エイジ750 ナーリキンの城
格闘技大会の優勝賞品は、ナーリキンの城での豪華ディナーであり、二人はナーリキンに連れられていそいそと城に入り、先ずはお風呂をお借りした。
埃っぽく汗臭いので二人はホイポイカプセルの家よりも広いお風呂場にびっくりしながら、互いに背中を流し、クリリンは悟空の髪まで洗ってやって広い浴場に入り、さっさと出て、クリリンは悟空の髪を乾かしてやる。
「動くなよ悟空!ドライヤーで乾かした方が早いんだぞ。」
「・・・おらやっぱりこれ好かねぇ!姉ちゃんも兄ちゃんも使えって言うけど熱いぞ!!」
「・・・・悟雲兄さんの場合は無いと本当に冬場だと風邪ひくかもしれないからな・・」
ドライヤーは嫌だという悟空の言葉に、悟雲兄さんの髪の長さを思い出したクリリンはしみじみと思う・・・髪の毛切った方が良くないかと・・・
まあそれは兎も角として、二人は修行旅でも道着以外の服もラディッツとブルマの監修のもとバッチリと入れてもらい、悟空はおなじみ悟飯お爺ちゃんの服を小さくしたのと、クリリンも同タイプの服が二着持たされていた。
それに着替えて扉の外に出れば、こちらになりますと柔らかな笑みを浮かべたメイドさんに連れられて食堂に行き、先に二人をもてなす為に待っていたナーリキンは、二人共おいでと優しい声で呼びかけながら、悟空達よりも背の小さな女の子を紹介された。
「私の娘のモンブランといってね、体の弱い子で普段は寝室で食事をしているのだが、今日は誕生日なので一緒にいいかな?」
「あ・・・はい!僕達こそご馳走になります!!」
「よろしくな。」
料理は悟空達をしても食べきれるかという程のお肉や野菜、魚の料理が色とりどりに盛り付けられ、美味しいにおいを漂わせて運ばれてくるのに、悟空は生唾を飲みそうになって、はしたない事したらいけねぇと我慢する中、
「いやぁ~、まさか私の娘と同い年くらいの子供達は優勝するとは驚いたよ。
モンブラン、自分で挨拶できるかい?。」
「あ・・・えっと・・・モンブランです・・・・悟空君とクリリン君、初めまして。」
「おう!おら悟空だ、よろしくなモンブラン。」
食事の用意が整う前にと、ナーリキンは娘と悟空達を引き合わせる。
ナーリキンが急遽格闘技大会を開いたのは、体の弱い一人娘のモンブランが十歳になるので、強い人達の陽の気と運気を分けてもらえないだろうかという少し迷信めいた考えではあるが、娘の為に盛大に楽しいお祭り的な格闘技大会を開き、参加者全員にはここまでかかった交通費代と、少しばかりの参加賞的な賞金を出して、最期まで楽しく終わっている。
モンブランも外には出られなかったがモニターから応援し、とても楽しそうだったと言うメイドさんの言葉に開催してよかったと号泣した良いパパさんである。
ナーリキンも肉体が強い方ではなく少し線が細く、ショートにしている茶色の髪の毛にも少し白いものが混じっている苦労人っぽいが、娘のモンブランちゃんも同じ茶色の髪を背中まで伸ばして、着やすい柔らかな素材の水色のワンピースを着て大変可愛らしく、そっちの方に疎い悟空は兎も角、
「は!初めまして!ぼくはクリリンと言います!!悟空とは兄弟弟子です!」
柔らかな笑みを浮かべる可愛いモンブランに、クリリンの心は一発で撃ち抜かれた・・青春というか・・・甘酸っぱいねぇ・・・
クリリンが顔を赤くしながら必死に言う姿が可愛くて、モンブランはついくすくすと笑ってしまうのを、クリリンは正気づいて頭をかきながらみっともないところをたははと笑う内に、食事の用意が整った。
「モンブランそんなんで足りんのか?おらのお肉分けてやろうか?」
「悟空、モンブランちゃんにはモンブランちゃんの食べたい量があるんだよ。
あんまりせっつくのは良くないぞ?」
「そうなんか?んん・・・五月蠅く言ってごめんなモンブラン。」
「ううん!悟空君は私の事心配して言ってくれたんだもん。
クリリン君も悟空君も優しいのね!
あのね!モンブランはお外にあまり言った事無いの!!お外は楽しい?どんなところ!!」
「これモンブラン・・・」
体が弱い故に外に出ることが儘らないモンブランは、食べる事よりも二人に話を聞く事をせがみだし、食べないと体に悪いとナーリキンは良い顔をしないが、
「モンブランちゃん、その少しのお肉を頑張って食べられたら、僕も悟空も今まで見て楽しかったこと全部話すよ。
な!悟空!!」
お肉をつついて其れっきりにしているモンブランを見て、クリリンはピンときた。
モンブランちゃんはどうやらもしかしたら食べるのが苦手なのかなと。
苦手な事をしたらご褒美上げる、飴と鞭作戦を敢行したクリリンは、アイコンタクトで悟空に合図を送れば、ご飯の後に楽しい話しする約束するんかなと思った悟空は、少し意図は外れているが概ねクリリンの思惑通りの事を言ってくれた。
「おう!その肉美味しかったぞ!食べたらおら達の話一杯すんぞ!!」
「・・・本当?・・・・これ美味しいの?」
お肉があまり好きではないモンブランは、二人の言葉にえいっと気合を入れてお肉を口の中に入れれば・・・
「これ・・・柔らかくて・・・レモンの味がしてさっぱりしてる!
