・・・・・どうしてこうなった・・・
「さあ!!夕暮れの空が夜空に変わろうという時間帯となりましたが!!!決勝戦が終わり優勝者はジャッキー・チュン選手と定まった後のこの特別試合を見るべく残った皆様に、暗くて見えないという事の内容に照明を付けさせていただきます!!!」
バッ!バッ!!
うおおおおお!!!!
・・・・実況者さんも観客の皆さんも盛り上がってるところ悪いんだが・・
「さあこれより!!天下一武道会が開かれ第二十一回を迎えましたが!!決勝戦後の特別試合が開催されるのは初であります!!」
「よろしくお願いします孫悟雲さん!!!」
・・・いやね・・・若者が何かに挑戦しようとして頑張る姿にはお兄ちゃん応援するよ?
「それでは!孫悟雲選手対!!ヤムチャ選手!!!双方よろしいでしょうか?」
カカロット!お兄ちゃん頑張れって言ってくれるのは嬉しいが!!クリリンも純粋な笑みを浮かべてどちらも頑張ってとか言うんじゃありません!!
お兄ちゃんこんな事する気は全く無いのだよ!!??
・・・だからってブルマ!!お年頃の娘が、お兄ちゃんに挑むなんて百万年早いのよとかヤムチャ君に言わないの!!お年頃の男の子は傷つくからそういうの!!
腹くくったとはいえ・・・・胃が痛くなってきた・・・俺はヤムチャが納得いくような試合できるのか?
▲▲▲
第二十一回天下一武道会はジャッキー・チュン選手こと亀仙人の優勝で幕が閉じた。
悟空ももう一歩のところであったが、しかし自分の尻尾の事まで把握していなかったのだから仕方がない。
そこを気を付けれていればなどの、たら、ればを言ったところ結果は結果であり、悟空自身も分かっているので優勝者宣言と賞金五十万ジェニーを受け取るジャッキー・チュン選手に一番大きな拍手を送っている。
気持ちのいい閉会式で終わる・・・・筈であったのだが・・・・ジャッキー・チュンこと亀仙人は、気がかりな事が一つだけあった・・・それはヤムチャの気配が沈んでいる事であった。
自分に負けて悔しいのであれば、それをバネにして次に向けての力になる事もあり、出来なければ武道家自体をやめればいいと思えるのだが・・・・気になってヤムチャの心の声を念話の要領で聞いた時、即座に己を殴りたくなった・・・
ヤムチャは羨んでいるのだ・・・最後まで自分の力を燃やし尽くすように戦っていた自分と悟空を。
己は相手、つまり自分にあしらわれて終わってしまった情けない奴だと・・・馬鹿な事をしてしまった!
力量が足らず、心が浮ついている者であっても真剣に相対するという基本的な事を自分がおざなりにしてしまったせいで、もしかしたらここから伸びるかもしれない若者の心に影を負わせてしまったかもしれない事を
如何に背が大きく体が出来上がったとしても、ヤムチャはまだ十六歳という若者なのだ。
その頃の自分は武泰斗様というお師匠様に教え諭され導かれそして今の自分になれたというのに・・・・近頃の自分は何か・・・慢心と傲慢になってきているのではないかと亀仙人にとって苦い杯を飲む日であった。
・・・悄然としないでほしい、狼牙風風拳という技は発想は素晴らしく、自分が言った助言通り弱点を見直し研鑽さえ積めば、心さえ育てればヤムチャという武道家は大成すると期待を・・・・しておいてひどい仕打ちをしたのは自分であると。
あの若者を救いたい・・・・否!!救わねば自分を育ててくれた人々や自分を慕う者達に合わせる顔とてなくなる!
だがしかし・・・・いや・・・自分が恥をかいてでも!!!
「審判よ、相談があるだが。」
「おやどうなされましたか?」
「うむ!この五十万ゼニーを天下一武道会の運営に返させてほしい。」
「なんと!!!いきなりどうなされたのですかジャッキー・チュン選手!!!」
亀仙人の言葉に審判も観客たちも何事かと驚く中、
「その代りのこの舞台を貸してほしい!」
そして今一度ヤムチャと試合をさせて欲しいのだという言葉に、周りはざわめきが大きくなり、何よりもヤムチャ自身がジャッキー・チュンの言葉に驚いていた。
自分をあしらう様に戦った武道家が、今更自分と戦って何になるのだと・・・やめてほしいと怒りすらが湧く!これ以上自分を惨めな道化にでもしたいのか!!
