結婚を申し込んだら一度目は怒られたんだよ
・・・・・なんだそれは?
こちらのセルの疑問に答える為に、始めから話すなというラディッツの最初の言葉があれであった。
あまりの訳のわからなさに異次元のベジータとその妻のブルマは夫婦揃って両腕を脱力させて目玉を丸くしながら絶句した。
ベジータとしては次元は違えどもブルマがあんな女みたいに細っこくて泣き虫であんな変な言葉を説明の最初に持ってくる様なトンチキな男の、嫁になったというのが、波瀾万丈な人生で生死の境を幾度も彷徨い実際に死にもしながら、近頃は愛する物達を命懸けで守ってきたはずなの自分が今聞いた事が今までで最大の精神的衝撃をくらった思いをし、ブルマにしてもあっちの私の好みってああいう弱そうで優しい人が好みなのかと信じらんないという面持ちで・・・・地球が一度消滅した事や、果ては自分たち自身が異次元に飛ばされた事よりも、ベジータ夫妻にとっては余程そちらの方が衝撃がでかかった・・・・なんでだよ・・・・
しかもだ、他の向こうの面々(破壊神様と天使様とフリーザは馬鹿馬鹿しい話を飲み食いしながら聞くともなしに聞いてます・・・)もまた絶句している・・・・ピッコロなんて常日頃の俺は常に冷静だというスタイルは完全ぶっ壊されて、他人のどころかチチは確かに好きだが自分の色恋にだって腹の足しにもなんないから興味ない筈の悟空もブルマとラディッツという超あり得ない組み合わせの夫婦事情にぶったまげ、悟飯君だって緑色のジャージのズボンのチャック付きポケットに保管していたポイポイカプセルから取り出してかけた眼鏡が割れる思いがしたし・・・・・向こうの亀仙人さんなんて顎外れなやしないか心配になる・・・・向こうのセルが野放しな事なんて向こうの全員の頭から吹っ飛んてやがるのだ・・・
そして自分達の結婚までの道のりの始まりを話し始めたラディッツは兎も角として、許可なく馴れ初めを話されたブルマなんて・・・・可哀そうな程に紅くなって蹲るのを
「兄様の馬鹿!!!そんなんだから-あの時も-ブルマ姉様を怒らせたのを忘れちまっただか!!!」
同じ女としてチチがデリカシーの無さすぎる男達の言葉にダメージを受けてしまったブルマ姉様の下にすぐさま駆け付け、そっと抱き抱えてソファーに座らせながら兄様に怒りの憤怒を叩きつけ
「・・・・悟雲兄さん・・・・なんでも正直であればいいというのはどうかと・・・」
「・・・・・馬鹿親父・・・・お袋・・・俺が代わりにもう一発いっとくか?」
「兄ちゃん・・・・おらが言うのもなんだけどよ・・・デリカシーにかけてねえか?」
「兄者・・・・如何に日頃から仲睦まじいとはいえども小妹が可哀そうです!!!」
「師兄・・・・ブルマの心情考えてあげてくださいよ・・・・」
その辺のところがセルは似ちゃったんじゃないですかと、弟一同と息子からの本気の苦言に、俺そんなにデリカシーの無い事言ったかなと、頭をかく仕草が・・・やっぱりデリカシーなく聞いたセルに似ているのだが、ラディッツとしてはあれはあれでいい思い出だと思うんだけどなと当時を振り返る。
・・・・・・・・・・・・・・・・
それはヤムチャとマイ、天津飯とランチとの合同結婚式にまで話が遡る
あの晴れわたる空の下で盛大に執り行われた両名の結婚式
大魔王と破壊神と天使というあり得ない面子までも揃ったその結婚式の裏側で
「あのさラディ坊ちゃんよ、お前の弟は全員結婚して・・・・妹の結婚についてはどう考えているんだ?」
ブルマに猛烈アプローチの数々を掛けながらも、それでもご免なさいを絶賛食らっているターレスが華やかな式で出されてた祝いの酒を呑んだ勢いでラディッツを祝いの場から連れ出して本気で問うた。
ブルマがターレスにごめんなさいをするのは、お兄ちゃん自身から面と向かって結婚できないとまだ言われていないからと・・・・泣きそうになりながらもブルマがラディッツへの思いが捨てられないからだった・・・・・愛している女からそんな事を何度も言われる男のほうがいい面の皮で・・・・
「そうか・・・二人にはすまない事をしたな・・・・」
ターレスとしては愛している女の想い人に困った風にそんな言葉を言われるのが気に食わない!