・・・もう少し食べてみる。」
「・・・・モンブラン・・・・」
普段小食のモンブランが、出されたお肉を半分以上食べている事に父ナーリキンと、一家を見続けてきた給仕をしているメイドの眦に涙が浮かぶ。
今日格闘技大会を開いて本当に良かったと
「そんでおら負けちまったけど、世の中にはいっぱい強い人達がいるってワクワクしたんだ!!」
「負けたのに悔しくないって悟空君不思議ね・・・・」
「そっか?」
「うん・・・モンブランはいっつもお熱出して病気に勝った事無いの嫌だもん。」
頑張ってお肉を食べ、デザートにモンブラン様誕生日おめでとうございますというメッセージ付きのホールケーキが置かれ、悟空とクリリンが誕生日の歌を知っていたので二カリと笑って歌いだし、
「「ハッピバースデイディアモンブランちゃん!ハッピバースデイトゥーユー!」」
二人が歌い終わると同時にモンブランが頑張って十本のろうそくを吹き消した。
楽しいおかげか長い息を吐いてもむせる事無く、楽しい誕生日だと大笑いしながら悟空とクリリンの今までの楽しかった事や凄かった事や学んだ事を聞いて、モンブランは悟空達の強さを羨んだ。
モンブランは生まれた時は未熟児であり、母親もモンブランを産んで程なくして亡くなってしまい、モンブランもこの頃は熱は出ないが寝付く事が多く大好きなお父さんを心配させているんが嫌なのだと、病気に勝てないのが悔しいと泣きそうであった。
楽しい時間が一気に悲しいものになりそうになったのを、愛娘が悲しそうなのを慰めるのと、折角祝ってくれた客人に失礼になるとどちらを言えばいいのかおろつくナーリキンよりも、先に悟空の方が席を降りて向かい側に座っていたモンブランに近づき優しく頭を撫で始めた。
「お前ぇ強いんだな、モンブラン。」
「へ?・・・わ・・・私弱いよ・・・」
だって、熱が出たら薬を飲んで寝てるしかないというモンブランの言葉に、
「熱や病気から逃げたいって言わねぇで、負けるのが悔しいって。
それって勝ちたいんだろう?」
「う・・・うん・・・・お熱が出ないでほしいもん・・・」
「ほら、勝ちたいって立ち向かおうとしてるのがおらは強いと思うぞ?」
おらなんていっぺん大熱出しちまって注射が苦手でいっつも逃げ回って兄ちゃんに捕まっていやいやしたのに、モンブランは逃げずに戦おうとしてるのは強いと・・・少し脳筋そうなトホホな話付きであるが、強いと、初めて誰かに言ってもらったモンブランは、
「わ・・・私・・・弱くない?」
「おらはそう思うぞ。」
「つ・・・強くなれるかな?」
「僕もモンブランちゃんは強いと思う。」
「クリリン君・・・」
いつの間にかクリリンも来て、悟空のいる反対側に立って同じようにモンブランの頭をゆっくりと撫でる。
「さっき苦手なお肉を沢山食べた時、負けるもんかっていうモンブランちゃんの顔見たら、きっと狼男だって逃げ出しちゃうよ。」
「えぇ・・・モンブランそんな怖い顔してたの?」
「あ!違う違う、怖いじゃなくて強そうな顔をしてたんだ。」
「強そうな顔・・・むん!!!・・・こんな感じかな?」
先程お肉を頑張って食べようと決意した時の顔を思い出してモンブランは再現してみれば
「ふふ・・・」
「ちょ!!パパ!!!」
「ふへへ!モンブランの顔おっかなくて強そうだ!!」
「もう!!笑いながら言ってるの酷いよ悟空君!!!」
「悟空・・・・でもご免モンブランちゃん・・・・可愛い顔になってるよ。」
「もう・・・可愛いって・・・もう・・・」
クリリンの言葉がとどめになって、強張っていたモンブランの顔が緩んで笑いだしてしまい、ナーリキンも悟空もクリリンも大笑いしてしまい、クリリンもこんな顔強そうですかと面白百面相をして更に笑せ、普段真面目なナーリキンも娘を笑わせようとお多福の様に顔を膨らませて、パパ変なのと笑ってもらい幸せになった。
こんなにこの城に笑い声が響いたのはいつ以来だろうか?
いつも、息を詰める様に生きてきた娘が、初めて会った男の子達と笑い合い、見回せばメイドも給仕達もほんのりと笑ってくれている・・・今日は何と素晴らしい日なのだろか?