「そして孫悟雲!!!」
「・・・はい?」
「お主を真の武道家と見込んで頼みがある!!!」
「・・・?」
「な・・・なにを!!!」
ジャッキー・チュンこと、武道の神はラディッツの前に行き深々と頭を下げ
「あのヤムチャと戦って欲しいのだ!!」
・・・・・・へ?
「何を言っているんだじいさん!!!あんたどこまで俺を虚仮にするつもりか!!!」
言われたラディッツは何事かと首を傾げ、ヤムチャの方は怒りを爆発させた。
ジャッキー・チュンにあしらわれた事はショックではあるが、それでも!彼は真に強い武道家だと尊敬の念を抱いていただけに、己を虚仮にする様が許せなくて。
しかし亀仙人も本気であった。
「儂は心得違いでお主を軽んじてしまった!その償いをさせて欲しいのじゃ!!」
あんな酷い、試合とも言えないあしらうような真似をした償いをさせて欲しいという思いは真剣であり、ヤムチャも亀仙人が言っている事に少しは思うところがあり、この老人は本気であの時の試合の事を悔いてくれているのだと察しがついた。
ヤムチャは元来人の心の機微に聡いところがあり、人が落ち込んでる時や悲しんでいる時などに寄り添うことが出来る人間であり、それをして悟空やブルマ達に慕われ、過去の出来事で少しだけ初対面の人を警戒してしまうクリリンをして出会って直ぐに打ち解けられた。
そんなヤムチャだからこそ目の前で真剣に自分との試合の事を悔いているのが伝わり、怒りの拳をゆっくりと降ろし、そして迷った・・・・誰かにぶつかり合って己の本当の所を知りたいと・・・・
自分なりに努力したつもりであったが半年前から強くなっていないのか、己で編み出した狼牙風風拳はあしらわれるほどに駄目なのか・・・・その答えを!どうしても今知りたいと、ちらりと話の展開についていけずに首を傾げている孫悟雲を見る。
細い体に大猿化した悟空の掌を止める程の力を有している、きっともしかしたらジャッキー・チュン選手よりも強い人にぶつかって今の自分を見て欲しいと
「・・・・ご老人・・・・ご説明願おうか・・・・」
乞われたご本人ラディッツはいい加減なんの話を自分の頭越しでしているのだとブチギレかけた。
かくかくしかじか
「・・・・・成程・・・・・確かにあなたの不始末だと、言わせてもらっても?」
「・・返す言葉も見つからん・・・・」
「・・・・そして気力体力根こそぎ使ってしまったので俺にと・・・・」
はぁ・・・・どうしよう・・・・これが全く知らない者からの持ってこられた話で、相手も見知らない奴だったらブチギレて舞台をぶっ壊してこれでもやるかと脅しかけて終わりにするが、何となればドラゴンボール探しと弟が世話になっている武天老師様の頼みで、相手は気心知れてるヤムチャだしな・・・・
無下にできんとラディッツは嘆息する。
自分も鶴仙流の道場で弟妹弟子達を指導し始めた時は、亀仙人がヤムチャにしてしまったような事を幾度かしてしまった苦い思い出がある。
修行一つにしても単に相手を打ちのめすだけでは駄目なのだ地球の人達は・・・サイヤ人やフリーザ軍のように、弱ければ死んでしまうという甚だ物騒な事は無く、武道とは己の肉体をそして何よりも心を育てていくとか・・・・・例外幾つかあるが兎も角として武道とは心も大切なのである。
そこを分かっておらずに失敗して弟妹弟子達が何人かやめそうになったのを、その辺の機微が上手いお師匠様に助けてもらって近頃ようやく自分が指導しても弟妹弟子達の心も傷つける事無く教えられるようになったのだが・・・・いや本当にどうすればいいんだこれ・・・
俺は指導や教える組手はするし、戦う事ならできるんだが・・・・
「正直に言ってもいいかヤムチャ?」
「はい!・・・矢張り駄目ですよね・・」
あ、君の相手をするしないとかそういうんじゃなくて
「俺は試合をした事が無いんだが・・・」
「へ?」
「お師匠様達に鍛えられて組手やら撃たれた気功弾を弾いたり防ぐなどの修行もしてきたが。」
「・・・・・」
「鶴仙流を学ぶ前も後も試合をしたことが無い。」
はっきりと言えば試合してくださいと言われても困るのだ!!!
