他者の生命を刈り取って生きてきた・・・・少なくとも惑星ベジータが滅びる日までは
ガキの頃からそうして生きてきて、ギネに出会って-クソガキ-が生まれ、そして、守りたいという思いが生じてもその生き様は変わらなかった
他所の星の事なんて知った事じゃない、自分の身内でも仲間でもない奴が幾億人死んだとて構うものか・・・今まではただ、腕が無くなり閉じ込められてきたから誰も殺していなかった・・・謂わば余暇
身の内に暴れる思いと付随するような膨大な気を解放すれば、己の手の中にいるか弱い者達の生命なぞ即座に刈られるが、幸せそうに笑っていたクソガキが!!目の前で消されたのだ!!!
自分もギネも!!狂おしい程に会いたいが、それでも、クソガキ達がフリーザの籠の中で飼われる事を思えば我慢が出来た。
どこまでも自由であるのがサイヤ人の本質、あれはそういう意味で、しがらみの多い現世の中を自由に飛んで・・・飛んで逃がしてやれればそれで良かった
そのクソガキを!映像であろうがあいつ等は踏み躙ったんだ!!!
我慢していた分だけ、バーダックがかつて抱えていた激情に歯止めがかからなくなり、理性を引き飛ばして己の中にある-赤黒い闘争心-に手を伸ばした・・・・あれを掴めればきっと・・・きっと何もかもをフッ飛ばしてこれしてやれると・・・・
一歩踏み出そうとした時
黄金の光が力に向かって一歩踏み出そうとしたバーダックを包み込み
親父は直ぐに怒る・・・・
この声は・・・・・
「「「「「ラディッツ!!!!!」」」」」
ここにいるはずの無い、それでも確かに自分の耳朶をうった声は、紛れもなくラディッツの声!
後ろから声をかけられた気がして振り返れば・・・・
子供達もまたラディッツの名を叫んでいた。
五人が常時首にかけているラディッツの生命石が突如黄金の光を放ち、そして声が響いたのだ・・・まるで、子供達の心を怒りの力から守るように・・・
「どうしてよ!!だって敵なのよ!!!殺しても戻れって歌ったのはあんたじゃないのラディッツ!!!」
「怒るなってなんだよ!!!俺達が・・・どんな思いでいるのか分かってるのかよ!!!」
「お前身勝手過ぎんだろうラディッツ!!!!!」
自分と同じようにクソガキの名を叫んで怒っているスーナとガジャとマトマと
「どうして・・・・お前は俺達をいつも止めるんだ・・・」
静かに嘆くゲンインが上空からゆっくりとおりてきて自分の横で止まり・・そして・・
「いい加減にしろよ手前!!!!いっつもいっつも甘い事ばかり言いやがって!!!
殺しても怒りで殺すな?殺す事になんの差があるってんだよ!!!
怒りだろうが冷静だろうが!!殺しは殺しだ!!!お綺麗な御託をいつまでも言い続けやがるんだラディッツの馬鹿野郎が!!!!」
まるで目の前にラディッツがいるように吠え上げるリーキュがいた
リーキュはラディッツの事は確かに好きだが、誰よりもラディッツの甘い戯言を嫌っている。
ラディッツに出会う前のリーキュは誰よりも規律を重んじ、サイヤ人の誇りを意識していたエリートであった。
ある日自分達よりも階級の高さをかさに着て、訓練所から自分達を連れ出した時、最期まで頑強に反対したのはリーキュであり、少しの休憩貰ったからと許可を得ていると言われて渋々と付いて行き・・・・ラディッツ世代でラディッツの次にファイティングポーズ研究員になって絆を結びこそしたが、それでも自由奔放が過ぎるラディッツの行動に幾度も苦言を呈し、時にフリーザが良いと言った事もラディッツ本人に撤回させた事すらあった。
誰よりも規律と誇りを意識し、己を律しているリーキュをラディッツが信頼しているから・・・自分達の中でしっかりとしたお兄ちゃんとして・・・
そんなリーキュ自身は-自分を殺そうとしている同族の大人達-すら仲間として扱おうとしたラディッツに、幾度も口を酸っぱくして言い含めようとした
お前を殺そうとした証拠が山ほどある!フリーザ様かナナバ文官長様に報せるべきだ!!
