エイジ750 夕暮れ前のパパイヤ島・・・
「そうだ・・・・少しずつ・・・ほら・・・」
満月を見て大猿化して大暴れをしていた先程の悟空が嘘のように青年の掌に触れて大人しくなっている。
ブルマがお兄ちゃんと呼んだ青年を、クリリンは食い入るように見続ける。
昼食時、自分を応援する為に来てくれた水色の髪のブルマという人は、悟空とそのお兄さんと自分と同じように兄妹の関係であると教えてくれた・・・では!あの男の人が悟空のお兄さん!!
・・・・あんなに細い男の人見た事無い・・・
肩も腰も首筋だってどこもかしこも細くて・・・なのに、大猿の悟空の掌に躊躇いも無く合わせて優しく微笑んでいる・・・
不思議な静寂が会場を包み込む
光の壁は展開し空で一体化すると透明になり、何もないように見える程であったが、機械の音は変わらずしているので何かの装置が作動していることを示している・・・本来は雑音で紛れる程のかすかな音が聞こえる程に、シンとする中青年は大猿に微笑んで・・そして、青年の言う通り大猿はどんどんと縮みだし、
「「「悟空!!!」」」」
兄と手を合わせた小さな悟空にまで戻った。
長身となった兄の背の半分歩かないか、頼りなく見える子供が先程の大猿であったとは、見ていた者達も自分の目を疑う。
そんな中、
「其方・・・誰じゃ?」
・・・・・はぃ?
あれ?武天老師様って髪の毛生えてたっけと見たラディッツは首を傾げる。
声の主を見るために弟と掌を合わせたまま振り向いてやれば、自分の事を何故か問いただしてくる武天老師様の方を見て、なんで自分のことを知らない奴みたいに言うんだろうと益々首を傾げるのであった。
▲▲▲
遡った十分前程
「あぁ・・・・もう少しで書類仕事が終わる・・・・明日は丸一日爆睡しよう、そうしよう・・・・」
割と南の街にあるサイヤンℱの支部で書類仕事を片付けているラディッツは、肩をバキバキ音をたてながら回してぼやく。
支部が出来て治安が良くなるのは良い事なのだが、圧倒的に文官が足らねぇのである。
降ってわいて会計士が現れる訳も無く、とは言えドンブリ勘定するわけにもいかんので、自分も手伝ってい訳である・・・・最後に山村に帰ったのっていつだった蹴かなとぼんやりと思っているところに
ドン!!!
物凄く覚えのある気配が、狂暴化しながら気を肥大化させている・・・・まさか!!!
「天!!!外に満月はかかっているか!!!」
「はい?兄者??・・・あぁ・・確かに・・・兄者どちらに!!???」
物凄く嫌な予感を覚えたラディッツは立ち上がりながら手伝いでついて来てくれた天津飯に、自分で確かめる訳にはいかないので夕暮れ間近の空を見てもらえば、満月が上り始めてるという!!!
爺様も俺も、武天老師様に伝え忘れたか・・・俺の馬鹿野郎が!!!!!
天津飯の制止を聞かず、すぐさま窓から宙に飛んだラディッツは己のうかつさを呪う・・・自分達サイヤ人の最大の特徴を、きちんと話さなかった己の不始末さに怒りを沸かしながら。
だが・・・幸いにして-例の物-をホイポイカプセルに入れて持っていたのが功を奏した・・・・実を言えば、ブルマに二月前に渡されたのをそのまま腰のポーチに入れていたのが幸いしていただけだが、今回自分のずぼらさが僥倖してくれた!
間に合ってくれ!!!!
大切な弟が、訳の分からない内に他者を傷つけてしまうのだけは阻止せねば!!
