「だだだだだだだだだだ!!!!」
「遅い!もっと早く!もっと気を練り込んで撃ち続けろ!!
お前の中にある其の無駄に膨大な気を空にするのに日が暮れてしまうではないか!!」
・・・ちくしょうお師匠様め・・・修行1日目にして中々ヘビーな事言ってくれるじゃないか!!・・・方法が合理的で俺の中の気を-空-にする以外の修行にもなるから文句言えん!!
「おりゃああああ!!」
「そうだ!!もっと打ち続けろ!!!」
悟雲ことラディッツが奇妙な縁から師弟関係を結んでから次の日、鶴仙人は自分の流儀でちんたらとした修行をする気はないとラディッツに宣告をした。
「世の中先ずは実力を見て出来る事出来ない事を見極めてから修行に入ると言う悠長な者がいる。」
主に亀とか亀とか亀とかと内心で鶴仙人が名指ししている・・・・ほぼほぼ亀仙人を敵視した物言いではあるがそれは兎も角として
「そもそもお前には力がある事なぞもう分かっている。
お前の場合は力をつける事ではなくその逆だ。
進んで弱体化させる。
その後儂がお前の中の丹田に気を流し込む。
その気が己の中に巡る過程で、己の中の気の流動を感じる事が第一目標だ。」
師弟関係を結んだ後、落ち着いたところで未明前だったのでとりあえず二人は仮眠を取り、起きてから鶴仙人はラディッツの気を如何に体外に放出させるかの手段を考えた。
下手に気を爆発放出させて、自分が喰らっては堪ったものではない。
其れでは遠くに行けばいいではないかという話もあるが、師匠たるもの弟子の気の放出を怖れて逃げるなどというカッコ悪い事は断じてできない!!・・・要は見栄である
しかもそれでは教える側としても芸がない!
自分はその辺の凡百の師どもと違い!亀の様にまだるっこしい事をしない超一流の師である!
故に選んだ方法は、体内の気が無くなる寸前になるまでラディッツはひたすら空に向かって気功弾を放ち、そして墜ちてきた気功弾に向かって相殺させるという荒行が修行一日目にして課せられた。
前日立ち寄った牧場で大量の牛肉とサンドイッチを買い込んでいたラディッツは、お師匠様の分まで調理して朝食の支度を整えて食べながら聞いて、それって何という無茶ぶりな修行だろうと思ったのだが理にかなっているのでいい笑顔で返事した。
自分の中にある気を無くし、師匠の補助で気の辿りを自己学習するというのはラディッツにとっては斬新であった。
惑星ベジータにいた頃は、気が無くなる事はすなわち死に掛けでありそんな事になった日には周りの誰かにメディカルポッドにひっ担がれて入れられて、母を始めとしてフリーザ様や友人や同僚達が心配させるなという説教が待っていた。
要するに、死にかけても目が覚めれば即座に快適な状態に戻してくれるメディカルポッドという存在の性能が良すぎて自然回復する途上の治り方を自覚せずにいたままだったのが気を感じる機会を逃していたという事になる・・・
割と特戦隊の皆さんと死にかけ特訓しても強くなれた自覚が無いのは此処だったのかと考える・・・・いやそれをしているバーダックや他の友人たちは同じ状況でもラディッツと違って割と自分の中の気を感じてコントロールしている・・・・要はラディッツ自身が壊滅的なまでに戦闘才能が無いのか・・・・或いは他の要因があるかは兎も角として、ラディッツは朝食後すぐに修行となれば服が傷むだろうからと、背中に穴が開いてしまった服をこれ以上傷まないように脱いで肌着一つになった。
支度を整えて修行に入り、かれこれ三十分以上気功弾を空に放って相殺をしている。
「て!!・・・・」
「ほれ!気の練り込みが甘ければ相殺できずにダメージが増えるぞ!!
痛いのが嫌であれば!最後の最後まで気力を振り絞れ!!」
「こ・・・んの!!!」
▲▲▲
師弟関係を結んだとは言え、よくもまぁ殺しかけた儂の言う事を素直に聞くもんじゃなぁ
己の罵倒にも近い指示に従って素直に気功弾を撃つ続けるラディッツに、鶴仙人は本気で呆れにも似た感嘆を抱く。
自分なぞ弟子期間の頃は修行を真面目にするのが馬鹿らしくて適当にしていても才が伸びたくちであり、真面目にしている同門達を低く見ていたもんだが
「あぁぁ!!まだまだ!!!!」
力がある筈のラディッツは、それでもきつくなって来ただろうに音を上げずに顔を歪めながらもやめようとはしない。
そちらの方が自分の名声を高める道が近づくので都合が良いのだが・・・胸の底がチリっとするのは・・・・きっと気のせいだろう・・・
▲▲▲
鶴仙人の見立て通り、ラディッツは次第に息をするのも苦しくなり肩で荒い呼吸をし始める。
いつ終わりとも分からないのがまた精神を追い込んでもいる。
一体何時になったら師は自分の中の気が無くなったという判定を下して止めてくれるのかが分からず、心をそちらに乱せば気功弾の相殺が出来ずに己に落ちてくる。
そうなれば
「お前の強くなりたいという覚悟はその程度で音を上げるものじゃったのか!!
