あ~・・・いい天気だ・・・・
鶴仙流の本部の屋上で、夏の入道雲が浮かぶ青空を見上げながら、ラディッツははしたなくも腕枕をしてごろりとしながら、二十歳の頃から嗜んでいる煙管をふかす。
白い袍に身を包み、羅宇を朱色の木でこさえ、吸い口と雁金を銀で作った何の変哲もない羅宇煙管をふかす様は実に絵になる。
長い手足を投げだし、ツンツンとあちこちを向きながらも、意外に絹のような触り心地がする長いカラスの濡れ羽色の黒髪を地面にこぼし、優しい顔に更に柔らかい笑みを浮かべて久しぶりの余暇を楽しむ。
ラディッツは何もない青い空よりも、白い雲が青空を流れる様を見るのが何よりも好きであった。
惑星ベジータは、自分の幼少期の大切な思いでが詰まった大切な星であったが、大気はお世辞にも良いとは言えず、赤茶けた大地が大半であった荒涼とした星・・・だからこそ自分達戦闘民族サイヤ人なんて言う強靭な肉体を持たざるを得なかったのではないかと今だから思う・・・・
しかし、大切な場所だったのだ・・・・隕石衝突で消えたと聞いた時悲しくなるほどには・・・・
幼馴染は絶対に無事だと確信しているが、親父や母さんはどうなったのか・・・香りのよい桜の葉の煙草を煙管で堪能しながら、子供の頃の甘やかな記憶に潜っていく
自分を強くしようとしていた不器用ながらも自分と母と生まれてきた弟を愛してくれていたであろう親父・・・・誰よりも強さに貪欲でそして強靭な精神と心を持っていた偉大な戦士バーダック・・・・そんな父と自分達を愛していた、自分と同じくらいにらしくないサイヤ人であった母ギネ・・・・自分は、そんな父と母の下でカカロットと共に大きくなり、武官か文官になったカカロットや幼馴染達と共にフリーザ様の傍らで働いて、程の良い相手と結婚をして家族をもって・・・・そんな一生になるのだと何の疑問も抱かなかったあの日々を・・・・結婚・・・もう自分は地球の年齢であっても、結婚をしていてもおかしくない年になっている。
なにせラディッツの年齢は二十二歳、結婚は兎も角として恋人がいてもいいお年頃だが浮いた話は一つも無い!・・・・背が伸びてからも一つも無い・・・
「お前は婦女子に興味ないのか!!!」
んな訳ない、とは思えない程にラディッツに色恋の話が無さすぎる!!
修行と仕事以外にも時間が取れるようになっても遊びの一つもしない馬鹿弟子を心配したお師匠様が、遂先日に強硬行動にうって出てきた・・・・いわゆる高級クラブに連れて行かれたのだ・・・・
普段の鶴のマークの白い袍ではなく、白のリネンの長袖シャツに青のベストを着て同系色のズボンを履いていた時にひっくくられた。
サイヤンℱのオーナーとしての仕事の時の格好であり、鶴仙流の本部で仕事が終わったとドカリと自室のソファーに座り込んでネクタイを外していた時に突然押しかけあっというまに自分を連れて行ったお師匠様曰く、女性の良いところを教えてやると言われて連れて行かれた・・・・自分の力だったらお師匠様・鶴仙人を振りほどくなんて訳ないが、しようとすら思わない
自分はお師匠様が大好きだから・・・・意固地な人で、意地悪く、なのに・・・自分を大事にしてくれようとする優しい人・・・弱いのだ、そんなお師匠様に
だから素直に連れて行かれて・・・・・後悔した・・・
酒を飲まないと言えば、初めて飲む姿を見せて欲しいとせがまれ、頼んでもいないのに近寄ってきてしな垂れてきて・・・・何もかもがうんざりとして席を立ってしまった・・・・お師匠様の面目潰したかな?
