「カカロットさん!このメタルクウラには痛覚はありませんしスタミナ切れも無いので打撃よりも引き千切るかエネルギー弾で削っていくかのどちらかでいきましょう!!」
「分かった!!!」
「・・・・弱い奴等は群れたがるものだな・・・」
「はん!!おめえだって自分をコピーしまくって数任せで戦ってるじゃねえかよ!!
おら達の事が弱いってんならおめえだって同じなのに気が付きもしてねえ馬鹿野郎かよ!!??それとも脳みそまで金属化して考える力が無くなったのか!!??」
「き・・・・貴様!!!!殺してやるぞサルが!!!」
「やれるもんならやってみろよ数任せの弱虫野郎が!!!!」
しかもなんだが相手を怒らせるための挑発じゃなくて天然で言ってるっぽいし、
かつて魔人ブウを圧倒的に上回り、相手を苛つかせた後にぶっ飛ばせばすっきりするかなとか散々煽り倒した事があり、それが無くとも相手を挑発するのが趣味なんですか的なベジータをさんざん見てきた孫悟飯をして、この世界の悟空の煽りスキルの高さに戦いの最中ではあるが舌を巻く。
自分が知っているクウラは二度対峙したが、生身の時もメタルクウラであった時もどちらも冷酷非情な気配で怒りとは無縁だと思っていたのに・・・・二言三言で冷静さを欠かしてはいないがそれでも悟空が来る前と違って攻撃が少しだけ単調になっている。
なにがなんでも今すぐに殺してやろうという気が先行しているのだろう・・・カカロットさんがこっちに来てくれなかったら自分は死んでいたなと悟飯は内心で感謝しつつも、自分達のセルの相手はこの世界のセルさんで本当に大丈夫なのかなとちらっと思う。
悟飯は予定にはなかったメタルクウラを相手にして少し前に部屋から出てきた悟空がセルを相手にしていった気配があった筈が、急にこっちに来てあっちはおら達のセルが相手するからこいつを直ぐにぶっ倒してまたセルの所に戻るぞと来たのだ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遡った十分前
こいつをぶっ倒すんじゃなくてぶっ殺してもいいだろうか?
悟空が降り立つと共に、桃白白は異界のセルの腹を踏み抜いていた足を抜いて場所を悟空に譲り、桃白白の毒に侵され、地面に無様に転がされている異界のセルを見下ろす悟空の瞳は、夜を思わせる黒曜石よりも・・・・深淵の闇を相貌にはめ込んだような冷たいものであった・・・
兄ちゃんを殺す為にこの世界の人達を全員殺すって言ってた・・・・そもそもが・・・こいつは兄ちゃんが大事にしている-テラ-を脅した奴でおら達のセルを痛めつけた奴で、もう手加減してやる謂れねえしな・・・ここに来るまでに決めてた通りにこいつを殺しちまうか・・・幸いジュニアとヤムチャはセルジュニアとかいうのを相手にして気が底をつきかけていたのを全部異界のセルにぶつけた事で空になり、悟空とベジータを連れて一時山村に戻った・・・・あの二人が見ていないのだから・・・・・桃小父さんもかつては殺し屋だって教えてくれたし、小父さんの前だったら・・・・・
遡った数分前
孫悟飯よりも遅れて精神と時の部屋から出てきた悟空は、神様とミスターポポに部屋を使わせてもらったお礼を言ってから出撃しようとした。
きちんとお礼を言う良い子の悟空は何時もの様に礼を尽くしに二人の下に向かえば、神様とポポはとても辛そうな顔をして先に行った孫悟飯と同じ事を悟空に教えた。
神としては悟空の耳には入れたくはなかった・・・・孫悟空はラディッツこと孫悟雲と違って真っ直ぐに育っている筋斗雲にも乗れる良い子だ・・・・・普段であれば
だが、一度身内に特にあの兄が絡めばそんな良い子は豹変するが如く兄に手を出した者に即座に牙を剝き食い付きに行く。