「や・・・だ・・・まだ・・・起きてたい・・」
「モンブラン・・・」
笑い疲れたのか、ウトウトとするモンブランをナーリキンが抱き上げ今日はもう寝なさいというのを、モンブランはいやいやをする。
寝ている間にクリリンと悟空が行ってしまうのは嫌だという言葉に、クリリンと悟空は顔を見合わせて頷き合った。
最早阿吽の呼吸であり、お互いに口に出さずとも言いたい事は分かり直ぐに相談が終わる。
「ナーリキンさん、ご迷惑でなければモンブランちゃんが目を覚ますまで僕達此処にいてもいいですか?」
「食べた分は薪割や掃除して働いて返すから。」
「君達・・・・寧ろ私の方こそ頼みたいくらいだ。
天下一武道会の優勝賞金は確か五十万ゼニーだったね、その分を受け取ると思って明日モンブランが目を覚ますまで出立を待ってくれるかい?」
「「分かりました!!!」」
「クリリン君・・・悟空君・・・」
待ってくれるのと心細げに聞くモンブランに、
「モンブランちゃん、僕達のお師匠様が、最初に僕達に修行を付けてくれた時に教えてくれた大切な言葉があるんだ。」
良く動き、良く学び、良く遊び、よく食べて、良く休む
「モンブランちゃんは沢山笑って体動かして疲れたんだから、ぐっすりと眠ればあっと言う間に朝になると思う。」
「そ・・うかな・・・・そうだと・・・いい・・・」
スゥスゥ・・・・,
「モンブラン・・・・ありがとうクリリン君、悟空君・・・・モンブランは時々夜を眠れない時があってね・・・こんなに、安らいで眠ってるのは久しぶりで・・・」
本当に、何度二人の少年に感謝しているか分らないが、ナーリキンは何度クリリンと悟空にお礼をしても足りないと、ボロボロと泣きながら二人に頭を下げ続ける。
「おじさんも・・・モンブランと休んだ方がいいと思うぞ?」
「僕達も休ませていただきます。」
「そうだね、久しぶりにモンブランと一緒に寝かせてもらおう。」
マネーカンパニー程ではないが、ナーリキン・ゴールドも、ゴールド会社を経営している身であり、体の弱い娘の為に高額な治療を受けさせる為にひび働いている。
生まれつき弱かったモンブランの心臓は、幸い直ぐに手術して成功し体の成長と共に少しずつ強くなってきているが、予断はまだ許されない。
後五年もすれば体も心臓も強くなり、一般生活のリハビリが始められると言われていても、まだ五年あるのだと思うとナーリキンの胸が搔きむしられる思いがする。
たった五年ではない、五年もモンブランは苦しむのかと思うと・・・しかし、その娘が楽しそうに誕生日を過ごし、楽しく疲れて眠るのを見たナーリキンは、今日は自分も休もうと悟空達と共に部屋に引き取り、城は廊下の燭台以外の明かりが全て消された。
月が天高く昇り、丑三つ時に黒い雲が晴れた空を覆った時
「きやぁぁぁぁぁ!!!パパ!!!」
寝ている筈のモンブランの悲鳴が城内に響き渡り、悟空とクリリンは跳ね起きて過ぎに上着を着ながら部屋を飛び出した。
夜であっても火事や地震などの災害がいつ起こるか分からないので、何が起きてもいいように二人は夕食に来ていた服を上着だけ脱いで寝ていたので、直ぐに枕もとの上着を着ながら三つ向こうのモンブランの寝室に急ぎ
「おじさん!!モンブラン!!」
「ナーリキンさん!モンブランちゃん!!!」
二人が寝ていた部屋を倍にした広さの寝室の中に飛び込んだ時二人が見たものは
「モンブラン!!!貴様!!!娘を放せ!!!」
殴り飛ばされたのか頬を赤くしうつぶせになりながらも懸命に娘に手を伸ばすナーリキンと、長い黒髪に薄紫色の肌をした、耳のとがった男がモンブランを横抱きにしている姿であった。
男は後から入って来た悟空とクリリンを見てニヤッと笑い、窓を蹴破り敷地内の森の奥へと行ってしまった!
「待て!!!」
「ナーリキンさん二階から飛び降りるなんて無茶です!!」
寝室は二階にあり、それを承知していながらも飛びおりて目の前で攫われてしまった娘を追いかけようとするナーリキンをクリリンが押し留めた。
「僕と悟空が行きます!!貴方では無理です!!!悟空!!」
「筋斗雲よい!!!」
「行ってきます!!必ずモンブランちゃんと戻りますので待っていてください!!!!」
「絶対に戻っから!待っててくれおじさん!!!」
どう見ても戦えないナーリキンも後を追って飛び出しそうになるのをクリリンが押し留めて悟空の背に捕まり低空飛行で森に入り、見え始めた後姿を筋斗雲で追跡をする。
「「待てえええええ!!!!!!」」
誰だか知らないが、絶対にモンブランを助けて戻るんだと、悟空とクリリンは強い眼差しで後を追う
暗い森の行き先に、何があるのかを知らずに・・・・