ちなみにその面目潰されたかもしれんお師匠様は、馬鹿弟子のやらかしのフォローをする為に、店の女の子達とその店のオーナーに面前で頭を下げた。
なにせ気乗りしないラディッツを引っ張ってきた責任がある・・・
天下の鶴仙人が本気で詫びた事で、店も店員の女の子の面目を立たせる事は出来た。
如何にこういう場所に慣れていないとはいえども、悟雲が申し訳ない事をしたと面目や体面よりも泣きそうな店の子を見て申し訳いと思うほどに、鶴仙人は変わったのだから
しかし、まさか弟子があそこまで子供っぽいとは鶴仙人とても思わなかった。
嫌であっても社交辞令や故実の礼をもってやんわりと断り、何か用事があったのを思い出したかの様に装えば、弟子の隣にいた女の子を半泣きさせることはなかったのに。
・・・もうあらゆる意味で、鶴仙人は馬鹿弟子に武術と仕事以外にもっと健全な男の道も教えておけばよかったと後悔しどおしである。
しかしラディッツはそんな事は欠片も浮かばなかった。
どうしてあんな風に席を立ったのだと聞かれても、嫌だったんだからしょうがないとしか言いようがなかった。
着ていた服に、好みのものではない香水や化粧の匂いがつくのがどうしても我慢ならなかった・・・・見も知らない女性に触らせるのも嫌だった・・・・ブルマと一緒に選んだあの服は、俺にとっての一張羅。
ブルマの髪と瞳の色と同じ、綺麗な水色でもよかったんだが、目鼻たちがしっかりとしていて、黒い髪の俺には濃い青が似合うと言われたらそちらを選ぶのなんて当然だ。
可愛い妹が選んでくれた服は大事だし、お師匠様から何も言われてないしいいか・・それよりも現状問題なのは・・・・
「だから!!俺がこの本を見てたからってお前に何の迷惑が掛かるって言うんだ!!」
「やかましい!神聖な道場と繋がっているこの場所で!!そんな破廉恥な本を見る貴様の気がしれんわ!!」
「健全な男子だったら興味があるものを見てで何が悪い!!」
・・・・ああ~また天がヤムチャに突っかかってる・・・・あの二人よくもまぁ飽きもせずにやってるな・・・
ラディッツの目下の悩みは、兎に角天津飯がヤムチャに突っかかっる事だ。
何がという訳でもないが、天津飯がヤムチャの事が気に食わないらしい・・・何故にと首を傾げてるやつが原因だが・・・・
兄者大好きな天津飯が、その兄者に見込まれたヤムチャに焼きもちを焼いている・・・可愛い奴になってしまった天津飯・・・だが!そんな事をされているヤムチャ当人は堪らない!!
だって自分から弟子入り志願したのではなく!勧誘されて受けただけなのだ!!
「お前そんなに悟雲師兄が好きならそう言ってこい!!!」
「な!!」
「お師匠様の言いつけで口煩く言わないといけないを気に病んでいるんだったらそう言ってこい!!!」
数日師兄と天津飯を見ていて察しの早いヤムチャはピンときた!
天津飯が近づくと、悟雲師兄がまた俺何かやらかしたかと少し顔が強張るのが、それを見て天津飯が少し悲しそうな色を瞳に乗せるのが
普段察しの良い悟雲師兄も、天津飯の日々のお説教に身構えて天津飯の悲しそうにしているのに気づけていないのが、拗れ過ぎだろ二人とも!!
「ば!!馬鹿か!!!俺は別に・・・兄者がフラフラとするから!!」
「ああもうめんどくさい!!いいか!心で思っていれば!絆があればいつか伝わるというのはあれは絶対に嘘だ!!」
「・・・・なに?」
「思った事は口で!言葉で言わんと分かる訳ないだろう!!態度で分かってもらえと言うあれも絶対に嘘だ!!」
「そ・・・そんな!!!・・・・俺が口煩く言った後必ず兄者の好きなお茶を淹れても・・・俺が兄者を慕い続けているという事に気づいてもらってない・・・のか・・」
普段糞真面目で堅物を絵にかいたような天津飯が!ボロボロと泣き始めた!!
「おい!!」
当然確信ついてしまったかとヤムチャは焦る!!だってもしかしたら、きっとそんな感じで自分に当たって来るのかと思った半ば予想が、実にどスタライクを決めてしまったので物凄い罪悪感が湧く!!
・・・・・ちなみにここは滅多に人がこない中庭で、天津飯が水着姿のアイドルの雑誌を読んでいたので破廉恥だと文句を言う為に引っ張って来たのだ・・・兄者も真面目だしああいうのを快く思わんだろうと・・・・ちょっと兄者に夢見ている天津飯が暴走した結果、反撃食らって泣いてしまった・・・天津飯だって多感なお年頃なのだ
なのに武道の腕前に長け始め、フラフラとする鶴仙流きっての風天野郎をとっ捕まえられる技量に上がってからというもの、お師匠様の命でとっ捕まえては説教する日々・・正直天津飯だってやりたかない!!