なればやめて田舎に引っ込んでおれ小童が!!!」
自分を手放す気が全く無い思惑を見透かした上で発破をかける為の言葉とは分かっていても、鶴仙人の言葉にラディッツはまんまと乗せられる!
自分は強くなって絶対に!弟を守り抜くんだ!!!
「あぁぁぁ!!!!」
その雄叫びはラディッツの中に残る最後の気を振り絞る叫びであった。
これがそこいらの師であったればこうなる前にラディッツを止めている。
如何に力はあれどもまだ子供のラディッツに無理をさせる理由はなく、時間をかけて気を感じさせる方法を模索している。
だがその師達と鶴仙人の考えは決定的に違う。
鶴仙人からすれば武を志し力を欲したのであれば歳も性別も関係なく、鉄は熱いうちに打てと宣う。
力があり、それを更に増大させたいと言ったのはラディッツ自身であり、苦しい道を己で選んだからにはラディッツが苦しもうがのたうち回ろうが、どのような手段を使う事をするのが鶴仙人であるのだから。
だが、ラディッツにとっては其れこそが必要であった。
ラディッツの周りは極悪人だらけであるが、表面上であろうが本当の気持ちであろうが兎に角として、フリーザ軍に入ってからのラディッツは真綿にくるまれた様に守られて生きてきた。
唯一本当に殺されかけたのは覚えていないがナッパというサイヤ人に喧嘩を吹っかけられ買ってしまって殺されかけた・・・らしいが覚えていない。
それを除いての死に掛けは、特戦隊の皆さんとの特訓で力加減を間違えられて意識が吹っ飛んでついで死にかけたに過ぎない。
しかし今この修行で感じている苦しさは自らの力で引き起こしている事。
己の意思で、必ず成し遂げると言う決意は師の発破にも助けられ心を弱める事無く最後まで全うできるとラディッツに感じさせる。
もしも優しさから辛そうな自分を止める為にもう十分だと言われでもしたら、苦しい想いやその過程が無駄にされた気がして、自分の殻を破れる気持ちが遠のいたと感じたかもしれない。
だが、目の前にいる鶴仙人のお師匠様は全うしろと追い立ててくれている!
決して諦めずに放り捨てるなと!!
だから良い!!!それが今の自分にとって最高の師匠はこの人だ!!!
「だぁりゃぁあああああ!!!」
苦しい中で体の中に残っていた気も酸素すら吐き出さんと叫びあげて放った最後の一撃は・・・・目がちかちかしているのか黒い気功弾に見えた・・・
「は・・・はぁ・・・・・」
もう空っぽだ・・・・
最後に落ちてきた気功弾と己が放った気功弾が相殺したのを見つめながら、ラディッツの体が後ろに倒れた。
これは倒れたら気の防御なくて痛いやつだ・・・・痛いのは久しぶりだと、埒も無い事を考えていたラディッツの体は、意外にも鶴仙人によって抱き留められていた。
「あ・・・ぁ?」
「喋るな、予定通り儂の気をお前の丹田の中に流し込む。」
ゆっくりと流し込むからきちんと感じろとどこかぶっきらぼうに言う鶴仙人に、ラディッツは薄っすらと笑う。
互いに思惑だらけであろうとも、この人は今はきちんと自分のお師匠様でいようとしてくれているのだと思うとそれが何故か嬉しくて・・・・可笑しくて・・・
ラディッツのその想いを察したのか、それとも過酷な修行中にもかかわらずへにゃりとした締まりのない能天気な笑みを浮かべる-馬鹿弟子-に心底呆れたのか、鶴仙人は忌々しげに舌打ちをしながらラディッツの肌着の中に手を潜り込ませ丹田の上に掌を置き、ゆっくりとラディッツの中に気を流し込む。
あぁ・・・・温かい・・・・
じんわりとする温もりが、自分の中に沁み込むように入りこみそして体の中を巡っていく・・・・自分とは違う気だと言うのが感じられる。
気功弾を放ち続ける事で分かった事がある。
自分の気は何と言うか-重み-が無いのだ。
膨大にある空気の様なものであり、あるのが当たり前で己にきちんと備わっていると実感させてくれるには重さが全くない。
然るに師が流し込んでくれている気には確かに重みが感じられる。
何故だろう?