その度に、ラディッツはもう少し様子を見よう、いつか・・・もしかしたらと・・・今だって!!
バーダックが-力-に手を伸ばそうとしてラディッツの柔らかい声に後ろを振り向き怒りが霧散したように、スーナ達とリーキュもまた止められたのだ・・・怒りで戦わないでほしいと・・・いつかの日、あの歌が作られる一年前ほどに、リーキュは苛立ちに任せて危うく同族の大人の教官を殺しかけた事があった。
その頃にはもう、古きサイヤ人達の生死なぞ構わないというのがフリーザ軍の見解であり、リーキュもまた同様で突っかかって来たのが鬱陶しく、死んじまえよと言いながら最後のとどめを刺そうとした時、止めたのはラディッツであった。
訓練所に一緒にいたガジャが、教官とリーキュの殺し合いに不味いと感じてスカウターでラディッツに連絡を取り、休憩中でフリーザ様の手元から離されていたので直ぐにすっ飛んできた。
怒りに任せて何してんだというラディッツの言葉に、こいつから吹っかけてきた殺し合いだ、殺すのに怒りも冷静も何も無いだろうと叫んだ時・・・・ラディッツが泣き始めた。
見ていたガジャも、当然目の前で見ているリーキュもぎょっとする中、ラディッツはしゃくりあげながらリーキュの血塗れの右腕をとり
「お前の綺麗な心を汚さないでくれよ・・・・お前みたいに強い奴が、拳を穢さないでくれよ・・・・」
怒りなんて碌なもんじゃない・・・それはいつかきっと心を荒らしてしまういけないものだと、ボロボロと泣きながら訳の分らない事を言い募ってきた・・・・怒りが強さに変わるならそれでいいじゃないかと嘯くには、ラディッツの言い続ける態度は余りにも真摯で・・・愚直な程に真っ直ぐで・・・甘い言葉が嫌いなリーキュを、頷かせる言葉が・・・今またこの時に!!!
「怒って何が悪いんだよ!!どんな気持ちで俺達がこの十年過ごして来たと思ってんだ!!
惑星ベジータが消えたのなんてどうでもいい!!お前の事殺そうとした古いサイヤ人達が消えて!!!なのにお前までいなくなるってなんだよそれは!!!
綺麗事を俺に言いたいんだったら!!俺達の前に現れろってんだよクソったれが!!!」
分っている・・・いなくなったのはラディッツのせいなどでは無いのなんて・・・・それでも、言わずに折れない程にリーキュは・・・・分かっているから・・・時折怒りで理性を無くして敵と戦い死んでいくものがいる事を、生き延びてもいつしか心の平静さを無くして敵を殺す事だけを考える馬鹿野郎になってしまう事を・・・自分達よりもいち早く最前線の兵士達の様子を知ることが出来たラディッツが、自分達にそうなってほしくないと・・・大人になって知ったから・・・・
「お前の綺麗事なんて嫌いだ・・・・」
綺麗事なんて嫌いだが、ラディッツは好きだ!!
「会ったらぶっ飛ばすの条件で!!今は従ってやるよ大馬鹿野郎が!!!」
目の前にあった赤黒い力に背を向けたリーキュは
「フリーザ親衛隊!!!目先の赤黒い力無視してこいつ等ぶっ殺してフリーザ様の下に行くぞ!!
