「さぁ!ヤムチャ選手と、先程悟空選手が宣言した-兄弟同然-のクリリン選手を伴って!悟空選手が再登場しました!!!!」
ピクリ・・・
うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
プロ実況者の粋な登場紹介により、一人の男の耳がピクリと動いて観客は大盛り上がり!!
「頑張れちびっこ!!!」
「負けるなよじいさん!!!」
「どっちも頑張れ!!!」
これ程盛り上がった大会はあるだろうか!!いや!無い!!
数々のドラマを生んできた天下一武道会ではあるが!これほどまでに努力・友情・尊敬・慈愛という美しいドラマを一気に生み出した大会はこれが初であるとプロ実況者は最後の大勝負を盛り上げるべく何でもする決意をしたのだ!!・・・ちなみにそのせいでクリリンは茹でタコ其の四になったのだ・・・・あはれあはれ・・・
俺も悟空大好きだが!!それをネタにしないでほしいと抗議の一つもしたくなるが!悟空大好きだから我慢する!!
・・・ポンポンと自分の背中を優しく叩いてくれるヤムチャさんの優しさが身に染みるクリリンの身は・・・ふわりと宙に浮いた!
「うわぁ!!なに・・・・孫悟雲さん!!????」
「あぁ、驚かせてしまってすまない。悟空に服を貸してくれて兄としても礼を言わせてもらいたくてね。」
「あわわわ・・・あの・・そんな大したことしてませんよぼくは!!!」
いきなり憧れていた孫悟雲さんに目線を合わせる程の位置まで抱き上げられたクリリンは顔が茹でタコ其の・・・いくつまでなるんだろう・・・
しかし、同じ武道家とは言えないまでも修行をみっちりとして来たクリリンとしては、矢張り孫悟雲ことラディッツの体の細さに驚いてしまった。
自分を持ち上げている腕にもあまり筋肉の硬さが感じられずに、顔の線も瞳も柔らかくてとても先程のように大猿化した悟空の掌を止められる程の力があるとは思えないくらい、それ程までにラディッツの体は柔らかかった・・・・なんて真面目は考察は直ぐにお空の彼方に飛んでった・・・・なぜなら、
「さっき実況者さんが言った事は本当か悟空?」
へ?
「何の事だ兄ちゃん?」
「このクリリン君の事を、お前が兄弟同然だと思ってるって事だ。」
「あぁ!!そ!!!それは・・・」
そこを掘り返されたら恥ずかしいクリリンは、こんな凄い兄ちゃんいるのに俺を兄弟にカウントしようとしている悟空の酔狂さに呆れ、ついで兄弟とは言いすぎだと・・・もしかしたら憧れの人からやんわりと止められるだろうかと、クリリンは赤くなりそして次第に声がしぼんでいった。
何をしても兄弟子達に味噌っかすと言われて来たクリリンの心の傷は・・・ふとした瞬間に頭をもたげてはクリリンの自信をこそぎ落としに来る・・・・のだが・・
「そうかそうか!!!悟空の兄弟という事は俺の弟でもあるな!!!」
・・・・・はい!!!???
「いやいや、君のようにしっかりとした子が悟空の兄弟になってくれたら俺は嬉しいし、君のようないい子を弟に出来たら俺はもうなんて幸せ者なんだろう。」
「あ・・・あの?」
・・・・こいつは弟妹作るのが趣味になってきているのだろうか?
ブルマにチチに、その前は山村のシュウとマイはとっくに弟妹であるし!天津飯と餃子なんて兄者・兄様と呼ばせてるし・・・・そんなん知らない一般常識しっかりとしているクリリンは、突然そんな事を赤の他人から言われてもこま・・・らないかこの場合は?
自分も悟空が大好きで、孫悟雲という人物には憧れていた・・・・しかもだ、自分の目をしっかりと見ながら話してくれている孫悟雲さん本当に嬉しそうで・・・
-皆様-お気づきだろうか?