今のラディッツには気の密度が違うという事は分からない・・・・分らないが確信がある。
その違いが分かればきっと、自分はもっと強くなって守りたい者を守れる者になれるだろうという確信が・・・
ラディッツのその想いに応える様に、鶴仙人の気が流し込まれている丹田の中の-ナニカ-が壊れ、ゆるりとラディッツ自身の気を放出させていくのを、ラディッツ自身とそして抱き留めた後は地面に降ろして丹田に掌を当てている鶴仙人も其の事に気が付く。
▲▲▲
あり得ん・・・これほどの気の回復が短時間とも言えない刹那の間に起こる事なぞあり得ん!!
自分の掌を押し返そうとする程に溢れるラディッツの気の回復は異常であると鶴仙人は戦慄をした。
強いのは分かっていた・・・そしてその強さを具体的に数値でも教えられた。
昨日のどどん波を受けて、あれを最大にして撃ったとしても儂の気の数値は二百はいかない中、小僧の現在の戦闘力数値とやらは五千弱であると。
それを聞いた時はぴんとは来なかった。数値だ何だと言われても、小僧から感じている気は怖れを感じるには、当人が思う様に軽いから。
しかし今感じている馬鹿弟子の気はぐんぐんと増幅され己の流した気を道案内として駆け巡っていく。
自分の見積もった気の流れが全身に行くのはゆっくりと流す事で感じさせるために十分ないし五分以上は見積もっていたのが・・・・これは失敗だろうかと鶴仙人は溜息をつく。
気が増幅しようとも、自分が狙った効果が現れなければまた先程のやり直しをさせるかと算段を付けたが
「お・・・師匠様・・・・体が温かい・・・・それに・・・・何かが俺の中から出て来てる。」
「ほう?・・・どんなもんか分かるか?」
「えっと・・・お師匠様のとは違う・・・砂と石みたいに・・・・えっと・・同じ素材から出来ているのに全く違うもので・・・」
うまく言葉に出来ない様を見ると、世慣れているように見えてもこいつは矢張りガキなのだとどこかほっとした。
気を大量に有し、見た目に反して大人と同じ思考をして何もかもをそつなくこなすような得体の知れない化け物よりもその方がずっといい。
それに馬鹿は嫌いだが、素直に自分の言葉に従う馬鹿弟子はマシである。
「ふん・・・今日一日でそこまで分からば愚鈍ではなさそうだな。」
「・・・はは・・・愚鈍は酷いな・・・」
「・・・・黙って寝ろ、起きたらまた同じ事をしろ。今度は補助なしで自然回復しながら気を感じることが出来れば愚鈍そうからトロそうな弟子という認識位にはしてやるわい。」
「本当に・・・・酷い・・・お師匠様だ・・・」
俺の師匠はと、呟いて深く眠る馬鹿弟子にいい知れない何かを鶴仙人は感じた。
それを素直に認めるには鶴仙人という男は余りにも曲がりくねった道を歩きすぎた。
何かを感じているとしたら利用しがいのありそうな見込みのある拾い物だったと心の中で毒づく程に。
この小僧は自分をまるで本当は良い人の様に仕立て上げようとしているようだが、馬鹿馬鹿しい限りである。
そんな事よりも起きた馬鹿弟子を更に扱く算段を付ける。
しかし気がかりな事がいくつかできた。
一つは先程戦慄せしめた馬鹿弟子の異常な気の回復力。
あれがあればこそ直ぐに起きると算段を付けられたが、まるで丹田をせき止める何かが壊れて本来の持ち量の気が溢れたような感じがした。
悪党に堕ちても鶴仙人が超一流の達人であることに変わりはなく、特に気を操る造形は人一倍であり、それをしてラディッツと-のちの弟子達-も天高く飛翔せしめる事となるほどであり、その鶴仙人からすればラディッツの体には何か秘密があると見てとった。
もう一度丹田の上に直に掌を置いてみるが、尽きる事無く流れ出る弟子の気の量といい、先程最後に放った-黒い気功弾-は何であったのか・・・・
最初放った気功弾は少し金色がかった自分のどどん波と同じ色合いであったが最後のあれは・・・・禍々しい気配まではなっていたと思うのは気のせいだろうか?
いずれにしても・・・
「奇妙な弟子を取ったもんじゃ儂も・・・」
修行を始めて直ぐに師匠の前でいつまでもだらしなく安らいだ顔をして寝虚仮ている馬鹿弟子を、起きたら絶対に扱くと決めながらも呟いた言葉はきっと気紛れ・・・・その筈だと、鶴仙人は頭を一つ振った
これはあくまでも己の名声を高める為の道具だと、強く己に言い聞かせるように