笑顔でピラフから五つの白い実を大事に受け取るのであった。