二十一歳になりながらも、この阿呆子ザルはまたもやお目目キラキラさせて頬を紅潮させてもう嬉しさ全開笑顔をであるのを・・・これが出れば!勝率百パーセントである!!・・・・なんのだ・・
だが
「あの・・・俺なんかが悟空とその・・・悟空のお兄さんと・・・」
「兄さんとは呼んでくれないのかい?」
「へ?」
「悟空のお兄さんなんて他人行儀じゃなくて、兄さんかお兄ちゃんか・・・兄様ってのもありかな?」
いやなにがありなの!!??
クリリンはこの二言三言の会話で分かった!!
悟空のドストレートな愛情表現(?)の大本はこの人だ!!
こんなに大らかな愛情示す人の弟してたらそりゃああなる!!・・・悟空に女の人には矢鱈滅多らにしない方がいいと言うか、側で見ていようとクリリンは誓いながら
「・・・悟雲兄さんでお願いします・・・・」
「そうか!よろしくなクリリン!!」
チュ
おおおお!!!
「ああ!!クリリンいいないいな!!!兄ちゃん!おらもおらも!!!」
兄弟になってくれてありがとうというラディッツのクリリンへのお礼は、クリリンの額に親愛の情の軽い口づけをして周りは色々と盛り上がり、悟空が羨ましそうに自分もしてほしいと実に微笑まし気にしてラディッツはクリリンを手放さないまま悟空の額にも口付けをして・・・・クリリンは真っ赤になって意識が飛んだ・・・もう好きにしてくらさいとフニャフニャにされて・・・
「さて、俺達は・・・」
「お兄ちゃん!!ヤムチャこっちこっち!!皆でちょっとずつ寄ってくれて場所開けてくれたの!!!」
流石に舞台を降りようとヤムチャに促したラディッツに、察した観客たちがブルマの横を開けてくれたのを、ラディッツとヤムチャはお礼を言って隙間に入れてもらい、クリリンも少し回復をして一緒に周りの人達にお礼を言い、自分達が降りた事でまた緊迫感を増した舞台を見つめる。
プロ実況者は二人の間から十歩下がって再開の宣言をしたのだ。
亀仙人は自分の体内の気が最早枯渇寸前である事を察しているので、悟空がかめはめ波を撃って来たら防げんし外に飛ばされたら終わりじゃなと算段をしていると、
「おっちゃん!!おら最後はかめはめ波は撃たねぇ!!!」
「・・・なに?」
「おら最後は自分の全部をおっちゃんにぶつける!!!!」
「なんと!!!悟空選手最後の最後で肉弾戦をする事を宣言してきました!!これは自分の肉体に余程自信があるのでしょうか!!!」
宣言通り、悟空は全身に力を込めて大地を踏みしめかめはめ波ではなく肉弾戦の構えをとっている。
元より悟空は虚言を吐くとは思っていないが
「儂の残りの気が少ない事を思っての事であればお門違いじゃぞ。」
相手を思いやって同じ土俵で戦う・・・それは今の悟空がすれば慢心である!
師や数段上の相手がやって許される境地を、まだまだ半人前を卒業したばかりの悟空がしていい事ではないと亀仙人は苦言を呈そうとしたが
「おらに修行つけてくれた亀仙人のじっちゃんが言ってた!!」
「・・・ほう?」
「気に頼ったらなんねぇ!!最後に物を言うのは基礎を怠らずに鍛えた心身だって!!