相手がだれであれどんな理由があれ斟酌する気もなく躊躇いも無くを食い殺さんとする・・・あの普段の孫悟空からは想像もできない程の殺意を込めた怒りのほむらに身を焦がしてだ・・・・案の定自分達の話を聞き終えた孫悟空は、まるで噴火寸前の火山の様な危険な気配に身を包み、行ってきますと辛うじてぼそりと告げて行ってしまった。
どのみち異界のセルと対峙すれば嫌でも知る事なのだが、今回は陰の気が出ない戦い方を模索していただけに、あれでは超化した時以上の陰の気配が溢れるのではないだろうか神とポポは危惧をして・・・その予感が外れはしなかった
それは怒りに満ち溢れていた桃白白をしても不味いと思う程に孫悟空の気配が異様であった。
憎悪を煮詰めて出来上がった者であると言われれば納得をする
それ程までに悟空の心は怒りで満たされていた
近頃は平和で、父がいて母がいて愛する妻と子とじっちゃん達がいて兄が穏やかに笑っていられる日々であったのに・・・・その平和を踏み躙る輩達が許せなくて・・・・
「・・・・・おめえを殺しても誰も文句なんて言わねえよな?」
戦闘狂カカロットよりもなお狂暴な怒りが、折角アルティメット化をする事で陰の気を出さないようにする作戦が台無しな事この上ない。
だが、悟空の気持ちを分かりすぎる程の分かる桃白白としては落ち着けというのも烏滸がましい気がして、さてこ奴をどう宥めたものかと数瞬だけ悩んだ。
ここで奇妙な弟弟子が先程自分にしたような念話を悟空に送って諭してくれれば万事直ぐに解決できる!
たとえ悟空がどれ程怒り狂っていようが、兄ちゃんの言った事が絶対で素敵な悟空は其れで止まるのだが、異界のセルの陰の気が凄まじいせいか自分との念話を最後に何も言って来なくなってしまったのだ。
ストッパーがいない状況での暴走は不味いぞとさしもの桃白白が危惧した時
「叔父君、その者を私に譲ってはくれまいか?」
異界のセルと同じ声の筈なのに、それ以上の深みと優しさが込められた甘やかな声が悟空の殺意に待ったをかけ
「・・・・やれんのかよセル?」
悟空も兄相手の時まではいかずとも、僅かばかりに殺気に満ちた気配を穏やかな気配に替えて自分の横に降り立ってきた-甥-に問いかける。
甥のセルは初手でこの世界に来たばかりの異界のセルに負けている。
そして今はあの時以上の力を有しており、毒の支配から抜け出したのか自分達から距離を取った異界のセルを見遣りながら問うた悟空の言葉に
「そうですな・・・・勝てないながらも少なくとも相手に力を渡してしまう様な間抜けな事にはならないかと。」
今現在向こうの孫悟飯が対峙しているメタルクウラを早々に倒しつつ頭を冷やしてきてくださいとうセルの言葉に、悟空は一瞬だけ考え桃白白を抱えてメタルクウラの方に向かった。
本当は異界のセルを見た瞬間にあと腐れなく消し炭にしてしまいたかったのだが、ナノウィルス性の毒を持続させておくためにセルの腹を踏み抜いて直に毒を流し込み続けていた桃白白がいたので断念をした。
ウィルス性の毒はセルジュニアとかいうのには有効ではあったのだが、桃白白よりも格上の異界のセルには持続時間はもって数秒なのを、桃白白自身の気と併せて流し込む事で悟空が来るまで辛うじてもたせていたのであり、そのせいで仙豆を食べなければならない程に気を使い果たした桃白白は戦場にいるだけでも危険であり、安全な場所まで連れて行きそっと降ろし
「桃小父さん!絶対に兄ちゃん連れて迎えにくっからな!!!!」
「・・・・・さっさと行ってこい。」
先程の憎悪に凝り固まった瞳とは違う、真っ直ぐな眼差しで明るい声をかける悟空にしょうがない小童だと桃白白は苦笑して見送る。
さっきまで泣いていたカラスがもう笑っているのだから大丈夫だろう・・・・
あいつ等が戻るまで昼寝でもするかと欠伸を一つして横たわる・・・・これしきの事で疲れが来るとは少し自分は老いてしまったのだろうかと、この世界が滅んでも起きなさそうな深い眠りに誘われるながらそんな埒も無い事がちらりと浮かぶ桃白白を他所に、戦いは佳境に突入するのであった・・・・