兄者を好きにさせてもいいではないかという子供の心と、大人としての責務を全うしてほしいと思う心に挟まれている・・・・それを、気に食わない男に図星つかれて・・・もう嫌だになったそんな時・・・
「天・・・・・」
優しい声で呼ばれてふわりと体を包み込まれた・・・
「・・・・あ・・・にじゃ・・・」
「ごめんな天、悪い兄者で・・・・最近少し勝手をしすぎて、お前にしわ寄せを行かせたな・・・・・ごめんな・・・・」
近頃自分を少し煙たそうにしていた兄者が、心の底から謝りながら自分を抱きしめてくれてる・・・・兄の悟雲の背を追い抜いてしまってから、遠慮するようにしてたのに・・・・
「俺に何か言うの辛いか?」
「兄・・・・はい・・・」
「追いかけるのしんどいか?」
「・・・おこりたくなんてないです・・・・」
「そうか・・・すまないな・・・・駄目兄で・・・」
何時もなら、これまでなら兄に言われた言葉をそんな事ありません、兄者がしっかりとしてくれればなどと、無理して背伸びした言葉を言うのだが・・・・ヤムチャの言葉に後押しされるように、ボロボロと出る涙と同じように思いの丈を兄にぶつける。
そしたら・・・・・分かったやれてなくてごめんと言われた・・・・あいつの言う通りだ・・・思いなんて、言葉にしなければ伝わらない・・・・兄者は自分達の事を何度も好きだと言ってくれるのは、自分達に知ってほしいからなのか・・・・
思いは言葉にしてこそ・・・・・そうヤムチャに教えられた天津飯は・・・・直ぐには無理であろうが、少し、ほんの少しだけヤムチャの事を受け入れる準備が出来た。
元来人を寄せ付けるのを得てとしていない天津飯の様子に、気の良いヤムチャは気長に付き合うかと苦笑する。
・・・・・誰でも彼でも直ぐに受け入れて懐に入れようとする悟雲師兄の方がちょっと行き過ぎているのだから、天津飯位が普通なのだろうと思いながら・・・
「悟雲、近頃天の奴、お前や餃子意外の弟子達と修行するようになったな・・・」
「ヤムチャが橋渡ししてますからね~。」
高弟の位についてからは、周りも遠慮してしまい天津飯自身も戸惑われた相手にどう話しかけて良いのか分からず自然と疎遠になっていた弟子達の間を、ヤムチャが飄々とした様子で近づき何事かを二言三言ヘラリとした感じで笑っては、いつの間にか間を取り持ち、その輪がどんどんと広まっていくのを、良い事ではあるが突然どうしたと鶴仙人が目を丸くするのを、一部始終を見ていたラディッツが説明する。
あの新しく入った弟子はやりおるわい・・・だが、
「ヤムチャか・・・お前も大概だが、あ奴も器用貧乏でお人好しなところがあるが大丈夫か?」
隣にいる超お人好しの馬鹿弟子は、物理的にも精神的にも社会地位的にも騙されて食われるなんて可愛さなど欠片も無い・・・寧ろ仕掛けた相手を相手どころか周辺の関係者ごと食らいつくす・・・・・こんなに優しい笑みを浮かべながら内側に夜叉を飼っているとんでもない馬鹿弟子・・・だがヤムチャは違う・・・まだ牙が生えたばかりの未熟者・・・
「大丈夫ですよお師匠様。」
「・・・・なにがじゃ・・」
自分の内心を見透かしたような馬鹿弟子に、ムッとするが・・・
「俺の弟妹達に手を出そうなんて言う馬鹿、もう東の都にはいないでしょう。」
お師匠様が全部掃除したんですからと、歌う様に笑う馬鹿弟子・・・まったく・・
「ほどほどにせいよ?」
甘やかしてもいい事なんぞないと苦言を呈せば
「駄目ですか?」
とぼけた答えを返す馬鹿弟子の頭を少し浮いてぽかりと叩いてやった。
去年の今頃は、背は同じであったが成長した悟雲を、叩くのは一苦労だと言えば、酷いですねと苦笑しながらも、叩かれた場所を嬉しそうにさする困った奴・・・
少ししたら、桃白白というバトルジャンキーが修行の続きするぞと、顔を引きつらせるヤムチャを攫って行くのを、色々と心配なので俺も付いて行きますと言う天津飯が付いて行き、僕は兄様と修行するという餃子と他の弟子達
餃子も、大好きな天と兄様がまた昔の様に笑い合いながらひっつくのを見ていてホッとしていたのを、鶴仙人は何しとるんだかなと呆れて、少し笑った
五月蠅くて・・・・それでいて賑やかな日々に、鶴仙人は頭を一つ振る・・・・
気忙しくも悪さもしていられない・・・・そんな幸せな日々であった・・・・