幸いついた時には死人が出た気配はない。
伊達に侵略組織・フリーザ軍に籍を置いておらず、死の匂いや気配は文官であっても感じ取る時がある。
それは出撃させた部隊を出迎える時、死人が出る事も幾度もあったのだから
その気配がない事に感謝をしながら、大猿化した悟空の背後に燦然と輝き上っている月に向かってそこそこの(・・・・ラディッツ的にです)気功弾がうたれた事で、これでエネルギー確保が出来たとラディッツは六つの装置の内五つに気功弾のエネルギーを吸わせ、会場全体に配置するように五方向に投げつけ、無事に地面に突き刺さった音を聞きながら六つ目に自分のエネルギーを吸わせ-ムーンシールド-を発動させる。
半年前の満月の時に大猿化するかどうかカプセルコーポレーションの敷地内で自分で実験をしてもらった結果ではあるが、ムーンシールドが展開すれば、一分以内にはカカロットは戻る筈だと安堵しながら自分に向けて伸ばされる大猿化した弟の掌に自分の掌を合わせてやる。
可愛いカカロットの手を弾くなぞ論外である!
カカロット・・・・カカロット・・・・どこにいる・・・・兄ちゃんが来たぞ?
かつて大猿化して埋もれてしまった自分の意識を、ティラノや他の大勢の動物達が懸命に自分を慰めてくれた事で己の意識を浮上させることが出来た。
自分も、同じように優しく温かい気を送りながら弟に呼びかければ
・・・にい・・・ちゃ?・・・おら・・・・どうして・・
応えてくれた
「大丈夫だ、じきに戻れるから・・・」
「うん・・・おら怖いよ・・・・ここ・・・嫌・・・だ・・」
「もうじき・・・ほら・・・」
そうして弟は元に戻れたら・・・・武天老師様?
▲▲▲
-悟雲、聞こえるか悟雲よ-
-あ!!はい・・・念話でどうされましたか武天老師様・・-
-お主が戸惑うのも分かる、しかし今は儂に聞かれた事だけを答えてくれい-
-・・・分りました・・・理由は後程お聞かせを・・-
恐らく悟雲を騙す事なぞ無理だと悟った亀仙人は、念話で悟雲に茶番に付き合ってもらう。
今は兎に角
「もう一度聞くぞ、お主この悟空と縁あるものか?」
「はい・・俺は孫悟空の兄で孫悟雲と申します。」
おおおおぉぉぉぉ!!!
「聞いたか!!」
「あの人孫悟雲さんだって!!!!」
「嘘だろう!!??ここ最近テレビにも出なかったのは背が伸びない奇病にかかって引退したって話だったぞ!!??」
「何言ってんのよ!背が伸びなくっても築き上げた富でサイヤンℱのスポンサーになったって大体的に発表されたじゃないの!!」
「しかし・・・細いな・・」
「あれが拳法の達人で鶴仙流の第一実力者孫悟雲さんなのか?」
「あのな!!さっきから何見てるんだよお前達!!あの大猿の大きな掌をいとも簡単に受け止めたのを見た時!俺はピンと来たね!!この人は絶対にただもんじゃねぇって!!」
大猿化した悟空の事はもう誰も口にせず、突如として現れた男の正体が、世間から姿を消して久しい孫悟雲であった事ばかりが会場内に満たされていく。
そう、亀仙人はこれを狙ったのだ。
孫悟雲の映画の活躍・東の都の犯罪組織の壊滅への尽力など、世間では今をもって人気がある孫悟雲が、弟を案じて飛び込み、見事この場を解決した事の方に関心が移ると考えて。
案の定プロ実況者も孫悟雲の時ならぬ出現に唖然としているのを、
「其方が悟空の兄である事は分かったが、今は試合の最中・・・・で良いのか審判よ。」
「は!!!はい!!!ジャッキー選手も孫悟空選手もどちらも場外には出ておらず試合は続行可能とみなすが・・・その・・・悟空選手・・・大丈夫ですか?」
ほへ?