フリーザ親衛隊の隊長として!下級戦士バーダックは其のまま住民保護してマトマの助けた住民の側で待機を命じる!!」
背まである長い黒髪を紐で結びなおしながら隊長として命令を下していく。
目の前の赤黒い力ではなく、体の奥底から沸き起こる力を感じながら・・・・
「こんのクソガキが!!!調子に乗るなよ!!!」
ゴアクが戦場において髪を結いなおすバカな小僧を斬り殺そうとしたが・・・
「囮だよ阿呆が・・・・」
「な!!」
リーキュを寸断するはずだった剣は、ガジャのエネルギー鞭によって止められ、くたばれと、リーキュはゴアクの顔をエネルギー弾で吹き飛ばし、
「スーナ!林の中に一人いる!そいつだ!!!」
「あんたがマトマを堕とした奴ね!!!」
吹き飛ばした時腕がちぎれたビドーにとどめを刺そうとしたマトマが再び動かなくなった時、住人を四人抱えながらバーダックが焦った殺意を漏らした間抜けを見つけてスーナが迫った。
森に隠れていたブージンは、森の中に潜み再度機を伺おうかと逃げを打ったが、
「逃がさねぇよ・・・」
叢は燃やしちまえと、おじさん言ってたんだよと言いながら、リーキュは逃げる事で気を漏らしたブージンをスカウターで捉え、両手を高く上げた。
「ファイナルキャノン!!!!」
リーキュが最も高火力を出すエネルギー弾
エネルギーを大量に外に出し、両手で包み込んで圧縮して撃つのが本来であるが、今回は圧縮せずにそのまま放つ。
狙いは逃げる敵ではなく
「見つけた・・・・ゲンイン、マトマ、回り込んで挟んで殺せ。」
邪魔な木々を消す事、もしかしたら住民が隠れ潜んでいたかもしれないが今回は効率重視・・・・敵を逃がさない事こそが肝要だ。
二度と、自分達を脅かさせない為にも・・・
リーキュが考え事をしている間に、ブージンはゲンインとマトマに挟まれ肉弾戦で削り殺された。
「・・・・ザンギャという女戦士が見当たらない・・・逃げたか・・・」
バーダックが吹き飛ばす為に、腹に蹴りをもろに受けたザンギャにとどめを刺したかったのだが仕方がない、
「一旦この場の状況を終了してフリーザ様の下に向かう。
全軍に告げる!ボージャック一味のゴアク・ビドーともう一人を、フリーザ親衛隊が討ち取った。
尚ザンギャという髪の色がオレンジの女戦士に逃亡されたので、引き続きの警戒をされたし。
我等は聞こえていた通りフリーザ様の下に向かう。」
以上と、フルオープンチャンネルに切り替え周りに報せたリーキュは、ゲンイン達を引き連れて飛んでいく。
救った住民を腕に持ち、待機しているバーダックの見送りを受けて
・・・・大した奴等だな・・・・うちのクソガキに、爪の垢を煎じて飲ませたいほどの一級戦士になりやがった・・・
自分の助けたい者を助けられるのは、ほんの一握りだと言ったが、リーキュ達はこの土壇場で成れたのだ
怒りの力に囚われる事無く、心の冷静さを保ったまま自分達の意を通せる一握りの戦士に
クソガキ・ラディッツと違った翼を、五人の若きサイヤ人戦士達が力強く羽ばたく姿に、バーダックは近頃・・・この十年見せなかったニヤリとした笑みを浮かべて見送った
▲▲▲
「お仲間がやられても意気軒高とは!貴方は薄情な指揮官ですね!!」
「黙れガキども!!!」
「そのガキにやられているお前は三流以下だな!!!」
いつの間に、ボージャックがフリーザとクウラの攻撃に押され始めた。
原因はボージャックのスタミナ切れというフリーザ達にとっては情けない話だが、それでも自分の力量を見誤って初手から全開で戦う奴が馬鹿なのである。
クウラは自分が強くなる事に余念がないが、別にフリーザが言う程に戦闘狂という訳ではないので、相手が弱ればすぐさま食らいつき、自分の力で相手相手を煽り倒して屈辱に顔を歪ませながら嬲り殺しにするのが好きなフリーザも、勝ちの見えた状況に飽きてきたのでとどめを刺そうとデスビームを出そうとした時、ボージャックの気がふれく上がり吹き飛ばされた。
今更何の悪足搔きをと、同じように吹き飛ばされた二人に高エネルギー弾が迫った。
ボージャックは左手で右腕を支え、最大の技ギャラクティックバスターに全エネルギーの八割を注ぎ込んだ
この二人を倒し、指揮官がいなくなってガタガタになった烏合の衆の目を掻い潜り、宇宙船を強奪して再起を図る為に。
自分達は誇り高い戦士などという馬鹿げた者ではなく、あちこちを荒らしまわる海賊!生きていれば幾らでもやり直しが出来る!