・・・・ええええええ!!!!!
「嘘だろう!!!あんだけ強い孫悟雲さんが!!一度も試合をした事無いなんて!!」
「いやでもさ・・・確かに悟雲さんが何かの大会や試合したなんて聞いた事無いいし。」
「悪党達と戦う内に強くなったって事か?」
「其れって実戦的ってやつなのか?」
「・・・ちょっと違くない?」
周りは孫悟雲の経歴を思い出すが、確かにどこそこの大会の優勝やら出場やらの経歴を見たことが無い!
ちなみにラディッツに生まれ変わる前は確かに空手をしていたが、大勢の前で何かをする事が苦手であったので試合はごめんなさいをしていたのだ・・・ちなみ惑星ベジータに住んでいた時の親父とのあれは修行であってまかり間違っても試合じゃない!あんなひっどいもんが試合であってたまるか!!・・・・コホン・・・まぁ特戦隊の皆さんとのあれも特訓であって試合にはカウントされないだろうし、幼馴染達とのあれは特戦隊の皆さんの集団戦闘の仕方を口頭での指導で終わったのでまた違うし、つまり
ラディッツは初試合を申し込まれたのだ・・・・
其の事に一般常識きちんとあるクリリン達や、ヤムチャも呆気に取られた。
「あの・・・鶴仙人様は悟雲さんに試合させなかったんですか?」
カプセルコーポレーションの用心棒として就職しているヤムチャは、必然ブルマ達に会いに来る鶴仙人に会う事がある。
一人の時もあれば弟子・悟雲と共に連れ立ってやってきては楽しそうにしている鶴仙人は、動きからも真に達人とはこの人だと尊敬の念を沸かしていたのだが・・・まさか弟子に試合させない人だとは・・・それはちょっと違うのだが・・
「いや、俺はお師匠様にお会いして弟子になったのはだな・・・」
ラディッツはヤムチャの考えを訂正する為に出会いから今日までの事をきちんと話した。
祖父の許しを得て十二歳になって(世間納得させるための方便です)世に出た一日目に東の荒野で劇的な出会いを果たし弟子入りをし(・・・美談にした方がいいでしょう)次の日は修行をして驚異的な速さで気の運行を体得させてもらい、三日目に都に行ったらあら不思議、強盗倒して人を助けたらその人は映画会社の社長で映画監督でもあったシネマキーンであり、その日から武侠子役ヒーローとなって、撮影。修行・休みの日々を交互に過ごしながら成長し、試合を入れている時間などどこにもなかったのだ・・・・
「あの・・・悟雲さん・・」
「ん?どうしたヤムチャ?」
「・・・・過労死しないでくださいね?」
「ん?そこまででもないだろう?」
・・・・・遊んでいる暇もない人生送っている孫悟雲が真剣に心配になって来た一同であったが、それは兎も角として・・・
「初試合が俺なんかじゃ不満なのは分かりますが!!!是非貴方の胸をお借りしたいんです!!!お願いします悟雲さん!!!」
・・・ヤムチャまですっかりその気になり、ブルマ以外の会場全員が試合しないかという空気になってしまっては
「分かった・・・」
確かお師匠様が・・・俺の教え方は手加減ではなく手抜きになってるから相手が傷つくって言ってたな・・・
指導に際して重要なのは相手の力を十全に引き出す為に、力加減はするにしてもおざなりにならずに心から真剣に向き合う事が大事だと・・・そしてそれがされなかったからヤムチャの心は傷ついたのだ。
ならば・・・・もう腹くくった!!!!
「俺も初試合よろしく頼むぞヤムチャ!!!!!!」