プロ実況者も亀仙人からの言葉でまだ試合中であった事を思い出し、現状確認を素早く行いまだ大丈夫だと言ったのだが、悟空の様子を気にかけた事に全員、それこそ兄も弟の顔を見れば・・・
「う・・・う・・・わぁぁぁぁぁんん!!!」
「悟空!!???」
「こりゃどうした悟空!!!試合はまだ続けられるんじゃぞ?」
「ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!!」
謝りながら大泣きする悟空を、ラディッツは慌てふためきながら悟空を抱き上げしっかりと包み込む。
こんなに泣いた弟を見るのは、弟が生まれた数日のあの時しか見た事がない。
痛い目に遭っても涙目で終わり、怖い事が起ころうとも泣かなかったカカロットがどうした事だとおろつくのを、亀仙人は優しく悟空に語り掛ける。
「お主は満月を見た事で大猿化してしもうたがルールには反してはおらん・・・お主もなりたくて大猿になったわけではないのだろう?」
悟空が泣きながら謝るという事はその辺ではなかろうかという推測をたてた亀仙人は、決して悟空が悪い訳ではないのだと教え諭そうとする。
大猿になる直前まで、いやだと、駄目だと言っていた己の大猿化をとどめようとしたのだから・・しかし悟空は自分は悪い子だと言って聞かなかった。
それは
「おら!!兄ちゃんと指切りしたんだ・・・満月見ねぇって!!!大猿になんねぇって・・・兄ちゃんと約束したのに・・・・なっちまって・・・・みんなに酷ぇ事しちまって・・・おら・・・おら・・・悪い子になっちまったよ・・・・」
大好きな兄との約束を破り、そして周りの人達に危害を加えた事が、悟空は何よりも自分を許せなかくて・・・
泣く弟を、何と言えばいいのか分からずにラディッツは本気で狼狽えた・・・死人も出ておらず、万事解決したとラディッツ的には思えども、弟自身がそれを責めているのが辛い。
「悟空よ、お主は良い子じゃ。」
そんな悟空に、亀仙人は断言して見せた。
「お主は大猿となって言葉が出なくなる寸前まで、大猿になる事を拒み続けていたではないか。」
「だって・・・なりたくなくて・・」
「そうじゃ、約束も大切じゃが、長い人生の中やむを得ずに破ってしまう時がどうしてもあってしまう。
其の時、それは仕方がないではないかと己の行動を顧みないものが悪い子なのじゃ。」
然るに自分から悪い事が分かり、きちんと謝れる悟空は良い子じゃと、亀仙人はゆるぎない言葉を送り続け・・・
「俺も聞いたぞ坊主!!あんときお前は嫌だって言ってたんだぞ!!」
「こんなすんげぇ大会で観客にけが人が出ることは時々あるんだ!!!」
「私達はそれを承知で見に来てんのよ!!」
そう、これは武道大会であり、時折り大技で選手が吹き飛び巻き添えを食って観客も怪我をする事は時折あり、ギランの様に獣人族の大技が外れて惨事になるたびに、天下一武道会の在り様と開催を危ぶむ声が何度かあるたびに、怪我をした者もそれを承知で見に来たんだと言い放って今日まで来たのだ!
「おら・・・・悪ぃ子じゃない?」
おずおずと兄の腕の中から観客を見ながら声をかける悟空に
「試合最後まで頑張れよ坊主!!!」
「ここまで来たらお爺ちゃんに勝っちゃいなさいよ!!」
「おら・・・うん!!!おら頑張る!!!最後まで頑張る!!!!」
インタヴューをされていたのが功を奏し、悟空の天真爛漫さが観客達に受け入れられた。
そしてこの場には孫悟雲がいる
先程のように大猿の掌をいとも容易く受け止めて見せた孫悟雲の存在が、この場全員の安心材料となったのだ。
試合続行はこれで何とかなったが・・・・
「えっと・・・弟の服はどうすれば?」
まさか素っ裸で戦わせる訳にもいかないラディッツは、服どうしようかと悩むが助けが入った。
「悟空のお兄さん!ぼくは自分の道着を予備で持っているので今着ているのを悟空に着てもらいます!!」
「クリリン!!!」
「そうか・・・では頼もう。」
待機室の入口まで裸の悟空を袖で隠し、入口で降ろしても暫くは衝立の代わりになるブラコン兄に一言来た。
「お主のぅ・・・・小童の裸なぞ誰も気にせやせんよ?」
ドオ!!!!
