「あの馬鹿息子!!!いったいどこほっつきまわってんだよ畜生が!!!」
「バーダック・・・・そうね、いつもだったらぶすっとした顔しても夕飯前には帰ってきてるはずよね・・・」
息子ラディッツの帰りが遅いと、バーダックは家の中を忙しくなく歩き周りながら怒鳴ってもうかれこれ三十分は経っているのを、母ギネもラディッツに何かあったのではと心配し始める。
息子の戦闘力を伸ばして飛ばし子から外してもらうべく、バーダックが仕事(他星にカチコミボコって獲得)をして帰ってきてから早速ラディッツを鍛えて良いところまでいったのだがバーダックからすればまだまだ甘い事この上なく、いっそ自分の腕を噛みちぎってくれれば今日はギネにご馳走を作ってもらい、息子が一人前の戦士の境地に入った事を喜んだものをという気持ちも入って苛つきが倍増している。
腕を噛み千切るといってもラディッツでは肉片くらいが精々なので、自然に治るの待つか、面倒なら任務でできたとか適当言ってメディカルポットにでも入れば良いので問題無かったのにと。
ギネの方はその事は詰まらん事だとバーダックが話しておらず、何時もの様にぶちのめしてメニューを与えて置いて来たという事しか知らない。
だがそれは-何時もの事-なのでギネはそこは全く・・・一ミリも心配してない・・・・ラディッツが聞けば滂沱の涙を流すだろうが、今後戦闘民族サイヤ人として生きて行くには戦闘力がどれだけあってもいい。
それこそラディッツの戦闘力が十万も行ってくれるためならばこの命を使い潰してもいい程だ。
力があればサイヤ人としては無論の事、フリーザ軍からも大切に使ってもらえる。
要は使い潰される事が減るのだから、サイヤ人らしからぬ愛情に溢れているギネはラディッツが強くなるためだと夫の特訓に反対したことは一度もない。
だがこれは違う、ラディッツは特訓メニューをきちんとこなして渋々とした顔でバーダックに終わったと告げて、ご飯は倍食べて不貞腐れた様に寝ては次の日にはケロッとしているメンタル最強なところがある。
なのに日が落ちて大分経っても帰ってこないのはおかしい。
別に人攫いは心配していない。
戦闘民族サイヤ人は、バトルジャンキー気質で狡猾なところがありずる賢いところが・・八割占めているが、身内内の人攫いという話が出たことが無い。
だが、ラディッツの特訓を見て-その気-になった大人のサイヤ人に殺された可能性がある。
スカウターも万能ではなく、周囲の者の戦闘力を図れるが個人特定までは出来ず、通信すればいいだろうと言われるだろうが、生憎とラディッツにはまだスカウターを持たせていない。
幼少の子供がいること自体が稀であり、子供用のスカウターは希少でありそれもラディッツよりもうんと上の、分りやすく言えばベジータ王子やその周りにいる上級戦士候補の子供達から配られるものであり、ラディッツに渡る予定なのはさらに数か月先であるという間の悪さであった。
「・・・・ギネ・・・・ちょっと出てくる・・」
待つ事にしびれを切らしたバーダックがラディッツを探しに行こうとする。
元来短気な男にしては日が落ちて帰らぬ息子の身を案じ始めてから三十分も待ったのは奇跡に近く、だがここらが我慢の限界であり探しに行こうとするのをギネも付いていこうとする。
「バーダック!あたしも行くよ!!」
何となれば愛しい男の子であり、可愛い我が子の身を案じているギネの心情はもっともだが、バーダックがギネにだけ発揮する柔らかさでギネの両肩に手を置いて押し留め穏やかに声をかける。
「あの馬鹿がもしかしたら特訓後に俺に会うのを嫌がって帰る気が起きるのが遅くなっただけかもしれねぇ。
ちょっとしたら帰ってくるかもしれないから入れ違いにならないようにお前は残れ。」
戦闘馬鹿ではあるがバーダックは愚鈍とは程遠い。
そうでなければ-死にかけてはレベルアップ-方法で生き延びて下級戦士ながらも戦闘力八千までいけるわけがない。
愚鈍であればどこかでおっちんでる。
故に、息子が自分に反発しているのを知っているのはどれほどの愚か者であっても見ればわかるだろうが、その心の奥底ではギネに向けている程ではないにしろ、自分に対しても愛情という、自分からすれば戦闘民族サイヤ人には似つかわしくない甘ったるい病気を持っている事を。
毎回自分をズタボロにする者相手に、ラディッツはおかしい・・・・おかしいが嫌ではない。
強いて言えば落ち着かないのだ。
甘ったるい病気は母子間で感染するものなのだろうかと可笑しなことを考えなければ、それこそ甘ったるくなりそうなほどに。
だからこそ、帰ってこないという選択肢をラディッツがする筈が無いというのがバーダックの考えであり、もしかしたら渋々とした面をして帰ってくるかもしれないとギネを留守番にさせて行こうとしているそんな時
「親父~母さん、帰った・・・・・ご免・・・・・お取込み中だった・・・・・」
両親揃って心配して探しに行こうとした息子がひょっこりと帰って来た・・・・何やら誤解して扉を閉めた!!!