おらはここにいるみんなに最後まで頑張るって言った!!だから!!!」
最後の力まで振り絞っておっちゃんにぶつけて勝つんだという悟空の言葉に、亀仙人は胸をつかれた・・・・ひょっとしたら、自分の出番なぞ最初からなかったのかもしれない。
純粋に互いを高め合いここまで来た弟子達をもっと信用してやる事こそが・・・師としての自分の役目であったのではないかと・・・・
「ふっふっふっふ・・・」
何が・・
「はっはっはっはっは!!!」
弟子の慢心を防ぐ為じゃ!自分こそが傲慢であったのではないか・・・過日悟空とブルマが兄の過保護が少し困ると言っていたが・・・・自分もまた弟子達を半人前のままだと決めつけていたのではなかろか・・・
亀仙人は笑い続けた。
己の愚かしさを、そしてそれ以上に得た弟子達の心根のすばらしさに・・・
「良かろう!!!儂も儂の武道家としての全てを!!悟空!お主にぶつけさせてもらうぞ!!!」
「おらだって!!!」
それを合図に、文字通り二人はぶつかり合った。
目まぐるしく動き合い、互いに拳をぶつけ合い、悟空の蹴りが亀仙人の顎を捉えて宙に吹き飛ばすが、亀仙人は直ぐに体を反転して地面を蹴り勢いのまま悟空に手刀を討ち据え反対に吹き飛ばす!
「なんという攻防か!!これぞ男同士の戦いと戦いと言えましょう!!互いに一歩も譲らず、打ち合いながらも互いの目を見据えて離す事無く戦い合う!!
まさに!!今まさに天下一の武道家が決まろうとしている瞬間に!私達は立ち会っているのです!!」
「あぁ!!悟空!避けろ!!!」
「駄目だ!そこは前に行け!・・そうだ・・・引いたら食われるぞ悟空!!!」
「勝っちまえよ悟空!!!」
「頑張って悟空!!!」
声を嗄らす程の絶叫で二人の戦いが実況される中、クリリンとヤムチャ達もまた悟空を応援し、ジャッキー・チュンへの応援も混ざり合い試合会場は一体となった。
誰もが見たいのだ!!この激闘を制するのはどちらかを
食らい合うような攻防の果てに、悟空と亀仙人は距離を取った。
二人共にもう余力はなく、肩で息をしあっているがそれでも
「・・・へへ・・・なんでだろう。おっちゃんと戦ってるのが楽しいぞ?」
これがずっと続いてほしいと、普段の優しい笑みではなく、ニヤリとした弟の笑い方にラディッツは目を瞠る!
・・・・親父・・・・
似姿はそっくりであった。
サイヤ人の下級戦士は大体似ていると言われているが、髪型も顔の造作もそっくりであったが、今の笑い方は確かに父・バーダックのそれであった!!
強者と戦う事を何よりも楽しいと言っていた笑い方と、今のカカロットの笑い方はそっくりではなく同じであった・・・・カカロット・・・楽しいか・・・
良いかどうかラディッツには分らないが、戦闘民族サイヤ人の血はカカロットの中に確かに受け継がれていたのだ。
偶然にも頭を強く打った事で侵略の為の闘争本能プログラムの洗脳が消えたとしても、戦いを純粋に楽しむサイヤ人の血が目覚める程の相手に会えたのか・・・・
其の相手も
「儂もじゃ悟空よ、これほどまでに心踊る戦いをさせてもらったのはいつ以来か覚えとりゃせんわい!」
苦しい息の中で答える
いつしか会場を渦巻いていた喧騒は静まっていた。
茜雲染まりし夕暮れの中、武道家の矜恃をぶつけ合う二人の息遣いと言葉だけが流れる中、
二人は奇しくも低い姿勢で構えをとりそして
「うりゃああああ!!!」
「ほおおおおおおお!!!!」
最後の力をぶつけに行った!
「だあああああ!!!」
「うおおおおお!!!!」
亀仙人は飛び蹴りを選び、そして悟空は・・・・
「おらの全部くれてやる!!!!」
「なんと!!!!」
文字通り亀仙人に体当たりをした!!
亀仙人の左足蹴りが自分の頬に当たり切れて血が出ても怯まずに、互いを場外に吹き飛ばした!!
い・・・如何落ちる!!!
咄嗟にかめはめ波を出して空中に浮かぼうとしたが!構えた手を悟空の尻尾にはたかれて両手を上にあげさせられて・・・間に合わん!!
ドサリ!