気に食わないのだが・・・・ラディッツがどうしてブルマを・・・・いや、女性と付き合い結婚をしようとしないのかの理由を知っているだけに、ラディッツを詰る事すらできやしない・・・己の体内に残留している毒が、愛して結婚した相手を殺す・・・そんな事に怯えながら結婚して欲しいと、言えるようなラディッツであれば誰もが此処までラディッツに惹かれる事は無かった・・・自分とても・・・・
-お前の為じゃない、悟飯爺さんの為だからな!!-
何かを頼まれる時のターレスのラディッツに対する常套句
俺はお前の事なんてどうでもいい・・・・
それ嘘ですよねターレス様
まったくもって素直でないでっせい
んだ
嘘ついたって・・・
良い事なんて無いのにね?
やかましいぞお前達!!!!
軍団の全員にはバレバレだが、当のラディッツは気が付いていないからいいだろうとターレスは怒鳴り返す。
ターレスとても、自分を弾みで殺そうとした相手を信頼までして何くれとなく面倒を見てくれるラディッツには弱くなっているのだから・・・・・そんないい奴が自分ではどうしようもできない理由で愛している女を手放そうとしている・・・・・それが、冷酷非情と言われたクラッシャーターレス軍団の隊長であるターレスには我慢ならなかった
美味いものを食べて美味い酒を呑んで気ままにさすらう
自由を信条としているターレスにとっては、愛情を向けるべき同胞で惹かれた漢がそんな事で閉じ込められている事が我慢できなくて
「ラディッツ補佐官さんよ・・・・・」
わざと最初にラディッツに出会った時の敬称で呼び、悟空達が話しているのを立ち聞きして知った事をラディッツに教えた
それは
「あんたの体内にあった毒ってやつは綺麗さっぱりと全部消えちまったんだとよ・・・・」
ラディッツが目覚めないまま地球に帰還して次の日、ラディッツの弟達と息子だけで集まろうとしているのを見かけたターレスは、あいつ等何をする気だと家の裏手まで付いて行った。
もしもフリーザと今回の元凶たるクウラ達がどうしても許せなくてボコろうっていう話なら、俺もバーダックも許せねえし暴れたいから一口噛ませろと言うつもりで。
だが内容は全く違った
悟空とクリリンとジュニアが知った事を、天津飯と餃子とヤムチャにも知って欲しくて伝えたのだ。
他に兄の体内に毒がある事を知っているのは誰か知らないが、地球での一大決戦の時に知ったのはこの三人と後は父・バーダックのみで、そちらは悟空が一人で頃合いを見て話すという。
他の人達には兄にそんな酷い事があった事を知られたくなくて、特に爺ちゃんと姉ちゃんにはと泣きそうな悟空に、分かっていると全員で慰めを受けている時、ターレスは知った情報をどうするべきか迷いそして、本人に告げる道を選んだ。
隠す事も偽る事もお手のものなターレスがだ・・・
そして教えられた事で受けた衝撃にラディッツは暫く呆然としてそして
「ブルマ!!!!!」
花嫁達と楽しそうに話しているブルマを掻っ攫うように抱きしめそして
「俺と結婚してくれ!!今すぐにでも!!!!」
・・・・
「お、お兄ちゃんのバカ〜〜〜!!!!」
バチン!!!!
真っ赤になったブルマに本気の平手でぶっ叩かれる返答をされたのであった・・・
兄を男として好きなのは本当で、もしかしたらいつかプロポーズしてくれるかもしれないと、ブルマもそう思う時が二人っきりの時には確かにあった。
二人とも星を見るのが好きで散歩がてら行くことがあり、夜空を見上げてあそこに流れ星がと不意に横にいる兄を見上げた時の熱を帯びた瞳に
ターレスが自分を口説いている時に割ってはいる時の態度に
お見合いの話が来て断ったなと言った時、ドキリとした顔をしていながらもそうかと慌てて言っている時の、ホッとした表情がよぎった時に
兄ももしかしたらと・・・確かに夢見ていたが!!これは無い!!!
いくら好きであっても!!こんなデリカシーもロマンのかけらもないプロポーズなんて!!
「お兄ちゃんの馬鹿!!知らないんだから!!!!」
ぶっ叩かれても文句言えんだろ・・・そして今の様に弟妹一同と祖父とお師匠様達にも本気の説教を喰らった・・・特に鶴仙人はこの馬鹿弟子にはもっと沢山の事を教えておくべきであったと嘆かれた・・
だが!毒という障害の無くなったラディッツには遠慮する理由が何一つ存在せず、ならば押しの一手だと文官時代に培ったあらゆる攻勢を怒涛の勢いで繰り出した!!