見つめ合う夫婦見たらそらしょうがない、とはなるわけが無い。
「馬鹿野郎!!!!」
・・・・・当然色んな事に切れたバーダックが速攻で閉められた扉を蹴りやぶって・・・ギネが様々な意味で悲鳴を上げるのを横目に扉が壊れたくらいで驚く息子の襟首をふんずかまえて一言
「お前何してやがった・・・」
マジギレ起こした地獄からの使者の様な低音ヴォイスに、御年六歳のラディッツが涙目になったのはきっと悪くない。
「まぁまぁそこまでこの子を叱らんでやってくれんか?」
そんな地獄大使に執り成しをした勇者(?)がいた。
仲間内でもマジギレ起こしたバーダックに声を掛けられるものは今まではギネしかおらず、其のギネの声とは似ても似つかないだみ声だった。
「あん!・・・・・誰だよあんた・・・・・」
「ちょ!親父!!年配の人は敬う・・・」
「うるせぇぞクソガキ!!今俺は取り込んでんだ!!!用があんなら出直せ!」
どう見ても年配の初老にも敬意を持たない親父に息子は心の中で滂沱の涙を流すが、面罵されている当の初老の男はほっほと笑って余裕である。
なにせ自分の周りには目の前の男よりも強い者なぞざらにおり、それこそバーダックなぞ下から数えたほうが早いくらいの強者集団の中に長年身を置き、その集団の切り盛りをしている長老格にも等しい。
そんな初老からすればバーダックの面罵なぞへの河童であり、脅威でも何でもないのでさっさとラディッツを擁護する。
「すまんな父御、そして後ろの母御。儂がこの子を借りたせいでここまで遅くなってしまったんじゃよ。
じゃからこの子をそこまで叱らんでやってくれんかの?」
飄々としながらも、目にはここまでにしておけよという脅しを含めた・・・脅ししかない色を乗せた瞳に睨まれたバーダックも、メンチ切りに負けるかと怒気と殺気を瞳に乗せて嗤って返す。
「爺さんがどんな奴かは知らんが、こいつに何させたらこんなクッソ遅い時間になるってんだよ?
こいつの事酔狂で庇おうってんならお門違いだぜ?」
バーダックに首筋もたれて宙ぶらりんとなっているその頭上で、バチバチと互いの視線だけで火花散って灯りになるんじゃね?ってくらいにメンチ切りしていると、バーダックの頭に衝撃が走った!