それは本当に、同時に落ちた音に聞こえた。
体を絡め合い、かめはめ波で難を逃れようとした相手の手を悟空の尻尾が邪魔をしそのままブルマ達の目の前で二人は落ちたのだ。
プロ実況者から生憎と落ちた瞬間は見えず、誰もが悟空とジャッキー・チュンが落ちるところをしっかりと見届けていたラディッツを振り仰ぐ。
ほんの少しだけ悟空達が落ちた場所の横にいたヤムチャにはどちらが先に落ちたのか、それとも同時だったのか分からない中、クリリンの目にはしっかりと見えていた・・・この勝負の勝者が誰かを・・・・
そしてそれはラディッツも同じであり、誰もがラディッツこと孫悟雲の正しい判定を固唾を呑んで待つ中
「悟空・・・」
ポツリと言ったラディッツの言葉に、クリリンは驚いてラディッツを見た。
そんな・・・・だって!・・・・お兄さんも・・・
クリリンはほんの少しだけ尊敬していた孫悟雲に失望した。
だって・・・この勝負は・・・
「お前の負けだ。」
へ?
ラディッツの言葉に、クリリンは今度こそ目を見開き驚いた!
自分はてっきり・・・悟空の勝ちだと言われると思ったから・・
「兄ちゃん、おら・・・負けたんか?」
「情けない話じゃが、最期の瞬間は儂にも分からん。お主が見た事全てを伝えてくれんか?」
「分かりました。」
少し動けるようになった体を悟空と亀仙人は身を起こし、ラディッツに解説を頼んだのを、ラディッツは快く引き受けた。
大好きで大切な弟を贔屓する事無く、ラディッツは全てをつまびらかにした。
「先程二人が同時に場外に出た後、えっと・・・」
「儂の名はジャッキー・チュンじゃ。」
「あ、はい。ジャッキー・チュンさんがかめはめ波を撃って宙に飛ぼうとしたのを悟空の尻尾がジャッキー・チュンさんの手をはたいて構えを解かした上に両手を再度下から叩いてジャッキー・チュンさんはかめはめ波を撃てる構えをする時間は無くなりそのまま地面に二人そろってつきました。」
ん?
「あの・・・孫悟雲さん・・・二人の体は同時に地面に着いたのでしょうか?」
其れでは引き分けではないかとざわつく会場を見回したラディッツは、自分の腕に座らせたままのクリリンに笑って話しかける。
「クリリンなら見えていたんじゃないか?」
何故自分が愛すべき弟を引き訳ではなく負けだと言った理由を。
ご指名受けたクリリンは、もうもう!!この人達俺の事どうしたいんだよと頭抱えそうになるのを堪えながら、会場と何よりもその答えを知りたいと真剣な顔をしている二人の武道家にはっきりと告げた。
決して依怙贔屓をする事無く、弟相手であろうとも公明正大であろうとする悟雲兄さんの期待に応えるべく。
「体全体は二人同時でも、悟空の尻尾の先がほんの少しだけ先についてしまったんです。」
「あぁ!!!・・・・そっか・・・おら尻尾の事まで考えて無かった・・」
あるのが当たり前の尻尾を、最期まで地面につかないように意識していたら或いは・・
「・・・悟空・・」
「そっか・・・おら・・・負けたんだな・・へへ!!そっか!!おっちゃん強かったぞ!!
また戦おう!!!」
そして今度はおらが勝つんだという明るく笑って言われた悟空の言葉に、会場は割れんばかりの拍手と声援が飛び交った。
座りながらも互いを健闘しあって握手をする子供武道家と老人武道家の姿に、クリリンとブルマ達は悟空頑張ったのにと、笑っている悟空の代わりの様に悔し泣きをしながらも、天晴な相手であったジャッキー・チュンと、最期まで戦い合った悟空をたたえる拍手をしながら、第二十一回天下一武道会の-決勝戦-は、こうして幕を下ろしたのであった。
うらやましい・・・・俺とても・・・あんな風に・・・・