「くたばれ!!!」
ボージャックに余力が少ないように、この時点でのクウラとフリーザもまた似たような状況まで追い込まれていた。
もしもクウラが第五形態になっても安定した力が出せていれば完勝したであろうが、たら、ればが通用する甘い戦場などある筈も無く、迫るエネルギー弾が広範囲過ぎて避けるにも力がなく、不味いと両腕をそろってつきだした時、
「シールド張るぞ!!!!」
五人の戦士が、自分達のアイデンティの尻尾を揺らめかせながら、フリーザとクウラに迫るエネルギー弾の中に割って入り、五人は自分達の-青白い気-を重ねて、気のシールドを展開した!
「馬鹿が・・・・ガキ如きが!!!」
後ほんの少しでフリーザ達を殺せたところを邪魔されたボージャックは怒り狂い出力を上げたが、リーキュ達も負けてはいなかった。」
「リ・・・リーキュ!!!」
「ゲンイン!!!」
「マトマ!!」
「スーナ!!」
「ガジャ!!!」
「「「「「我等フリーザ様の剣と盾となる親衛隊なり!!!」」」」
五人は己の名を叫びあげ、ファイティングポーズの代わりに自分達の底にある力を出し尽くさんと吠え上げる!!
かつてラディッツが文官としてフリーザ様をお助けしたように、自分達がそれを継ぐ!!
フリーザ様を守り、生き残った同胞を守り、幼馴染同士で守りあう!!
それこそが我等が誇り!!!決して誰にも折らせない矜恃!!!
青白かった気を研ぎ澄まさしてこらえ、そして
「お退きなさい、私の親衛隊達。」
フリーザの-準備が整った
惑星を破壊するスーパーノヴァよりも凝縮された濃密なエネルギーが、フリーザの右手人差し指に凝縮され、リーキュ達は何故も何も思わずに、主の命じるままに射線を開けた。
デスボール・・・・
ポツリとしたフリーザの呟いた言葉とは裏腹に、デスボールはギャラクティックバスターの中央に穴を開けそして、ボージャックの突きだした右腕を皮切りに、ボージャック自身を呑み込んでいった。
「馬鹿な・・・俺がガキどもに!!!!!」
「死になさい、おバカさん・・・」
最期まで抗うボージャックに、フリーザは冷ややかに告げる
価値無き敗者はさっさと死ねと告げた直後、デスボールはボージャックを呑み込み、惑星の外まで光を伸ばしてそして消えていった。
惑星は無傷とはいかずともそれなりの環境を有したまま残った。
フリーザ軍の勝利の瞬間であった
「ハァハァ・・・・くそったれ・・・・死んで・・・・たまるか・・・・」
ザンギャは、朦朧とする意識の中、リーキュ達が降り立った発着場に体を這いずらせていた・・・死にたくない一心で辿り着いた。
フリーザ達の危機も伝えられていたのか、宇宙船は空であり、取り付けられている丸い宇宙ポッドを見つけた。
大型船は操れないが、この単純ポッドなら指定されている惑星に勝手に行ってくれる・・・・ドンパチの今なら、誰も気にも留めないと乗り込み、発進ボタンを押した。
行く先は逃げられる場所かそれとも地獄か・・・・丸い宇宙ポッドのシートに身を預けて眠りについたザンギャは、賭けをする・・・運よく・・・生き残れればそれでいいと・・・復讐なぞ馬鹿らしいことはせずに一人でも好き勝手に生きていくんだと、微睡む宇宙ポッドは、北に向けて発信をし、小さなポッドは誰にも気にも止められずに宇宙に飛び出し、そして
・・・・なんだったんださっきの感覚は・・・・
地球の東の荒野にてラディッツが戸惑っていた
何時もの様に満月に誘われて大猿化をしてティラ達と戯れていた時、突然懐かしい者達の気配がした・・・・それも怒りと殺気と悲しみに満ちた気が・・・・
体がざわめいた・・・・その怒りに呑まれたら、きっと親父達は引き返せない道に行ってしまうと・・・・・必死に止めて、リーキュには怒鳴られた気がしたが・・
何であったのだろう・・・・今頃は何億光年も向こうにいる幼馴染達と親父の気を感じるなぞ・・・・望郷の念が自分を狂わせたのだろうかと、地球と無意識に繋がり力を使ったのを自覚していないラディッツはぼんやりと思う・・・・本当の皆は、元気にしているのだろうか・・・