祖父一同の孫家全員に賛同してもらえる様に切々とブルマへの愛情の遍歴を語り尽くし妹から愛する女性になったのだと訴え見事デリカシーのなさすぎるプロポーズに同じ女性として怒っていたチチとモンブランの賛同まで得るにいたり、その二人の協力の下ブルマを呼んでもらったのがプロポーズ一回目からの三日目の事であった。
パオズ山は暖かく桜の他に桃もまだ咲いており、花見をしようとチチ達に招待を受けたブルマは、お兄ちゃんと会うの気まずいが、お爺ちゃんも後何度お花見できるか分からないんだからとやってきた。
ブルマも、悟飯お爺ちゃんが大好きだから
そんな優しいブルマを愛している男は存外多く、ターレスの他にも地球内で名の通った企業の独身社長や跡取りや政財界の大物達も狙っている。
それはカプセルコーポレーションという巨大企業の一人娘という事もあるが、中にはブルマ自身に本気で惚れた男達もいる。
それでもブルマが好きなのは愛しているのはただ一人で、そのただ一人の男が、花見をしようと言われた孫家の桃の下で立っていた。
普段着ではなく、まして公式の場で着ている鶴仙流の白い袍ではなく
「お、兄ちゃん・・・その服って・・・」
「そうだ、背が伸びてもスーツを作ろうともしなかった俺にお前が一緒に選んでくれて誂えたスーツだ。」
ラディッツがドラゴンボールの願いによって背が伸び大人の服を買っても、ちっともスーツを作らない兄にプレゼントとして一緒に作りに行った青いスーツ姿であった。
既製品ではなく、布も色も二人で選びながら進めていくのを見ていただいたら店員に、ご夫婦ですかと聞かれた時にはいつかはそうなりたいと胸の中に大切にしていた宝物の様な思い
「ブルマ。」
その時の思いを呼び起こすスーツを身につけた兄は突然自分の目の前で片膝をついて
「俺が生涯膝をつくのは七人だけだ。」
「お兄ちゃん?」
それは祖父である悟飯お祖父様と、お師匠様鶴仙人様とその盟友の様な尊敬するべき武天老師様と、地球の神様と太上老君・アンニン様とそして言わずと知れたフリーザ様と
「最後はブルマ、お前だけだ。」
その言葉に、ブルマは混乱した。
六人は分かる!だってお爺ちゃんとおじいちゃん先生と武天老師のお爺ちゃんと、そして地球の神様とアンニン様は尊敬するべき人達で、兄もそして自分達も自然と敬っている人達で・・・フリーザさんはお兄ちゃんが心の底から大好きな人だから仕方ないと思えるのだが!!
「ビルス様やウィス様や、お兄ちゃん達の王様のベジータさんがなくてどうして私なのよ!!」
ブルマが訳のわからないと思ったのは、宇宙の神様と天使様と、そして同族の王様を差し置いて自分が入れられた事
だが、ラディッツにとってその答えは変わらない
破壊神様も天使様も確かにフリーザ様よりも遥かに格上の人達だが、こうべを垂れて仕えるべきは自分にとってはフリーザ様ただお一人であり、ベジータ王の事もビルス様達の事も尊敬しているが膝をつく人達は決まっており、最後の一人にラディッツは懇願をする。
「愛しているブルマ。
共に老いて白髪となり、最期の時まで傍にいる事をどうか許してほしい。」
自分の言葉に固まってしまったブルマの両手を優しく包み込み、ラディッツは姿勢を崩さないまま急かす事なくブルマの返答を待った。
自分はもしかしたら、十年は待たせてしまったかもしれないのだから
このスーツを贈ってくれたあの時から、もしかしたらブルマの自分に対する恋心が芽生えていたかもしれないというのは自惚れかもしれないが、そうであったのならば嬉しいと思ってしまうことがやめられない。
そんな事を考えながら待っていれば、ブルマの強張った表情が緩みそしてポロポロと泣き始めるのを、ラディッツはそっと立ち上がり抱きしめれば、胸を幾度も叩かれそして
「白・・髪になっても、しわくちゃのお爺ちゃんになっても大好きよお兄ちゃん・・・」
くれた答えにラディッツもまた静かに涙を流してブルマを優しく抱きしめ続けた。
この世界でもっとも愛すべき番を逃さぬとばかりに・・・