物凄く呆れたジャッキー・チュンな亀仙人の言葉に、会場は不安から一気に緊張が解れた事で笑いの渦が起きた。
しかしだ!!
「俺が気にします!!!」
・・・笑う観客の方に振り返りながらきりっと言い切るラディッツはブラコン過ぎる・・・
▲▲▲
「お前のお兄さん孫悟雲さんだったんだな。」
「うん!兄ちゃん強いけれどもおらまだまだだな・・・クリリン・・どっか痛くしなかったか?ヤムチャや姉ちゃん達にも怪我無かったか?」
「大丈夫だ悟空、ブルマ達の様子を見てきたが、幸い怪我をした者はいない・・・ブルマはお前の大猿化の事を知ってながら満月の日の事を忘れて立って落ち込んでたがな。」
服を着替えながらクリリンとヤムチャはまだほんの少しだけしょんぼりしている悟空を何とか元気づけられないかと、日頃から大好きだと公言している兄の話を振っても芳しくなく、ヤムチャも俺も何か気の利いた事が言えればと思ったが、クリリンは腹を括った!
バン!!!
「てえ!!!痛ぇぞクリリン!!!」
不意に背中を掌で叩かれた悟空は飛びあがり、打ったクリリンを見れば
「よし!元気出たな悟空。」
「・・・クリリン・・」
「俺は何にも考えずに動く馬鹿は嫌いだ。そうやって物事をきちんと反省する悟空が大好きだ。」
「クリリン・・・」
「でもな、観客の人達に最後まで頑張るって約束したのに破る悟空は嫌いだ。」
「あ・・・うん!!おら頑張ってくる!!!」
「その意気だ悟空!!悟雲さんとブルマもプーアルとウーロンもお前を応援してるんだ!!!最後までガツンとがんばれ!!!」
「うん!!!あんがとなクリリン!ヤムチャ!!!」
着替え終わり立ち上った悟空は右手の拳を無言で突き出し、察したクリリンとヤムチャも拳を突き出し無言で突き合う。
悟空が勝つ事を願って
▲▲▲
「えぇ、俺達の一族は昔から満月を見ると大猿化してしまうので避けてきたんです。」
その頃弟大好きなお兄ちゃんは、なぜあんな大惨事になったのかを丁寧に説明し、
「しかし半年前に月から出ている光の力を膜のようなもので遮り大猿化しなくて済むかの実験に俺自身が被験体となって、大猿化せずに実験は成功しました。
これに携わってくれたカプセルコーポレーションの皆様とドクターゲロ氏に返せぬ恩が出来ました。」
「ふむ・・・お主が儂のかめはめ波を避けんかったのはその装置とやらのエネルギーにでもしたのか?」
「そうです、ドクターゲロ氏の研究の一つに、気と呼ばれるエネルギーを吸収して機械を動かそうとする物があるので、月の力を数値と波長として捉えてくれて遮る機械をカプセルコーポレーションの方達が作り上げてくれたのですが、それにはまだまだ膨大なエネルギーがいるので、ドクターゲロ氏が電力で動かそうとすれば途轍もない大きさになると言われまして、俺の中にある気をエネルギーにしてみたところ、持ち運べる程の小型化に成功したのです。」
「そうなんだ・・・ブルマかその装置を作ったのって?」
ラディッツと亀仙人の遣り取りをしながらの説明に、そんな凄い装置作ったのはブルマかとウーロンが聞けば
「残念ながら私一人の手には負えなかったのよ・・・大半の設計はゲロお爺ちゃんなのよ。」
私もまだまだねというブルマに、それでも装置作りに携わってるだけでも凄くねぇとウーロンとプーアルが顔を見合せた時
「あぁ!!悟空が出てきたわ!!!」
「あ!!頑張れ悟空!!!」
「頑張ってください!!!!!」
着替え終わり左右にクリリンとヤムチャについてきてもらって登場した悟空に、ブルマ達を始め多くの者達が大歓声を送る
天下一武道会決勝戦、最期の幕が開いた
ドラゴンボールの原作のこの辺りの人達は、わりとおおらかで懐の深いお祭り好きだとしんじてます、、