「あんたいい加減にしな!!ラディッツ帰ってきて送ってくれた人にも失礼ってもんだろう!!」
愛情たっぷりだが、そこは戦闘民族の女らしく芯の強さもきちんとあるギネにしばかれたバーダックは、苦虫を嚙み潰したような顔をしながらも渋々と目の前の男を家の中に入れる。
嘘つけないようにギッタンギッタンにボコって白状させるために・・・・・誰をだろう
だが、事実なぞと言うものは小説よりも奇なりなのがお約束であり、初老の男の口から爆弾発言が飛び出て、バーダックとギネは、我が子の戦闘力が千だと知った時と同じく絶句した。
「お前さん達の息子ラディッツは、栄えあるフリーザ軍の中で儂の個人秘書として雇う事にした。」
「「・・・・・・は?」」
「その事はサイヤ人の幼年組を扱る部署にも通達をして承知しておる。」
「「・・・・・・」」
「無論給与も発生するが儂個人の秘書という事で微々たるもんしか出してやらんが、戦場で死ぬという危機とは無縁じゃ。
幸いこの子は・・・・サイヤ人らしからぬようだから戦場でなくとも無問題そうじゃからな。
このまま儂の側におれば儂の部署で正式にフリーザ軍の中で-文官-として働ける。」
「「・・・・・・・」」
初老の男、名をナナバといい、バーダックの思惑満載の家にどうぞをあっさりと受け入れ扉の壊れてしまった家の中に入って全員、それこそ騒ぎの当事者(?)ラディッツも席に着くと同時に、フリーザ軍の身分証明書(高級官僚級)を見せて怒れるバーダックのマウントを瞬時に取った。
バーダックは生き残る事にかけて超一級品であり、誰に喧嘩を売ったら本気で不味い事になるかを知る為に、サイヤ人内部は当然として、フリーザ軍の身分証明書も必死になって覚えた経緯がある。
そんなバーダックがどれほど命知らずで売っていたとしても、それはサイヤ人という身内に対してか敵対者たちに向けられるものであり、フリーザ軍、それも高級官僚に逆らうのは-まだ-色々と面倒なのでバーダックは天井を見上げて目を閉じ、深く呼吸をして気を落ち着かせて話を促す。
そんな父の姿を、もう怒るの終わりなのかと息子ラディッツは目を点にして驚く。
母が取りなさなければ大概は不機嫌なままの父が、初老の男ナナバの身分を知った途端に落ち着いた事が信じられない。
もっと言えば、お前がどこのどいつなんて知ったこっちゃねぇ!!そんな事より何してた!!!とか言うと思っていたのだが、よく見れば母もナナバの身分証明書に驚いてそれどころではないらしい・・・フリーザ軍って確かサイヤ人の仕事全般を割り振ることしてるって母さん言ってたから・・・サイヤ人って子会社で、フリーザ軍ってのが親会社で・・・軍ってつくからには俺達サイヤ人は傭兵みたいなことしてんだな。
そうなると親父が強く成れって五月蠅く言うのは将来自分もどこかの星のドンパチから依頼されて、フリーザ軍が受ければ俺も行く事になるのかと・・・・-本当の事-を知る者達からすればこいつの脳みそ御花畑過ぎると怒鳴られること間違いなし。
だが当の本人、お花畑野郎ことラディッツはそんなの知ったこっちゃねぇ。
親父が傭兵家業なのはまぁ別にいい。
地球にだって内戦から国同士のドンパチにも普通に金で働く傭兵さんは存在している。
そういうのがいるのを知っているので、悲しいけど金ないと生きてけないからしゃあないと、フリーザ軍と自分の父達がまさか皆殺しが大半の惑星地上げをしているのを知らないのでその程度の認識で終わっている・・・・・知らないって幸せの見本野郎である。
そんなラディッツの想いはただ一つ
軍内部には戦う武官だけなわけがない!全員脳筋とは言わんが、仕事を割り振り、内政をしっかりとする文官もいなければ潰れてしまうのは軍だろうが国だろうがどこも同じ!
ならば
「親父!母さん!!おれ武官じゃなくて文官で飯食ってくよ!!!」
そして親父の給料上げてもらう様にお願いできる立場になろうとは内緒であるが、いきなりのラディッツの宣言に、様々な事でポカンとしてしまった両親の顔は顎外れないかとナナバが本気で心配するほどであったが、ラディッツの心の中はうっきうきだ。
いやぁ~牛乳や美味しい飲み物の様な人達の字がばっちいせいで、俺に運が巡って来るって最高だぜ。
おまけに-特戦隊-のお約束のポージングもちゃんと持ってたし!また見せてもらえる約束も取り付けて人生最高だぜ!!